突然ですが、このようなことを感じてはいませんか?
- 「レポートラインってなに?」
- 「部下が自分以外の別の上司に相談している」
- 「直属の上司ではない別の上司に報告をしても大丈夫?」
いつもとは異なる上司に指示を受けたり、部下が自分ではない上司に相談をしていたら、良からぬ噂がたったり、混乱したりすることが少なくありません。
このようなことを防ぐために必要なのが、明確なレポートラインです。
レポートラインとは指揮命令系統のことで、レポートラインを守らなければ職場で人間関係の問題が生じたり、上司が「従業員のマネジメントができていない」と判断されてしまいかねません。
したがって、レポートラインを守ることは組織が効果的に機能するためにも欠かせないのです。
本記事では、レポートラインの基本的な知識から、必要性や重要性、守らないとどうなるのかなどを解説していきます。
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目次
レポートラインとは?
レポートライン(Report Line)とは、組織内の業務報告や意思疎通を行うための指揮系統に沿った報告経路のことです。
「報告経路」や「決済経路」、「意思疎通に使われる系統」のことを指し、「レポーティング・ライン」と呼ばれることもあります
組織においては、さまざまな情報を共有したり「ホウ・レン・ソウ」が必要になりますよね。
その際に用いられる系統をレポートラインと言って、このレポートラインのなかで、従業員は必要な判断を下したり、報告や連絡、相談をしたりするコミュニケーションをとります。
組織においては、指揮命令系統が明確になっていなければ、組織に属する数多くの従業員を結束させることができず、組織としての目標を達成できないため、レポートラインは重要な役割を担っています。
つまり、レポートラインにより、上司は自分の権限が及ばない部下については指示することはできませんし、部下は自分を指揮する上司の指示だけに従う、というルールが明確になるのです。
この結果、組織として目的を達成するために効果的に業務を進められます。
レポートラインと、それにおいて何を伝え何を伝えないかといったルールが曖昧なままだと、組織が正しく機能しなくなってしまいます。
したがって、組織を機能させるためにもレポートラインを従業員に対して明らかにし、運用していかなければなりません。
責任を認識してコミュニケーションをとる
一般的なピラミッド型組織では、経営者をトップとして役員、部長、課長、担当者といった順に権限が小さくなっていきます。
そして全ての責任は経営者が負い、部門の責任は部長が、そして課の責任は課長が負わなければなりません。
したがって、仕事を任せている側が持つ責任と、任されている側が持つ責任を把握し、お互いに「ホウ・レン・ソウ」を行うことが求められます。
もし、トラブルが生じた時に部長に相談して解決しなかったら別の部長に相談をする、ということはレポートラインを外れるため、してはいけません。
正しくレポートラインを使うのであれば、別の部長ではなく部長の上司である役員に相談し、それでも解決しなかったら経営者に相談します。
したがって、従業員はレポートラインを正しく理解して、報告や相談の際は誰にするべきかを把握しておかなければなりません。
関連記事:報連相とは?目的やメリット、ポイントや必要なシーンを解説
日本よりもレポートラインが厳しく守られているグローバル企業
アメリカではレポートラインが日本よりも重要視されており、レポートラインを外れて上司に報告や相談をしてしまったら、本来報告するべき上司との信頼関係はなくなってしまいます。
外資系企業やグローバル企業は従業員の関係がフラットだというイメージがあるかもしれませんが、業務に関してはレポートラインは必ず守るべきであり、徹底することが求められます。
例えば、直属の上司である課長を超えていきなり部長に相談すると、「直属の課長は従業員を管理できていない」と認識されてしまうこともあります。
上司のハラスメントや上司との信頼関係の構築など、事情によってはレポートラインを外れることもありますが、基本的にはレポートラインは守るべきです。
ただ、レポートラインを守るべきなのは部下だけではなく、上司も同様に守らなければなりません。
例えば、経営者が部長や課長に命令せずに、直接担当者に命令することは組織を破壊しかねない行為です。
なぜなら、部長や課長が自分で部下に指示したとしても、最終的に経営者が自分の部下に直接指示をするのであれば、自分で考えなくなってしまうからです。
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レポートラインを守ることによるメリット
結論から言うとレポートラインが必要な理由は、情報共有をスムーズに行い、上司や経営者の負担を減らすためです。
あなたが所属している組織はどの程度の規模でしょうか? 従業員が5人前後? それとも、100人か、10,000人を超えているかもしれませんね。
仮に、個人経営の規模が小さいお店であなたが働いているとする場合、情報共有や指揮命令の系統は上司である店主とその部下のあなたとの間にしか必要ありません。
したがって、レポートラインの重要性や必要性を感じることはあまりないでしょう。
しかし、そのお店がどんどん成長して規模が大きくなり、従業員が100人、1,000人、10,000人と増えていったとしたらどうでしょうか?
