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目次
識学という会社を伸ばしてきたエッセンスそのもの
先日『数値化の鬼』という本を出版しました。
この本の売上が絶好調です。発売から1週間もしないうちに、いきなり7万部の増刷が決まりました。
この規模の増刷は出版業界の人もあまり聞いたことがないそうで、私もすごく驚いています。
この本には、識学という会社を伸ばしてきたエッセンスが詰め込まれています。
私たちは創業から4年で上場し、いまも業績を伸ばし続けています。それはまさに『数値化の鬼』に書いてある理論に忠実に従ってマネジメントしてきたからなのです。
今日はこの本の特に大切なポイントを追いながら、私たちがどのようにマネジメントに取り入れてきたのかをお伝えしたいと思います。
「数値化」は序章にすぎない
本の冒頭で「物事をいったん数値化して考える」という話が出てきます。
たとえば「今月は営業をすごくがんばりました」ではなく「今月は先月より10件多く訪問しました」「その結果、受注が2件プラスになりました」と報告する。
このように、数値化すると「客観的事実」をベースにコミュニケーションができるようになり、誤解や認識のズレをなくすことができます。
ただ、この話は私たちからすると基本中の基本です。言うなれば識学の1丁目1番地。
これまでもいろいろな本や記事で言い続けてきたので「ああ、数字で考えなさいっていう話ね」と理解してくれている人も多いと思います。
「確率」ではなく「母数」で考える
大切なのはここからです。
次に出てくるのが「とにかく行動量が大切である」という話。
これ、意外と多くの人がわかっていないんです。
どんな物事も、まず「数をこなすこと」が基本です。野球にたとえるなら、ホームランを打ちたいならバットを振る回数をとにかく増やすしかありません。
ビジネスも同じ。成功することもあれば、失敗することもあります。だから成功を増やすためにはとにかく「行動量」を増やすしかないのです。
ところが、多くの人が「あるワナ」に引っかかって行動量を下げてしまっています。
それが「確率」の概念です。
達成率や契約率などの「確率」に視点がいくと、どうなるか。
率を上げるためには「母数」を減らしたほうが数字がよくなる可能性が出てきます。
それで、行動にブレーキをかけてしまう人が続出するんです。
ビジネスは本来「まず母数ありき」です。業績が厳しいときほど、立ち止まるのではなく「母数を増やすこと」から手をつけるべきです。
苦しいときほど「母数」を増やす
私たちも、苦しいときはまず「母数」を増やす活動をやってきました。
識学の場合、営業はウェブの問合せから始まります。そこに電話をかけてアポを取り、訪問します。
この場合の母数は「アポイント数」です。これを増やすために、主にweb広告とセミナーをやりました。
セミナーは一定の人数が集まらないと効率が悪いです。だから担当者は「ムダなセミナーはやっちゃいけない」と考えたりするものです。
でも売上が伸びないときは、とにかく母数を増やすのが最優先。
なので当時の私は「コケてもいいから、とにかくセミナーの数を増やしなさい」という目標設定をしました。
他の活動に関しても「行動量」の目標を設定して、そこに向けて動きました。とにかく量を減らさないように、動き続けたのです。
多くの会社は、売上が低迷したときに「率」を上げに行ってしまいます。
わかりやすい例でいうと、営業トークや営業資料などの改善に目線がいってしまう。これは率を上げようとする行為です。
もちろんこういった改善は大切なことです。でも、まずは母数の行動量が落ちていないかをチェックして、それを増やすことに集中しないといけません。
問題が起きたときに行動量を落として、やたら「会議」ばかりしてしまう会社もよくあります。
対策会議、対策会議……。それで「何が問題点だったと思う?」と話し合ってばかりいるんです。
私に言わせれば「いやいや、その前に動けや」という話なんです。
「変数」をシンプルに絞り込む
もう一つ、意外と多くの人がわかっていないのが「変数」の考え方です。
この本に出てくる「変数」とは「仕事の成果に直結する要素」という意味です。
たとえば大事なプレゼンに臨むとします。資料作成に何日もかけて、こだわり抜いた資料をつくったとしましょう。
しかし、プレゼンの結果があまり変わらなかったとします。こういう場合「プレゼン資料の完成度」は「変数ではない」と判断します。
いっぽうで、プレゼンでの話し方を見直し「結論から伝えるようにする」を徹底したら、プレゼンの成功回数が増えたとします。これはつまり「プレゼンの伝え方」が「変数だった」ということです。
「変数をみつける」とは、成果を出すために「やるべきこと」を特定し、そこだけに集中するということ。裏を返せば「やらなくていいこと」を特定することでもあります。
ところが、私が見るかぎりこれができている会社はほとんどありません。
多くの会社はたくさんの指標がありすぎて「なにが変数がわからない」状態になっています。
本ではコンピテンシー評価の例が出てきます。コンピテンシー評価とは「積極性」「協調性」「コミュニケーション力」といったその人の特性を評価するものです。
