従業員の配置や育成を行う上で、それぞれの持つ能力や性格などはきちんと把握しておかなければなりません。
しかし、社員数が多くなると部署内での関わりで完結してしまい、全社員の情報を把握することは難しいでしょう。
そこで最近では、社員情報を管理する方法として「タレントマネジメントシステム」を使用する企業も増加しています。
本記事では、タレントマネジメントの基本情報から、メリット・デメリットを紹介します。
目次
タレントマネジメントシステムとは「社員情報を一元管理するシステム」
タレントマネジメントシステムとは、人材に関する情報を一元管理するシステムのことです。
そもそもタレントマネジメントとは、社員の基本情報や能力をデータ化・管理し、それをもとに戦略的に人材育成や人材配置を行うこと、またそのツールを指します。
人事でも人材管理・評価を行いますが、あくまで査定を目的にしているため、人材開発や人材活用などの視点はありません。
対してタレントマネジメントでは企業の運営に重きをおき、自社従業員の情報を徹底管理しています。
ただし、社員で統一したシステムを組んでいなければ、部署ごとの管理方法や評価方法の違いが生じ、適切な人材活用ができません。
簡便かつ適切な人材配置を行うために、こういった差異やズレがない方法として、タレントマネジメントシステムは使用されています。
関連記事:組織におけるタレントマネジメントとは?人材確保と育成に役立つ方法を解説
参考記事:働きがいを応援するメディア ピポラボ「タレントマネジメントシステムの機能9選・比較ポイントを徹底解説
タレントマネジメントシステムを利用するメリット
タレントマネジメントシステムを使用するメリットは下記の2つです。
- 適切な人材配置を簡単に行える
- 効率的な育成計画を建てられる
1つずつ解説します。
適切な人材配置を簡単に行える
タレントマネジメントでは下記のような情報を管理します。
- 能力
- 経歴
- 資質
- キャリアプラン など
その他各企業によって管理する項目は違いますが、情報が多くなればなるほど管理も手間になり、必要な情報の精査に時間がかかります。
しかし、タレントマネジメントシステムを利用することで、管理が簡便になるだけでなく、これまでに蓄積されたデータに基づいた分析を行い、客観的な評価を下すことが可能です。
また、定量的な情報だけでなく定性的な評価を記載できるシステムも多くあるため、成果や才能だけで判断しないような工夫を組み込めます。
効率的な育成計画を建てられる
タレントマネジメントシステムには、これまでに蓄積してきた人材情報から得た知見によって「育成計画機能」が実装されています。
能力や性格などを可視化して一覧で確認できるため、それぞれの従業員が得意な業務、不得意な業務の客観的な判断が可能です。
人材育成に不慣れな社員でも部下の能力を一括で判断できるため、指導しやすいでしょう。
また、プロジェクトリーダーや部長など、役職への昇進も判断しやすくなります。
関連記事:キャリアマネジメントは人材育成に役立つ?企業・社員双方にとってのメリットを解説
タレントマネジメントシステムを利用するデメリット
タレントマネジメントシステムを利用するデメリットは主に下記の2つです。
- 導入・ランニングコストがかかる
- 社員からの理解が得られない可能性もある
デメリットも理解した上で使用しましょう。
導入・保守費用がかかる
自社でシステムを構築する企業以外は、タレントマネジメントシステムの導入時と継続利用に費用がかかります。
予算によっては費用を捻出できず諦めてしまい、企業独自の方法で導入を検討する企業もいるでしょう。
しかし、タレントマネジメントシステムは多くの人的リソースがかかるため、独自で実施を検討しても、計画が頓挫する可能性が高くなります。
タレントマネジメントを行いたい場合は、将来的な発展のため、費用を捻出できると良いでしょう。
社員からの理解が得られない可能性もある
タレントマネジメントシステムは、社員の能力を適切に判断するものですが、社員によっては、ランク付けや成績をつけられているような感覚を持つ場合があります。
さらに、現場担当者やリーダーの中には部下を判断することを嫌がり、適切な評価を入力しない可能性もあります。
しかし、自社の業績や働きやすさを向上させるためには、必要な工程です。
システムを導入する理由や必要性を現場担当者やリーダーはもちろん、社員一人ひとりに対してきちんと伝えて、理解を得られるようにしましょう。
自社に合うシステムを選択する際のポイント
