今ビジネス書で話題になっているティール組織。ティール組織とは、「組織の目的を実現するために、メンバー全員が共鳴する組織」です。
目的は常に進化し続け、上下関係はなく、メンバーの多様性を尊重しています。
ティール組織に関する本を読んだ方からすると、「本当にティール組織は作ることができるのか?」という疑問を持つ方もいるかもしれません。
そこで今回はティール組織にも所属している私から見た、ティール組織の内情をお伝えいたします。
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目次
ティール組織について
なぜティール組織が注目を浴びているのか。それは従来までの組織形態とは、明らかに違うからでしょう。
従来の上司と部下というピラミッド型組織とは違い、やりたい人が責任をもってタスクを行うフラット型組織だからです。
実はこういう組織形態は組織論としては存在していました。
従来のピラミッド型であるタイト(きつい)な組織と比較して「ネットワーク型組織」とか「ルース・カップリング(ゆるい連結)」と呼ばれています。
今回の「ティール組織」は前述した2つの概念よりも、具体的な実例をあげながら体系的にまとめ、ビジネス界で広めたことに意味があります。
以下、ここでは「ティール組織」を説明していきます。
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そもそもティール型組織とは?
ティール組織とは、「組織の目的を実現するために、メンバー全員が共鳴する組織」です。目的は常に進化し続け、上下関係はなく、メンバーの多様性を尊重しています。
ティール組織の特徴は大きく分けて3つのポイントがあります。
- 自主経営:意思決定に関わる権限と責任を全メンバーにあたえる
- 全体性:全メンバーが自分の個性や長所を前面にだして活動する
- 組織の存在目的:利益は副産物のものであり、あくまでも自分たちの存在目的に耳を傾けている。
「ティール組織」の著者であるラルーは人類の発達によって進化していった組織の形態を5つのカラーで体型化しました。
- Red組織(衝動型):個人の力で支配的なマネジメント 例ギャング
- Amber組織(順応型:階級とルールが厳密なマネジメント 例:軍隊
- Orange組織(達成型組織):徹底した実力主義のマネジメント 例:多国籍企業
- Green組織(多元型組織):価値観と文化を重視のマネジメント 例:NPO
- Teal組織(進化形組織):組織を一つの生命体として捉え、常に進化し続けるマネジメント
ティール組織は、人類が発達してきたからこそなしえる組織ではないのかとされています。
幼児教育の最終系はティール人間の育成?
上述したのは組織の進化過程ですが、実は人間の進化過程も同じように説明できる理論があります。
吉村正剛先生が提唱している「成長と発達のステージ理論」です。全ての人間が誕生してから年齢を重ねるごとに上がっていく成長のステージを、理論づけ体系化しています。それによると人間のステージは1から8まであるとされています。
- ステージ1「本能」:肉体と感覚の本能を研ぎ澄ます時期(0歳から5歳ぐらいまで)
- ステージ2「感性」:感性豊かにどこまでも感性を広げる時期(5歳から10歳ぐらいまで)
- ステージ3「思考」:錯覚力が思考の力を育む時期(10歳から20歳前後まで。青年・反抗期)
- ステージ4「調和」:社会性を身に着け調和を重んじる時期(サラリーマン)
- ステージ5「自立」:導かれる側から導く側へ自立する時期(経営者)
- ステージ6「自省」:人生の目的を見つけ自省する時期(ボランティア、社会貢献)
- ステージ7「超越」:すべてを達観し超越する時期(進化型)
- ステージ8「覚醒」:あらゆる世界を覚醒する時期(悟りを得た人)
人間は志があれば、ステージ7までは到達できるとされています。しかし、現実はステージ4のサラリーマン、ステージ5の経営者で止まっているのが現状です。
吉村先生は、ティール組織について言及されていませんが、「ステージ3」の人間と「Red」組織、「ステージ4」の人間と「Amber」組織、「ステージ5」の人間と「Orange」組織、「ステージ6」の人間と「自省」組織、「ステージ7」の人間と「Teal」組織が対応していると私は感じています。
