人材育成は従業員のキャリア構築だけでなく、企業の長期的な成長のために必要不可欠な要素です。
多くの企業で人材育成が実施されていると思います。
一方で、人材育成の目的を明確にしている企業はそこまで多くないのではないでしょうか。
なんとなく「従業員は育成するものだから」ということで、人材育成を導入しているのではないでしょうか。
そこで本記事では、人材育成における10つの目的を解説していきます。
また、目的別で使える人材育成の手法もあわせて紹介します。ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
人材育成とは?
人材育成は、組織や企業において従業員のスキル・能力を強化してパフォーマンスを向上させる取り組みのことを指します。
様々は手法とツールを活用して、企業が理想とする人物像や企業理念に沿った形で育成されるのが一般的です。
似た言葉として「人材教育」や「人材開発」がありますが、この2つの言葉に比べると「人材育成」は、より包括的なアプローチの意味を含んでいます。
関連記事:人材育成とは?【具体例あり】目的や階層別の考え方、効果を上げるポイントを解説!
人材育成の10つの目的
人材育成の目的は以下の10つ考えられます。
- 自社を成長させるため
- リーダー人材を育成するため
- 離職を抑えるため
- 生産性を高めるため
- 組織力を強化するため
- 学習意欲を向上させるため
- 目標を持たせるため
- エンゲージメントを高めるため
- 教育スキルを持たせるため
- 自己肯定感を高めるため
それぞれ詳しく見ていきましょう。
関連記事:人材育成の目標の立て方を紹介!具体例や管理方法も解説
目的①:自社を成長させるため
人材育成の目的としてまず考えられるのが「自社の成長」です。
一般的に企業は、将来の自社が必要とする人材に育てるために、人材育成を実施します。
例えば、10年後にグローバル展開したいのであれば、従業員には英語を話せるようになってもらわなければなりません。
英語はそう簡単に身につくものではないので、長期的な人材育成が必須です。
このように、自社を成長させるために人材育成を実施するのが一般的です。
目的②:リーダー人材を育成するため
近年は、リーダー人材を育成することを目的とした人材育成を実施する企業が増えています。
というのも、リーダー人材が不足している現状があるためです。
できることなら中途採用でリーダー人材を採用するのがいいのですが、リーダー人材が不足している現在では難しい選択肢です。
そのため、企業から見ると、長期的な目線でリーダー人材をゼロから育て上げた方が、投資対効果が大きいと考えられます。
リーダー人材を育成するには数年以上の時間が必要になるので、人材育成が必要不可欠です。
目的③:離職を抑えるため
終身雇用時代では、とにかく1つの企業に長く勤め続けることが良しとされてきました。
しかし現代は、優秀な人材であればあるほど、自らの成長を追求するようになっています。
そうした方が、転職で有利になるためです。
そのため「ここでは成長できない」と感じた従業員は、どんどん自社から離れていきます。
このような従業員の離職を防ぐために有効な手段として考えられるのが、人材育成です。
長期的な人材育成プランを構築することで、従業員の離職を防げる可能性があります。
自己成長欲求のある優秀な従業員を手放さないためにも、人材育成に力を入れた方がいいのかもしれません。
関連記事:離職率を下げるための施策とは?従業員の定着率を高める10の施策
目的④:生産性を高めるため
人材育成の目的として挙げられるのが「生産性向上」です。
短期的な視点だと、人材育成にリソースを割いている間は組織全体の生産性が落ちてしまうかもしれませんが、長い目で見れば、人材育成のコストを回収できるくらい、従業員の生産性が向上します。
また、従業員を育成する過程で、強み・弱みを把握できるようになり、適切な人材配置を実施できる可能性があります。
これも生産性向上に繋がるアプローチの1つです。
生産性を根本的に向上させたいのであれば、人材育成に力を入れるのがいいでしょう。
目的⑤:組織力を強化するため
人材育成は、個人の育成だけでなく、組織力の強化にも繋がると考えられます。
どれだけ一人一人の従業員のパフォーマンスが向上したとしても、チームの中でパフォーマンスを発揮できれなければ意味がありません。
