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【プロジェクト管理】EVMの計算式を徹底解説!

EVMの計算式を徹底解説

プロジェクトマネジメントの一つの手法である「Earned value management(EVM)」は、現在の進捗状況や将来の課題を数字で可視化できる有用なツールです。

この記事では、そんなEVMについて具体例を用いながらわかりやすく解説していきます。

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EVMとは?

アーンド・バリュー・マネジメント(Earned value management: EVM)は、プロジェクトのパフォーマンスや進捗状況を客観的に測定するためのプロジェクト・マネジメント手法です。

  • スコープ(測定の対象)
  • スケジュール(進捗状況)
  • コストの測定

上記3つを「1つの統合されたシステム」にまとめるという特徴があります。

EVMを使えば、プロジェクトの進捗度合いを予算とコストの観点から分析できます。

従来のプロジェクトマネジメント手法では、プロジェクト完了までに「何時間かかるか」という点でプロジェクトの評価を行っていました。

しかし、EVMは、プロジェクト完了までの時間だけではなく、ここに「人件費(コスト)や労力(スコープ)」という要素を加えて、プロジェクトの進捗度合いを管理します。

つまり、スケジュール(時間)、コスト(費用)、スコープ(労力)を統合してプロジェクトのパフォーマンスを測定するプロジェクトマネジメント手法ということです。

EVMでは、「プロジェクトの完了」という目標への到達度を、金銭(主にコスト)価値に変換したEV(Earned Value:アーンドバリュー・出来高)という概念で考えていきます。

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EVMを活用することでできること

EVMを用いることで、プロジェクトのパフォーマンスを正確に予測することができるようになります。

EVMは、プロジェクトの基本計画に対する作業の進捗状況を評価するため、基盤となる情報を作業者の技術、時間、コストのパフォーマンスといった要素と関連づけて測定し、プロジェクト・マネジャーに提供します。

言い換えれば、EVMは、計画値と実績値に基づいて将来を予測し、それに応じてプロジェクト・マネージャーが意思決定できるように支援するためのシステムです。

EVMの特徴

EVMは具体的にどのような特徴のあるツールなのか、まずはそのメリットを確認しましょう。

メリットは以下の6つです。

  • 作業内容とコストをマッピングし、未知の要素を定量化できる
  • プロジェクトのベースラインと現状を比較して、今後のプロジェクトの道筋を示せる
  • データに基づいたフレームワークを作成し、将来に向けたアクションや意思決定を手助けする
  • プロジェクトのスコープや予算の調整、機能のロールバック、リソースの調達、優れた技術への投資、顧客の期待値の設定などに迅速に取り組める
  • 明確な定量化によってプロジェクト全体を可視化し、ステークホルダーに対する明確な説明を可能にする
  • プロジェクトレベルとポートフォリオレベルの両方で全体像を把握できる

EVMをうまく活用することで、プロジェクトマネジャーの意思決定スピードが向上する傾向にあります。

様々な企業・組織で活用されるEVM

EVMは、主に政府機関のプロジェクトで使用されていますが、多くのプロジェクトに適用することができます。

プロジェクトの予算とスケジュールの測定値を統合することで、プロジェクトのコストとタイムラインの全体像を把握することができるようになり、プロジェクトに与える影響も把握することができます。

EVMはプロジェクトの進捗度合いを数字で把握する

プロジェクト完遂の障害となる、スケジュールやコストの逸脱の要因にはさまざまなものがあります。

例えば以下のような障害があります。

  • 顧客の優先順位や要求の変更
  • プロジェクトの作業範囲の変更
  • 悪天候
  • 新しい規制
  • 必要な材料の入手不能
  • リスク管理計画の不在

EVMを活用することで、コストとスケジュールの差異を計算し、プロジェクトへの影響を最小限に抑えるための適切な対策を施すことができるようになります。

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EVMの構成要素

EVMは以下の要素で構成されています。

  • PV(Planned Value・計画上の出来高)
  • AC(Actual Cost・実際に掛った実績値)
  • EV(Earned Value・実際に完成している実績値)
  • BAC(Budget At Completion・完成時総予算)

