「オペレーション」という言葉は、ビジネスの世界で頻繁に耳にします。
ただ、オペレーションの意味を本当に理解している人は少ないかもしれません。
今回は、オペレーションの基本的な定義や、オペレーションマネジメントを通じて企業運営に活かす方法について解説します。
オペレーションの効率化がもたらす生産性向上などのメリットや、リスク管理に役立てる方法など詳しくご紹介しますので、ぜひ組織運営の参考にしてください。
目次
オペレーションとは?
はじめに「オペレーション」の定義や、「コントロールやハンドリングとの違い」から見ていきましょう。
効率的なオペレーションによる組織運営は、コスト削減や生産性向上・顧客満足度の向上など、企業の成長に直接的な効果をもたらします。
企業におけるオペレーションとは「組織の運営や管理方法のこと」
オペレーションは、日々の業務における運営や管理方法のことを指します。
具体的なオペレーションには、次のようなものがあります。
- タスクの効率的な管理
- 生産性向上のための仕組み
- 品質維持管理
組織運営では、「オペレーションが悪い」や「優れたオペレーション」などといった言葉をよく使います。
優れたオペレーションとは、「仕事の進め方が優れている状態」「しっかり管理ができている状態」と理解するといいでしょう。
オペレーションとよく似た言葉|コントロールやハンドリングとの違い
オペレーションは「コントロール」や「ハンドリング」と混同されがちです。
しかし、これらの言葉は若干ニュアンスが違います。
コントロールやハンドリングは、一部の限定された作業などに関して使われることが多く、一方でオペレーションは、業務の全体的な運営や管理方法を指します。
【オペレーションとコントロールやハンドリングとの違い】
オペレーション | コントロールやハンドリング | |
定義 | 企業や組織における日常的な業務プロセス | 特定の業務やシステムを管理したり調整したりする行為 |
適用範囲 | 企業の広範囲な活動や総合的な業務運営 | 個別のプロセスやシステムの管理運営 |
目的 | 企業全体の効率的な業務運営 | 特定業務の品質維持やリスクヘッジなど |
代表的な例 | 製造管理、物流管理、顧客管理など(全体業務) | データ入力、品質管理、財務管理など(特定の業務) |
オペレーションとコントロールやハンドリングは、適用範囲や目的が違います。
ただし「オペレーション向上により品質管理を徹底する」など、オペレーションが一部の特定された業務で使われることも多いです。
それぞれの言葉は、企業規模や管理する業務の範囲で使い分けるといいでしょう。
オペレーションが重視される業界と活用方法
オペレーションの重要性は、業界によっても異なります。
特に製造業や飲食業・物流業などでは、オペレーションのやり方次第で品質管理や生産性に大きな違いが出ます。
それぞれみていきましょう。
製造業「品質向上と生産性向上に活用」
製造業におけるオペレーションの最適化は「品質向上の鍵」ともいえます。
効率的なオペレーション管理により、製品品質を維持できますし、生産コストの削減にもつなげられるでしょう。
また、品質管理の強化は顧客満足度の向上に直結するため、LTV(※ライフタイムバリュー顧客がもたらす障害価値」の向上や企業業績に大きく寄与します。
中小機構の運営サイトにある「オペレーションに関する成功事例」も見ていきましょう。
【中小機構運営「よろず支援拠点公式サイト」よりオペレーションに関する成功事例】
奈良県にある紙パッケージ製造会社である「オカハシ株式会社」は、工場の生産能力不足で経営資源のロスが増加し、収益低下に悩んでいました。経営者や幹部が会社全体のオペレーション改善に取り組み、業務効率を上げるための固定シフト勤務の導入や全社的なSS活動などを推進。外注に頼っていた製造業務を内製化にシフトし、コスト削減に取り組んだ結果、生産量はオペレーション改善前の120%と達成しました。 |
参考:よろず支援拠点公式サイト「ローコストオペレーションの実現で収益性改善
飲食業「オペレーションの効率化はサービス向上や利益に直結」
飲食業におけるオペレーション管理は、顧客満足度の向上と利益の向上に直接的な影響を与えます。
迅速かつ効率的なサービス提供は、顧客体験を向上させ、リピート率も増加するでしょう。
また、徹底したオペレーション管理は、コスト削減やリソースの最適化をもたらします。
特に、ピークタイムの顧客対応の効率化や在庫管理の最適化は、飲食業におけるオペレーションの重要なポイントです。
下記は、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が運営するサイト「DX SQUARE」に掲載されている、丸亀製麺などを運営する「株式会社トリドールホールディングス」のオペレーション改善に関する成功事例です。
