昨今、日本では長引く経済の低迷から抜け出せず、物価が徐々に上がり続けています。
物価の変動が激しくなると事業主や人事担当者は、物価変動を考慮して賃金を支払うことが必要となってきます。
これらを考えるうえで重要なのが、「名目賃金」と「実質賃金」の観点です。
そこで本記事では、なかでも名目賃金について、
- 概要や実質賃金との違い
- 日本や海外における現状
- 名目賃金以外でモチベーションを上げる方法
などを解説していきます。
目次
名目賃金とは
名目賃金とは、従業員の労働に対して支払われた貨幣のことであり、支払われた金額を指しています。
「貨幣」とは私たちが日常的に使用している「お金」のことですが、貨幣もモノの価値も時期や環境の変化によって変動するため、名目賃金の価値も上下します。
これにより、名目賃金が上がったとしても物価も同じように上がれば、従業員が「給与が上がったが景気が上がったとは思わない」と感じて、企業に対して不満を感じる可能性があるのです。
したがって、従業員のモチベーションを引き出したり満足度を高めたりしたいのであれば、名目賃金を上げるだけでは不十分なケースがあります。
名目賃金と物価水準との関係
名目賃金は物価水準に大きな影響を受けます。
例えば、物価が上がると一般的には同様に名目賃金も上がります。
物価の上昇はモノやサービスに対する貨幣価値が減少するためです。
一方で、物価が下がると名目賃金は減るケースが多く見られます。
物価の下落はモノやサービスに対する貨幣価値が増大するためです。
このように名目賃金と物価水準は切っても切れない関係といえます。
名目賃金と実質賃金との違い
名目賃金と混同されがちなものに「実質賃金」があります。
実質賃金とは、物価の変動を考慮した賃金のことです。
従業員に支払った名目賃金から、消費者物価指数による物価変動の影響を差し引いて算出するため、物価の影響を受けません。
例えば名目賃金の場合、同じ金額をもらっていたとしてもインフレーション(物価上昇)やデフレーション(物価下落)が起きれば、その分だけ実質的な給与が上下するのです。
こうした物価変動の影響を考慮して給与に反映したものが実質賃金となります。
生活への影響力が大きいのは実質賃金
企業側は求人広告で提示される名目賃金を重視する傾向があります。
なぜなら、名目賃金は他社との比較がしやすく、自社が労働の対価として支払う金額を示すことができるためです。
しかし、求職者や従業員にとっては実質賃金のほうが重要な意味を持ちます。
その理由は、実質賃金は生活をする上で必要な金額とほぼ同義なためです。
もし名目賃金が2倍になったとしても、物価が上がり必要な生活費も2倍になれば実質賃金は変わっていないことになります。
したがって、物価の影響を考慮した実質賃金が重要となります。
賃金指数とは
賃金指数とは、従業員に支払う賃金を、時間的、地域的、業種間などの観点で、比較しやすい1つの時点を基準として数値化したものです。
例えば、ある時点の賃金額を100ポイントとすると、これを基準としてその前後の変動を示すことができます。
2種類の賃金指数
賃金指数には、
- 名目賃金指数
- 実質賃金指数
の2つがあります。
名目賃金指数は賃金額を指数化したものなので単純ですが、実質賃金指数は名目賃金から物価変動による影響を考慮して計算しなければなりません。
日本における名目賃金の現状とは
日本における名目賃金の推移を見てみると、2014年頃から上昇傾向にありましたが、2019年には6年ぶりに減少に転じました。
また、実質賃金も減少に転じており、日本の賃金は他の主要国と比べても停滞気味です。
OECD(経済協力開発機構)の統計によると、日本の2020年の平均年間賃金はおよそ424万円(1ドル=110円換算)でした。
1990年と比較すると18万円ほどしか増えていません。
一方でアメリカの2020年の平均年間賃金は763万円で、1990年から247万円も増えているのです。
さらに、韓国はこの間に約2倍に伸びて日本は15年前に追い抜かれています。
(参考:韓国に抜かれた日本の平均賃金 上がらぬ理由は生産性かそれとも…丨朝日新聞)
賃金水準の比較・算出時の注意点
自社の賃金水準が他社と比べてどのような立ち位置になっているかは、企業にとっても従業員にとっても気になるのではないでしょうか
例えば東京などは物価や地価が地方と比べて高いため、賃金水準も高い傾向にあるのが一般的です。
したがって、賃金水準を比較する際は、地域や業種が自社と類似している企業と比べるのが良いでしょう。
しかし、賃金水準を算出する際は平均値に注意しなければなりません。
なぜなら、日本企業では日本的雇用慣行である年功序列制度が根強く残っているので、年齢や勤続年数が上がるほど賃金も上がる傾向があります。
これにより、年齢別で賃金水準を計算すると、40代から50代の従業員は給与が高く、20代から30代などの若手の給与は低い傾向となるのです。
したがって賃金水準を正しく求める場合、年代や階級ごとに「賃金の平均値×その年代・階級の労働者数」の合計値を算出し、全従業員である総労働者数で割りましょう。
まとめ
給与は従業員のモチベーションとなる根本部分です。
ただし、従業員がモチベーションを感じるのは、給与だけではありません。職場の働きやすさ、個人の成長、会社のブランドなど、さまざまです。
このなかで、個人が有益だと感じ、組織も有益だと感じるものは何か、それは成長です。
個人が成長すれば、会社も成長します。そして、会社が成長すれば、 売上、利益はそれに比例するように向上していきます。
その結果、給料が上がる。
これが本来の正しい給与のありかたではないでしょうか?
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