コロナ禍以降、採用活動に対する企業の考え方が大きく変わりました。採用もマネジメントと同じく無駄をなくすことが重要になってきているのです。
本記事では、特に事業拡大を図るべく採用活動に力を入れたい経営者に向け、採用の成功に不可欠なロジックをお伝えします。ポイントは、適所適材で組織図を考えること、定性的になりがちな採用要件を定量化することです。
目次
増員補充の方が難しい
採用を行う理由には大きく分けて2種類あると言えるでしょう。
それは、欠員募集と増員募集です。以下にそれぞれの意味を簡単に記載します。
欠員募集:現在の業務を進める上で欠員が発生し、それを補充するための募集
増員募集:1~3年程度先の組織を想定し、社内での育成期間も考慮した募集
経営者から「今回の採用は失敗したな」という感想をよくお聞きするのは増員募集のときです。
増員募集の方が難しい理由は何でしょうか。それは、組織図をしっかりと構築しなければならないからです。
「まず人材ありき」という適材適所の方針で採用活動を行う経営者は少なくありません。しかし、増員募集では「適所適材」の考えをもとに組織図を作成することから始めなければならないのです。
適所適材で組織図を考える
適所適材とは、必要な役割や仕事を明確にした上で、そこに人を配置することです。
欠員募集であれば必然的に適所適材の採用ができますが、今後の成長に向けた増員募集であれば、まずはこの考えにのっとり、未来の組織図を描くことに着手しましょう。
識学社の代表である安藤広大の業績報告動画を見てもらうと、私たち講師の採用は全て事業計画に基づいて実施されていることが分かります。講師一人当たりの月間売り上げを400万円で計算し、将来の売り上げを達成するために計画的に採用活動が進められているのです。
「皆忙しそうだし、そろそろ増員しなきゃいけないかな」といったような感覚頼りの採用活動では、いざ事業拡大のチャンスが訪れたときに限って、「人材が足りない」という状況に陥ってしまいやすいです。
理想だけの採用活動
未来の組織図を描いた上で、どの部署に何人の新人を入れるなどの計画が決まったのであれば、いよいよ採用要件ないし採用基準を決めていきます。とはいえ、皆さんが欲しいのは次のような人材ではないでしょうか。
「前職でハイパフォーマー、コミュニケーション能力に長け、積極性・自主性がある人材」
上記のような採用要件を考えている経営者の方は、かなりの高確率で採用に失敗します。望む気持ちは分かるのですが、以下の理由を踏まえ、再度検討してみてください。
- その人材はどの企業も欲しい(=競争相手が非常に多い)
- 社長の理想と現場の事実は事なる場合がある(=既存社員との乖離)
- 採用担当者と社長の間で認識が合わない(=曖昧な基準)
- 対象者が本当に求める人材か証明する術がない
いかがでしょうか。考えてみると当たり前のことかもしれませんが、これらは採用活動をしていく上で大きな課題となるものです。特に②~④に関しては、しっかりと考えておかなければ、せっかく採用を行ってもその人材が活躍できなくなってしまうのです。
採用要件を定量化しよう
こうした課題を解決していく方法は、採用要件を定量化することです。識学では、完全結果にすると表現しています。完全結果とは「期限と状態を明確にする」という意味です。
自社に必要な人材も完全結果化で示すのです。
例えば、採用した人材には何年で一人前の状態になってほしいでしょうか。1年、2年、3年……。ここは事業内容によってもかなり差が出ると思います。
重要なのはここからです。仮に、3年で一人前になってほしいとしましょう。そうであれば、入社3年の社員を見て、そのなかでパフォーマンスが高い人を数人選んでください。そして、その人たちの「コミュニケーション能力、積極性、自主性」を数値化するのです。
簡単な手段は適性検査の実施です。選んだ社員数人の結果が完全一致することはないでしょうが、ある程度リンクする項目が出てくるはずです。この項目を採用要件として設定し、母集団形成や面接時の判断基準に用いていくと、自社で社員が育ちやすくなるはずです。
もちろん「数値化できない部分だってあるのではないか」という主張を抱く人もいるでしょう。それは、間違いではありません。何の基準がなくとも数多く面接をこなしていけばいつかキラリと光るダイヤの原石に出会えるかもしれません。
しかし、その人材だけを探すことが未来の組織図の実現につながるでしょうか。採用活動の速度を落とさないためにも、まずは活躍できる基準を明確にし、母集団を確保した上で、よりハイパフォーマーである可能性が高い人材を採用した方が無駄がないはずです。
経過変化が重要
識学では「経過変化」が重要であるとお伝えしています。経過変化とは「日々の積み重ねのなかで工夫を続けて変化する」という意味です。
これに対し、環境の変化やシステムの導入による変化は「機会変化」と呼んでいます。機会変化が必要ないという意味ではないのですが、経過変化が軽視されてしまう傾向があるのです。
ダイレクトリクルーティングの技術やシステムも発達し、それに付随するコンサルタントの人数も非常に多くなりました。注意してほしいのは、そういったシステムやサービスを利用するだけでは機会変化で終わってしまうということです。
市場は常に変化をするので、自社で活躍する人材も当然変化していきます。採用要件を明確にすることを諦めず、経過変化によって自社の成長を実現する採用活動を推進していきましょう。