人手不足の原因とは?人手不足による影響と対策を解説

投稿日:2020/11/30

約3割の企業が人手不足に悩んでいる

 

企業が抱える問題はいろいろありますが、中でも近年深刻化しているのが人材不足の問題です。
帝国データバンクが2020年7月に実施した「人手不足に対する企業の動向調査」によると、「正社員が不足している」と回答した企業は30.4%、「非正社員が不足している」と回答した企業は16.6%に上っています。[※注1]

[※注1]株式会社帝国データバンク/人手不足に対する企業の動向調査(2020年7月)[pdf]
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p200805.pdf

新型コロナウイルスの影響により、人手不足割合は大幅に減少していますが、前年同月は約5割の企業が人材不足を訴えていたことを考えると、企業の人手不足問題はかなり深刻といえます。
とくに建設やメンテナンス・警備・検査、教育サービス、農林水産業など、一部の業種に関しては、新型コロナウイルスの影響を受けてもなお、5割前後の企業が人手不足を感じています。
また、新型コロナウイルスの影響で人手が過剰になり、一時的に人手不足の問題が解消された企業も、今後新型コロナウイルスが収束して経済が回復したとき、潜在的な人材不足問題が再び浮上してくる可能性があります。
実際、緊急事態宣言が解除された5月下旬を境に、6月からは人手不足の割合が微増していますので、今なお人手不足を実感している企業はもちろん、現在は一時的に問題が解消されている企業も、将来に向けて人材不足対策に着手することをおすすめします。

 

人手不足の原因は、生産年齢人口の減少や人材獲得競争の激化にある

 

新型コロナウイルスの影響下にありながら、なぜ3割もの企業が人手不足に悩まされているのでしょうか。
その理由は大きく分けて4つあります。

 

1.生産年齢人口の減少

日本は諸外国に比べると急速に少子高齢化が進んでおり、労働の中核を担う年齢の人口(生産年齢人口)も1995年をピークに減少傾向にあります。[※注2]

[※注2]国立社会保障/人口問題研究所/日本の将来推計人口 平成29年推計[pdf]
http://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2017/pp29_ReportALL.pdf

令和2年4月時点での国内総人口は1億2,593万人ですが、そのうち生産年齢人口に該当する15~64歳の人口は7,476万3千人で、全体の6割弱に留まっています。[※注3]

[※注3]総務省統計局/人口推計/令和2年【2020年】4月確定値,令和2年【2020年】9月概算値
https://www.stat.go.jp/data/jinsui/new.html

国立社会保障・人口問題研究所の将来推計によると、2029年の生産年齢人口は7,000万人を下回り、2065年には、なんと4,500万人程度まで減少すると推計されています。[※注2]
同時期の年少(0~14歳)人口も、2056年には1,000万人を下回ると推計されているため、生産年齢人口の減少は今後ますます深刻化すると言われています。
求職者の割合そのものが減少している以上、企業側が人手不足に悩むのは自明の理といえるでしょう。

 

2.企業間における人材獲得競争の激化

かつての就職活動では、就活生や転職者が自己PRし、企業側が人材を選定するのが一般的でした。
しかし、生産年齢が右肩下がりに減少している今、どの企業も座して待つだけでは優秀な人材を確保できない時代となっています。
厚生労働省では、有効求職者数に対する有効求人数の割合を示す「有効求人倍率」を毎月公表していますが、平成26年度以降、有効求人倍率が1倍を下回った年はありません。[※注4]

[※注4]厚生労働省/一般職業紹介状況【令和2年8月分】について
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000212893_00045.html

有効求人倍率は、1倍=求職者1人につき1つの求人があることを表していますので、平成26年以降、企業の人手不足が慢性化していることが伺えます。
新型コロナウイルスの影響により、令和2年に入ってからは有効求人倍率は大幅に落ち込んでいますが、令和2年8月時点でも有効求人倍率は1.04倍と1倍を上回っています。
今後の動向次第では、有効求人倍率が一時的に1倍を下回る可能性もありますが、前年度の有効求人倍率が1.5倍以上と高い水準で推移していたことを考えると、新型コロナウイルスが収束した後、再び企業間の人材獲得競争が激化することが予想されます。

 

