『飲みニケーション』
この言葉を皆さん、ご存知でしょうか?これは「飲み会」と「コミュニケーション」を合わせて作った造語になり、お酒を飲みながら職場の人々と親睦を深めることを指しています。
一昔前では、この言葉が拡大解釈して捉えられ、上司との飲み会にこそ仕事のヒントがあると考え、積極的に会社の飲み会が行われていた会社も多い事でしょう。しかし、現在において、この飲み会についての捉え方・考え方が変化していき、会社の飲み会に関わらず、会社主催のイベント事に対する世代間ギャップも発生しているのではないでしょうか?
ともすれば、ハラスメントに該当する事案に進展してしまうリスクもあります。
今回は会社の飲み会の是非について、識学の観点で解説をしていきます。
目次
会社という場所の正しい認識とは
人はいろんな集団、コミュニティに所属して社会生活を送っています。会社もその数あるコミュニティの一つです。
皆さんにとって、会社とはどのような場所でしょうか?
・自分の成長を得られる場所。
・自分のやりがいを見つける場所。
・自分の仲間を見つける場所。
・自分にとって尊敬できる上司と出会う場所。 等
捉え方によってはいろんな場所に見えるかと存じます。
ただ、この会社というコミュニティは他のコミュニティと圧倒的に違う点があります。それは、唯一、『糧を得ることができるコミュニティ』であるという事です。
私たちは働いて成果を上げるからこそ、その対価としてお金を得ることができ、自分の生活を成り立たせることができます。
この視点から、会社は「糧を得る場所」という事実をしっかりと認識しなければいけません。そして、自分にとって必要な糧(給料)を得るためには、しっかりと会社に貢献し、成果を上げる必要があるのです。
では、会社で成果を上げるために飲み会は本当に必要なのでしょうか?
次の項では、その点について深堀していきたいと思います。
会社で成果を上げるために認識すべきこと
前段でも記載した通り、会社では成果を上げることが求められます。では、まず会社で成果を上げるために必要な事を整理していきたいと思います。
会社はいろんな分野において、社会に貢献し、社会に認められることで売上を確保しています。そこから個人の仕事まで落とし込むと、会社の構成員たる社員一人一人が行っている仕事は会社が実現したい社会への貢献に紐づく仕事であると言えます。個人は会社と同じ方向を向いて仕事する必要があり、社員は会社が決めた役割に集中して仕事をすることで、会社の成果が上がり、自分の成果を上げることにもつながっていきます。
一方、市場を見渡して考えた場合、会社は競合他社に負けないように活動しています。様々な情報を得ながら、組織を統率し、会社が出す結果の質を高めることを行っています。なので、会社には社員を統率する役割を担った上司という立場が必要であり、それぞれの立場でそれぞれの役割を果たすことで組織の成果を最大化させていくのです。
ここまで成果を上げるために必要な事を整理しました、次に、なぜ会社は飲み会を実施しようとするのかについて考えていきます。
飲み会に潜むリスクとは
飲みニケーションの説明でも記載した通り、飲み会は社員間の親睦を深めることが主たる目的です。普段の仕事だけではわからない上司の人間性に触れ、「この人の為に頑張ろう」のような気持にさせてくれる場になれば、非常に大きな効果もあると言えるでしょう。そして結果としてチームワークの向上につながれば、組織の成果を上がることにもつながっていきます。
しかし、その一方で、飲み会特有の環境、特に『お酒』の存在が、思わぬ落とし穴となる可能性もはらんでいます。 お酒の力で、普段はコントロールできている本能的な部分が解放されることもあり、これが上司の人間性に関わるものになった場合、すべてがプラスの要素だけで構成されているかというと、疑問が残ります。
また、場の空気を作る為にいろんな催し物が繰り広げられます。例えば、催し物の例として「カラオケ」や「一発芸」などを挙げられます。そのような催し物を通じて上司が部下より苦手な分野で露呈した姿や、逆に部下が上司より突出した能力を見せる場にもなりえます。こうした普段の業務とは異なる場面での『得意不得意』が、その後の組織運営において思わぬ影響を及ぼすことがあります。どのように邪魔をするかを普段の仕事のシーンで考えていきたいと思います。