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所属しているティール組織の特徴
私はティール組織にも属しています。ここでは所属しているティール組織の特徴を説明していきます。
ステージ7(ティール型)人間を養成することが目的の組織
まず、所属している組織の目的です。
目的は、そもそもステージ7(ティール型)の人間を増やすことです。
そのためにさまざまな情報や書籍を読者に提供しています。
幅広い人が在籍している組織
構成メンバーとしては多種多様な人が存在しています。年収1億以上高収入所得者、元オリンピック日本代表候補の運動選手、医師、サラリーマン、契約社員、フリーター、専業主婦などが在籍しています。
一般の組織では、ここまで多種多様な人は集められないと思います。
報酬に対する考え方が違う組織
報酬制度は、現状はいろいろ試行錯誤している状況です。当初は一律で支給、その後は金銭的に組織に貢献した人に支給するなどと変動しているのが現状です。
このように報酬形態が変動しても成り立っている理由としては2つ考えられます。
- 報酬制度変更毎に、了承の上プロジェクトに再申し込みをしている。
- 当組織以外で、生活をするための報酬を得ている
海外のティール組織の事例を見ても、報酬制度を頻繁に変えているところはあるようです。それがティール組織だから成立しているという理由にはなりませんが、少なくとも、組織メンバーは、報酬制度に関しては寛容的であるがゆえに成立しているのではと思います。
進化途上であると認識しているため、常に小さいテストを何度も繰り返している組織。
この点も通常の組織とは違います。
会社組織であれば組織のゴールがあり、逆算して今やることをタスクに落とし込んでいくというような「逆算思考」で作業を行うでしょう。
当組織は未来のゴールに対して、現状ではその最適解は分からないという認識をもっています。なぜなら、現状で分かる最適解(と思っているもの)というのは、時間が経てば最適ではなくなるからです。
仮に「逆算思考」でゴールを達成できるとしたら、ゴールを目指している間の成長分を無視して行っているので、本来であればもっとすばらしいゴールに向かえたのに機会ロスをしているという認識です。
ですので、常に「最適解は分からない」という認識のもと、常に小さいテストを繰り返し、うまくいったものを残し、うまくいかなかったものを捨てるということを、何度も何度も繰り返します。
期間を1年であれば4つに分け、3か月ごとにテーマを決めてテストを行い、メンバーも含め課題を一部入れ替えます。未来のことは誰もわからない。ですので、常に仮説検証をして軌道修正を行い、理想の状態を作っていきます。
基本的にネット上ですべてが完結している組織
行動はすべてネット上で行われています。顔合わせもありません。メンバーの背景なども必要ないという認識です。発言内容や行動した結果が評価となります。
集まる必要が起きた時に、ZOOMなどのオンラインテレビ通話などを使ってコミュニケーションを行います。
参加できなかった人は後日録画された動画で見ることになります。
やりたい人がやりたいだけできる組織
やりたい人はどこまでもやることができます。初めはざっくりタスクが割り振られたり、立候補したりするのですが、それ以降は個人の力量に任されます。そのようにすると、時間的・スキル的・感情的にタスクを完結できないメンバーが現れます。
出来ない人に対しては、基本フォローすることなくどんどん進んでいきます。やらない人がダメというわけでもありません。出来る人、やりたい人がやればいいというスタンスです。
選抜が厳しい組織
この組織に入るためには、エントリーシートの記入などが求められます。組織の目的が第7ステージ人間の育成ですから、ティール型組織には興味のある有能なメンバー候補が増えている状態です。メンバーが増えるにつれて、有能な人も増えてくる可能性がありますので、組織に入るための競争は激化していきます。
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ティール組織を実際やってみて気づいたこと
前述したような特徴をもつ組織に属しているわけですが、「ティール組織」の理論とはかけ離れているなと感じている部分を紹介します。
