突然ですが、このようなことを感じてはいませんか?
- 「売れない商品をどうにかして売りたい」
- 「ウェブサイトを使って商品をもっと売りたい」
そんな時には、ロングテール戦略を用いることで、普段はあまり売れない商品で大きな利益をあげることができます。
実際、通販大手のAmazonは売れない商品をいくつも扱うことで、莫大な利益を手にしています。
本記事ではロングテールについての基本的な知識から、成功した企業の事例、メリットやデメリットを解説していくので、ぜひ自社の戦略に取り入れるための参考にしてみてください。
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ロングテールとは
インターネット通販やECサイトでの売り上げにおいて、普段はほとんど売れることがない不人気な商品の売上高が、売れ筋である人気商品の売上高を超える現象のことを、「ロングテール」といいます。
一般的には「パレートの法則」や「20-80の法則」と呼ばれるように、取り扱う商品のうち20%が、売り上げ全体の80%を支えていると考えられています。しかしロングテールでは、取り扱っている商品のうち80%の売れない商品群の売り上げが、よく売れるベストセラー商品の売り上げを超えてしまうのです。
このように、「成果全体の80%を支えるのは要素全体の20%である」という、パレートの法則の逆を示すような現象でもあるため「逆パレートの法則」ともよばれます。
縦軸に売れた数を、横軸に商品別の売り上げをとったグラフを作成すると、売れる人気商品は長い首のようになり、売れる数の少ない商品が長い尻尾(ロングテール)のように見えることから「long tail」という名前がつきました。この法則の発見者は、アメリカの雑誌「WIRED」の編集長をしているクリス・アンダーソン氏です。
このロングテールで、大きな売り上げを得ることに成功しているのが、「Amazon」です。一般的な書店では、書籍を陳列するスペースに限りがあるため、よく売れる人気の書籍を中心に陳列することになります。
しかし、インターネット上にはそのような空間的な制約が存在しないため、売れる書籍からたまにしか売れない書籍まで全て取り扱うことができます。これにより、たまにしか売れない書籍でも、莫大な品数を取り揃えることでAmazonはECサイト売り上げランキングで1位を達成しています。
また、この概念はSEOやウェブマーケティングにも用いられており、その効果が実証されています。
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ロングテールが提唱される前は、先程解説したパレートの法則に基づいた販売戦略が用いられており、ある程度の効果が得られていました。具体的には、売り上げの80%を支える人気商品や売り上げの80%を支える優良顧客といった、全体の20%という数少ない、それでいて利益を上げてくれるセグメントに対して経営資源を集中させることで、さらによく売れるようにしたり、取引の維持をしてきました。
このパレートの法則が効果的だった背景には、インターネット通販がまだ台頭していなかったことがあります。つまり、リアル店舗ではスペースに限りがあるため、抱えられる在庫や陳列できる商品の品数にも限界がありました。
さらに、莫大な種類の商品をリアル店舗で扱ったとしても、販売員がその全ての商品について把握することはできません。また、その全ての商品の宣伝や広告をすると費用がかかりすぎてしまいます。
ロングテールが重要視される背景
それではなぜ、現代はロングテールが重要視されているのでしょうか?
その理由は、インターネット通販の普及やテクノロジーの進歩が挙げられます。
インターネット通販であれば商品を陳列するスペースに限界がなく、ほぼ無限に商品を取り扱うことができます。そして、これを実際に行って成功しているのがAmazonです。リアル店舗では売れるまで商品を管理する必要がありますが、インターネット通販であればこのコストがほぼ必要ありません。
通販であれば、一年に数回しか売れないような商品だとしても、倉庫で大量に取り扱えます。これにより、同じような商品をいくつも取り扱うことで、最終的には大きな売り上げにつなげられるのがロングテールです。
また、インターネットが普及する前は、テレビなどの大きな影響力をもつメディアによる宣伝効果が高く、消費者は皆同じものを求める傾向がありました。これにより、宣伝をした人気商品をお店においておけば売れるという仕組みがあったのです。
しかし、Yahoo!やGoogleといった検索エンジンがが普及してからは、誰でも欲しい情報にアクセスできるようになった結果、ニッチな商品でも消費者が見つけられるようになり、売れるようになったのです。
さらに、インターネット上に商品を紹介するページを一度作ってしまえば、自ら宣伝をせずとも検索エンジンを介して興味のある人に見に来てもらえるため、広告費や宣伝費を削減できるようにもなりました。
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それでは、実際にロングテール理論を活用して成功している企業の事例をご紹介します。
ここでは下記の3つの事例を見ていきましょう。
- Amazon
- イケア
- 地方のスーパー「A-Z」
それでは1つずつ解説していきます。
Amazon
ロングテール理論を最大限に活用して、大きな成功を収めているのがインターネット通販の代名詞「Amazon」です。Amazonはeコマースの売り上げランキングでは1位の座を独占しており、その売り上げはおよそ1兆7,000億円と、2位であるヨドバシカメラの約1,300億円を大きく引き離しています。
なぜ、Amazonはこれほどまでに成功しているのでしょうか? その秘密は、おそらく多くの人が実感しているであろう、「品数の多さ」です。Amazonは莫大な商品数を取り扱っており、探しているものはニッチなものでもほぼ見つかりますよね。
そして、その莫大な商品数を取り扱うことを可能にしているのが、インターネットです。消費者は何か欲しいものがあれば、まずAmazonで検索するのではなくGoogleで検索します。しかし検索結果にはAmazonの商品ページが表示されるため、そこから多くの消費者が流入することで人気のない商品でも売れるのです。
イケア
イケアといえば、「デザイン性が高い家具を安く買うことができる」と消費者から支持を得て成長した企業です。実はこのイケアも、ロングテール理論を活用して成功しました。
