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サッカー女子日本代表・籾木結花さんに学ぶ ビジネスパーソンの「デュアルキャリア」の重要性

サッカー女子日本代表・籾木結花さんに学ぶ ビジネスパーソンの「デュアルキャリア」の重要性

先日、とあるきっかけで、対談が実現した女性アスリートがいます。

彼女の名は、籾木結花(もみきゆうか)さん。
サッカー女子日本代表の背番号「10」を背負い、日本代表の中心人物として活躍する選手です。
対談直後の5月22日、突如、アメリカ女子プロサッカーリーグ(NWSL)の強豪チーム、「OL Reign」への移籍が報じられました。
スポーツ大国アメリカ、そして、世界各国から代表クラスの選手が集結する「NWSL」での経験は、必ずや大きな財産となるでしょう。

筆者との対談のなかで、一人のアスリートとして、また、一人の社会人として、競技とキャリアに対する想いや方向性を聞くことができました。

一般的に、「プロスポーツ選手」というステータスは、アスリートならば誰もが望む称号です。
そして、現役引退とともに「セカンドキャリア」をスタートさせることが、ある種「当たり前」と思われています。

しかし、籾木選手の考えは、この既存の概念をくつがえす、イマドキの考え方でした。

 

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日本におけるアスリートのキャリア形成の歴史

 

日本でのスポーツ政策推進の変遷をたどると、昭和36年に制定された「スポーツ振興法」がそのはじまりです。
そして平成12年に策定された「スポーツ振興基本計画」に至るまで、“空白の40年”と呼ばれる停滞期間が続いていました。

アスリートのキャリア形成については、「スポーツ振興基本計画」で支援策が示され、とくに、引退後の「セカンドキャリア」にフォーカスした調査研究や支援事業が実施されてきました。

しかし、平成19年、当時の文部科学大臣の私的諮問機関「スポーツ振興に関する懇談会」において、

「競技生活を送っている時期はアスリートとして、引退後は別のキャリアという『単一路線型』の捉え方ではなく、アスリートとしてのキャリアとその後のキャリアの両者を、アスリートの時期に準備・支援するという『二重路線型』の捉え方(ダブルキャリア)の必要性を示した*1」

とあり、実質、「セカンドキャリア」ではなく「デュアルキャリア」への方向転換となりました。

この考え方は、アスリートのみならず、社会人全般に共通する方向性であるといえます。
働き方改革で推進される「副業・兼業の促進」のメリットとして、
「複数の職業を持つことにより、様々なスキルや経験を得ることができ、労働者が主体的にキャリアを形成することができる*2」
と述べられており、これはデュアルキャリアに近い考え方です。

籾木選手と対談を進めるなかで、非常に印象的な発言がありました。

「私は昔から、学校生活とサッカー、というように、学業とサッカーを両立してきました。
なので、いま、仕事とサッカーを両立させていることは、私にとっては普通のことなんです」

女子サッカー界の頂点の選手であれば、「サッカー一本で生きるのが当たり前」という回答を予想していた、筆者のオールドスクールな考えが一蹴されました。
キャリアの複線化は、いまや、アスリートにとっても当たり前なのです。

さらに彼女は、
「学業や仕事、プライベートで得た経験がサッカーに活きることは、よくあります。
だから、サッカー以外で得たものを、サッカーへフィードバックするのが、私のやり方なんです」

この考えは、競技一筋のアスリートでは思いつきにくい発想です。
しかし、この柔軟な発想や視野の広さこそが、いまの籾木選手の根幹となっています。
「あらゆる経験、要素を吸収し、キャリアアップにつなげる」という発想、ぜひとも見習いたいものです。

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海外におけるアスリートキャリアの考え

 

「デュアルキャリア」を先進的に実施している諸外国では、アスリートキャリアについて、どのように捉えているのか調べてみました。

“EUでのスポーツ教育とトレーニングに関する専門グループ”によって承認・公表された、「EUガイドライン2012」という資料があります。
このガイドラインによると、
「デュアルキャリア推進国では、アスリートキャリアを長い人生における一部分・一側面・一時期の限定的なものと捉えている*3」
とあります。

つまり、人生を一本の「キャリア」と捉え、そこに「アスリートキャリア」という、もう一本のラインを追加した状態を、「デュアルキャリア」と解釈しています。

アスリートは、人生のある一定期間、「人としてのキャリア形成」と「アスリートとしてのキャリア形成」の両方を、同時に実践しているのです。

「デュアルキャリア」の理念となるキーワードを整理したものが図1です。
これらのキーワードから分かるように、アスリートの競技成績のみにフォーカスせず、人間性や生き方、自己実現、さらには幸福や健康などまでが「デュアルキャリア」の価値基準となっています。


図1:独立行政法人日本スポーツ振興センター/「デュアルキャリアに関する調査研究」報告書P21「デュアルキャリア理念のキーワード」
https://www.jpnsport.go.jp/Portals/0/sport-career/PDF/dualcareer_report_jsc_2013.pdf

