非正規雇用とは、正規雇用以外の有期雇用のことです。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴って社会格差が広がり、企業においては非正規雇用を減らしつつ正規雇用労働者を維持する動きがありました。
このように、非正規雇用は立場が弱い点が課題であると指摘されています。
そこで本記事では、非正規雇用について
- 概要や現状
- 企業側のメリット・デメリット
- 種類
- 企業の今後の対応
などを解説していきます。
目次
非正規雇用とは
非正規雇用とは正規雇用以外の雇用形態を指しています。
正規雇用とは、雇用期間が定められていないフルタイム勤務の雇用形態です。
非正規雇用は再契約をすれば更新できますが、雇用期間が定められている有期雇用である点が特徴です。
具体的には、下記のような種類が該当します。
- 派遣社員
- 契約社員
- アルバイト
- パートタイマー
- 業務委託や請負
- 家内労働者
- 在宅ワーカー
関連記事:【2021】労働者派遣法とは?基本や改正の要点や罰則を解説
日本における非正規雇用の現状とは
日本において非正規雇用は増加傾向にありましたが、新型コロナウイルスの感染拡大によって多くの企業が非正規労働者を減らしたため、2020年からは減少に転じています。
総務省統計局が2022年2月1日に公表した「労働力調査」を見てみると、2013年には1,911万人だった非正規の職員・従業員は年々右肩上がりに増えており、2019年には最も多い2,165万人にのぼっています。
つまり6年で254万人も増えていたのです。
しかし、2020年になるとコロナ禍によって減少が始まり、2021年には2,064万人にまでその数が落ち込んだのです。
(参考:労働力調査(基本集計) 2021年(令和3年)平均結果丨総務省統計局)
新型コロナによって浮き彫りになった非正規雇用の問題点
野村総合研究所の調査によると、2021年2月時点でパートやアルバイトの実質的失業者が、女性103万人、男性43万人にのぼることがわかりました。
実質的失業者の定義は
- シフトが半分以上減った
- 休業手当を受け取っていない
のどちらにも当てはまる人です。
また、実質的失業者のおよそ半数が、「シフトが減っても休業手当を受け取れること」や、「新型コロナ感染症対応休業支援金・給付金」のことを知らないと回答しています。
さらに、青年ユニオンに寄せられた相談では最も多かったものが「事業主都合休業」に関するもので、休業手当が支払われなかったことや不十分だったという相談でした。
そして、こうした相談者の8割以上が非正規労働者だったのです。
このように、非正規雇用は正規雇用労働者より立場が弱く、社会的危機の際に犠牲となってしまいます。
※休業手当…労働基準法 第26条「会社側の都合により労働者を休業させた場合、休業させた所定労働日について、平均賃金の6割以上の手当(休業手当)を支払わなければなりません。」
(引用:賃金の支払い(第24条) 休業手当(第26条) 労働時間(第32条)丨厚生労働省)
(参考:野村総合研究所、パート・アルバイトの中で「実質的失業者」は、女性で103万人、男性で43万人と推計丨株式会社野村総合研究所)
(参考:【論文】コロナ禍で浮き彫りになった非正規雇用の新たな課題丨自治体問題研究会)
非正規雇用の企業側のメリットとは
ここまで見てきたように、非正規雇用には負の側面が多く、デメリットばかりのイメージがあります。
しかし、2019年までは増え続けているように、企業にとって下記のようなメリットがありました。
人件費の抑制
企業が非正規雇用を活用する最も大きい理由は、人件費の抑制です。
非正規労働者は正規雇用労働者よりも低い給与で雇い入れることができるうえに、昇給の機会も少なく、ボーナスや退職金も必要ありません。
したがって、安い労働力を求める企業にとっては、非常に使い勝手の良い雇用形態といえるでしょう。
関連記事:非正規雇用の社員にボーナス(賞与)を支給する必要はある?直近の最高裁判例の論理とは
繁忙期や閑散期への柔軟な対応
2つ目のメリットは、繁忙期や閑散期に柔軟に対応できることです。
非正規雇用労働者のシフトや勤務日数を調整することで、企業は忙しい時期には多く雇い入れるかシフトを増やし、暇になると雇用を減らすか勤務日数などを減らすことで対応できます。
即戦力の導入
非正規雇用労働者は、即戦力としてスキルやノウハウがある人材をすぐに導入できます。
正規雇用労働者の場合は人材育成にコストがかかりますが、非正規雇用であれば能力のある人材の即時獲得が可能です。
非正規雇用の企業側のデメリットとは
一方で、下記のようなデメリットがあるため、企業はその扱いを慎重に検討する必要があるでしょう。
人材育成ができない
雇用期間が定められているため、時間やお金をかけて人材育成をすることができません。
労働者も自分が定年まで勤め上げるとは考えていないケースが多いため、企業がリソースをつぎ込んで育成しても、あっさりと退職する可能性があります。
重要な業務を任せられない
人材育成が難しい非正規雇用労働者は、任せられる業務も限られます。
したがって重要な業務を任せられず、長期プロジェクトなどは向かないでしょう。
従業員エンゲージメントを上げられない
立場が弱く期限付きで雇用されているため、企業への思い入れが少なく、従業員エンゲージメントが上げにくい点もデメリットです。
多くの場合が生活のために働いているため、モチベーションや意欲などを引き出すことも難しいでしょう。
非正規雇用の今後の課題
人口減少が続く中、非正規雇用の方に満足して働いてもらう必要性は高まっています。
特に、モチベーションや意欲を引き出し、生産性を上げることは喫緊の課題です。
このためには、どうすればいいでしょうか?
答えは、非正規雇用にも明確な評価制度を取り入れることです。
もちろん、全ての非正規雇用の方にというわけではありませんが、責任が重い仕事をしてもらっている場合には、評価制度として取り入れ、給与(時給)に反映させるという仕組み化も必要です。
ただ綺麗事で終わらせるのではなく、しっかりと評価として反映させること。
こうした取り組みが今後課題になっていく可能性があります。
まとめ:非正規雇用とは?
メンバーに雇用形態の違いはあれど、同じ社内のメンバーであることには違いはありません。
社内に必要なポジションがあるということは、社内に必要な役割を非正規雇用の方に担ってもらっているということです。
したがって、状況に応じては明確な評価制度を適応させるなどの対応が今後必要になることでしょう。