2020/03/06

スティーブン・R・コヴィーが指南する 「デリゲーションはマネジメントの要」

「タイムマネジメントとは、時間を管理することである」
そう思っているとしたら、それはちょっと古い考え方かもしれません。
タイムマネジメントは、現在、新たなフェーズに入ろうとしています。

タイムマネジメントについて考える上で欠かせないのは、リーダーシップとマネジメントの違いを明確にしておくことです。
その違いをまずおさえ、次に、そもそもタイムマネジメントとはどのようなものなのか、タイムマネジメントの目的と効果について考えてみましょう。
そして、タイムマネジメントに欠かせない「デリゲーション」が組織に成果をもたらすというお話をしたいと思います。

今回は、リーダーシップ論の権威、故スティーブン・R・コヴィー博士の『7つの習慣』の中から、タイムマネジメントとデリゲーションについて読み解いていきます。

 

 リーダーシップとマネジメントの違い

 

まず、リーダーシップとマネジメントの違いをはっきりさせましょう。
コヴィー博士はこの違いについて以下のような説明をしています(p.123)。

<リーダーシップとマネジメントの違い>

  • リーダーシップはトップライン(目標)にフォーカスし、何を達成したいのか考える
  • マネジメントはボトムライン(成果)にフォーカスして、目標を達成するための手段を考える

ビジネスの世界では、市場がめまぐるしく変化し、日々、その対応を迫られます。
ヒット商品や流行したサービスがロングセラーになるとは限らず、むしろあっという間にすたれてしまうことも珍しくありません。
常に変革を求められ続ける現在のビジネスにおいて、まず必要なのは明確なビジョンと正確な目的地を指し示すリーダーシップです。
強力なリーダーシップによって市場環境の変化を機敏に捉え続け、正しい方向に経営資源を投じることがなければ、経営は立ち行きません。

その次にくるのがマネジメントです。
リーダーシップとマネジメントの仕事の違いは以下のようなものです(p.195)。

<リーダーシップとマネジメントの仕事>

  • リーダーシップの仕事は「優先すべきことは何か」を決めること
  • マネジメントの仕事は、その「優先すべき大切なこと」を日々の生活の中で優先して行えるようにすること

このことは、これからみていくタイムマネジメント上、大きな意味をもちます。

「正しい場所」にいなければ、どれほどマネジメントがうまくできても意味がありません。
でも、もしリーダーシップによって「正しい場所」が指し示され、「正しい場所」にいるのであれば、マネジメント能力の違いによって、実際に産み出されるものの質には大きな差がつくことになります( p.194)。

 

 これまでのタイムマネジメント

 

タイムマネジメントの本質は「優先順位をつけ、それを実行することだ」とコヴィー博士はいいます。
それは、タイムマネジメントのこれまでの流れからも見えてきます(pp.197-199)。

タイムマネジメントには、現在までに3つの世代がありました。
そのうち、第一世代と第二世代の特徴は以下のようなものです。

第一世代:メモやチェックリストでやるべきことを確認し、忘れないようにする
第二世代:予定表やカレンダーで、先を見据え、将来の出来事や活動の予定を立てる

現在、中心的に用いられている第三世代は、上の2つの世代の特徴に、新たな3つの特徴が加わったものです。
それは、「価値観の明確化」と「優先順位づけ」、それに「目標設定」です。
まず、自分の価値観を明確にし、それに沿って活動の重要度を測り、優先順位をつけます。
また、長期、中期、短期の目標を具体的に立て、その中で最重要と判断した目標や仕事を達成するために、毎日の具体的なスケジュールを立てるのもこの世代の特徴です。
そして、そうやって定めた目標の達成やスケジュールの消化に時間と労力をかけます。

こうした第三世代はタイムマネジメントの分野を飛躍的に進歩させました。
しかし、皮肉なことに、効率性を追及するこの方法を用いているうちに、この方法の非生産的な側面が露わになってきました。
効率性だけを追及して分刻みのスケジュールに縛られるようなタイムマネジメントでは、豊かな人間関係を構築したり、自分の自然なニーズを満たしたりする余裕がないからです。

そして、現在、第三世代までとは根本的に異なる第四世代が生まれています。

 

 第四世代のタイムマネジメント

 

第四世代がこれまでの世代と決定的に違うのは、「時間を管理する」という考え方がそもそも間違っていると考えるところです。
では、時間ではなく、何を管理しようというのでしょうか。

それは自分自身です。
第四世代はモノや時間には重点をおきません。この世代が目指すのは、人間関係を維持し強化しながら、結果を出すことです。
最も重要視するのは人間関係と結果であり、時間はあくまで2番目です(pp.198-199)。
人間関係と結果にコミットするために必要なのは、自分自身を管理することです。