諸外国における「デュアルキャリア支援」の歴史をたどると、1990年から2000年初頭にさかのぼります*4。
日本での「スポーツ振興基本計画」と同様に、当時は、引退もしくは引退間近のアスリートに対する、職業訓練や就業支援(セカンドキャリア支援)を目的としていました。

しかし、この短期間ではセカンドキャリアに対する準備が足りず、結果的に就業機会が狭まるため、「現役中からセカンドキャリアの準備を始める」
という方向へ拡大しました。
これにより「デュアルキャリア」という概念が事業化されました。

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新たなデュアルキャリアの一歩

 

モンタナ州でトレーニングキャンプに励む籾木選手に、いまの生活について聞いてみました。
驚くことに、彼女は日本での仕事を辞めることなく、渡米していたのです。
勤務先は、サッカークラブの運営や、アスリートとビジネスパーソンの交流による「学びの場」の提供をしています。
彼女は、オンラインで企画を開催するなど、日米を股に掛けてのリモートワーカーとして職務を遂行していました。

しかし、こんな心境も吐露してくれました。

「これまで、デュアルキャリアで生活してきた私ですが、今回、プロ契約なのでチームからもお金をもらいます。
『なぜサッカーをしてお金がもらえるのだろう?』
この疑問について、いま、身をもって考えています」

たしかに、これまでは、サッカーと異なる仕事で収入を得ていました。しかし、今後はサッカーからも収入を得ることになります。
「競技と仕事の複線化」を実践してきたこれまでに加え、実質的に「競技という一本のキャリア」で両方が担われることになります。

今回の渡米は、「プロ」であることの意味を考えさせられる機会にもなったようです。

図2は、男女別の引退年齢の分布図です。
男性平均30.8歳、女性平均30.5歳という調査結果ですが*5、女性の最年長は48歳、続いて45歳と、男性の最年長(40歳)と比べて、引退年齢が遅いことが分かります。
とくに女性は、出産・育児を経ての復帰も考えられるため、長い目で現役生活のプランニングをする必要があります。


図2:独立行政法人日本スポーツ振興センター/「デュアルキャリアに関する調査研究」報告書P176「引退年齢」
https://www.jpnsport.go.jp/Portals/0/sport-career/PDF/dualcareer_report_jsc_2013.pdf

これを踏まえて、10年後の籾木選手について聞いてみました。

「10年後はまだ、サッカーをしてると思います。その時は、今よりもっと色々な経験を積んだ自分でいたい。アメリカだけでなく、世界各国でプレーをして、多くのことを経験したいと思っています」

メインキャリアであるサッカーについて、そして、時代の流れとともに変化するスポーツ界について、肌で直に感じ、大いに吸収していってくれるのではないでしょうか。
そして、その貴重な経験を、日本サッカー界へフィードバックしてもらうことこそ、日本のスポーツ界の発展につながると信じています。

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キャリアビジョンによって、キャリアプランは大きく変わる

 

「スポーツとビジネスは似ている」と、例えられることがあります。
実力主義であること、結果がつきものであること、関係者の存在が重要であること、などなど、挙げればキリがありません。

24歳のトップアスリートが感じている「競技と仕事の互換性」は、広義における日本人のキャリアプランに、必要不可欠な考え方といえます。

自分のキャリアデザインは、自分自身が主体的に決めなくてはなりません。
このキャリアの先に何があるのか。
10年後、自分はどのような領域で活躍をしていたいのか。
自分自身のキャリアビジョンの再確認を、そして、キャリアプランの方向性について振り返ってみませんか。

 

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参照

[1]引用:独立行政法人日本スポーツ振興センター/「デュアルキャリアに関する調査研究」報告書P17「セカンドキャリアに特化した施策の推進」
https://www.jpnsport.go.jp/Portals/0/sport-career/PDF/dualcareer_report_jsc_2013.pdf
[2]参考:厚生労働省/副業・兼業の促進に関するガイドラインp3
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000192845.pdf
[3]引用:独立行政法人日本スポーツ振興センター/「デュアルキャリアに関する調査研究」報告書P21「デュアルキャリアの共通認識」
https://www.jpnsport.go.jp/Portals/0/sport-career/PDF/dualcareer_report_jsc_2013.pdf
[4]引用:独立行政法人日本スポーツ振興センター/「デュアルキャリアに関する調査研究」報告書P47「デュアルキャリアコンセプトの変遷」
https://www.jpnsport.go.jp/Portals/0/sport-career/PDF/dualcareer_report_jsc_2013.pdf
[5]参考:独立行政法人日本スポーツ振興センター/「デュアルキャリアに関する調査研究」報告書P176「引退年齢」
https://www.jpnsport.go.jp/Portals/0/sport-career/PDF/dualcareer_report_jsc_2013.pdf

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