【株式会社トリドールホールディングス」の成功事例】
トリドールでは、オペレーション改善のためにDX推進を加速させています。具体的には、オペレーションシステムに使うSaaS導入率や一部の業務をアウトソーシングするBPO導入率などを可視化し、誰が見てもDX化の状況がわかるようにしました。バックオフィス業務のBPO(business process outsourcing)については100%外注化を目指し効率化。その結果、同社の売上高成長率は10年平均で10%を超える進捗となりました。 |
物流業「効率的なオペレーションによる配送効率向上と安全確保」
物流業における効率的なオペレーションは、配送速度と安全性の向上に不可欠です。
最適化されたオペレーションは、配送プロセスの効率化を実現し、顧客満足度を高めると同時に運送中のリスク低減につながります。
特に、配送ルートの最適化や効率的な配車管理は、物流業におけるオペレーションの効率化に大きな影響を与えます。
これらの施策により、配送時間の短縮やコスト削減も可能になるでしょう。
国土交通省の資料によると、オペレーションの改善により、収益を向上させた物流業界の事例が多数報告されています。
【物流業界における三菱商事の成功事例】
三菱商事は物流業界全体のキャパシティ不足を改善するため「WareX」と呼ばれるオペレーションシステムを導入。空き倉庫がない拠点と、スペースが余っている拠点の情報を一元管理することで、業界全体の効率向上に寄与しています。 |
職場でオペレーションを活用する3つのポイント
企業における成功事例からも分かるように、実業務が行われる現場におけるオペレーションの効率化は、企業全体の生産性向上に直結します。
効率化を追求したオペレーションマネジメントに取り組めば、企業戦略の遂行やリスク管理にも寄与できるでしょう。
職場でオペレーションを活用する、3つのポイントについても考察していきます。
職場でオペレーションを活用する3つのポイント
- オペレーションの効率化による生産性向上
- オペレーションマネジメントによる企業戦略の遂行
- オペレーションを活用したリスク管理
オペレーションの効率化による生産性向上
オペレーションの効率化は、生産性の大幅な向上に直結します。
効率化のためのオペレーションを追求していけば、無駄なプロセスを排除でき、従業員のリソースも最適化できるでしょう。
オペレーションの効率化による生産性向上を実現するには、下記のような取り組みが効果的です。
- タスクの自動化
- プロセスの簡素化
- 適正な人材配置(タレントマネジメント)
企業の競争力を高めるには生産性の向上は欠かせません。
オペレーションマネジメントにより、コスト削減や納期の短縮・顧客満足度の向上に注力すれば、生産性は上がり、結果として企業の競争力もアップします。
生産性向上に関する具体的な取り組みや、生産性が向上しない場合の対策については、識学総研「生産性向上を実現する方法とは?必要性や向上しない企業の共通点を解説」も参考にしてください。
オペレーションマネジメントによる企業戦略の遂行
オペレーションマネジメントは、企業の戦略的目標達成に不可欠です。
効果的なオペレーションマネジメントにより、企業は戦略的な計画を実行し、市場での競争優位を確立できます。
リソースの効率的な配分やプロセスの最適化、品質管理の強化などは重要なオペレーションの要素といえるでしょう。
オペレーションを活用したリスク管理
オペレーションを通じたリスク管理は、企業の安定性や持続可能性を保つうえで重要です。
オペレーションを活用したリスク管理には、次のような要素が含まれます。
- リスク評価のためのデータ分析
- 予防措置の実施
- 緊急時の対応計画の策定
一方「オペレーショナルリスク」、つまりオペレーションが煩雑になることで、内部体制の不備やシステム障害などのリスクが発生する点にも注意が必要です。
例えば、日本銀行の資料では、オペレーション管理の甘さによる金融機関のリスクについて注意喚起されています。
自社のオペレーションに不備がないか、定期的に見直し改善を図ることで、リスクは最小限に抑えられるでしょう。
参考:日本銀行金融機構局資料「オペレーショナルリスク管理態勢の整備」
オペレーション改善の方法
オペレーションマネジメントで生産性向上と組織の成長を続けていくには、日々のオペレーション改善が欠かせません。
組織のオペレーション分析など、状況に応じて次のように改善していくといいでしょう。
【オペレーション改善の方法】
- プロセスマッピングによる現状把握
