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非正規雇用の社員にボーナス(賞与)を支給する必要はある?直近の最高裁判例の論理とは

非正規雇用の社員にボーナス(賞与)を支給する必要はある?直近の最高裁判例の論理とは

企業のマネジメントにとって、社内人材をどのように確保するかは重大な関心事です。
この点、コストカットの必要性や、企業側から見た人材の流動性を確保するためなどの理由から、正社員の数を抑えて非正規社員を増やす試みが多くの企業で見られています。

非正規社員については、賃金をはじめとするさまざまな待遇に関して、正社員との格差がしばしばやり玉に挙げられます。

特にボーナス(賞与)については、正社員と非正規社員の間で明確な差を設けているケースが多く、その合理性が法律上の論点となっています。

2020年10月13日、非正規社員が使用者に対してボーナスの支給を求めた事案につき、リーディングケースになり得る最高裁判決が示されました。結論としてはボーナスの支給は一切不要であると判示しました。

この記事では、弁護士の視点から最高裁判決で採用された論理を解説しつつ、企業のマネジメントが非正規社員の待遇を考えるうえでの材料を提供できればと思います。

 

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日本の非正規社員の賃金水準は低い

 


(参考:「データブック 国際労働比較2019」(独立行政法人労働政策研究・研修機構)213頁)

上記の表は、一般労働者に対する短時間労働者の1時間当たり賃金の平均について、日本を含む各国間での比較を行った結果を表しています。

このデータを見ると、日本における短時間労働者の1時間当たり賃金は、いわゆる正社員の6割前後にとどまっており、諸外国と比較しても低い水準にあることがわかります。

いわゆる「非正規社員」には、短時間労働者以外にも「有期雇用労働者」と「派遣労働者」が存在しますが、基本給・手当・賞与・福利厚生などの様々な面で、正社員との待遇差が問題となっています。

 

非正規社員に対するボーナス支給は必要?最高裁の判断内容とは

非正規社員に対しては、純粋な時給制を採用し、ボーナスは一切支給しない取り扱いとしている企業もよくあります。

このような企業にとって、2020年10月13日に言い渡された最高裁判決の内容は、ぜひとも知っておくべきでしょう。

 

直近の最高裁判決はボーナス支給を不要と判示

この最高裁判決の事案では、とある医科大学のアルバイト職員が正社員との待遇差を違法であると主張し、大学側に対して賞与などの支給を求めました。

この医科大学では、正職員に対しては年間平均4.6か月分の賞与が支給されていたのに対して、アルバイト職員には一切賞与が支給されていませんでした。

原審である高裁判決では、正社員の60%に相当する賞与の支給を命じましたが、最高裁はこれを破棄し、結論としてはボーナスの支給は一切不要であると判示しました。

この点を捉えて、各種メディアでは「非正規社員の軽視である」という論調で語られることが多くなっています。
しかし話はそう単純ではなく、この最高裁判決には、非正規社員の待遇を考えるうえで、雇用主である企業が注意しなければならない言及が豊富に含まれていました。

 

「同一労働同一賃金」が判断のポイント

最高裁判決が採用する論理のベースとなっているのが、「同一労働同一賃金」という考え方です。

同一労働同一賃金とは、正社員と非正規社員の間の不合理な待遇差を認めないという法律上の原則をいいます。
つまり、「非正規社員が正社員と同じ労働を提供しているならば、賃金をはじめとした待遇を正社員並みに与えよ」ということです。

最高裁判決では、ボーナス(賞与)についても、この同一労働同一賃金が適用される可能性があることを明確に述べています。
そのうえで、具体的な検討を行った結果、以下の事情などを考慮して、アルバイト職員に対するボーナスの支給を不要と判断したのです。

①正職員に対する賞与が、「正職員としての職務を遂行し得る人材の確保やその定着を図る」ことを目的としていること
②アルバイト職員の業務は「相当に軽易」であり、正職員とアルバイト職員の職務内容には「一定の相違があった」こと
③アルバイト職員は、「原則として業務命令によって配置転換されることはない」こと

上記のうち、①の賞与を支給する目的については、ある程度一般論としても通用するかもしれません。
しかし②と③については、すべての会社において当てはまる論理ではなく、個々の会社がアルバイトその他の非正規社員をどのように雇用しているかによって事情が異なってくるでしょう。

そのため、非正規社員の雇用状況によっては、会社にボーナスの支給が法律上義務付けられるケースは大いにあり得ると考えられます。

 

こんな非正規社員にはボーナス支給が必要かも

最高裁判決の論理を踏まえると、非正規社員の雇用形態について、以下の内容が当てはまる場合には、非正規社員に対して正社員と同等のボーナス支給が必要となる可能性があります。

また以下の各点について、完全に正社員と同等とまでは言えないとしても、ある程度それに近い水準での業務遂行を非正規社員に要求している場合は、注意が必要です。
ボーナスの一部支給が義務付けられることもあり得るので確認して下さい。

 

業務の難易度が正社員並み

同じ部署の正社員と比べて、非正規社員にも同等かそれに近い難易度の業務が任されている場合には、ボーナスの支給が必要となる可能性があります。

ここで注意すべきなのは、非正規社員の業務が絶対評価として難しいか簡単かということが問題なのではなく、あくまでも正社員との比較で考える必要があるということです。

たとえば非正規社員が単純労働のみに従事しているケースです。
比較対象の正社員も同様に単純労働のみに従事しており、正社員にだけボーナスが支給されているとすれば、同一労働同一賃金に照らして違法と判断され得るのです。

 

職務上の責任が正社員と同等

正社員と非正規社員が共通の業務に従事しているケースです。
レポートラインが常に「非正規社員→正社員」という形になっていて、正社員だけが業務に対する責任を負うことになっている場合には、正社員と非正規社員が同一の労働に従事しているとはいえないでしょう。

これに対して、非正規社員にも現場のマネージャー的な役割が課されていて、職務上正社員と同等か、それに近い責任を負う取り扱いになっている場合には、正社員並みのボーナス支給が求められる可能性があります。

 

配置転換があり得る

一般企業においては、正社員は会社からの配置転換の命令があれば、正当な理由なくこれを拒むことができません。
正社員に対する厚遇は、こうした配置転換に関するストレスリスクを填補するという意味合いも有していると考えられます。

これに対して非正規社員は、雇用契約上、原則として配置転換なしと定められているケースも多くあります。
この場合は、少なくとも配置転換リスクに対する報償は必要ないということになります。

しかし、非正規社員に対しても正社員と同様、会社側から配置転換の命令があり得るということであれば、正社員に準じた待遇を認める必要があると考えられます。

 

まとめ 非正規社員の待遇はますますセンシティブな問題に

今回の最高裁判決では、非正規社員に対するボーナス支給や、その他の待遇を正社員並みに認めるべきかどうかについて、かなり具体的な検討を行ったうえで判断が下されました。

結論として、ボーナスの支給は不要というものではありました。
しかし正社員と非正規社員の間に不合理な待遇差がないかどうかについては、今後これまで以上に厳密に司法の目が入ってくるようになると考えられます。

後から非正規社員との間で紛争を生じないためにも、マネジメントとしては、非正規社員の待遇の妥当性について検証を続ける必要があります。
法律の専門家を入れ、再チェックを行っておくことが望ましいでしょう。

 

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