逆に言えば、チームワークが良ければ、必然的にチーム全体のパフォーマンスが大きく向上します。
そして、チームワークを強化したいのであれば、企業側からアクションを起こす必要があります。
従業員も1人の人間なので、必然的に自分自身の能力向上を優先させる傾向があるためです。
会社主導で、組織力を強化するためのチームビルディングなどを実施しましょう。
関連記事:チームビルディングの具体例を15こ紹介!【簡単にできるゲームも】
目的⑥:学習意欲を向上させるため
最も効率的な人材育成は、従業員自らが勝手に成長してくれる状態だと言えます。
逆に、最も非効率的な人材育成は、上司が付きっきりで部下を指導している状態だと言えるでしょう。
とはいえ、何もせずに従業員自らが勝手に成長してくれるわけがありません。
従業員の学習意欲を向上させるためには、まず企業が、学習意欲を促す仕組みを構築する必要があるでしょう。
「失敗を責めないルールを設ける」など、方法は様々です。
従業員を直接指導するだけでなく、従業員の学習意欲を向上させたいときも、人材育成のアプローチが有効です。
目的⑦:目標を持たせるため
人材育成の目的として、従業員に目標を持たせることが挙げられます。
というのも、会社員は毎日の仕事に追われた結果「何のために働いているんだろう……」と思うことがあるためです。
この状態を放置するのは、パフォーマンス低下はもちろんのこと、精神衛生上よくありません。
そこで、人材育成を導入して、従業員に明確な目標を与えるのです。
自社と従業員に利益をもたらす明確な目標を設定すれば、ひとまず従業員は、その目標を目指して仕事に取り掛かるようになります。
従業員に有意義な目標を与える際に、人材育成は有効な手段です。
目的⑧:エンゲージメントを高めるため
人材育成は、エンゲージメントを高める手段として有効だと考えられます。
一般的に人材育成は、数年以上、場合によっては10年以上の時間をかけて取り組むものです。
そのため、適切な人材育成を実施できれば、従業員は「最低でも数年は自社に所属して自分を磨こう」と考えるようになります。
このエンゲージメントの高まりが、離職率低下とパフォーマンス向上に繋がるのです。
エンゲージメントを高めるには、企業から従業員に対してどんどん「give」する必要があります。
そのための手段として人材育成は有効です。
関連記事:部下のエンゲージメントを高めるマネジメント手法とは?メリットや成功事例も解説
目的⑨:教育スキルを持たせるため
人材育成を導入することで、従業員に教育スキルを持たせることができます。
従業員が教育スキルを持つことのメリットは計り知れません。
究極的には、マネージャーや経営層が何もしなくても、従業員同士で教え合い、業務効率を向上させられる可能性があります。
とはいえ、やはり「教え合う文化」を醸成するには、まず企業側が動く必要があるでしょう。
上司が部下に教えるための仕組みを整えたり、教育スキルを身につけさせるための研修を実施したりする必要があります。
目的⑩:自己肯定感を高めるため
人材育成は、1人の従業員に対して複数の従業員がフォローする形で実施されます。
そのため、人材育成を重視していれば、1人の従業員が精神的に辛い時でも、周囲の従業員がフォローしてくれる可能性があります。
また、失敗を責めるだけでなく、失敗を許容する人材育成を実施することで、従業員の自己肯定感は高まります。
自己肯定感が高まると、従業員も自分に自信が持てるようになり、どんどん新しいことに挑戦していけるようになるでしょう。
人材育成の手法を目的別で紹介
人材育成の代表的な手法は以下の7つです。
- OJT(職場内訓練)
- Off-JT(職場外訓練)
- SD(自己開発)
- eラーニング
- メンター制度
- MBO
- ジョブローテーション
それぞれ詳しく解説していきます。
関連記事:人材育成ロードマップを徹底解説!目的・作り方・注意点を紹介
OJT| 職場内訓練
OJTは「On the Job Training」の略称で、職場内訓練のことを指します。
上司と一緒に実務に取り掛かることで、業務スキルを身につける手法です。
先ほど紹介した10つの目的のうち、OJTは以下の目的にマッチしています。
- 生産性を高めるため
- 教育スキルを持たせるため
OJTは、指導を受ける従業員だけでなく、指導する側の従業員の教育スキル向上にも一役買っています。