3.介護離職の問題

少子高齢化の影響により、何らかの介護を必要とする人の割合は年々増加しています。
介護は心身ともに大きな負担がかかるため、仕事と両立するのが難しく、介護離職を余儀なくされる人も少なくありません。
総務省が発表した平成29年就業構造基本調査結果によると、介護や看護を理由に離職した人の数は9万9千人に達しています。[※注5]

[※注5]総務省/平成29年就業構造基本調査結果 要約[pdf]
https://www.stat.go.jp/data/shugyou/2017/pdf/kyouyaku.pdf

介護福祉施設の充実などにより、介護離職の総数そのものは減少していますが、施設の利用は経済的な負担が大きいため、すべての人が介護施設への入居を果たせるわけではありません。
厚生労働省発表の雇用動向調査結果によると、介護・看護によって離職した人の年代別割合は、男女ともに生産年齢人口に含まれる「55~50歳」が最多を占めています。[※注6]

[※注6]厚生労働省/平成30年雇用動向調査結果の概況[pdf]
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/19-2/dl/gaikyou.pdf

出産・育児による離職は20代前半~30代前半にピークを迎えているため、子育てが落ち着いた後、再就職するという手段も残されていますが、50歳を超えて介護離職すると、そのままリタイア生活に突入してしまうケースが目立ちます。
今後、少子高齢化がますます進行していくことを考えると、介護離職が企業の人手不足の大きな要因となる可能性は高いでしょう。

4.採用コストの負担が大きい

企業が求人募集をかける際、少なからずネックとなるのが採用コストです。
人を採用する際、企業は求人広告を出したり、人材紹介に手数料を支払ったり、求職者向けの会社案内パンフレットを印刷したりします。
さらに、採用担当者の人件費や、遠方から来た面接者の交通費・宿泊費の負担などのコストも考えると、人材募集にかかる費用は決して少なくありません。
実際、株式会社リクルートが設立した就職みらい研究所が毎年発表している「就職白書」によると、2019年度の採用にかかったコストの1人あたり平均は、新卒採用が93.6万円、中途採用は103.3万円にも上っています。[※注7]

[※注7]株式会社リクルート/就職みらい研究所/就職白書2020[pdf]
https://data.recruitcareer.co.jp/wp-content/uploads/2020/06/hakusyo2020_01-48_up-1.pdf

中小企業にとって、1人あたり約100万円の採用コストは負担が大きく、気軽に募集をかけられないのが実状です。
無料または格安価格で求人を掲載できるサービスを利用するという方法もありますが、人材獲得競争が激化している今、コストをかけずに優秀な人材を確保するのは困難と言わざるを得ません。
経済面の問題で、必要な時に必要な求人募集をかけられないことが、人手不足問題に拍車をかけています。

 

事業縮小や長時間労働の常態化を招く企業の人手不足問題

 

長期的な人手不足は、企業の経営や従業員の働き方などに少なからず影響をもたらします。
具体的にどんな影響が及ぶのか、4つのポイントにわけて解説します。

 

1.事業規模の縮小

人手が足りなくなると、1日あたりに処理できる業務量が減少するため、仕事の受注数や請負数をセーブする必要があります。
その結果、売上や業績が低下し、事業規模そのものの縮小を余儀なくされてしまいます。
場合によっては従業員の待遇を見直さなければなりませんが、待遇面への不満から離職が相次ぐと、人手不足の問題がさらに深刻化し、悪循環に陥るおそれがあります。
そもそも日本は世界の主要国に比べて労働生産性が低く、従業員1人あたりの付加価値は81,258ドルと、OECD平均より約17,000ドルも下回る結果となっています。[※注8]

[※注8]公益財団法人 日本生産性本部/労働生産性の国際比較 2019[pdf]
https://www.jpc-net.jp/research/list/pdf/comparison_2019.pdf

もともと労働生産性が低いことに加え、人手不足の問題が重なると、短期間で事業規模の縮小を迫られる可能性もあります。

 

