企業内では、複数のプロジェクトが同時並行で進められており、それぞれのプロジェクトで目標達成のためのマネジメントが実施されています。
その中で重要になってくるのが計画力です。
特に、目標達成のためのタスクを整理するアクションプランをどれだけ緻密に構築できるかが勝負所となります。
そこで本記事では、マネージャー向けにアクションプランについて解説していきます。ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
アクションプランとは?【行動計画】
アクションプランは直訳すると「行動計画」です。
目標達成までに必要な行動(タスク)がまとめられた計画のことをアクションプランと言います。
アクションプランは「中長期的」と「短期的」の2つの視点で構築されることが多いです。
短期的なアクションプランも構築することで「今やるべきこと」が具体化しやすくなります。
京セラ創業者の稲盛和夫は「楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する」という格言を残しています。
「悲観的に計画する」ということは、あらゆる事態に備えるために、可能な限り具体的に計画を策定するということです。
アクションプランを構築できれば、あらゆるタスクがどのように処理されるべきかが見えてくるので、自然と目標達成率が高まります。
目標管理制度にアクションプランが必要な理由
目標管理制度(MBO)は、ドラッカーが提唱したマネジメント手法です。
従業員自らが自分の目標を設定し、その目標達成度に合わせて人材を評価します。
そして目標管理制度を導入する際は、アクションプランが必要不可欠です。理由は以下の3つが挙げられます。
- 目標達成度を明確に算出できるから
- 目標達成のイメージがやりやすいから
- 従業員の育成に繋げやすいから
それぞれ詳しく解説していきます。
理由①:目標達成度を明確に算出できるから
目標管理制度にアクションプランを導入することで、目標達成度を明確に算出できる可能性があります。
例えば、アクションプランで定められた全てのタスクをこなすことができれば、目標達成度は「100%」です。
一方で、全てのタスクの内、7割しかこなせなかったら、目標達成度は「70%」になります。
もちろん、それぞれのタスクによって工数は異なるので、それもしっかり数値化します。
そうすることで、目標達成度を可能な限り明確にすることができるでしょう。
目標達成度を明確に算出できれば、客観的な目線で人材評価できるようになるため、評価のミスマッチを防ぎやすくなります。
理由②:目標達成のイメージがやりやすいから
目標管理制度にアクションプランを導入することで、目標達成のイメージがつきやすいメリットがあります。
中長期的な目標を設定してしまうと、目標達成までの道筋がイメージできず、普段の業務の中で迷いが生じる可能性があります。
これは「生産性」という観点で大きな損失です。
一方でアクションプランをあらかじめ策定すれば「これをやれば目標達成に近づく」というイメージを抱くことができます。
普段の仕事で迷いが生じなくなるので、パフォーマンスも向上します。
中長期的な目標を設定する際は、その道筋となるアクションプランを策定した方がいいのです。
理由③:従業員の育成に繋げやすいから
目標管理制度にアクションプランを導入することで、従業員の育成がもっとやりやすくなります。
元々、目標管理制度の最大の特徴として「従業員自らが目標を設定すること」が挙げられていました。
「自ら目標を考えることで自発的に行動するようになる」と考えられていたのです。
それであれば、目標達成までの道筋となるアクションプランも、従業員自らが策定した方が、より効果が高くなるはずです。
「目標を達成するためにはどのような行動が必要なのか」を考えられるようになると、マネージャー的な目線を身につけることにも繋がります。
アクションプランの作成方法
アクションプランの作成方法は以下の通りです。
- 長期目標を設定する
- 目標達成に必要なタスクを洗い出す
- タスクの優先順位をつける
- それぞれのタスクにリソースを割り振る
- 期限を設定する
それぞれの手順を詳しく見ていきましょう。
手順①:長期目標を設定する
まずは長期目標を設定します。
目標を設定する際は「SMARTの法則」などの目標設定フレームワークを用いて、可能な限り具体化することが重要です。
そうすることで、目標達成に必要なアクションを正確に割り出しやすくなります。
手順②:目標達成に必要なタスクを洗い出す
長期目標を設定した後は、目標達成に必要なタスクを全て洗い出します。
例えば「年度末までに新規受注数30件突破」を目標にしているのであれば、新規受注を獲得するために、どのようなタスクが必要になりそうかを洗い出していきます。
その際は「月の商談を10件」「WebサイトのPVを月1万以上」というようにタスクを数値化した方が、従業員が行動しやすくなります。
手順③:タスクの優先順位をつける
タスクを全て洗い出した後は「緊急度と重要度のマトリクス」などのフレームワークを用いて、タスクに優先順位をつけていきます。
企業の状況にもよりますが「月の商談10件」と「WebサイトのPVを月1万以上」であれば、商談の方が優先順位が高くなるでしょう。
なぜならWebサイトの流入より商談の方が、成約の確実性が高いと考えられるからです。
このように、それぞれのタスクに優先順位をつけて、目標達成の確率を高めていきます。
手順④:それぞれのタスクにリソースを割り振る
タスクに優先順位をつけたあとは、それぞれのタスクの工数を算出してから、リソースを割り振っていきます。
基本的には、優先順位の高い順にリソースを投下するのがいいでしょう。
工数を算出する際は「悲観的に計画する」を参考に、余裕を持たせるのが良さそうです。
また、人材に関しては、それぞれの従業員の適性を考慮して割り当てるのがいいでしょう。
手順⑤:期限を設定する
タスクにリソースを割り振った後は、期限を設定します。
工数の算出と同様に、ある程度の余裕を持たせて期限を設定することが重要です。
