社員の長所や短所を把握するための分析方法はいくつもありますが、MBTI診断もその一つとして注目を集めています。
企業にとって社員の長所や短所を把握することは、人材を適材適所に配置するために重要です。人材と業務がマッチすれば、組織としての力を向上できる可能性があります。
本記事では、MBTI診断とはなにか、診断の方法やタイプ、診断結果などを紹介します。
目次
MBTI診断とはアメリカ発のタイプ診断テスト
MBTI診断とは、アメリカで生まれたタイプ診断テストで、マイヤーズ=ブリックス・タイプ診断(Myers Briggs Type Indicator)の略です。診断テストは質問の結果によって16のタイプに分類されるため、日本では16診断という名前でも知られています。
MBTI診断は、就職活動の際の自己分析や就職後のキャリア形成を考える際、自分にあった人間関係を形成するときなどに効果的とされています。
MBTI診断のやり方
MBTI診断は、イギリスのNERIS Analytics社が運営するサイトで受けることが可能です。(※)
MBI診断を受ける際は次の点に気をつけましょう。
- 回答時間
- 回答は中立をなるべく避ける
※参考:16Personalities. 「無料性格診断テスト」
MBTI診断は93問に12分以内に回答
MBTI診断では、質問が93問用意されています。この問題数に対して、12分以内に回答しなければなりません。そのため、1問1問に時間をかけずに回答していきましょう。
12分以内に全問に回答するのであれば、1問にかける時間の目安は約7秒です。
中立を避けて正直に回答する
MBTI診断の回答欄は、同意するから同意しないまで、7段階に分かれています。同意する・同意しないの中立に位置する回答も選択可能ですが、なるべく中立の回答は避けましょう。
MBTI診断に限らず、アンケートやタイプ診断では回答結果を予想して無難な回答を選択してしまうことがあります。自分のタイプを正しく知るために正直な回答を心掛けることで、より正確な診断結果につながります。
MBTI診断の基礎になる8つのタイプ
MBTI診断は16のタイプに分類されます。この16のタイプの基礎となるのが次の8つです。
タイプ | 特徴 |
内向的(I) | ● 静かで思慮深い
● 自己を見つめて理論的に思考する |
外交的(E) | ● 社交的で初対面の人にも打ち解けられる
● 相手の気持ちを汲み取るのがうまい |
感覚的(S) | ● 事実や経験を重要視する
● 経験や感覚で判断する |
直観的(N) | ● 想像力に長けている
● 直感を信じる |
思考型(T) | ● 客観的な事実を重要視して合理的に考える
● 他人の意見に左右されにくい |
感情型(F) | ● 主観的な感情を重視して判断する
● 人の気持ちを大切にする |
判断型(J) | ● 計画性や決断力に長けている
● 仕事をすばやく完璧にこなす |
知覚型(P) | ● はっきりとさせずに可能性の余地を残す
● 理解を深めたうえで判断する |
MBTI診断では上記の8つのタイプを組み合わせて、より具体的なタイプを導き出します。
ここではMBTI診断の基礎となる8つのタイプについて解説します。
内向的(I)
内向的なタイプの人は、何かを考える際に自分を基準とする傾向にあるのが特徴です。さまざまな概念や事象についてじっくりと考え、独創的なアイデアを思いつきます。
反面、考え抜いた結果に自信を持っているため、他人の意見を受け入れづらい傾向にあります。
外交的(E)
内向的に対して外交的な人は、社交的な傾向にあるのが特徴です。考えの基準が他人や環境であるため、外部との接触で刺激を得て自らの考えに活かします。
しかし、他人や環境の影響を受けやすく傷つきやすい傾向にあります。
感覚的(S)
感覚的な人は現実主義的な側面があり、重視するのはこれまでの経験や事実です。例えば、りんごという単語に対して、感覚的な人は味や見た目といった、これまで自分の経験で得た情報をイメージするでしょう。
直観的(N)
直感的な人は、想像力が豊かな点が特徴です。例えば、りんごという単語に対して、ウィリアムテル、毒リンゴなど、独創的なイメージを思い浮かべるでしょう。直感的な人は独創的なイメージを思い付く一方で、継続力に欠けるとされています。
