人手不足や業務効率化へのニーズが高まる中、企業の間で注目されているのが「クラウドソーシング」の活用です。
従来の外注とは異なり、オンラインで専門スキルを持つ人材に直接業務を委託できるため、低コストかつ柔軟な対応が可能な一方、使い方を誤るとトラブルの原因にもなります。
本記事では、クラウドソーシングの基本からメリット・デメリット、成功のための具体的なポイントまで、企業の発注者視点でわかりやすく解説していきます。
目次
クラウドソーシングとは?
クラウドソーシングとは、業務をインターネット上で不特定多数の個人やフリーランスに発注する仕組みのことです。
Web上のプラットフォームを通じて、ライティングやデザイン、システム開発など多様な業務を外部の人材に依頼できます。
従来の制作会社や派遣契約と異なり、短期間・低コストで必要なスキルにアクセスできるのが特徴です。
業務の一部を切り出して柔軟に外注したい企業は、クラウドソーシングを活用することで、事業スピードを速められます。
クラウドソーシングで依頼できる仕事内容
クラウドソーシングでは、主に以下のような業務を依頼できます。
- ライティング・編集:記事作成、ブログ執筆、校正など
- デザイン:ロゴ制作、バナー作成、チラシ・名刺のデザイン
- Web制作・開発:LP制作、WordPress構築、システム開発
- 動画・音声制作:動画編集、アニメーション制作、ナレーション収録
- マーケティング:SNS運用、リサーチ、広告運用サポート
- 事務・バックオフィス:データ入力、資料作成、文字起こし
- 翻訳・通訳:英語や多言語の翻訳・ローカライズ業務
このようにクラウドソーシングは、専門性の高いクリエイティブ業務から日常的な事務作業まで、幅広い業務を柔軟に外注することが可能です。
代表的なクラウドソーシングサービス
代表的なクラウドソーシングサービスには、以下のような国内外のプラットフォームがあります。
- クラウドワークス:日本最大級のサービスで、ライティングやデザインなど幅広い案件が掲載
- ランサーズ:実績重視のマッチングが特徴。中小企業から大手まで多くの企業が利用
- ココナラ:スキルを商品として出品する形式で、個人に直接依頼が可能
- シュフティ:主婦層が多く、簡単な事務作業やデータ入力の依頼に強み
- Upwork(海外):グローバル対応の案件が豊富で、英語を使った業務やIT系に強い
各サービスでコンセプトや強みが異なるため、外注したい業務に合わせてサービスを使い分けるのが一般的です。
企業がクラウドソーシングを活用する3つのメリット
企業がクラウドソーシングを活用するメリットとして以下の3つが挙げられます。
- 低コストで外注できる
- 制作会社より融通が効きやすい
- 幅広い専門スキルにアクセスできる
それぞれ詳しく解説していきます。
メリット1.低コストで外注できる
クラウドソーシングの大きな魅力の一つが、低コストで外注できる点です。
従来の外注では、制作会社や業務委託契約を結ぶ必要があり、固定費や中間マージンが発生しがちでした。
しかしクラウドソーシングでは、直接フリーランスと契約できるため、無駄なコストを抑えることが可能です。
単発の小規模案件から依頼できるので、予算に応じて柔軟に活用できる点も企業にとって大きなメリットです。
メリット2.制作会社より融通が効きやすい
クラウドソーシングは、制作会社に比べて個別の事情に柔軟に対応してもらいやすいのがメリットです。
たとえば「納期を早めたい」「仕様を途中で変更したい」といった要望にも、フリーランスであればスピーディに対応してもらえる場合があります。
また、業務の一部分だけを切り出して依頼するなど、必要な業務量に応じて調整しやすいため、プロジェクトの進行に合わせた柔軟な体制を組むことも可能です。
メリット3.幅広い専門スキルにアクセスできる
クラウドソーシングを活用することで、企業は社内にない多様な専門スキルに簡単にアクセスできます。
たとえば、ライター、デザイナー、エンジニア、動画編集者、マーケターなど、各分野のプロフェッショナルがサービスに登録しているため、必要なスキルを持つ人材をピンポイントで探すことが可能です。
特定の期間だけ専門知識を必要とする場合でも、柔軟に人材を確保できるため、新規事業や短期プロジェクトにも適しています。
スキルの幅広さと機動力は、クラウドソーシングならではの強みです。
企業がクラウドソーシングを活用する3つのデメリット
企業がクラウドソーシングを活用するデメリットとして、以下の3つが挙げられます。
- 仕事の品質にバラツキがある
- 受注者が現れない場合がある
- 自社ノウハウが流出する恐れがある
それぞれ詳しく解説していきます。
デメリット1.仕事の品質にバラツキがある
クラウドソーシングには多くの登録者がおり、スキルや経験に差があります。そのため、仕事の品質にバラツキが生じやすい点がデメリットです。
特に初めて取引する相手の場合、納品物のクオリティが期待に届かないこともあります。
また、ポートフォリオや評価があっても、実際の業務レベルとは一致しないケースも少なくありません。
品質を安定させるには、発注時の要件定義を明確にすることや、テスト発注で相性や能力を確認することが重要です。
デメリット2.受注者が現れない場合がある
クラウドソーシングでは、案件を掲載しても必ずしも受注者が現れるとは限りません。
報酬額が相場より低かったり、専門性の高い業務だったりすると、応募が集まりにくくなる傾向があります。
また、繁忙期や年末年始などは全体的に稼働できるワーカーが少なくなることもあり、緊急対応が難しい場合もあるでしょう。
こうしたリスクを避けるには、適正な報酬設定やスケジュールの余裕を持つことが重要です。
信頼できる人材と継続的な関係を築いておくのもいいでしょう。
デメリット3.自社ノウハウが流出する恐れがある
