経営資源をどのように使うかは、全ての企業における悩みです。
定期的に自社の経営資源を棚卸し、適切な分配を目指しましょう。
とはいえ、経営資源の分類法は様々あり、4つなのか6つなのか、はたまた7つあるのか分かりづらいのも現状です。
そこで今回の記事では、経営資源の具体的なメリットから経営に活かす手法まで、具体的に解説します。
目次
経営資源とは
経営資源とは、企業が事業を続けていく源泉になる資産です。
従来の考え方では、ヒト、モノ、カネ、情報の4つが該当しました。
しかし、経営環境の変化により、2000年代以降は、時間、ブランド、知的財産の3つを加えた7つの経営資源の考え方が注目されています。
経営資源を持つ5つのメリット
1.独自性を高められる
経営資源によって自社の独自性を築くことができ、他社との違いを生み出せます。
顧客や取引先が独自の価値に気づいてくれると、競争優位性はより強まるでしょう。
真似のできない商品やサービスを開発し、他社との差別化をはかるには、十分な経営資源が不可欠です。
2.市場で競争力を持てる
経営資源が潤沢であれば、市場での競争力を高められます。
急激に進歩したテクノロジーや加速し続けるグローバル化によって、企業経営における危機は予測不可能となっています。
たとえ変化の激しい時代であっても、経営資源を上手く活用できれば、柔軟な舵取りができ競争力を保てます。
3.組織を強化できる
多くの経営資源があると、優秀な人材を集めやすくなります。
対外的に企業ブランディングができ、採用活動を有利に進められるからです。豊かな人的リソースは、組織として生産性を上げる原動力になります。
また多様な人材はイノベーションを生み出す土壌となり、ルーティンワークによるマンネリ化を防ぎます。
刺激的で活気のある職場には、離職率を下げる効果も期待できるでしょう。
4.顧客に還元できる
経営資源は、社内の強化に使えるだけではありません。顧客に還元して、熱烈なファンを作ることもできます。
たとえ財務状態が良好であっても、顧客をないがしろにする企業はいずれ失速します。
ゆとりある経営資源で顧客満足度を上げておけば、将来において大きな果実を得ることができるのです。
5.リスクを分散できる
経営資源を効率的に分配すると、多角的な経営が可能です。
仮にひとつの事業で失敗しても、収益性のある事業で穴埋めができます。
資源の内訳に多様性を持たせておくことで、企業の土台が安定し持続的な経営につながるでしょう。
また経営資源に余裕があるほど、新規事業へ挑戦する心理的なハードルが下がります。
さらには、長期的視野を持ってプロジェクトに取り組めるため、マーケティングの精度も上げられます。
経営資源の具体例
現代企業における経営資源とは、ヒト、モノ、カネ、情報の「伝統的な経営資源」と時間、ブランド、知的財産の「新たに注目される経営資源」に大別できます。
全ての経営資源は、企業戦略や市場規模に応じて適切に配分されなければいけません。
伝統的な4つの経営資源
1.ヒト
かつて経営の神様と言われた松下幸之助は、「企業は人なり」の言葉を残しました。
資金、システム、設備、ノウハウなどを操るのは全てヒトであり、他の経営資源と比較しても特殊性は際立っています。
優れた個人の行動特性をコンピテンシーと言いますが、ヒトの行動は上司や同僚など周りの環境に影響を受けやすいのが特徴です。
くわえて最近の若手社員は、給料の多さより自らの成長を重視する傾向にあります。
そのため、経営資源としてのヒトの価値を高めるには、職場環境、人材配置、人材育成に気を配らなければいけません。
2.モノ
経営資源としてのモノには、製品・商品だけでなく、企業が持ってる設備、備品、不動産など物理的な物が全て含まれます。
モノは直接的にお金と交換できますし、PCやOA機器などの装置は、価値を生み出すための作業効率を上げてくれます。
しかしながらモノは、量の多さが企業価値に直結するわけではありません。たとえば、在庫です。
過剰に抱えると保管費用が負担になりますし、もし廃棄になれば利益を圧迫してしまいます。
「過ぎたるは猶及ばざるが如し」の格言のとおり、企業によるモノの所有は、適量を意識しましょう。
3.カネ
企業におけるカネとは、運転資金を指します。
従業員の給与、不動産の賃貸料、製品の原材料費、広告宣伝費など、経営には支払わなければいけない金銭があります。
カネを豊富に持っているほど、意思決定における選択肢が多くなり、企業経営はスムーズにいきます。
企業の目的も、究極的には「カネを増やす」というところに行きつきます。
保有するカネによって顧客、従業員、株主に豊かさを与えられ、引いては納税という手段で社会に貢献できるからです。
なお、経営資源としてのカネは現金だけでなく、有価証券や暗号資産なども含みます。
4.情報
企業が持つ無形財産のひとつが情報です。「20世紀は石油が経済を支配したが、21世紀は情報が支配する」とも言われています。
経営学者の伊丹敬之氏も、情報を「見えざる資産」のひとつとして挙げています。
たとえば、GoogleやAmazonなど巨大IT企業が集めたビッグデータは、顧客に最適な広告を表示するためのツールとして使われています。