2.事業規模の拡大・成長の停滞

企業が発展していくためには、現状維持だけで満足せず、事業規模の拡大や成長への道を模索しなければなりません。
しかし、新規事業の立ち上げや、既存事業の拡大には、いずれも優秀な人材が必要不可欠です。
人手不足の状態で無理に事業拡大を進めようとすると、新規顧客の獲得および対応が不十分になり、事業そのものが失敗に終わってしまう可能性があります。
事業拡大に失敗すると、既存事業も多大な損害を被ることになり、場合によっては企業存続の危機に陥ります。
かと言って、現状維持に甘んじていると、順調に事業拡大・成長を果たすライバル企業に差を付けられてしまうおそれがあります。
特に同業者間の競争が激化している業種では、事業拡大・成長なしで生き残るのは難しく、人手不足が致命傷になることも十分考えられます。

 

3.長時間労働の常態化

人手不足のまま、今まで通りの業務量をこなそうとすると、どうしても既存の従業員への負担が大きくなってしまいます。
どんなに頑張っても、従業員1人が所定内の労働時間にこなせる業務量には限界がありますので、足りないぶんは時間外労働でカバーするしかありません。
厚生労働省によると、我が国の就労者の総実労働時間および所定内労働時間は減少傾向にありますが、これはパートタイム労働者の比率が増加したことによるもので、一般労働者の総実労働時間は、ほぼ横ばいで推移しています。[※注9]

[※注9]厚生労働省/毎月勤労統計調査 平成29年分結果速報の解説[pdf]
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/29/29p/dl/sankou29cp.pdf

一方、所定外労働時間(残業時間)は平成21年度に一度減少に転じたものの、翌22年からは再び上昇に転じています。
一般労働者に限っては、平成29年度の残業時間は100.9時間/年の大台を突破しており、平成5年度以降、最も高い水準となっています。
長時間残業が常態化すると、従業員の心身に負担がかかり、中には体調不良を訴えるケースも出てきます。
また、厚生労働省発表の雇用動向調査によると、「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」ことを理由に前職を離職した人は男性10%、女性13.4%と、定年退職や収入面への不満に次いで多い割合となっています。[※注10]

[※注10]厚生労働省/平成30年雇用動向調査結果の概況[pdf]
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/19-2/dl/gaikyou.pdf

人手不足の影響で既存の従業員に負担をかけ過ぎると、離職が相次ぎ、負の連鎖に陥ってしまう可能性があります。
また、長時間労働によって疲労が蓄積すると、従業員1人1人のモチベーションが下がり、業務効率の低下を招く原因にもなります。

 

4.人材確保が困難になる

サラリーマンは会社に尽くして当たり前…という風潮は今は昔のことで、現代は約8割の人がプライベートを充実できる会社を選ぶ傾向にあるともいわれています。
人手不足が慢性化している職場は、先述の通り時間外労働が常態化しているため、プライベートを充実させるどころか、残業や休日出勤によって私的な時間が潰されることも少なくありません。
また、仕事選びにおいて会社の雰囲気や社内の人間関係を重視する人も多いですが、人手不足に悩んでいる企業はひとりひとりが業務に追われているため、どこか殺伐とした雰囲気になってしまいます。
求職者が就職先・転職先を選ぶのが当たり前になっている現代、労働環境が悪い職場は真っ先に候補から外れてしまう可能性が高く、新しい人材の確保が難しくなります。

 

アウトソーシングの活用から採用方法の見直しまで!企業の人手不足解消に有効な対策5選

 

さまざまなリスクや影響を抱える人手不足問題を解消するために、企業はどんな対策を取ればよいのでしょうか。
ここでは、企業の人材不足問題を解決するために有効な対策方法を5つご紹介します。

 

1.アウトソーシングをうまく活用する

少子高齢化により、生産年齢人口が年々減少している現代日本では、短期間で求める人材を確保するのは困難です。
かと言って、適当な人材を採用すると企業との間にミスマッチが生じやすく、戦力不足や早期退職に悩まされる原因となります。
そんな時は、自社の業務を外部に委託するアウトソーシングサービスを利用しましょう。
足りない人員をアウトソーシングで補えば、新たな人材の確保にじっくり時間をかけることができます。
もちろん、アウトソーシングの利用にはそれなりの費用がかかりますが、ミスマッチの人材を採用→早期退職を繰り返されることを考えると、遥かに効率的です。
自社の業務に適したアウトソーシングを利用すれば、即戦力として現場で活躍してもらえるため、人手不足を手っ取り早く解消することが可能です。

