連結決算は多くの日本企業で用いられている決算の手法です。
本記事では連結決算について、
- 概要や目的
- メリット・デメリット
- 流れや注意点
などを解説していきます。
目次
連結決算とは
そもそも決算とは、年間の収益や現在の資産、負債などを算出し、財務状況を明らかにすることです。
経営状況を明確にするだけではなく、株主や金融機関、取引先などのステークホルダーに対してどのような経営状態にあるのかを示す意味合いもあります。
そして連結決算とは、規模が大きい企業において、親会社だけではなく、国内外を問わず子会社や関連会社を含めたグループ全体で行う決算のことです。
作成に関しては1978年から義務化されていましたが、日本では単独決算が主流であったため、連結決算の開示が行われることは稀でした。
しかし、2000年にディスクロージャー制度が見直されてからは、連結決算の情報開示が進み、今に至ります。
連結決算の目的や意味、必要性とは
連結決算を行う目的は、企業グループ全体がどのような財務状況・経営状態にあるか、数値をもとに判断するためです。
例えば、子会社であるA社は見かけ上、黒字になっていたとしても、子会社B社からお金を集めているため、グループ間で見ると実際は赤字となっているケースがあります。
このように企業が株主に対して不利益な情報操作を行うことは法律に反し、罰則が科されます。
しかし、連結決算によって全体の決算情報を把握できれば、このような状態を株主も見極めることが可能になります。
したがって、連結決算を行うことで正しい財務状況を開示して、投資家が間違った判断をしないように正しい情報を提供することは欠かせません。
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連結決算の対象とは
連結決算の対象となるのは、原則として全ての子会社や関連会社です。
しかし、グループ全体への影響が小さく、重要性が低い子会社や関連会社の場合は連結対象とならないケースもあります。
また、子会社に該当するかどうかの判断基準は、株式の保有率で判断されます。
一般的に50%以上の株式を持っていればその企業の支配権を握っているとされますが、半分未満の場合でも子会社と判断されることがあるため注意しましょう。
具体的には、持株比率が20〜30%の場合でも、上場企業であれば実質的に支配権を握っていると考えられるため、子会社と判断されるケースが多いです。
「一定の条件」とは
その他、持株比率が50%を下回っていた場合でも、下記の「一定の条件」に該当していれば子会社として扱われるケースがあります。
条件 | 内容 |
緊密者、同意者の議決権 | 親会社の役員が対象企業の株式を半分以上保有している |
役員、使用人の関係 | 親会社の役員・経営者が対象企業の役員として在籍していて、意思決定機関を構成するメンバーの半分以上を占めている |
契約関係 | 親会社が対象企業の財務・営業・基本方針などの決定を支配できる契約が存在する |
資金関係 | 親会社が対象企業の資金調達額の総額に対し、半分以上を融資している |
そのほかの事実関係 | 対象企業の意思決定機関を支配していることが推測できる事実が存在する |
連結決算のメリットとは
連結決算のメリットとしては、下記のようなものが挙げられます。
- グループ全体の財務状況、経営状態を可視化できる
- グループ企業間の不正を抑制できる
- 銀行からの融資が受けやすくなる
多くの子会社や関連会社を持つ上場企業の場合、各企業の単独決算のみで経営状態を判断することは困難です。
そこで連結決算によって、グループ全体がどのような状態にあるのかを明確にできます。
また、グループ企業間の不正を抑制できる点も、投資家や株主などのステークホルダーにとって大きなメリットとなります。
さらに不正によって金融機関からの信用を失うリスクを下げられるだけではなく、金融機関が融資を行う際の調査を円滑に行えるため、融資を受けやすくなることもメリットです。
※もちろん、グループ全体の存続価値・清算価値がマイナスの場合には、融資を受けられなくなる可能性も高まります。
連結決算のデメリットとは
連結決算のデメリットは連結財務諸表をつくる手間がかかることです。
連結財務諸表をつくるには、各企業の単体決算書類を集め、親会社の決算と合算して内部取引等を相殺する必要があります。
多くの子会社や関連会社を抱えている大企業にとっては、これらの手続きは非常に重い負担といえるでしょう。
昨今では、これらの業務を効率的にするシステムを活用する企業もありますが、システムの導入・運用には一定のコストがかかります。
本業への投資を優先し、導入を見送る企業も多いため、エクセル等で対応している企業も少なくありません。
連結財務諸表とは
そもそも財務諸表とは、上場企業などに作成が義務付けられている決算書類のことです。
そして連結財務諸表とは、支配・従属関係にある2社以上の会社からなる企業グループをひとつの組織として、親会社が財務状況などを報告する際につくる財務諸表を指しています。
連結財務諸表をつくることで、下記のようなメリットがあります。
- 「飛ばし」や利益の不正操作などの不正の防止
- 企業グループ全体の利益を把握できる
まとめ:連結決算について
連結決算は用意しておくと有利に働く場面もあります。
とはいえ、オーナー社長などはご自身で節税対策として土地や船舶、飛行機などを別法人にして所有する、ということもあるでしょう。
その際は、無理に開示をするのではなく、必ず税理士などの専門家に相談してから、どちらにメリットがあるのかを確認するようにしましょう。