顧客データや統計データなどの情報が、いまや利益を生み出す打ち出の小槌となっているのです。
また、特別なスキルやノウハウを持った従業員の中にある「暗黙知」も、目に見えない資産として情報のカテゴリーに属します。
新たに注目される3つの経営資源
1.時間
企業に所属する人の時間は、価値を作り出すための経営資源です。
原材料やノウハウなどを、製品やサービスに変えるまでの時間が短縮されれば、企業はより大きな利益を得られます。
時間には限りがありますが、やり方しだいでコントロールできる資源でもあります。
たとえば、事業を一から育てるより他社から買収すると、新規開拓の手間が省け大幅な時短になるでしょう。
また、売掛金の入金時期を早めてもらえれば、資金繰りの改善につながります。
時間の活用は、変化の速い時代における企業経営の成否を占う要素と言えるでしょう。
2.ブランド
経営学者のフィリップ・コトラー氏はブランドを「個別の売り手または売り手集団の財やサービスを識別させ、競合する売り手の製品やサービスと区別するための名称、言葉、記号、シンボル、デザイン、あるいはこれらの組み合わせ」と定義しました。
ブランドもまた、目には見えない企業の経営資源です。顧客からの憧れや信用の蓄積でブランドを確立できれば、容易に真似のできない差別化ができます。
そして、いったんブランドを獲得してしまえば、新商品や新サービスの販売プロモーションにかかるコストを、永続的に削減できるのです。
ただし、ブランドは手に入れて終わりではありません。次のステップとして、ブランド構築にかけた労力を、維持・発展に注いでいくフェーズがあります。
このように、ブランド価値を資産とする考え方は「ブランド・エクイティ」と言います。
3.知的財産
企業が有する独自の知識や方法論は、知的財産にあたる経営資源です。
情報と似た無形資産ではありますが、模倣がとても難しい点に違いがあります。
知的財産を事業に利用する方法が「知的財産経営」です。
とくに著作権や特許権など法律で守られた技術や創作物は、他社の介入を許さない競争優位性を持ちます。
また、広義の知的財産として、顧客や関係者とのネットワークを含める場合もあります。
経営資源の活かし方
経営資源を持っているだけだと「宝の持ち腐れ」になってしまいます。
自社の戦略や課題を見据えたうえで、有効に活かすための優先順位を決めましょう。
1.人材育成に力を入れる
「ヒト、モノ、カネ、、、」経営資源を語るときは、必ずと言っていいほどヒトが最初にきます。
経営資源におけるヒトの重要度はそれほど高く、その他の資源を活かすも殺すも全てはヒトしだいと言えます。
モノ、カネ、情報を操るのはヒトですし、時間を使ったりブランドや知的財産を築いたりするのもヒトです。
上手く育てると大きく成長してくれるのがヒトの特色であり、人材育成こそが現有の経営資源を活かす効果的な手段なのです。
人材育成によって企業を強くするためには、外部研修の機会を設けたり、資格取得を奨励したりする仕組みづくりが効果的です。
また、従業員が心身ともに健全でいられるよう、健康診断やストレスチェックをおこなうと良いでしょう。
定期的な面談などでは、悩みを打ち明けやすい環境作りも大切です。
2.業務の可視化を目指す
可視化とは、企業内の活動の流れを言語や図式によって見えるようにする行為です。
組織や業務を可視化すると「ムリ、ムダ、ムラ」が省かれ、経営資源を効率的に使えます。
実際に自社の活動を俯瞰してみれば、意外と不必要な工程や重複する作業が見つかるものです。
業務プロセス全体のなかで、ブラックボックスになっている所はないか探してみましょう。
可視化して企業活動の全体像が分かれば、必要な業務にしかるべき量の経営資源を投下できます。
また属人化が進み過ぎて引継ぎの難しかった業務も、言語化や図式化でマニュアルに落とし込んであれば、スムーズに後任者へと移行できるでしょう。
3.選択と集中の意識を持つ
戦略的に重要と位置づける事業に経営資源を集中させると、業績や経営効率がアップします。
1980年代の日本企業では、終身雇用が一般的だったがゆえに、余剰人員の受け皿として事業の多角化が加速しました。
しかし、シナジーの期待できない闇雲な多角化では、限りある経営資源を浪費しかねません。
自社が強みを持つ分野と、相乗効果が見込める分野だけを選択し、集中的に経営資源を投入しましょう。
不得意な分野で消耗戦に巻き込まれるくらいなら、いっそのこと事業の売却や他事業との統合も検討すべきです。
まとめ
1970年代までの日本企業では、経営資源と言えば「ヒト、モノ、カネ」の3つでした。
やがて、1980年代に入り産業の中心が製造業からサービス業に移ると、4つ目の経営資源として「情報」が加えられます。
「時間、ブランド、知的財産」が脚光を浴び全部で7つになったのは、事業のIT化が進んだ2000年代以降です。
いずれにせよ、経営資源はただ持ってるだけでは何の価値も創出できません。
各要素のメリットと活かし方を知り、自社の成長につなげてこそ、真に意味のある資源となるのです。