イケアの戦略の特徴は、都心から離れた郊外に規模が大きい店舗を置いていることです。こうすることで、店舗を倉庫としても使えるうえに、郊外の地価が安いところに出店できるため、コストを低く抑えられます。
この結果、値段の安さとデザイン性の高さ、そして品数の多さで集客力を高めて、ロングテール戦略を実践しています。
地方のスーパー「A-Z」
イケアと同じようなロングテール戦略を、別の商品で成功させているスーパーも存在します。
そのスーパーが「A-Z」というスーパーです。A-Zの敷地面積は東京ドームが6個入るほどで、圧倒的な品数を誇っています。一般的なスーパーでは抱えられる在庫の数は数万点ほどですが、A-Zの場合は37万点もの在庫が存在し、スーパーであるにも関わらず車を取り扱うほど幅広い商品を扱っているのです。
インターネット通販ではスペースという制限がなくなったことでロングテール戦略が可能になりました。しかし、リアル店舗でも圧倒的なスペースを確保できればロングテール戦略が可能になるのです。
消費者に対して「ここならとりあえず欲しいものが見つかる」と思ってもらうことで、圧倒的な集客力と高い売り上げを実現しています。
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ロングテール戦略を実践することで得られるメリットが下記の3つです。
- 安定した売り上げを実現できる
- 消費者の多様な需要に対応できる
- コストパフォーマンスに優れている
それでは1つずつ解説していきます。
安定した売り上げを実現できる
売り上げを少数の人気商品に依存していると、流行や技術の発展などによる環境の変化で消費者のニーズが変化し、売り上げが不安定になる危険性があります。
しかし、あまり売れない多数の商品によって多くの売り上げを得ている場合は、このようなことがありません。なぜなら、売れない商品は時代や環境の変化によって、需要が大きく変化しないからです。
一つの商品で莫大な利益をあげられることはありませんが、将来的に安定的な収益をあげられるため、事業運営に有利となります。
消費者の多様な需要に対応できる
現代は消費者の価値観も多様化が進んでおり、さまざまな商品が求められる時代です。そんななかで多種多様な商品を取り揃えておくことで、消費者の多様な需要に対応することができます。
それにより、消費者に対して「ここなら欲しいものが見つかる」という印象を醸成できるため、消費者が何か探す際の購入先として第一候補となる可能性が高まります。
この結果、リピーターが増えてさらに利益をあげられるでしょう。
コストパフォーマンスに優れている
ロングテール戦略を採用する場合は、商品を仕入れる以外のコストがほとんど必要なく、コストパフォーマンスに優れています。
ウェブサイトをつくるくらいであれば、どのような企業でも可能なため、ほとんどコストがかかりません。サイトで売り上げを確保するにはそれなりの時間がかかりますが、一度構築してしまえば、安定的に収益につながります。
成功事例で紹介した「A-Z」のように、実際に広い土地を確保する場合は別ですが、それでもイケアのように郊外に展開するのであれば、比較的低コストで導入できるでしょう。
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上記のようにロングテール戦略は低コストで取り入れることができ、安定的な収益につながるため、とても優れているように感じます。とはいえ、デメリットがない万能な戦略というわけではありません。
ロングテールには下記のようなデメリットや弱点があります。
- ウェブサイトを構築する手間がかかる
- ロングテール戦略が軌道に乗るまで時間がかかる
それでは1つずつ解説していきます。
ウェブサイトを構築する手間がかかる
ロングテール戦略を気軽に導入する手段としては、ウェブサイトの作成が挙げられます。
しかし、数多くの商品について一つひとつ紹介するコンテンツをつくるには、画像を用意したり、十分な量の説明文を書くことが求められるため、楽な作業ではありません。地道に作成していかなければならないため、時間と手間がかかります。
例えば、服を取り扱うのであれば、下記のような作業が必要になります。
- アイテムを一点ごとにページを作成する
- 服の様子やサイズ感がわかりやすいような写真を用意する
- 服に関する情報や注意点を入力する
一つひとつを丁寧につくらなければ消費者が購入まで進んでくれないため、どれも手を抜くことはできません。したがって、取り扱う商品が多いほど手間と時間がかかります。
ロングテール戦略が軌道に乗るまで時間がかかる
ロングテール戦略を展開するためにウェブサイトを構築するのは地道な作業が必要です。
しかし、ロングテール戦略はウェブサイトの構築だけでは終わりません。作成したページを多くの人に見てもらうためには、その入口である検索エンジンで1ページ目に表示される必要があります。
例えばあなたが何か欲しいものを探しているとき、Googleで検索したとします。その時、まず開くページは一番上に表示されているものであり、2ページ目以降はほとんど見ないですよね。したがって、作成したページは上位表示をさせる必要があるのです。
ですが、現在はGoogleなどの検索エンジンで上位表示を目指すのは至難の業です。現在上位表示されているページのほとんどは、手間ひまかけてSEO(検索エンジン最適化)の施策を行っており、そこでは熾烈な上位表示争いが起こっています。
したがって、数日や数週間では結果を出すのは難しいため、「ロングテール戦略を使って短期間で売り上げを倍増させる!」という方は注意しなければなりません。しかし、だからこそ手間と時間をかけて上位表示できれば、結果を得やすいということでもあります。
まとめ
ここまで、ロングテールの事例やメリット、デメリットを解説してきました。
ロングテールは軌道に乗るまでは時間と手間が必要な戦略ですが、一度軌道に乗せることができれば、売り上げに大きく貢献する戦略です。
どのような企業でもウェブサイトの作成なら低コストで導入できるため、まずは商品を紹介するページの作成をしてみてはいかがでしょうか。一度作成してしまえば、放っておいても商品の宣伝が可能になるためコストパフォーマンスに優れています。
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