論理型(T)
論理型の人は合理的に判断や意思決定を下す傾向にあり、物事をじっくりと分析するタイプです。強い意思を持っているため、頑固な印象を与えてしまうかもしれません。
<h3>感情型(F)
感情型の人は論理型の人と異なり、客観性よりも主観性を重視する傾向にあります。人間関係や他人の気持ちを大切に考えていますが、そのために人間関係に影響されて的確な判断を下せないかもしれません。
判断型(J)
判断型の人はスピーディに判断を下し、そのとおりに実行しようとするのが特徴です。仕事に限らずプライベートであっても正しいやり方があると考えて、計画を組み立てます。判断型の人はすぐに決断を下しますが、その決断を変更するのは得意ではありません。
知覚型(P)
知覚型の人は、物事への理解を自分のペースで深めていく傾向にあります。余裕を持った予定を組むため、急な仕事にも臨機応変に対応可能です。しかし、意思決定までに時間がかかるため、結論を先延ばしにしてしまうこともあります。
MBTI診断で分かる16のタイプ
MBTI診断は、上述の8つのタイプを次の条件で組み合わせて16のタイプを提示します。
- エネルギーのベクトル:内向的(I)か外交的(E)
- 事柄の捉え方:感覚型(S)か直感型(N)
- 判断の下し方:論理型(T)か感情型(F)
- 外部との接し方:判断型(J)か知覚型(P)
16のタイプは次のとおりです。
- 建築家タイプ(INTJ)
- 論理学者タイプ(INTP)
- 指揮官タイプ(ENTJ)
- 討論者タイプ(ENTP)
- 提唱者タイプ(INFJ)
- 仲介者タイプ(INFP)
- 主人公タイプ(ENFJ)
- 運動家タイプ(ENFP)
- 管理者タイプ(ISTJ)
- 擁護者タイプ(ISFJ)
- 幹部タイプ(ESTJ)
- 領事タイプ(ESFJ)
- 巨匠タイプ(ISTP)
- 冒険家タイプ(ISFP)
- 起業家タイプ(ESTP)
- エンターテイナータイプ(ESFP)
建築家タイプ(INTJ)のように、タイプの後ろに付くアルファベットは、8つのタイプの略です。例えば、建築家タイプ(INTJ)であれば、I(内向的)・N(直観的)・T(論理型)・J(判断型)となります。
建築家タイプ(INTJ)
建築家タイプは想像力に長けているだけでなく、優れた洞察力や分析力、戦略の立案能力を兼ね備えているのが特徴です。このような能力をもとに、自分が興味をもったことを独学で学んでいく特性があります。
建築家タイプは合理性と成功を重視する傾向にあるため、社交辞令や世間話に対して興味を持たないかもしれません。その結果、他の人からすると付き合いにくく感じられてしまう恐れがあります。
建築家タイプは慎重で内向的な傾向にあるため、一人で黙々と仕事をするのが適しているでしょう。
論理学者タイプ(INTP)
論理学者タイプは知的好奇心が強く革新的なアイデアを思いつくのが特徴です。分析的かつ抽象的な思考を得意としています。しかし、自分の考えを発表するまでに何度も考えて直してしまうかもしれません。
論理学者タイプは自主性が高い一方、人と接するのは苦手な傾向にあります。そのため、接客などではなく一人で率先して動く必要がある仕事が適しているでしょう。
指揮官タイプ(ENTJ)
指揮官タイプは豊かな想像力と強い意志を持つのが特徴です。パワフルな推進力で、チームを目標に引っ張っていくタイプです。自分の意見に自信を持っている反面、納得できない意見に対しては傲慢な態度を取ってしまうかもしれません。
指揮官タイプは単調かつ誰かのアシスタントのような仕事は避け、創造的で主体的に取り組む仕事で能力を発揮するでしょう。
討論者タイプ(ENTP)
討論者タイプは頭の回転が早く大胆なため、現状に異議を唱えて改善案を提唱する力を備えています。
また、ブレインストーミングを好み、野心的な考えを生み出す傾向にあるようです。一方討論を好むために、相手が気持ちをないがしろにされていると感じてしまうかもしれません。
討論者タイプは野心的な考えを生み出すという特徴から、新たなプロジェクトのリーダーなどで能力を発揮する可能性があります。
提唱者タイプ(INFJ)
