「経営」と「マネジメント」、どちらもビジネスにおいてよく聞く言葉ですが、その意味は異なります。
本記事では経営とマネジメントの違いを解説していきます。
また、それぞれの業務内容や、成功のためのポイントについても紹介します。
目次
経営とマネジメントの違いを解説
経営もマネジメントも、「組織」に関係ある単語であるというイメージはおありでしょう。
ここではより具体的に、経営とマネジメントの違いについて解説していきます。
経営とは?
経営は「事業目的達成のために、事業計画を立てて継続的に意思決定を行い、事業を継続・運営すること」を指します。
事業の目的は企業によって異なりますが、株式会社のほとんどは「利益の最大化」が目的にあるので、基本的には「利益を出すこと」が事業目的になるでしょう。
また、企業として存続するには、ビジョンや経営理念などの長期的な視点が必要不可欠です。
そのため、企業の中の誰よりも、経営者は長期的な視点を持たなければなりません。
マネジメントとは?
一方のマネジメントは直訳すると「管理」になり、一般的には組織を管理することを指します。
特に企業活動におけるマネジメントは、組織のパフォーマンスを最大化させるための手法の1つです。
マネージャーは部下を効果的に管理することで、組織全体のパフォーマンス向上を狙います。
関連記事:マネジメントとは?意味や方法、求められる7つの能力について徹底解説!
マネジメントは階層別で3つに分けられる
マネジメントは以下の3つの階層に分けることができます。
- トップマネジメント
- ミドルマネジメント
- ロワーマネジメント
それぞれ詳しく解説していきます。
トップマネジメント
トップマネジメントは組織の最高経営者陣を指します。
一般的には以下の役職の方々がトップマネジメント層だと言えます。
- 社長
- 副社長
- 取締役員
- 執行役員
トップマネジメントは、最終的な到達点となる企業目的や、それを達成するための事業計画を作成し、最終的な責任を取る立場にあります。
そのため、トップマネジメントでは強いリーダーシップとマネジメント力が求められると言っていいでしょう。
関連記事:トップマネジメントとは 具体的な役割や求められる能力を解説
ミドルマネジメント
ミドルマネジメントは、経営陣と現場の中間に位置するマネジメント層で、一般的には中間管理職と呼ばれます。
具体的には、以下の役職の方々がミドルマネジメント層だと言えるでしょう。
- 部長
- 課長
- 支店長
- エリアマネージャー
ミドルマネジメントは、経営陣の意向を現場レベルまで落とし込む職務です。
事業計画や企業理念を元に、組織単位での事業計画や人材配置を実施します。
また、現場の意見を吸い上げる役目も担っており、状況に合わせたコミュニケーションが求められる職務です。
関連記事:ミドルマネージャーとは?リーダーシップに求められる能力と課題を解説
ロワーマネジメント
ロワーマネジメントは現場を管理するマネジメント層です。
以下の役職の方々がロワーマネジメントだと言えます。
- 現場リーダー
- チーフ
- 工場長
- 店長
- 現場監督
ロワーマネジメントでは、トップマネジメントやミドルマネジメントが決定した計画を実際に遂行し、目的を達成させる職務です。
そのため、マネジメント力はもちろんのこと、現場での高い業務遂行能力も求められます。
また、OJTによる実践的な研修もロワーマネジメントの方々が担当することが多いです。
経営者の具体的な業務3選
では、経営者は一体どのような業務に取り組むのでしょうか。
経営者の具体的な業務は以下の3つです。
- 経営方針・事業計画の決定
- 資金調達・資金配分
- 適切な人材配置
それぞれ詳しく見ていきましょう。
業務①:経営方針・事業計画の決定
経営者は、長期的視点に基づいて経営方針と事業計画を決定します。
IR情報などで発表される「中長期計画」が典型的な例です。
まずは経営方針を決定し、将来的にどんなことを達成したいのかを明確にします。
そしてその目的を達成するための具体的な計画を「事業計画」に落とし込んでいくのです。
そのため、利益を一旦無視し、企業のビジョン達成のための計画を立てる必要も出てきます。
利益の確保はあくまでも、キャッシュを得るための手段です。
将来的に大きな利益を得るために、どのように事業を進めるべきかをじっくり検討します。
業務②:資金調達・資金配分
事業計画を決定した後は、実際に計画を遂行するための資金を調達します。