もう少しわかりやすくするために、「識学太郎さん」がEVMを活用してPM(プロジェクトマネージャー)を例に出し解説します。

議論の前提:識学太郎さんの場合

EVMを活用するために以下のような状況を考えます。

具体例
  • プロジェクトマネージャーである識学太郎は、ある建設プロジェクトの、現在のアーンドバリュー、コストの差異、スケジュールの差異、完成時の新しい見積もりを決定することを任されています。
  • この建設プロジェクトでは、新しい10戸のアパートを建設します。10戸のアパートすべてを建設するための予算は500万ドルです。このプロジェクトは2年後に完遂する予定です。
  • 識学太郎は、この建設プロジェクトが1年経過した時点で、アーンドバリューの計算を検討しています。
  • 計算時点において、アパートのうち4棟が完成しており、これはプロジェクト全体の作業量の40%にあたります。
  • これまでの実際のコストを追跡し(トラッキングし)、照合した結果、220万ドルであったと算出されました。

上記の具体例から、これまでのプロジェクトのパフォーマンスを判断するために必要な詳細情報がすべて得られたことになります。

それでは、実際にこの数字を使ってプロジェクト管理を始めていきましょう。

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EVMを使ったプロジェクトマネジメント

アーンドバリューを管理する最初のフェーズは、現在のプロジェクトに関して、4つの情報を収集することです。

  • 完成時総予算(Budget At Completion: BAC)
  • アーンドバリュー(EV)
  • 計画値(PV)
  • 実際のコスト(AC)

それぞれ実際の数値を使って確認していきましょう。

完成時総予算(Budget At Completion: BAC)

完成時総予算は、特定のプロジェクトや作業段階の予算総額のことです。

アーンドバリューを計算するための重要な数字の一つであり、プロジェクトの全期間を通じて変わらず、パフォーマンスの評価方法に強い影響を与えます。

予算が正確であればあるほどEVの計算がより正確になります。予算を膨らませればプロジェクトマネージャー自身に余裕が生まれますが、完成時総予算を過小評価すれば、次に説明するアーンドバリューの結果が悪化するため注意が必要です。

上記の例では、プロジェクトの初期予算である500万ドルがこれにあたります。

アーンドバリュー(EV)

EV(Earned Value: 実際に完成している実績値)を求めるには、完成時の初期予算(総予算)に、現在までに完了したプロジェクト(作業のフェーズ)の割合を乗じます

 EV = プロジェクトの完了率(実績) x 完了時の予算(BAC)

現在、プロジェクトの40%が完了していることがわかります(10戸のアパートのうち4戸が完了している)。

この40%にBACを掛け合わせることで、現在のアーンド・バリュー(プロジェクトでこれまでに生み出した価値の額)を簡単に算出することが可能です。

プロジェクト開始から1年後のEV = 40% x $5,000,000 = $2,000,000

計画値(PV)

プロジェクトのパフォーマンスを正しく理解するためには、他にもいくつかの詳細情報を収集する必要があり、その一つが計画値です。

計画値(PV)は、完成時の予算に、その段階までに完了する予定だったプロジェクトの進捗率(%)を掛けたものです。

たとえば、12か月を予定していたプロジェクトにおいて6ヶ月経過した場合(直線的な進行を想定)、計画値はこの作業完了量(50%)に完成時の初期予算(BAC)を掛けたものが計画値になります。

 PV = プロジェクトの完了率(計画) x 完成時の予算(BAC)

今回の建築プロジェクトを例にとると、予定された2年のプロジェクトのうち1年が経過しているので、予定していた作業の50%が完了していることを意味します。

BACにプロジェクト完了率を掛けることによって、現在の計画値を得ることができます。

 現在のPV = 50% x $5,000,000 = $2,500,000

こプロジェクト開始から1年後の段階では、このプロジェクトが250万ドルの価値を生み出すことを計画していることがわかります。

実際のコスト(AC)

PVは、スケジュール・パフォーマンス(プロジェクトの進捗度)を理解するために必要である一方で、実際のコスト(Actual Cost: AC)は、それとは別にコスト・ベースでパフォーマンスを測定するために計算されます。

ACとは、現在までにプロジェクトで発生した実際のコストのことです。計画値や実際の進捗状況を決定するのに使用したのと同じ時間軸でACを計算します。

上記の建設プロジェクトの例では、現在までに220万ドルの総コストが発生しています。この指標に関連する重要な問題は、企業やプロジェクトマネージャーがリアルタイムでコストを把握することが難しいということです。