提唱者タイプは周囲との関りを重要視して、人が困っていること・必要としていることを見抜く力に長けています。このように人の気持ちを見抜く力が備わっているのは、共感力に優れているからです。
提唱者タイプは利益だけを追及する環境、大人数の騒がしい環境では力を発揮しづらい反面、少人数のチームであれば縁の下の力持ちの役割を果たしてくれます。
仲介者タイプ(INFP)
仲介者タイプは親切で、自分の利益よりも他社の利益を優先する利他主義な考えを持っています。提唱者タイプと同様、共感力に優れているため、相手が何を考えているのかを見抜けるのも特徴です。
仲介者タイプはクリエイティブな業務に向いていますが、大人数のチームではなく、一人もしくは少人数のチームで取り組める環境が良いでしょう。
主人公タイプ(ENFJ)
主人公タイプは周囲をサポート、励ましながら導く、典型的なリーダーとしての素質を備えています。責任感、忠誠心が強く、自分が大変なときであっても周囲に手を差し伸べます。
主人公タイプは反復の作業や周囲と関わらない仕事には不向きなため、周囲と関りながらサポートするようなポジションが適しているでしょう。
運動家タイプ(ENFP)
運動家タイプは情熱的かつ社交的で、独創的なアイデアを生み出します。社交的なため、人とのコミュニケーションを楽しむ傾向にあります。反面、細かい作業を得意としていない、熱意が冷めてしまうと興味を失ってしまうといった傾向もあるようです。
運動家タイプの情熱は周囲にも影響を及ぼすため、リーダーや指導者としての素質があります。
管理者タイプ(ISTJ)
管理者タイプは事実に基づいて思考を巡らせます。何事にも努力を持って取り組み、計画性もあるため、周囲から頼りにされる存在です。事実に基づいて仕事を進めるため、創造的な業務には不向きです。
管理者タイプは上下関係がはっきりした職場かつ、はっきりとしたルールがある職場で能力を発揮してくれるでしょう。
擁護者タイプ(ISFJ)
擁護者タイプは周囲に献身的に接するタイプです。倫理観が強く、習慣を大切にする傾向にあります。面倒見が良いため、職場などでは部下や後輩に対して手を差し伸べてくれるでしょう。
擁護者タイプは控え目なため、大人数の前で意見を述べる、自分の意見を押し通すことは苦手な傾向にあります。擁護者タイプは手順がはっきりとした作業で力を発揮します。
幹部タイプ(ESTJ)
幹部タイプは人や物を管理する能力に長けているタイプです。現実的な考えに基づいてチームをまとめる力を備えています。幹部タイプはチームをまとめる力には長けていますが、柔軟な考えが求められる場面では力を発揮できないかもしれません。
幹部タイプはリーダーシップやマネジメント力が必要なポジションに配属されると、高いパフォーマンスが期待できます。
領事タイプ(ESFJ)
領事タイプは礼儀と思いやりを大切にする、社交的な傾向にあります。領事タイプは現実的でプロセスや構造を重要視するため、急ぎの対応が求められる環境には適していません。
領事タイプは忠誠心や連帯感も備わっているため、チームを支えるポジションで能力を発揮してくれるでしょう。
巨匠タイプ(ISTP)
巨匠タイプは大胆で実践的な考えを思いつく傾向にあります。強い好奇心と観察力に基づいて、物事の仕組みを理解して問題の解決を図ろうとします。一方で、巨匠タイプはストレスを感じやすい傾向にあるため、大勢の人と関わるような業務には不向きかもしれません。
好奇心と観察力が高い巨匠タイプは実践的なスキルを得られる業務が適しているでしょう。
冒険家タイプ(ISFP)
冒険家タイプは柔軟性に長けていて、常に自ら進んで物事を探索して経験しようとする傾向にあります。人との調和を良しとするため、対立を避けて問題を解決する平和主義者でもあります。
冒険家タイプは単調なデスクワークにストレスを感じやすいです。反対に、クリエイティブな発想が求められるポジションであれば能力を発揮してくれるでしょう。
起業家タイプ(ESTP)
起業家タイプはエネルギッシュで深い洞察力を持っています。この洞察力によってデータやパターンを観察・分析することで、改善策を導き出します。
周囲に対して強い影響力を及ぼすほどのカリスマ性を発揮するため、チームを引っ張るようなポジションで能力を発揮するでしょう。反面、単調で刺激の少ない業務は不向きかもしれません。