 

2.業務の効率化を促進する

従業員1人あたりの労働生産性をアップするには、業務の効率化に取り組む必要があります。
たとえば、ロボットを活用して業務の自動化を図るRPAの導入や、AI技術の採用、ペーパーレス化の推進などを行えば、ワークフローが改善され、時間と手間を大幅に節約することができます。
他にも、オフィスレイアウトを変えて使いやすい動線にする、webツールで効率よくコミュニケーションを取るなど、さまざまな工夫を取り入れて業務効率をアップすれば、同じ人員でも2倍、3倍の業務をこなせるようになります。

 

3.人員配置の見直しを行う

業務に対して適切な人員配置を行わないと、業務効率が下がる原因となります。
従業員や、統括の管理職に聞き取り調査などを行い、誰がどんな仕事に適しているか的確に把握し、適材適所の人員配置を心がけましょう。
複数の部署を抱えている企業は、それぞれの部署がこなす業務量と人材のバランスが取れているかどうか確認するのも有効な手段のひとつです。

 

4.社内制度の見直しを行う

人手不足の問題を悪化させないためには、既存従業員にとって魅力のある労働環境づくりを目指す必要があります。
たとえば従来の年功序列型の人事制度を見直したり、インセンティブ制度を導入したりすれば、従業員のモチベーションがアップし、離職を防ぐことができます。
既存従業員にとってメリットの多い職場は、求職者に対するアピールにもなりますので、優秀な人材の確保にも役立ちます。

 

5.人材採用の方法を見直す

企業側が人材を選んでいた時代では、大々的な広告や求人募集を打たなくても、就職・転職を希望する人材に事欠くことはありませんでした。
しかし、有効求人倍率が1倍以上で推移している今、企業と求職者の立場は一転し、求職者が企業を選ぶ時代となっています。
全国的に名の知られている大手企業でもない限り、求職者に対して何らかのアプローチを行わないと、人手不足を解消するのはほぼ不可能です。
かつて求人募集の方法といえば、就職情報誌や新聞への掲載、企業サイトでの求人募集などが主流でしたが、近年はより積極的な求人活動として、求める人材に直接アプローチを仕掛けるダイレクトリクルーティングや、SNSを使って求人情報を発信するソーシャルリクルーティングなどを導入する企業が増えてきています。
現代は、座して待っていれば人材がやってくるという時代ではありませんので、企業側も優秀な人材確保のために率先して動く努力が必要であることを念頭に置いておきましょう。

 

人手不足の問題は今後さらに深刻化する可能性大!今すぐ対策するのが吉

 

現代日本は、少子高齢化にともなう生産年齢人口の減少や、介護離職などの問題により、人手不足に悩む企業が増えています。
人手不足が長期化すると、事業規模の縮小や成長の停滞、従業員の離職など、新たな問題を生み出すおそれがあります。
少子高齢化や生産年齢人口の減少は、今後も進行していくことが推測されていますので、アウトソーシングの活用や業務効率化の推進など、人手不足問題を解消するための対策に取り組むことをおすすめします。

参照
WorkinHR 「人手不足の原因とは?時代に合わせた対策を行おう」
https://workin.jp/inquire/recruiting/knowhow/measures-adapted-to-the-times
カオナビ「【社会問題】人手不足とは? 現状と原因の問題点と影響をわかりやすく解説!」
https://www.kaonavi.jp/dictionary/hitode-busoku/
TechmeBiz「人材不足の影響と3つの対策方法!人手不足は企業になにをもたらすのか?」
https://biz.teachme.jp/blog/preparing-shortage-of-labor/
イリーゼ「増えている介護離職の実態と、介護と仕事を両立するためにすべきこと」
https://www.irs.jp/article/?p=524
HELP YOU「中小企業の7割が人手不足!その原因は?対策事例もご紹介」
https://help-you.me/blog/lack_of_manpower_case/
LIMO「人手不足がもたらすリスクとは?現代社会での状況を把握しよう」
https://limo.media/articles/-/6809
d’sJOURNAL「業務効率化を検討したい!企業がすぐに取り組めるアイデア18選【チェックリスト付】」
https://www.dodadsj.com/content/190913_business-efficiency/

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