10から20個くらいの項目が用意されることが多いのですが、どの項目が成果につながっているか、きちんと特定できている会社はほとんどないと思います。
そういう会社では、評価はほとんど「儀式」みたいなものです。「ハイハイハイ」という感じで適当に評価しているのではないでしょうか。
けっきょくどの能力を上げればいいかわからないまま、評価の工数だけがかかっている。これでは組織が成長できるはずがありません。
私たちはずっと「変数をシンプルに絞り込む」ということをやってきました。
なにか問題が起きたら、仕事の中身を要素分解して「どのあたりに問題がありそうか」を見極めます。そして、そこに絞り込んで対策を打つのです。
たとえば法人営業なら、資料作成、アポイントメント、訪問時のセールストーク、アフターフォローなどの要素に分解できます。そして、それぞれの要素を改善したときに結果がどうなるかを見ていきます。
このPDCAを回すためにも、先ほどの「母数」が重要になってきます。
まず「母数」があることは前提。その上で、要素分解してPDCAを回しながら「変数」を絞り込む。そして「変数」に集中して対策を打っていけば、組織は成長します。
私たち自身がこの方法で成長してきましたし、もちろん私たちのクライアントでもきちんと成果が出ています。右肩下がりの業界なのに、急成長を遂げて業界内のM&Aを始めてしまったクライアントもいます。
組織が勝つ仕組みは、実はとてもシンプルです。
経営者にこそ読んでほしい
『数値化の鬼』は、後半にいけばいくほど管理職や経営者のようなマネジメント層にとって大切な内容が書かれています。
たとえば先ほどの「変数」の話は、プレイヤーというよりはマネジメント層が気をつけるべきことです。組織のメンバーが迷わずに動くためには、トップがきちんと「変数」を特定することが大切です。
私自身も、自分がいちばん得意なのは「変数」を特定することだと思っています。「いまこの瞬間に大事なのはこの数字だ」と示すことで、スピード感を持って会社を成長させることができたのだと思います。
また、今回のnoteでは取り上げていませんが、後半で出てくる「長期の時間軸で考える」こともマネジメントにおいてすごく大切です。
この本で言いたかったのは、単に「数字で考えなさい」という話だけではありません。
数値化をテーマにして、組織マネジメントで大事な内容をすべて詰め込んだ。そう言ってもいいくらいの自信があるんです。
数字だけだからこそ、数字に感情が出る
本の最後では、3ヶ月に1回の全社総会の話が出てきます。
全社総会では、まずそれぞれの部門の責任者が3ヶ月の数字の結果を報告します。
ここは粛々と進んでいきます。「達成しました」「達成しませんでした」 ただそれだけ。拍手も何もありません。
その次がMVP表彰です。ここからは雰囲気がガラッと変わり、拍手もたくさんあります。
MVPは、社員の中から毎回3、4人が選ばれます。もちろん評価基準は「数字」のみです。
MVPを取った人はステージ上で表彰され、簡単なスピーチをします。
スピーチの内容としては、まわりの人への感謝を述べたり、「どういうふうに自分の課題と向き合ってきたか」を話してくれたり。
泣きながら「辞めようと思ったこともあったけど……」と打ち明ける人もいます。
「数字しか見ないドライな組織なのだから、泣く人なんていないのでは?」と思う人もいるかもしれません。
それは違います。
数字だけだからこそ、数字に感情が出るんです。
わかります?これ。
スポーツや受験のことを考えてみてください。基本的には数字だけで「勝ち負け」が決まりますよね。
そうすると負けたときに、数字が足りかなかったことに対して「悔しい」という感情が出てきます。
この悔しさをバネにして「次はもっといい数字を取ろう」と努力し、人は成長していくのです。
数字で勝った人間が表彰されるのを見たら、数字が足りなかった自分が悔しくなりますよね。その悔しさは、力に切り替わります。
ようするに負けたときに、ちゃんと「悔しい」と思えることが重要です。
もし数字ではなく、なんとなく人気投票のような感じでMVPが決まるとします。それで「なんでアイツが受賞なんだよ」という感情が生まれたとしても、それはなんの力にもなりません。
もちろん社会で働くということは、スポーツや受験とは違います。すべてを数字で決められるわけではありません。
ただ、そういう世界にできるだけできるだけ近づけることで、なるべく「数字の勝ち負け」にだけ感情が出るようにしていくのです。その感情によって、社員たちは成長していきます。
純粋に数字だけで競うから、涙も出るし、拍手もたくさんする。
これはすごく識学らしいところだと思います。
「今回はなんとなくこの人に賞をあげておくか」とか「全員に賞を行き渡らせるようにしよう」などと数字を見ることなく適当にやっていたら、こうはならないでしょう。
「数値化の鬼」という言葉だけを聞くと、冷徹な印象を受けるかもしれません。でもほんとうは「人の成長」を最優先に考える、すごく人間味のある考え方だと私は思います。
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引用元:安藤広大/株式会社識学 代表取締役社長note ベストセラー『数値化の鬼』で私が本当に伝えたかったこと