企業が事業計画を進める際に欠かせないことは、企業にとって重要なリソースである「人材」を適切に管理することです。
そこで活用されるのが「要員計画」です。これは「人員計画」と呼ばれることもあります。
近年は環境の変化が激しいため、必要な人材の確保や不要な人材の整理の必要性が高まっており、要員計画に注目が集まっているのです。
そこで本記事では要員計画について、
- 概要や必要性
- 混同されがちな言葉との違い
- 手順やメリット
- 注意点や効率的な方法
などを解説していきます。
目次
要員計画(人員計画)とは
要員計画とは、事業計画を効率的・円滑に進めるために、また事業目標を達成するために策定される、人材の採用や教育、人事異動に関する計画のことです。
企業にとって欠かせない代表的な経営資源は「ヒト・モノ・カネ・情報」の4つですが、なかでも「ヒト(人材)」は、企業の成長と発展において最も重要であるといえるでしょう。
したがって、自社が必要とするスキルを持っている従業員を、適切な従業員数で運用することは、事業目標の達成に必要不可欠なのです。
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要員計画(人員計画)と混同されがちな言葉との違い
ここでは要員計画と混同されがちな言葉との違いを見ていきましょう。
人員計画との違い
要員計画は「人員計画」とも呼ばれるように、どちらも同じ意味合いで用いられることが多い言葉ですが、厳密には異なる意味を持っています。
人員計画は部署単位でミクロな観点で策定される具体的な計画を指すことが多いですが、要員計画は事業計画や経営計画に基づいて策定される計画です。
採用計画との違い
採用計画は、要員計画の中核を担う人員計画の一部です。
具体的には、外部から確保するべきと考えられる人材を採用するための計画を指しています。
要員計画(人員計画)が必要とされる背景とは
ここでは近年、要員計画が注目されている背景を見ていきましょう。
環境の変化
経済のグローバル化やテクノロジーの発展、新型コロナウイルスの感染拡大など、近年はビジネス環境が目まぐるしく変化しています。
これにより多くの企業がダメージを受けている一方で、新たな市場やチャンスも生まれています。
こういった激しい環境の変化に対応するためにも、企業が人材を柔軟かつ適切に管理することの重要性が高まったのです。
深刻な人手不足
厚生労働省が2019年に公表した資料を見てみると、2013年には人手が不足していると考えている企業の割合よりも、人手が過剰と考えている企業の割合のほうが高いことを示してました。
しかし、2013年に過剰から不足に転じた後は人手不足感が高まり、2019年には1990年代のバブル期に次ぐ水準の高さになっていることがわかりました。
このように、近年は少子高齢化に伴う労働人口減少により、人手不足が深刻化しています。
この結果、企業側は人材の奪い合いが激化するため、人材育成や多様な働き方の実現、退職者の再雇用などを戦略的に進めていく必要が高まったのです。
(参考:令和元年版 労働経済の分析 -人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について-丨厚生労働省)
要員計画(人員計画)の策定方法とは
要員計画を策定する際は、下記の2種類の方法があるため、それぞれを詳しく解説していきます。
トップダウン方式(マクロ的手法)
トップダウン方式とは、経営戦略や計画、利益などに基づいて、人件費と採用という2つの観点から必要な要員数を計算する方式です。
「マクロ的手法」と呼ばれることもあります。
根拠として使われる指標には、いくつかの種類があり、
- 売上
- 利益
- 付加価値
- 人件費率
- 損益分岐点
- 労働分配率
などが挙げられます。
ボトムアップ方式(ミクロ的手法)
ボトムアップ方式とは、現場で働く従業員の意見を聞きながら、その現場に必要な要員数を計算する方式です。
「ミクロ的手法」と呼ばれることもあります。
業務量を考慮して適切な人数を計算したり、職務分析に基づいて職務別に必要な要員数を算出します。
簡潔に述べるなら、「業務遂行に必要な人数は何人か?」という観点で算出する方法です。
要員計画(人員計画)のメリットとは
ここでは、要員計画を策定するメリットを見ていきましょう。
人手不足の改善
要員計画を策定するときは、現場で働く従業員にヒヤリングしながら進めます。
予算とのバランスもあるため、すべての要望を叶えることはできませんが、現場でどのくらい人手が不足しているのかを、具体的に把握することが可能です。
これにより、人材採用の際に現場との乖離を埋めることができます。
ミスマッチを防ぐ
要員計画の策定・運用時に経営者と現場で情報共有が行われることで、求人広告や求人記事の内容、企業メッセージなどをブレがなく一貫性を保ちながら作成することが可能です。
したがって、明確な方針とメッセージを発信することで自社に最適な人材を確保することができ、ミスマッチを防ぐことができます。
これにより、定着率の向上も期待できるでしょう。
まとめ:要員計画のポイント
要員計画のポイントは、戦略の実行に必要な人数を正しく把握することです。
トップダウン方式か、ボトムアップ方式か、どちらをとっても問題はありません。
しかし、ボトムアップ方式には現場の「感情」が入り込んでしまい、正しい人数かどうかわからなくなってしまうこともあります。
したがって現場からは事実のみを上げさせ、その後上層部が必要な人数を責任をもって決める、といったやり方も効果的です。
適宜修正を行い、結果のでる組織作りを続けましょう。