コヴィー博士は、第四世代のタイムマネジメントの中心的な考え方を以下のようなマトリックスで表しています(p.200)。

【 第四世代タイムマネジメントのマトリックス 】

出所(図1とも):スティーブン・R・コヴィー著、フランクリン・コヴィー・ジャパン訳(2015)『完訳 7つの習慣』キングベアー出版 を基に筆者作成 (当マトリックス:p.200、図1:p.232)

私たちは基本的に上のマトリックスの4つの領域のどれかに時間を使っています(p.199)
活動を決定する要因は、「重要度」と「緊急度」です。

 

リーダーが優先すべき領域

 

あなたは上のマトリックスのどの領域に一番、時間をかけていますか。
また、どの領域が一番、重要だと考えますか。

コヴィー博士は、最も重要な領域は第2領域だと説いています(pp.201-204)。
なぜなら、この領域が一番いい結果をもたらすからです。

第1領域は、「危機」、「問題」の領域です。
緊急度が高く、重要度も高いため、多くの人がこの領域を強く意識し、多くの時間をこの領域のために費やします。
でも、この領域ばかりに目を向けていると、毎日、次から次へと生じる問題に対応するだけで1日が終わり、やがてこの領域に支配されるようになります。

第3領域を第1領域だと勘違いして、そこに多くの時間を費やす人もいます。
緊急ではあっても重要ではないのに、緊急だから重要なのだと思い込んで、緊急の用事のすべてに対応し、そのためにほとんどの時間を使ってしまうのです。

第3領域と第4領域だけに時間を使っている人は、無責任な生き方をしている人だとコヴィー博士はいいます。
反対に、仕事に成果をもたらす人々はこれらの領域を避けようとします。
緊急であろうがなかろうが、重要ではないからです。

マネジメントの鍵を握るのは、残る第2領域です。
この領域に時間をかけられれば、ビジョンや有益な視点が備わり、チャンスをつかむ態勢が整い、計画に基づいて重要事項を実行するための準備もできます。
また、緊急事態が発生しないように予防するため、第1領域に費やす時間が減り、さらにこの領域のための時間が確保できるようになるという好循環も生まれます。

ここで、先ほどみたリーダーシップとマネジメントの仕事を再確認してみましょう。

<リーダーシップとマネジメントの仕事>

  • リーダーシップの仕事は「優先すべきことは何か」を決めること
  • マネジメントの仕事は、その「優先すべき大切なこと」を日々の生活の中で優先して行えるようにすること

こう考えると、リーダーがするべき仕事の多くは第2領域に属すこと、リーダーが日々、この領域のために多くの時間を確保し、リーダーシップを発揮できるようにするのがマネジメントの重要な役割であることがわかります。

ところが、先ほどみた第3世代のタイムマネジメントのテクニックでは、まず「優先度の高い順にA、B、Cをつけ、さらにそのAのグループの中で1、2、3というように順番をつけていく」ことになります。
そして、朝の時点でわかっている事情や状況を前提にして何時に何をするかを決め、その日のうちに用件の大半を片付け、残りは翌日か別の機会にまわすようにします。
そうすると、長期ビジョンに関わる案件や大切な会議の準備など、本来、優先しなければならない第2領域の仕事は、第1領域の用件が立てこんでいない別の日へと、どんどん先送りされてしまいます(p.500)

では、リーダーが第2領域の仕事に多くの時間を使うことができるようにするためには、どうしたらいいのでしょうか。

 

 デリゲーションの原理はマネジメントそのもの

 

リーダーがリーダーシップを存分に発揮できるようにするためには、先にみたマトリックスの第3領域と第4領域の仕事をリーダーがしなくてすむように、そして、第1領域の仕事もできるだけ少なくてすむようにマネジメントすることが必要です。

そのために欠かせないないのが、デリゲーションです。

デリゲーションとは、仕事を人に任せることです。
「デリゲーションできる能力の有無が、マネージャーとして働くか、もしくは一スタッフとして働くかを
区別する決定的な違い」だとコヴィー博士はいいます(p.232)。
うまくデリゲーションできれば、同じ労力で、一スタッフの生産量とは比べ物にならないくらいの成果をもたらすことが可能です(図1)。

図1 デリゲーションの支点

デリゲーションとは図1のように、テコの支点をずらすことです。
マネージメントとは基本的に、このようにテコの支点をずらすことなのです。

 

 デリゲーションの極意とは

 