コストや経費の報告が不十分だと、この数字が歪んでしまい、すべての計算が狂ってしまいます。

ただし、優れた財務管理ツールやプロジェクト・デリバリー・ソフトウェアを使用すれば、ACに関する情報を集約して管理することができるようになります。

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​​EVMの活用(1) ~プロジェクトのコストパフォーマンスを判断する

企業は、商品やサービスを提供するために発生するコストよりも、より多くの対価を得ることによってプラスのキャッシュフローを生み出さなければなりません。

したがって、プロジェクトベースで事業を展開する企業は、プロジェクト期間中にどの程度のコストがかかっているのかを把握する必要があります。

中規模や大規模なプロジェクトでは、コストはあっという間にコントロールできなくなります。

遅延、変動、購買管理の不備、その他の予期せぬ影響により、当初の予算に大きな影響を与え、プロジェクトと会社を危険にさらすことになります。

EVMを活用する大きなメリットの1つは、コストパフォーマンスを正確に把握できることです。そのために、コスト差異(Cost Variance: CV)という指標を使用します。

その名の通り、計画したコストと実際に発生したコストの差異を知るための指標です。

コスト差異 = EV – AC

先の例では、EVとACをそれぞれ計算していたので、CVを求めるのはとても簡単です。

コスト差異 = $2,000,000 – $2,200,000 = -$200,000

この例では、コスト差異はマイナス(予算オーバー)で、-現時点でプロジェクトの予算が20万ドル超過していることを意味します。

このように、EVMはプロジェクトのコストパフォーマンスを評価するのに役立つのです。

EVは、実際にどれだけの価値を生み出したかを示してくれるので、ある価値を生み出すためにどれだけの費用を費やしたかを正確に知ることができます。

この例では、生成した価値よりもはるかに多くの費用を費やしており、プロジェクトは赤字になっています。

EVMの活用(2)プロジェクトの進捗状況を判断する

プロジェクトを管理する上で、予定通りの予算でプロジェクトを完了させることも重要ですが、時間通りに(スケジュール通りに)商品を納品することも大切です。

2年後にプロジェクトを完成させると約束したら、その約束を守れるようにしなければなりません。

このEVMの例において、プロジェクトの進捗状況を判断することは、コスト・パフォーマンスを決定することと非常に似ていますが、CVの代わりに、スケジュール差異(Schedule Variance: SV)という指標を活用します。

スケジュール差異 = EV – PV

上の建設プロジェクトの例を用いる場合、スケジュール差異は以下のようになります。

スケジュール差異 = $2,000,000 – 2,500,000 = $-500,000

この計算が示しているとおり、コスト差異と同様に、スケジュール差異もがマイナスとなっており、スケジュールが遅れていることを意味します。

この例では、予算超過(20万ドル)よりもスケジュール超過(50万ドル)の方が多いということがわかります。

つまり、生み出している価値よりも多くのお金を費やしているだけでなく、スケジュール(進捗度)も遅れているというわけです。

EVMの活用(3)プロジェクトの未来を予測する

EVMの真の強みは、プロジェクトの進行中にプロジェクトのパフォーマンスを判断し、手遅れになる前に軌道修正できることにあります。

プロジェクトが終了し、予算超過やスケジュール遅延の末に納品されてからパフォーマンスを判断するのではなく、プロジェクト中に正しい判断をする手助けとなるのです。

これまでの計算結果から、プロジェクトが最終的にどこに到達するのかをより正確に予測して、ステークホルダーにこれらの詳細を伝え、プロジェクトを軌道に乗せていくには、EVMの活用が効果的です。

EVMを使ってプロジェクトの未来を予測するためには、新しい指標を作成する必要があります。

ここでは、コストパフォーマンス指標(Cost Performance Index:CPI)とスケジュールパフォーマンス指標(Schedule Performance Index: SPI)という2つの指標について説明していきます。

  • CPI =EV / AC
  • SPI = EV / PV

これまでの用いてきた例の数字を使うことで、CPIは以下のようになります。

CPI = $2,000,000 / $2,200,000 = 0.909

CPIは、計画に対する金銭面でのコスト効率を算出するために用いられる指標です。

この場合は、現時点で完了した作業のコストである「EV」を、実際に発生したコストである「AC」で割ることで算出します。

算出されたCPIが1よりも大きければ計画していた予算内に進んでいることを意味します。また、1であれば予算通りという意味となり、1よりも小さければ予算オーバーであるため、原因を見つけ改善しなければなりません。