エンターテイナータイプ(ESFP)
エンターテイナータイプは社交的で周囲を楽しませることが好きなタイプです。周囲の雰囲気を敏感に感じとり、状況に合わせて対応できます。仕事に対しては、現実的な側面があります。
エンターテイナータイプは一人で淡々とこなすような仕事は不向きですが、周囲と関りながら進める仕事で真価を発揮してくれるでしょう。
MBTI診断を受けるメリット
MBTI診断を受けることで次のようなメリットにつながります。
- 客観的に自分を見つめ直せる
- 長所と短所が分かる
- チームマネジメントの参考になる
客観的に自分を見つめ直せる
MBTI診断は回答結果に基づいて16のタイプに分類されます。自己分析をするとなると、主観的になってしまうことがありますが、MBTI診断で出た結果は客観的なデータです。そのため、冷静に客観的に自分を見つめ直すきっかけにもなるでしょう。
長所と短所が分かる
MBTI診断で提示される16のタイプは、すべて長所と短所があります。そのため、自分の長所と短所を把握するのに役立つでしょう。
例えば、指揮官タイプは周囲を引っ張っていく力に長けていますが、納得しない意見を認めない傾向にあります。そのため、周囲を引っ張る力は引き続き伸ばしていき、異なる意見も認めるために、気遣いや譲歩する姿勢も学んで行く必要があるでしょう。
このように長所と短所が分かることで、引き続き伸ばしいくべきこと、補うべきことが明確になります。
チームマネジメントの参考になる
MBTI診断はチームマネジメントの参考としても活用可能です。診断結果を参考に、16のタイプに応じた業務やポジションに社員を配属することで、適材適所のマネジメントが可能になります。社員それぞれが長所を活かすことで、業務の効率化が期待できるでしょう。
社員のモチベーションが向上する
チームマネジメントにMBTI診断を導入することで、社員の能力を活かせます。勤務する社員も自身の能力を活かせるため、モチベーションを高く維持した状態で勤務できるでしょう。
モチベーションを高く維持できるため、ストレスも感じにくく離職率の低下も期待できます。
チーム力が高まる
MBTI診断をチームマネジメントに導入すれば、チーム力の向上も期待できます。MBTI診断を参考にしたチームマネジメントは、社員それぞれが特性を活かせるだけではありません。
社員同士も相手の診断結果が分かっているため、互いにどのように接すればいいか判断できます。
そのため、コミュニケーションも円滑になりチーム力の向上、生産性の向上が期待できるでしょう。
MBTI診断を受ける際の注意点
MBTI診断とは、客観的に自分を分析するのに効果的です。しかし、すべての人が診断結果に納得するわけではありません。一部の人は診断結果が当たっていないと感じる可能性があります。
このように、MBTI診断の結果は確実なわけではないため、あくまで参考程度に捉えておきましょう。特にマネジメントにMBTI診断を導入する場合は、過度にMBTI診断の結果に重きを置かないことが大切です。
社員の本来の性格、特性と診断結果が異なっていると、満足いくパフォーマンスが発揮できないかもしれません。
MBTI診断を上手に活用してチームマネジメントを成功させよう
MBTI診断とはアメリカ発祥の診断テストで、インターネットで診断可能です。MBTI診断を受ける際は制限時間だけでなく、素直に回答することを意識しましょう。
MBTI診断の結果は8つのタイプを組み合わせた16のタイプに分けられます。MBTI診断を受けることで、客観的に自分を見つめなおせる上に、自身の長所と短所を把握することが可能です。
そのため、自分の長所を引き続き伸ばし、短所を補うための参考として活用してみてください。
また、MBTI診断を上手にチームマネジメントに活用すれば、適材適所の人材配置で組織の業務効率を向上させられます。さらに、社員のモチベーションも高い状態で維持できます。
しかし、MBTI診断は確実ではありません。人によっては診断結果が当たっていないと感じる可能性があります。そのため、MBTI診断をチームマネジメントに活かす際は、参考程度に捉えておきましょう。