組織はあなたと店主しかいなかった頃とは比べ物にならないくらい複雑になり、中間管理職も増えています。
こうなると、もはやあなたは誰に何を報告し、誰からどのような指示を受け、自分は誰に指揮すればよいのかがわからなくなってしまいます。
このようなとき、必要になるのがレポートラインです。
レポートラインがあると組織の情報共有が機能する
上記のような組織になったとき、自然と下記のような流れが生まれます。
- 新人は先輩社員から業務に関することを指示してもらう
- 新人はその先輩社員に「ホウ・レン・ソウ」を行う
- 先輩社員は係長などの上司に情報共有をする
- 上司はさらに部長、社長といった上司と情報共有をする
このように、順々に組織の下位層から上位層へと情報共有が連続して行われていき、最終的に経営者の耳に入ります。
しかし、このようなレポートラインがない場合、どのようになるでしょうか?
組織に属する全ての従業員が行う報連相は、全て経営者に届くことになり、経営者がすべてまとめなければなりません。
レポートラインで重要なことは、下位層から要所要所で情報を整理していくことなのです。
部下から伝えられた報告を上司はわかりやすく整理してから上司へ伝えていくことで、最終的に経営者に届く頃には要点だけがまとまっており、経営者の負担を減らせます。
このような理由から、レポートラインが求められるのです。
リスクに対して迅速に対応できる
レポートラインを守ると、情報の流れが効率化され、問題や潜在的なリスクが迅速に上層部に伝達されます。
これによって、経営陣は早期に状況を把握し、適切な対策を講じることができるようになるでしょう。
また、明確なレポートラインは責任の所在を明確にし、各レベルでの意思決定を迅速化します。
さらに、レポートラインを遵守することで、組織内の信頼関係が強化されるのもメリットです。
危機的状況下でのチームワークと協力体制を向上させ、リスク対応の効果を高めます。
加えて、適切なレポートラインは組織全体の状況認識を統一し、一貫した対応を可能にします。
これにより、部門間の連携がスムーズになり、複雑なリスクに対しても組織全体で迅速かつ効果的な対処が可能です。
なお、レポートラインを通じた定期的な情報共有は、潜在的なリスクの早期発見にも貢献します。
これにより、問題が大きくなる前に予防的な措置を講じることができ、組織の resilience(回復力)が向上します。
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レポートラインを守らないことによるデメリット
レポートラインを守ることは、組織で働くのに重要なポイントです。
逆に言えば、レポートラインを守らないことで、さまざまなデメリットが生まれます。レポートラインを守らないことによるデメリットを紹介します。
レポートラインが機能しないと信頼関係が構築できなくなる
レポートラインが守られないことのデメリットは、信頼関係が構築できなくなる点です。
レポートラインに沿って「ホウ・レン・ソウ」をすることで、上司と部下との間に信頼関係の構築と維持ができまが、もし先輩社員や直属の上司を通り越して、課長や部長に報告・相談をした場合、自分に相談されなかった先輩社員や上司は「私は信頼されていないのだろうか?」や「私には報告しないのか」と考えるでしょう。
その結果、上司と部下との関係性に不和が生じ、仕事がうまく進められなくなってしまいます。
また、部下は複数の上司から異なる指示をされることで、結果的に特定の上司の指示に背くことになれば、理不尽に怒られてしまうかもしれません。
このような状況に陥らないためにも、業務において「報告・連絡・相談」の相手は明確にして、それを守るようにしましょう。
報告が円滑に行われれば、組織内のコミュニケーションも活発になり、働きやすい職場環境となります。
業務の効率性が低下する
レポートラインが守られないと、業務の効率や生産性が低下する可能性があります。
レポートラインが守られていない場合、情報の流れが乱れ、重要な情報が適切な意思決定者に届かず、経営者や上層部が「何が行われているのか把握できない」という状態に陥ってしまいます。
上司や経営陣が部下や組織の状況を正確に把握できず、指揮命令系統が混乱したり、責任の所在が不明確になって、迅速な意思決定や問題解決が阻害されてしまうリスクがあります。
さらに部門間の連携が弱まって、業務の可視性が著しく低下します。可視性の低下により、潜在的な問題や改善の機会を見逃す可能性が高まります。
結果として、業務効率の低下が懸念されます。
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レポートラインが不明確になる原因とは
創業してすぐであれば、従業員は自分だけしかいないため、全ての役割を経営者がこなします。