- オペレーション上の課題と対策の整理
- 定期的なレビュー
プロセスマッピングで現状を把握する
プロセスマッピングは、オペレーションの現状を明確に理解するために有効です。
具体的には、組織内の業務プロセスを視覚的に整理し、表現していく手法のことです。
プロセスマッピングにより、業務の流れや関連するタスク、リソースの使用状況などが可視化され、改善点の特定が容易になります。
プロセスマッピングを活用すれば、無駄や非効率なプロセスが明らかになりますし、効率化のための具体的な改善策も考えやすくなるでしょう。
オペレーション上の課題と対策を整理する
プロセスマッピングで課題が整理できたら、次に具体的なオペレーション上の課題と対策を整理するようにしましょう。
課題を特定する場合は、従業員のフィードバックやパフォーマンスデータ、顧客調査の内容など、多方面の情報を集約するのが理想です。
課題が整理できたあとは、以下のような改善対策を検討するといいでしょう。
- プロセスを最適化する……プロセスマッピングを使用して現在の業務フローを分析。非効率なステップやボトルネックを排除する
- ITツールなどの活用……DX化できるITツールを活用。手作業によるエラーを減らし効率化を図る
- オペレーターのトレーニング……ツールを運用するオペレーターをトレーニングする
- 組織内コミュニケーションによる更なる改善……組織内のコミュニケーションと情報共有を強化し、常に問題点がないか提案と改善を続ける
定期的にレビューする
課題抽出と対策を講じたあとは、定期的にレビューできる仕組みも作っておきましょう。
一度決めたオペレーションは、内外の環境や市場の変化に応じて臨機応変に変えていく必要があります。
レビューのための定期的なミーティング予定を事前に決めたり、従業員からのフィードバックを集める仕組みを確立したりする方法が効果的です。
オペレーションマネジメントの概要と活用方法
オペレーションマネジメントは、企業の戦略的な目標達成に不可欠な要素です。
企業の目標達成のために必要な、オペレーションマネジメントの概要と活用方法についても詳しく触れていきます。
オペレーションマネジメントの基本的手法
オペレーションマネジメントには、プロセスの最適化や品質管理、リソースの効率的な配分などが含まれます。
一方、画一的なオペレーションに加えて、次のような要素も重要になってきます。
- 変化に応じた適応性……変化の激しい市場環境に柔軟に対応する仕組み。予期せぬトラブルにも瞬時に対応できる体制を整えておく
- 部署間の連携強化……部署間の連携を強化し、オペレーション改善に向けて全社的に取り組む
- 経営層や幹部陣の覚悟と方針の継続……オペレーション改善や従業員のトレーニングなど、一度決めた内容をやりぬく経営層の覚悟も重要
オペレーションマネジメントの詳しい手法については、識学総研「オペレーションマネジメントとは?現場を円滑に回す方法を徹底解説」も参考にしてください。
オペレーションマネジメントを企業戦略に活かす方法
オペレーションマネジメントを企業戦略に活かすには、次のような取り組みが有効です。
- DX推進……ITツールを使ったDX推進により、オペレーション改善を図る。業務効率化により、従業員のリソースを重要なセクションに振り分けられるようになる
- 顧客中心のオペレーション……ロイヤリティ向上のために顧客の声を活かしたオペレーションを継続する。アンケートなどの情報収集を欠かさず、顧客目線でのオペレーションができているか改善を続ける
- 改善アイデアの収集……オペレーション改善のアイデアをボトムアップで収集する。現場の意見を参考にすると従業員の主体性が高まり、より効率の高いオペレーションができる
オペレーションマネジメントを戦略的に活用すれば、企業は変化する市場環境に迅速に対応でき、競争上の優位性も確保できます。
オペレーションマネジメントのデメリット
オペレーションマネジメントの導入には多くの利点がありますが、一方で潜在的なリスクやデメリットも存在します。
オペレーションマネジメントの、おもなデメリットは次の3つです。
- 新しいシステムやプロセスの導入に伴う初期投資の費用がかかる
- 従業員の抵抗感
- トレーニングの遅れなどによる計画遅延
オペレーションマネジメントには、リスクを事前に想定した管理手腕も必要になってくるでしょう。
まとめ
オペレーションは、企業の成功において重要な役割を果たします。
効率的なオペレーション管理は、企業の競争力を高めますが、一方で中長期的な管理が必要になるなど注意すべき点も多々あります。
まずは、いまのオペレーションを俯瞰的に見て問題点を整理し、緊急性が高く簡単にできる点から改善していくといいでしょう。