資金調達は誰が実施しても構わない領域ですが、億レベルの資金を調達することも珍しくないため、一般的には企業のトップである経営者の仕事です。
そして資金を調達した後は、それを各部署に配分します。
従業員への給与はもちろんのこと、設備投資や商品開発にも資金を配分させなければなりません。
どのように資金を配分すれば効果的に事業を進められるか、迅速に決定する必要があります。
業務③:適切な人材配置
資金を配分したら、今度は人材を各部署に配置していきます。
一般的には、自社が注力したい事業に多くの人員を投下します。
ただし、プロジェクトによっては少数精鋭の方がいい場合もあるので、事業内容に対する深い理解が必要不可欠です。
また、各従業員がどのような適性を持っているかを把握する必要もあります。
大企業の場合はミドルマネジメント層から意見を抽出するのがいいでしょう。
場合によっては人材配置の決定権をそのまま譲渡してしまうのも有効です。
規模の小さい企業であれば、経営者自らが従業員全員とコミュニケーションを取り、強み・弱みや性格を把握するのがいいでしょう。
このようにして事業と従業員の特性を掴んだら、事業目的達成に近づける適切な人材配置を実施します。
関連記事:「適材適所」の正しい考え方とは?組織に合わせて人材を配置し育成すること
マネジメントの具体的な業務3選
マネジメントの具体的な業務は以下の3つです。
- 目標設定
- メンバーの動機付け
- プロジェクト管理
それぞれ詳しく解説していきます。
業務①:目標設定
まずは目標を決定します。
従業員のモチベーションを引き出すためには、売上などの具体的な目標が必要不可欠だからです。
基本的には、上位のマネジメント層の目標や計画を基に、目標を決定します。
例えばトップマネジメントが「売上高を来期末までに3,000億円から4,000億円にアップさせる」という目標を立てたら、それの実現に向けてミドルマネジメントも「新規顧客数を1.5倍にする」などの目標を立てるのです。
また、目標は可能な限り、具体的である方がいいでしょう。「新規顧客数を1.5倍にする」という目標だったら「第三四半期までに営業プロセスを効率化させて訪問数を2倍に増やし、新規顧客数を1.5倍にする」というようなイメージです。
目標を具体的にした方が、従業員としてもイメージがしやすくなります。
業務②:メンバーの動機付け
どれだけ素晴らしい目標を打ち立てることができても、メンバーのモチベーションが低下したままでは、おそらく目標を達成することはできないでしょう。
メンバーのモチベーションを高めるのに必要なのは「動機付け」です。
例えば「業績を出した従業員にはボーナスを支給する」という仕組みを構築できれば、従業員のモチベーションも向上が見込めます。
また、マネージャー自らが部下を指導することも、動機付けに繋がります。
マネージャーが業務に手をつけず、部下が全て仕事を片付けるスタイルがマネジメントの理想です。
マネージャーはメンバーのパフォーマンスの最大化に徹しましょう。
関連記事:人材育成におけるマネジメントとは?【成功のためのポイントも解説】
業務③:プロジェクト管理
目標を確実に達成するためには、プロジェクト管理が必要不可欠です。
素晴らしい目標を打ち立て、どんなにメンバーが奮闘していようが、適切なプロジェクト管理が実施できなければ、目標を達成できない可能性が出てきます。
具体的には、目標の進捗度をモニタリングするのがいいでしょう。
時間が残り半分なのに、進捗度が50%を超えないのは赤信号のサインです。
この場合は、他部署から人員を確保するなどして、業務の進行ペースを速める必要があります。
また、マイクロマネジメントを実施するのもいいかもしれません。
マイクロマネジメントとは、メンバーの行動を細かく管理することで、一般的には否定的な言葉として用いられます。
しかし一方で、Appleのティム・クックやTeslaのイーロン・マスクがマイクロマネジメントの実践者として有名です。
どちらも工場で商品を製造する企業なので、製造業の企業はマイクロマネジメントを試してみるといいかもしれません。
経営やマネジメントを成功させる5つのポイント
経営やマネジメントを成功させるには、以下の5つのポイントを意識することが大切です。
- 迅速な意思決定を行う
- 情報共有を徹底する
- 長期的な視点を持つ
- 大胆に権限委譲する
- 積極的にコミュニケーションを取る