そして、徐々に企業の規模が大きくなり人を雇い始めたら、自分がこなしていた役割を少しずつ従業員に任せていくようになります。
まだ従業員が少ないうちは誰がどのような役割や責任があり、どの指揮命令系統にいるのかを把握しやすいですが、さらに企業の規模が大きくなると不明確な部分が増え始め、レポートラインが曖昧になってきてしまうのです。
従業員を経営者一人で把握しきれなくなってくる頃には、中間管理職などの役職や役割も増えているでしょう。
こうなったときに、明確なレポートラインが確立していない場合、そう遠くないうちに企業のガバナンスに問題が生じるようになります。
忙しさを理由にレポートラインを無視してはいけない
やらなければいけない仕事や顧客の対応で忙しく、レポートラインを無視してしまうこともあるかもしれません。
しかし、忙しさを理由にレポートラインを崩してしまうと、上司は「なんだか慌ただしく仕事をしているが、一体何をしているんだろう」と不安や疑念を感じてしまいます。
上司やパートナーにそのようなことを感じさせてしまったら、仕事がままならなくなるでしょう。
上記でグローバル企業はレポートラインに厳しいと解説しましたが、もし日本国内の外資系企業でレポートラインが疎かにされてしまったら、本国は「日本がいまどのような状況にあるのか伝わってこない」となってしまいます。
外資系企業では、「何が行われているのか把握できない」という状態が、信頼関係に最も悪影響をもたらしてしまいます。
これにより「この管理者は機能していない」と判断されてしまったら、急にプロジェクトから外されたり連絡されなくなる可能性があるのです。
外資系企業は判断のスピードが早いため、その猶予はあまりないと考えて良いでしょう。
したがって、外資系企業において最も重要な仕事は、自分がしていることを可視化して、レポートラインを守ることです。
レポートラインは日本企業ではフォーカスされることが少なく、深く考える機会がないかもしれませんが、改めて意識して動き始めると、自分の業務を第三者視点で見られるようになるメリットもあります。
レポートラインを把握するために重要な組織図の意義
組織図は組織形態や組織の構造を図で示したものです。
組織図をつくり組織がどのような体制にあるのかを視覚化することで、従業員は自分が組織においてどのようなポジションにいるのかを把握でき、誰に「ホウ・レン・ソウ」を行えばよいのか、誰の指揮命令で動けばよいのかも明確になります。
また、組織図によって授業員は自分の役割と責任を自覚することができるため、より仕事に集中することができます。
さらに、将来的に自社にはどの部門にどのような人材が必要になるのかを確認できるツールとなるため、経営者にとっても重要です。
組織形態は組織の規模や従業員数、ビジネス環境の変化によって、フラット型組織からピラミッド型組織に組織改革を行うなど、自社に合った組織形態に変更していくこともあるでしょう。
そのようなときは、組織図も同時に変えなければなりません。
もし変えずにいたら、従業員の役割や責任、報告や相談を行うレポートラインが不明瞭になるため、仕事上でトラブルが生じやすくなります。
組織図をつくる方法
先述したように、レポートラインを明確にするためにも、組織図は欠かせません。
組織図をつくる際は、「なぜ組織図をつくるのか?」という目的を明確にします。
組織図はレポートラインを明確にすること以外にも、「人材のマネジメント」や「効率改善」といったさまざまな目的でつくられます。
続いて、組織内の部署や課役職、業務内容や指示系統などを全て洗い出していきます。
このときに、展開する事業によって必要な部や課があれば、それも挙げておきます。
次に、組織が現在抱えている従業員を当てはめていきます。
人材の最適な配置には、それぞれの人材がどのようなスキルや能力があるのかを把握しておかなければなりません。
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まとめ
ここまでレポートラインについて基本的なことから、必要な理由や重要性を解説してきました。
あなたの会社ではレポートラインはしっかりと機能しているでしょうか?
日本企業ではあまり馴染みがないかもしれませんが、レポートラインを明確にしておくことで、上司や部下との信頼関係が構築できたり、コミュニケーションの活発化などさまざまなメリットがあります。
対して、レポートラインを無視した報告や相談は、人間関係をギクシャクさせてしまいかねませんので注意しておきましょう。
特に外資系企業やグローバル企業においては、レポートラインの無視は自分だけではなく直属の上司などにも悪い影響を与えてしまいます。
もし、現在働いている企業でレポートラインが明確に設定されていなければ、ぜひ設定してみましょう。