目次
リモートワークが引き起こす新たな経営課題とは
組織コンサルティング事業を展開する株式会社識学(代表取締役社長:安藤広大、本社:東京都品川区)は、2020年10月に企業経営者の経営課題に関する意識調査を実施しました。
調査は法政大学、坂上教授監修のもと、リモートワーク導入後または、導入した際に発生しそうな経営課題を把握することを目的に実施いたしました。
調査結果サマリ
本調査実施の背景
①「人材育成」「人材採用」を経営課題と上げた企業は7割を超える
【図表1-1】
Q.あなたのお勤め先の会社では、以下の組織課題について、どのような状況ですか?(課題がある+やや課題があるものについて回答)
(単位:%)
(※1)2020年11月20日公表 総務省統計局発表資料
(※2)「平成 30 年版情報通信白書」(総務省)
②企業規模により理念・目標の設定やルールの整備への取組み状況に相違あり
【図表1-2】
Q.経営課題に対する取り組み状況を教えてください。(全面的+大半施策を講じているものについて回答)
中小企業と大企業の回答比較
大企業回答
中小企業回答
③リモートワーク導入は企業規模によって差があるが、創業年数はあまり関係がない
(※3) 「東京都 多様な働き方に関する実態調査(リモートワーク)」(2020年3月公表)
【図表1-3】
Q. あなたのお勤め先の会社ではリモートワークを導入していますか?
④リモートワークを導入している企業ほど「人事評価制度」「IT・ICT投資」「コミュニケーション」を経営課題と認識している割合が多く、未導入企業よりも20ポイント以上高い
【図表1-4】
Q.経営課題について、リモートワーク導入後の自社での課題感の変化をお答えください(課題感が強まった+やや課題感が強まったものへ回答
サマリ
なお、当該質問の回答結果についてリモートワーク導入企業と未導入企業で課題として認識している割合に差異があり、特徴的な項目があることから以下にて代表的な項目の結果を記載する。
人材評価制度
人材評価制度を課題と答えた割合はリモートワーク導入企業が77.4%、未導入企業が48.7%という結果となり、リモートワーク導入企業の方が課題として認識している割合が高い結果となった。
リモートワーク導入企業からは、「目の前にいないため、通常の頑張りを評価にどう反映させていくか。大きな課題であると認識している。」「従来の評価基準から変更せざるを得ないので、あらたな基準がマッチしているのかを評価する時間が現時点では不足している」などの回答が見られた。
リモートワーク導入により、従業員の仕事の進め方など途中のプロセスが見えず、目で見える形は最終の成果物のみへと環境が変化したことによって「どのように評価すれば良いか?」という悩みが顕在化したことが要因と考えられる。
社内コミュニケーション
社内コミュニケーションを課題と答えた割合は、リモートワーク導入企業が80.4%、未導入企業が52.1%で、リモートワーク導入企業の方が課題として認識している割合が高い結果となった。
「技術・ノウハウ」「人材育成」「商品開発」などのオフラインコミュニケーションにより行われていた項目についてもコミュニケーション方法の変化に伴って、リモートワーク未導入企業と比較して当該項目を経営課題と認識している割合は約20ポイント高い結果となった。
リモートワーク導入企業からは、「上手くコミュニケーションが取れない」、「育成に繋がる指導がむずかしい」、「率直かつ具体的なコミュニケーションができにくい」といった回答があった。
リモートワーク導入によって従来とは異なる方法で上司や部下、取引先との教育方法やコミュニケーション方法により、業務を進めていくという環境の変化により、経営課題と認識する割合が高くなったと考えられる。
IT・ICT投資
IT・ICT投資を経営課題と答えた割合はリモートワーク導入企業が34.1%、未導入企業が7%と、リモートワーク導入企業の方が課題として認識している割合が高い結果となった。
リモートワーク導入企業からは、「対処療法的に環境整備は継続実施しているが、そもそも抜本的なITリテラシーの構築に早急に着手する必然性を感じている。」「セキュリティにも配慮して使いこなせないといけない。接続不良時に自分で解決できないと全体がおくれてしまう」などの回答があった。
リモートワーク未導入企業からは、「リモートワークを導入しようと思っても、ITリテラシーの低い社員がいるために、導入しにくく、社会の変化に対応できていないため。」などの回答があった。
リモートワーク導入に伴って環境整備及びITツールの利用が必須になることから、リモートワーク未導入企業よりもIT・ICT投資への課題と認識する割合が高い傾向となっていると考えられる。
本調査の結果はある程度は予想できたものの、少子高齢化が進み労働人口が減少していく中で、有能な人材を十分に確保することが難しくなり、それゆえ自前で優秀な人材を育成しなければならないことが喫緊の課題であることを浮き彫りにしている。
バブル崩壊以降、即戦力重視や成果主義の傾向が強まったこともあり、人材育成への取り組みが疎かになっていたことのツケが回ってきたのかもしれない。
また新型コロナウイルス禍の中、リモートワークへの取り組みが突如として必要となり、 IT・ICTに十分なリソースを割り当てることができない中小企業が苦労している姿も明らかにしている。
大企業では、社内コミュニケーションを図ろうにも、組織が巨大すぎてままならないことが多い。それを補うために、会社理念の浸透や共通の目標を設定するなどして巨大な組織をまとめようと苦労しているように見える。
リモートワークが進むことによって、組織としてのまとまりをどのように維持するかが、今後の課題として、より強く認識されるようになるかもしれない。
法政大学 坂上学
以上
ーーー
【調査概要】
調査地域:日本全国
調査手法:インターネット調査
調査対象:①従業員規模300名未満の会社の役員・経営者
※日本全国にある企業数に応じて回収
回答者900名を日本の企業数に応じて割付
②従業員規模300名以上の会社の役員・経営者(日本全国で100名が回答)
調査時期:2020年10月
企画分析:識学
実査集計:株式会社シタシオンジャパン