一生懸命仕事をしていれば、成功もあれば失敗もあると思います。わざと仕事で失敗する人間はいないはずです。本来であれば、自分の失敗に目を向け、次は失敗しないように行動を改善すればいいですし、そのために上司は部下のできていないところを指摘・指導すると思います。この上司からの指摘・指導を受けた際に飲み会での上司のマイナス情報があると、部下の良くない思考を発生させてしまう恐れがあります。
「俺よりもお酒が弱いくせに・・・・」
「俺の方が●●は得意だけどね・・・・」
無意識のうちにこのような個人的な感情が思考に割り込んでしまうと、素直に上司からの言葉を受け取れなくなってしまうリスクが発生してしまうのです。自分の役割以外のところに集中が行ってしまっている状態と言えるので、部下のパフォーマンスはなかなか上がらず、成果を上げることにつながらなくなってしまう可能性が出てしまいます。
怖いのは、これが人の無意識下で起きる可能性があるということです。部下は一生懸命やっているのに成果が出にくい意識状態になってしまうのです。結果、糧を得るべきコミュニティで糧を得ることができず、その組織や上司に疑問を持ったりしてしまうことにまでつながりかねない状態になります。
それぞれが役割に集中できる環境にするためには
ここまでご説明した通り、飲み会に参加することが成果に必ず直結するかと言われると、100%そうだとは言い切れない状態です。しかし、人と人が集まって会社というコミュニティを構成している事を考えると、軽視することはできません。ここで改めて、人が行動に移る時にどのような意識構造で行動に移るかという事から考え、解決策を模索していきたいと思います。
人は行動する時に、まず自分の置かれている環境を認識します。雨が降れば傘をさすように、自分が認識した環境に順応しようとします。では、会社はどのような環境が望ましく、会社の環境を作ることができるのは誰なのでしょうか?
会社の糧を得ることができるコミュニティという性質上、成果を上げる事が求められます。成果を上げるために必要な事は前段でも記載しましたが、端的に表現するならば、それぞれの立場の人間が役割に集中して役割で仕事をすることです。ここから、それぞれの役割が明確に示された環境設定が必要になると言えます。
会社において、それぞれの役割を明確にできるのはその組織の目標達成に一番大きな責任を持っている人であり、社長(リーダー)ができることと言えます。では、リーダーが役割を明確にしただけで、役割に集中できるかというと、実はそれではまだ十分とは言えません。
確かに、役割が明確になることで、その役割を果たすべく、動き出す人は多いでしょう。ただ、ここで気を付けないといけないのは、人によって「出来た」の基準がブレる可能性があるという事です。
部下が役割を果たせたと思って上司に報告した際に、「出来ていない」と言われたらどのような気持ちになるでしょうか?仮にこのような状況が続いてしまった場合、その部下が役割に集中し続けることは難しいでしょう。多くの人は自分がなにをしたら「出来た」と言ってもらえるのかに視点が移ってしまい、役割に対する集中力は下がってしまう恐れがあるからです。
このことから、上司は組織の役割を明確にすると共に、評価基準まで明確にして、その基準に到達したかしていないかのシンプルな判断で評価される環境だと認識させる必要があります。部下についても、上司が設定した役割や評価基準を正しく認識し、自分が出した結果をベースに上司と会話することで、役割の達成度合いで評価される立ち位置であることを理解していくことが重要になります。
まとめ:成果を最大化する組織の原則
ここまで、いわゆる「飲みニケーション」が会社にもたらす影響について、識学の観点から考察してきました。
「飲みニケーション」は親睦を深める一方で、お酒や業務外の要素が無意識レベルで部下の思考に影響を与え、結果として成果を妨げるリスクをはらみます。
会社とは「成果を上げ、糧を得る」ための場。そのためには、社員一人ひとりが自身の役割に集中し、役割で仕事をすることが何より重要です。この「役割集中」の環境を整えるのは、リーダーの責務です。リーダーは役割に加え、評価基準も明確に提示し、部下が迷わず業務に打ち込めるようにすべきです。
そして、部下自身も、設定された役割や評価基準を正しく認識し、結果に基づいて上司と対話することが、成果を出す上で不可欠です。安易な「飲みニケーション」に頼るのではなく、「役割に集中できる環境」の構築こそが、真に成果を最大化する組織の基盤なのです。あなたの組織は、今、この基盤が整っていますか?