期限が設定されていれば、各従業員が「今は何をすべきか?」が明確になるため、無駄な作業を削れる可能性があります。
ただし、期限を設定する際は、従業員の意向もしっかり確認するようにしましょう。
【識学式】アクションプラン実施のポイント
ここでは、アクションプラン実施の際のポイントを識学式で解説していきます。識学が推奨するポイントは以下の5つです。
- 目標を多くしすぎない
- 5年後、10年後の長期目標を設定する
- 短期的視点と長期的視点を使い分ける
- 確率ではなく行動量を重視する
- 業務プロセスには介入しない
それぞれ詳しく解説していきます。
ポイント①:目標を多くしすぎない
アクションプランを実施する際は、目標を多くしすぎないようにしましょう。
なぜなら目標を多くしすぎると、従業員が目標を覚えきれずに、普段の仕事に迷いが生じてしまうからです。
目標数は、従業員がいつでも思い出せるように5つ以内に設定しましょう。
また、誰が見ても明らかになるように、可能な限り数値化するのもポイントです。
ポイント②:5年後、10年後の長期目標を設定する
目標を設定する際は、5年後、10年後の長期目標を設定するようにしましょう。
企業活動に限らず、あらゆる意思決定の場では、短期的な利益より長期的な利益を優先させた方が、物事が上手く回ります。
また、長期的な視点で物事を考えた方が「安心感」よりも「危機感」を強く抱くようになるため、普段の仕事で緊張感を持てるようになります。
目標を設定する際は、まず5年後、10年後の長期目標を設定し、それから逆算する形で短期目標を設定するようにしましょう。
ポイント③:短期的視点と長期的視点を使い分ける
アクションプランを人材評価で活用する際は、短期的視点と長期的視点を使い分けるようにします。
短期的視点では、KPIを評価の対象に入れて、行動量を評価します。
一方で長期的視点では、目標達成度を評価するようにします。
一般的には、目標達成度のみを評価するのがほとんどだったはずです。
しかし識学では、長期的に成長するプレイヤーは「行動量が多い従業員」だと考えています。
そのため、目標達成度だけでなく、行動量も評価することをおすすめしています。
このような評価制度であれば、迷いなく行動量を増やせる環境を構築することが可能です。
ポイント④:確率ではなく行動量を重視する
識学では行動量を重視したマネジメントを推奨しているため、確率を重視することをおすすめしません。
例えば「成約率80%」というKPIを設定するとします。
この場合、従業員は確実に成約を取れるように、あえて行動量を落として、確実な案件のみ携わるようになってしまいます。
「成約率80%で成約数が8件」と「成約率50%で成約数が15件」だったら、後者の方が高く評価されるべきなのです。
アクションプランを策定する際は、確率を用いたKPIを設定せず、基本的には行動量のみを用いたKPIを設定するようにしましょう。
そうすることで、従業員は「どのようにすれば行動量を増やせるか」というポジティブな方向で業務内容を改善するようになります。
ポイント⑤:業務プロセスには介入しない
識学では、業務プロセスに介入しないマネジメントを推奨しています。
アクションプランで言えば、KPIの設定まではマネージャーがサポートする一方で「KPIをどのように達成すべきか」の業務プロセスには一切介入しません。
業務プロセスに介入しないことで、従業員が自ら業務を効率化するようになり、かつマネージャーの工数も大幅に削減できます。
マネージャーが見るのは「KPIが達成できたかどうか」という結果だけです。従業員のアクションに介入しすぎないようにしましょう。
アクションプランの具体例
ここでは職種別でアクションプランの具体例を解説していきます。
営業の場合
営業は、他の職種に比べて数値化しやすいので、アクションプランは比較的容易に構築できます。具体例は以下の通りです。
- 長期目標:年間売上1億
- KPI:新規顧客を月に10件獲得
- タスク:テレアポを月に50件
- タスク:名刺を月に70枚獲得
人事の場合
人事は、定性的な業務が多い一方で、数値化するのが不可能な職種ではないのも事実です。
可能な限り数値化してアクションプランを策定することで、人事が本来すべき仕事に注力できる可能性があります。
人事のアクションプランの具体例は以下の通りです。
- 長期目標:中途採用10人確保
- KPI:求人サイトのエントリー数を100人増やす
- タスク:コンテンツを週に1本投稿する
- 長期目標:全従業員と面談を実施する
- KPI:月に10人面談する
- タスク:毎月第1週までにスケジュール調整を完了する
エンジニアの場合
エンジニアは、タスクの分割が非常に容易なので、アクションプランを策定しやすい職種です。
一方で、工数の見積もりが難しいので、余裕を持たせた計画が求められます。
具体例は以下の通りです。
- 長期目標:年度末にサービスをローンチ
- KPI:納期1ヶ月前にサービスを完成
- KPI:納期10ヶ月前にプロトタイプを完成
- タスク:5日間集中してシステム設計を考える
バックオフィスの場合
バックオフィスは、定性的な業務が多いため、数値化が難しい職種です。
また、売上向上に繋がりづらい職種なので、数値化を重視する際は「コスト削減」に重きを置く必要があります。
具体例は以下の通りです。
- 長期目標:年度末までにペーパーレスを実現させてコストを100万円削減する
- KPI:第2四半期までに書類を全てスキャンする
- KPI:第3四半期までにITツールを導入する
- タスク:アルバイトを雇って、月に書類全体の20%をスキャンする
- タスク:バックオフィスの効率化ツールをリサーチする
まとめ
それでは本記事をまとめていきます。
- アクションプランは目標達成までに必要な行動がまとめられた計画のこと
- 目標管理制度を実施する際はアクションプランも導入した方がいい
- アクションプランの策定の基本は「逆算」
アクションプランは、目標達成の確率上昇が見込める非常に重要な要素です。
アクションプランを策定する際は、余裕を持たせて、かつ業務プロセスに介入しすぎないようにするのがいいでしょう。