クラウドソーシングを通じて業務を外注する際、自社のノウハウや内部情報が外部に漏れるリスクがある点も注意が必要です。
特に、マニュアルや業務フロー、企画書などを共有する場合、情報の取り扱いに対する意識や管理体制は受注者によって異なります。
秘密保持契約(NDA)を締結しても、完全にリスクをゼロにすることはできません。
重要な情報を扱う業務を依頼する際は、信頼性の高い人材を選ぶとともに、共有範囲を最小限に抑えることが求められます。
クラウドソーシングの活用事例
ここではクラウドソーシングの活用事例を見ていきましょう。
株式会社タナクロ|データ入力をクラウドソーシングで外注
ブランド古着の買取・販売・レンタル事業を運営するタナクロは、ECサイトの出品事務作業のリソース不足を解消するために、クラウドソーシングを活用しました。
出品作業は、画像作業や商品説明などで指定されたフォーマットがあるため、世界中誰がどこでやっても同じクオリティでできます。
現在は出品作業以外の作業も含めて30名以上のワーカーと契約しており、クラウドソーシングを活用することでコストが77%削減されました。
株式会社フクナガエンジニアリング|アイデアコンペに活用
金属のリサイクル事業やコンテナバッグの製造・販売を手掛けるフクナガエンジニアリングは、商品の新規展開の際にクラウドソーシングでアイデアコンペを実施しました。
結果として、1週間で91件の応募があり、社内では得られない視点のアイデアボックスとして活用しています。
今後は、社内にリソースがないデザイン分野の制作や企業データの収集・入力でクラウドソーシングを活用する予定です。
有限会社岩井製作所|海外マーケティング調査に活用
医療機器部品の組立を手掛ける岩井製作所は、海外の市場展開を画策していましたが、取引ルートがない状態だったので、クラウドソーシングを使って市場調査からスタートすることにしました。
当初はどんな人が集まるか半信半疑の気持ちで募集をかけたものの、結果として経験豊富なワーカーや海外在住、医療業界に精通する人材に出会うことができました。
自社にはないリソースを見つけられるのがクラウドソーシングの魅力です。
クラウドソーシング活用を成功させる5つのコツ
クラウドソーシング活用を成功させるコツとして以下の5つが挙げられます。
- 業務を細かく切り分けておく
- 業務マニュアルを整備する
- クラウドディレクターを育成する
- サービスを幅広く利用して人材を探す
- 定期的なフィードバックで育成する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
コツ1.業務を細かく切り分けておく
クラウドソーシングで業務を依頼する際は、あらかじめ業務内容を細かく切り分けておくことが重要です。
依頼内容が曖昧だと、受注者が何をすればよいのか判断できず、納品物の質や納期に影響が出る可能性があります。
「誰が」「何を」「どのレベルで」「いつまでに」行うかを明確にし、業務を分解・整理してから依頼することで、トラブルを防ぎやすくなります。
また、業務を切り分けることで、各業務を得意とする人材に的確に任せられるので、全体として効率が良くなります。
コツ2.業務マニュアルを整備する
クラウドソーシングで外部人材に業務を依頼する場合、業務マニュアルの整備は欠かせません。
マニュアルがあることで、依頼者と受注者の間で認識のズレが生じにくくなり、作業の品質やスピードが安定します。
特に継続的に発注する業務や複数人に依頼する場合、マニュアルがあればスムーズな引き継ぎも可能です。
作業手順だけでなく、納品形式やチェックポイントも明記しておくことで、誰が担当しても一定の成果が得られる体制を作れます。
コツ3.クラウドディレクターを育成する
クラウドソーシングを継続的に活用する企業では、外注業務を管理・調整する「クラウドディレクター」の育成が重要です。
クラウドディレクターは、業務の切り出し、マニュアル整備、進行管理、品質チェック、受注者とのやり取りなどを一手に担います。
優秀なクラウドディレクターを1人育成できれば、数十人以上の外注人材のリソースを活用できるため、生産性が大きく高まります。
クラウドソーシングを活用する際は、外注に特化したクラウドディレクターを育成するといいでしょう。
コツ4.サービスを幅広く利用して人材を探す
クラウドソーシングで最適な人材を見つけるには、1つのサービスに絞らず、複数のプラットフォームを併用するのが効果的です。
サービスごとに登録者の層や得意分野が異なるため、案件の内容や目的に応じて最適な人材を見つけやすくなります。
また、比較検討することで、報酬相場や提案内容の傾向も把握できます。
特に専門性の高い業務や即戦力が求められる案件では、複数のサービスを活用することでマッチングの精度が高まります。
コツ5.定期的なフィードバックで育成する
クラウドソーシングで継続的に質の高い成果を得るには、受注者に対して定期的なフィードバックを行い、育成する姿勢が大切です。
初回の仕事で完璧を求めるのではなく、納品物に対して具体的な評価や改善点を伝えることで、受注者の理解度やスキルが向上し、次回以降の業務がスムーズになります。
良好なコミュニケーションを続けることで信頼関係も築かれ、長期的に安心して任せられる外注パートナーへと成長していくでしょう。
まとめ
クラウドソーシングは、企業が必要なスキルを柔軟に外注できる有効な手段です。低コストで幅広い専門人材とつながれる一方、品質や情報管理には注意が必要です。
成功の鍵は、業務の切り分けやマニュアル整備、適切な人材の選定と育成にあります。
本記事で紹介したコツを実践すれば、クラウドソーシングを単なる外注ではなく、戦略的な経営資源として活用できます。
中長期的なパートナーシップ構築も視野に入れて運用して、自社のリソースを拡張しましょう。¥