コヴィー博士が指南するデリゲーションの極意を紹介しましょう。
それは、以下の4点を守ることに集約されます。
それは、心構え、デリゲーションのスタイル、コンセンサス、任せる相手に合わせた調整です。

まず、心構えから(p.231・p.243・p.245)。

<デリゲーションの心構え>

  • 追求すべきは「効果性」であって「効率性ではない」

*時間と忍耐が必要だが、その効果は絶大

  • 信頼は最高のモティベーション

*ただし、信頼できるレベルまで能力を引き上げる訓練が必要

  • 効果的なマネジメントの鍵は、テクニックやツール、その他の外部要因にはない

*自分自身の能力を育てることが重要

「自分の時間を使うときは効率性を考え、人に任せるときは効果性を考えること」が大切であるとコヴィー博士はいいます。
人に任せるとかえって時間も労力もかかるからとデリゲーションを敬遠する人もいます。
でも、人に効果的に任せることができれば、自分の能力を何倍にも生かすことができます。
最初は時間がかかっても、忍耐強くデリゲーションに取り組めば、その効果は絶大です(p.231)。

次にデリゲーションのスタイルについて(pp.233-235)。

<デリゲーションのスタイル>

  • 全面的なデリゲーションを採用すること

*「使い走りのデリゲーション」の効果は限定的

「使い走りのデリゲーション」とは、「これを取ってこい、あれを取ってこい、これをやれ、あれもしろ、終わったら私を呼べ」(p.233)というやり方です。
このような「使い走りのデリゲーション」に汲々としている人も少なくありません。
でも、仕事のやり方を逐一、指定して管理・監督しようとすれば、多くの人のマネジメントはできません。それに、任せられた人も任せられた仕事に責任をもつことをしません。
したがって、「使い走りのデリゲーション」のもたらす効果は極めて限定的なのです。

デリゲーションは全面的なものにかぎるとコヴィー博士はいいます。
「全面的なデリゲーション」で重視するのは、手段ではなく結果です。
手段は任せる人に自由に選ばせ、結果に責任を持たせます。
最初は時間がかかっても、そうしているうちに、テコの支点が徐々にずれていき、組織にとって大きな力になります。

守るべき要点の3つ目は、コンセンサスです(pp.235-236)。
全面的なデリゲーションを行うときには、次の5点を明確にし、任せられる人が何を期待されているのかについてコンセンサスを形成することが必要です。

<コンセンサスが必要な事項5点>

  • 望む成果:何を達成するのか、いつまでに達成するのか

*手段ではなく、達成すべき成果について納得するまで話し合う

  • ガイドライン:守るべきルールや基準

*できるだけ少ない方がいいが、絶対に守るべき制約があったら、それも伝える

*今までの経験から失敗しそうなところやしてはいけないことを教えておく

*ガイドラインの範囲内で必要なことを自由にやらせ、任せる相手に責任をもたせ

   るために、すべきことを指示するのは控える

  • リソース:成果を産み出すために使える、人員、資金、技術、組織など
  • アカウンタビリティー:成果の評価基準、進捗の報告時期と評価を行う時期
  • 評価の結果:金銭的、精神的報酬が期待できるか、仕事が拡大するチャンスはあるか、その成果が組織全体のミッションに影響するか

最後は、任せる人に合わせた調整です(p.244)。

<任せる人に合わせた調整法>

  • 能力の高い人の場合

・より高い能力が試されるレベルの仕事を任せる

・ガイドラインを少なくする

・報告の頻度を減らしてなるべく干渉しないようにする

・数値よりも仕事の出来栄えの基準を増やす

  • 能力が未熟な人の場合

・望む結果のレベルを下げる

・ガイドラインを増やす

・リソースを多めに用意する

・進捗の報告をする機会を頻繁に設け、結果がすぐにわかるようにする

 

 

デリゲーションが組織に成果をもたらす

 

以上のような方法で適切にデリゲーションが行われれば、リーダーは取り組むべき最優先事項を優先して行うことが可能になり、組織にとって不可欠なリーダーシップを発揮することができます。
また、任された人は成果を出すために必要なことを工夫する創造力を養うこともできます。
組織全体としては、テコの支点がずれ、少ない労力でより大きな成果をあげることができるようになります。
そして、マネージャーはその取り組みから、マネジメントに必要な最も適切な指標を得ることができます(p.244)。

デリゲーションは組織にも個人にも多くの成果をもたらす、マネジメントの要なのです。

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参照
引用・参考)スティーブン・R・コヴィー著 フランクリン・コヴィー・ジャパン訳(2015)『完訳 7つの習慣』 キングベア―出版