タレントマネジメントシステムを選ぶ際に、気をつけたいポイントは下記の3つです。
- 自社に必要な機能が搭載されているか
- サポート体制が整っているか
- 拡張性があるか
自社に必要な機能が搭載されているか
タレントマネジメントシステムは、各社機能に違いがあります。
現在、自社が抱えている課題を解消するためにはどのような機能が必要なのかを精査しましょう。
例えば、下記のような課題とそれを解消する機能が挙げられます。
課題 | 対応機能 |
社員一人ひとりの目標が可視化されていない | 目標管理・スキル管理機能 |
次世代の経営人材を見つけたい | 人材データの分析機能 |
また、どのような社員でも使えるような操作の簡単さや、安定した処理速度も押さえておきたい点です。
サポート体制が整っているか
タレントマネジメントシステムには、導入前と導入後で下記のようなサポートを提供している企業もあります。
導入前 | 導入後 |
・企業の経営戦略に連動したシステムの設計サポート
・戦略に応じて必要なデータの選定 など |
・操作方法のレクチャーやマニュアル作成
・操作不明点の電話対応 など |
タレントマネジメントシステムは導入して終わりではなく、自社に適したものに調整する必要があります。
また、導入後も自社で解決できない不明点が出てくる可能性も忘れてはいけません。
自社の課題を解決できるサポートを受けられるのかは、必ず確認しておきましょう。
タレントマネジメントシステムの成功事例
タレントマネジメントシステムを導入し成功した事例を3つ紹介します。
- 株式会社サイバーエージェント
- 味の素株式会社
- 株式会社ミュゼプラチナム
株式会社サイバーエージェント
引用している元画像のURL:https://www.cyberagent.co.jp/
インターネット広告会社である「株式会社サイバーエージェント」では、独自のコンディション把握ツールを運用し、社員が能力を最大限に発揮できるような体制づくりを行っています。
コンディション把握ツールでは、質問に対して快晴や曇、雨などの選択肢によって5段階で評価を行います。
これまで主観的であったコンディションを定量化して判断することで、推移や比較が可能となり、判断を行いやすくなりました。
結果「働きがいを感じる」と答える社員は87%にものぼります。
参考:87%の社員が「働きがいがある」と答える環境を実現ーーCHO曽山が語るエンゲージメントを高める人事施策|株司会者サイバーエージェント
WILLER EXPRESS株式会社
引用している元画像のURL:https://www.willerexpress.co.jp/
高速バスの運営を行う「WILLER EXPRESS株式会社」では、これまでExcelや紙によって社員情報を管理していたため、それぞれの社員の経歴や現在の業務について把握しにくい状態となっていました。
さらに、紙媒体であるため、いざ情報を集めようとしても時間がかかり、人材開発に手間取る状況となっていたようです。
そんな状況を打破するため、タレントマネジメントシステムを導入。
人材開発や配置の実行などは未定ですが、社員情報が一括に集まったことで、多拠点の社員同士の連携や社内コミュニケーションが活性化していると言います。
参考:人事データ活用最前線【WILLER EXPRESS株式会社】|株式会社ビズリーチ
株式会社ミュゼプラチナム
引用している元画像のURL:https://musee-pla.com/corporate/companyinfo/
美容サロンの運営を行う「株式会社ミュゼプラチナム」では、これまで自社のエンジニアが開発したシステムを使用し、人材評価・管理を行っていました。
ただ、使用時にエンジニアを必要とし、人事だけでは使用できないため使い勝手が悪く、人材開発は思うように進行できないままでした。
しかし、システムを導入し、評価制度が円滑に周りはじめたことによって、社員も「会社にきちんと評価されている」と感じ、社員の働きがいも向上したとしています。
参考:「女性の力」が成長のカギ。評価制度の「見える化」が社員の「働きがい」をさらにアップ|株式会社カオナビ
まとめ
タレントマネジメントシステムは、従業員の能力向上や適切な人員配置を簡単に行うシステムです。
適切な人員配置を行えば、従業員の働きやすさに加え、業績向上にも繋がるでしょう。
しかし、相応の導入・ランニングコストが必要になるため、今後の業績や予算についてを加味した上での検討が必要です。