Off-JT| 職場外訓練
Off-JTは「Off the Job Training」の略称で、職場外訓練のことを指します。
先ほど紹介したOJTとは真逆で、現場から離れて、セミナーや研修を実施する手法です。
先ほど紹介した10つの目的のうち、Off-JTは以下の目的にマッチしています。
- リーダー人材を育成するため
- 学習意欲を向上させるため
リーダー人材の育成は、OJTでいきなり実践させるのは難しいため、まずはOff-JTを活用して、リーダーに必要なことを学んでもらうのが一般的です。
SD| 自己開発
SDは「Self Development」の略称で、自己開発のことを指します。
OJTやOff-JTのように誰かに教えてもらうのではなく、自分自身で学習させる手法です。
先ほど紹介した10つの目的のうち、SDは以下の目的にマッチしています。
- 自社を成長させるため
- 学習意欲を向上させるため
- 自己肯定感を高めるため
人材育成の理想的な形は、従業員がSDで勝手に「自社が求める人物像」になってくれることです。
しかし当然のことながら、それは非常に難しいことで、まずは自社が、自己開発しやすいようなサポート制度を導入する必要があります。
eラーニング| オンラインで学習
eラーニングはオンライン学習のことです。
代表的なサービスとしては、オンライン動画学習サービスのUdemyが挙げられます。
先ほど紹介した10つの目的のうち、eラーニングは以下の目的にマッチしています。
- 生産性を高めるため
- 学習意欲を向上させるため
- 目標を持たせるため
eラーニングもSDと同様に、従業員が勝手に成長してくれる手法の1つです。
一方で、オンライン学習サービスは大抵の場合、一定の目標が設定されているため、従業員としては目標を設定しやすいのがメリットとなっています。
メンター制度| 先輩社員がサポート
メンター制度は、新入社員や若手社員を部署外の先輩社員が支援する制度のことを指します。
部署外の先輩社員と繋がりを持つことで、同部署の先輩には相談しづらい悩みを打ち明けやすくなります。
先ほど紹介した10つの目的のうち、メンター制度は以下の目的にマッチしています。
- リーダー人材を育成するため
- 離職を抑えるため
- 組織力を強化するため
- エンゲージメントを高めるため
- 教育スキルを持たせるため
- 自己肯定感を高めるため
メンター制度は、横の繋がりを促進させられる点で十分なメリットがある手法だと言えます。
MBO| 社員自らが目標設定
MBOは「Management by Objectives」の略で、目標管理制度のことを指します。
従業員自らが目標を設定することで、人材育成する手法です。
先ほど紹介した10つの目的のうち、MBOは以下の目的にマッチしています。
- リーダー人材を育成するため
- 生産性を高めるため
- 目標を持たせるため
- 教育スキルを持たせるため
MBOでは、部下が決めた目標に対して、上司が適度にテコ入れする手法になっているため、マネージャーやリーダー人材の教育スキル向上にも繋がる可能性があります。
ジョブローテーション| 戦略的な部署異動
ジョブローテーションは、従業員の能力開発を目的に実施される部署異動のことです。
一般的に部署異動は「適切な人材配置」のために実施されますが、ジョブローテーションの部署異動は「従業員の能力開発」のために実施されます。
先ほど紹介した10つの目的のうち、ジョブローテーションは以下の目的にマッチしています。
- リーダー人材を育成するため
- 組織力を強化するため
- エンゲージメントを高めるため
ジョブローテーションは終身雇用制度を前提にした手法ということもあり、エンゲージメントを大きく高められることが期待できる人材育成だと言えます。
まとめ
それでは本記事をまとめていきます。
- 人材育成は目的を持って取り組んだ方が効果が出やすい
- 人材育成の目的は様々ある
- 目的によって適切な人材育成の手法も変わってくる
ただなんとなく人材育成に取り組むのではなく、明確な目的を持った方が、人材育成の効果が出るのは間違いありません。
なぜなら目的によって、適切な人材育成の手法が変わってくるためです。
これからの社会は、働き方が大きく変わってくることが予想されています。
今のうちに、人材育成の目的を見直してみてはいかがでしょうか。