それぞれ詳しく解説していきます。
ポイント①:迅速な意思決定を行う
まずは迅速な意思決定を心がけましょう。
現代は、技術革新のスピードが非常に早まっており、とにかく変化の激しい時代です。
意思決定で迷っている間に、社会が既に様変わりしているというケースも珍しくありません。
だからこそ、まずは迅速な意思決定を心がけるのが一番です。
可能な限り持ち帰りをせず、その場で意思決定を実行できるようにします。
この際、ある程度の失敗は許容した方がいいでしょう。
仮に失敗してしまったら、すぐに改善策を打ち出して修正すればいいだけです。
変化の激しい現代においては、頭でじっくり考えるよりも、すぐに手を動かした方が、成果に繋がりやすいと考えられます。
ポイント②:情報共有を徹底する
情報共有を徹底するのも、経営やマネジメントを成功させるポイントです。
現在は優れたチャットツールが数多く登場しているため、全体への情報共有が非常に楽にできるようになりました。
これらのツールを活用して、可能な限り情報をオープンにするのが望ましいと言えます。
情報共有を徹底することができれば「この仕事は今誰がやっているの?」などの回避可能なコミュニケーションを減少させられます。
また、情報共有を徹底することで、経営者やマネージャーによる部下の進捗確認もスピーディーに実行できます。
経営やマネジメントを成功させるには効率的な情報共有が必要不可欠です。まずは優れたチャットツールを探しましょう。
ポイント③:長期的な視点を持つ
経営やマネジメントでパフォーマンスを発揮するには、長期的な視点が必要不可欠です。
基本的に、現場で手を動かしている従業員は、短期的な目線で物事を考えます。
また、成果主義の営業部では短期的な利益に走る傾向も見られるでしょう。
だからこそ、経営者やマネージャーが長期的な視点を持つ必要があるのです。
最終的な目標が達成できるように、メンバーの方向性をコントロールします。
プロジェクトを成功させられるように、俯瞰的にプロジェクトを見れるようにしましょう。
ポイント④:大胆に権限委譲する
経営やマネジメントを効果的に進めるために、大胆な権限委譲が必要になるでしょう。
基本的に経営者やマネージャーは、現場の業務に参加せず、マネジメント業務に集中した方がいいと言われています。
しかし納期に間に合わなそうなときなどには、ついつい現場に赴いてしまうというのはありがちです。
そうではなく、いっそのこと現場の業務を全て現場のエース社員に任せて、自分自身はマネジメントに徹するのです。
場合によっては、自社の中心事業を丸ごと別の人材に任せる必要も出てくるでしょう。
経営者やマネージャーは「自分が最もすべきことは何か?」を常に考え、そうでないものを全て権限委譲した方が、結果として目標達成につながります。
なぜなら、経営やマネジメント業務への集中が結果を大きく左右するからです。
ポイント⑤:積極的にコミュニケーションを取る
組織のパフォーマンスを最大化させるためには、組織内のコミュニケーションを活発にする必要が少なからず出てきます。
その際は、経営者やマネージャーなどの上司の方から部下にコミュニケーションを取ることが大切です。
やはり上下関係がある以上、部下から上司の方に話しかけるのは難しいと考えられます。
また、経営者やマネージャーなどのリーダーとの距離感が、部下のモチベーションを左右します。
仲のいい部下とだけ会話するのではなく、自分との距離がある部下に自分から話しかけるのがいいでしょう。
まとめ
それでは本記事をまとめていきます。
- 経営は事業目的達成のために、マネジメントは組織のパフォーマンス最大化のために実施される取り組み
- 経営者は事業計画の決定・資金調達・人材配置などを手掛ける
- マネージャーは目標設定・メンバーの動機付け・プロジェクト管理などを手掛ける
- 経営とマネジメントを成功させるには迅速な意思決定が必要
経営とマネジメントは、どちらも人の上に立つ職務内容です。しかし目的が少し異なります。
経営は事業目的達成のために、マネジメントは組織のパフォーマンス最大化のために存在するのです。
経営者とマネージャーでは業務内容が異なるものの、成功させるためのポイントとしては類似点が多いです。
実際、中小規模であれば、経営者とマネージャーを兼任するケースも少なくありません。
どちらにせよ、経営とマネジメントの違いを理解した上で、業務に取り組めるといいでしょう。