同様に、SPIの計算は以下の通りです。

 SPI = $2,000,000 / $2,500,000 = 0.8

SPIは、現時点完了した作業のコストである「EV」を、計画時に見積もった出来高である「PV」で割ることで算算できる指標です。

算出されたSPIが1よりも大きければ当初の計画よりも進んでいるため、順調といえるでしょう。一方で1であれば計画通りに進んでいるという意味です。

1よりも小さい場合は計画よりも遅れていることを意味するため、スケジュールを調整しなければなりません。

これらの指標が得られたことでプロジェクトの未来を予測することが可能となります。

まず、完成時の見積もり(Estimate At Completion: EAC)を計算してみましょう。完成時の見積もりを計算するにはいくつかの方法がありますが、BACをSPIで割るのが最も良い方法の一つです。

EAC = $5,000,000 / 0.8 = $6,250,000

このEACは、これまでのプロジェクトの進捗状況を、プロジェクトの残りの部分に反映したものです。

この計算式が示しているとおり、完成時の新しい見積もり(EAC)は625万ドルとなり、当初の予算を125万ドル上回っていることがわかります。これは、プロジェクトの最初の部分で予算をオーバーしていたことを考えると納得できます。

このままの流れで、同じレベルの効率で進めていくと、さらに予算を上回ることになります。

さらに、この数字を使うことで、資金やキャッシュフローの必要性を理解するにも繋がります。

プロジェクト完了時のEAC = $6,250,000 – $2,200,000(AC) = $4,050,000

この計算式が示しているように、もし、プロジェクトの後半でプロジェクトを改善する方法が見つからなければ、さらに405万ドルが必要となることがわかります。

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EVMで利用できるプロジェクト管理ツール4選

ここからは、EVMを使ったプロジェクト管理にもおすすめできる4つのツールを紹介します。どのツールにも無料プランがあるので、実際に利用してみて、使い勝手や操作感を比べてみてください。

Time Krei

Time Krei(タイムクレイ)は、プロジェクトを効率よく回すための『プロジェクト管理ツール』です。

経営者やマネージメント層の「知りたい」を見える化し、課題解決に導きます。カスタマイズで各種外部連携を可能としたり、グループウェア機能も使用することで予実管理をより効率化するなど、理想的な一元管理を実現します。

Clarizen

Clarizen(クラリゼン)はプロジェクトのスケジュール・進捗のみならず、 リソース・コスト・課題などをオールインワンで管理することが可能なSaaS型のプロジェクト管理サービスです。

機器の準備・アプリケーションのインストールが不要で、 どこからでもすぐにクラウド上のデータにアクセスし、 リアルタイムにプロジェクトの管理を行うことが可能です。

TeamSpirit

TeamSpirit は勤怠管理や工数管理など、これまでバラバラに管理されることの多かった業務アプリケーションを高度に一元化したクラウドサービスです。

従業員は複数の登録作業を一つのインタフェースで完結できるようになるため、日々の事務作業に占められる間接業務の効率化、そしてシステム運用にかかるトータルコストの大幅な削減に貢献します。

クラウドログ

クラウドログは、クラウド型プロジェクト・工数管理ツールです。

パソコン・タブレット・スマートフォンなどからの簡単な操作で業務時間や工数を登録することができ、登録したデータをもとに自動で各種レポートやガントチャートが作成されます。

また、チームや個人の勤務状況、プロジェクトごとの利益計算やタスクの進捗状況などを確認することができます。

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まとめ:プロジェクト管理ツールを使って効率的なプロジェクト管理をしよう

EVMを使ったプロジェクト管理は、プロジェクトマネジャーであれば必ず理解しておきたい手法です。

やみくもに取り組んでも、プロジェクトに参加する従業員の理解は得られず、プロジェクトの進捗度にも影響が出ることになります。しかし、EVMを活用することで、プロジェクトの進捗度合いを数字で示すことができるようになり、従業員も納得して作業にあたってくれるようになります。

EVMを活用するにあたっては、データを集めるところから始めなければなりません。

しかし、最近では、EVMを支援してくれるプロジェクトマネジメントツールも普及してきているため、よりEVMは取り入れやすく身近な存在となってきています。

この機会にぜひマネジメントの一環として取り組んでみましょう。

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