ステージ4の人間がスタッフとして取り組むことへの課題
ティール組織には階層がありません。
階層がないということは、意思決定において自分自身の発言に責任を持つことになります。
この責任を持つという事が、会社員として雇われている人にとっては未体験であり、脅威であると考えています。どんなに高学歴、高所得だとしても会社の中にずっといた人はステージ4で止まっており、誰かの承認がないと安心できない事例がところどころで見受けられたからです。
ティール組織は多様性を尊重しますが、当組織ではできない人は離脱していきますので決して優しくはありません。
従来の組織に失望し、ティール組織に目を向けたとしても、人によっては誰かに統制されているほうが良い場合が多いのではと感じています。
報酬の評価をオープンにすることの困難性
「ティール組織」によれば評価を全員で行うということなのですが、当組織の人事評価はいまのところありません。組織になじめない人、貢献できない人は居場所がなくなり脱落してしまうからです。
組織の採用試験やプロジェクトの応募などは採用過程をガラス張りにして、透明性を図っています。具体的にはエントリーシートや今までやってきたことのレポートの内容で評価されます。
現状は、応募者本人は分かるが、数名の採点者グループには誰か分からない状態にしたうえで、評価採点されています。評価に至った経緯などはすべて動画で記録されており、評価物も含め誰でも見ることができる状態になっています。
応募する側が、酷な評価を知ってショックを受けないようにするというよりも、その評価をメンバー間に知れ渡って「あの人の評価はどうも低いようだから、指示されたことも聞かないようにしよう」などのような対人コミュニケーションにおいて支障がでないようする配慮からです。
つまり、挑戦者に対しては最大限の配慮を行っています。
※採点者や閲覧者には応募した人の本名は知らされない。
一方、収入が発生する評価部分は採用の評価とは違いオープンとはいえず不透明な部分が現状ではあります。売上などの金銭をより多く獲得することが目的ではない組織が、金銭部分の評価を透明にするのはこれからの課題だといえます。
第5ステージの人間がティール組織を望むことの矛盾
第5ステージの人間が、自社をティール組織にすれば従業員が勝手に働いて、収益をあげてくれて楽だと思っているのなら、失望するかもしれません。
一般の会社は階層組織です。役職が上の人が従業員に指示をだすほうが、従業員も納得し行動しやすいです。
一方、階層がなくなってしまうと役職が不要になります。在籍年数だけで役職が高い地位に上り詰めたような人の指示を聞かなくなる可能性があります。
当組織でも、メンバーの一部が従来の階層組織のやり方をやろうとして、組織から浮いてしまい、離脱するという事例がいくつかありました。
コミュニケーションスキルも含め、現時点で通用する能力がない人の居場所はないでしょう。
個人の発達を上げる必要がある
ティール組織は、学んだだけでは使えない可能性があります。なぜなら従来のビジネスモデルとは違い、パラダイムを変える必要があるからです。会社のパラダイムを変えようとする前に、まずは自分のパラダイムを変える必要があるのではと思います。
「いかなる問題も、それをつくりだしたときと同じ意識によって解決することはできない」と物理学者であるアルバート・アインシュタインも述べています。まずは自分が成長し、見る目を変えていかないとティール組織の神髄は見えてこないのかもしれません。
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まとめ ティール組織について
金銭的報酬を最上位に考えているのであればステージ5であるOrange組織で十分です。
しかし、社会をより良くしようと考え、そのためにティール組織を作りたいのであれば、リーダーの発達のステージをステージ5からステージ7にあげていく努力が必要になります。リーダーの成長無くして、組織のステージも上がりません。
その一方、構成メンバーにはステージ4からステージ7の人まで多種多様な人が集まります。ステージの低い人からは、上のステージの人がやっていることは理解できません。その上で、いかに人を巻き込んでいくかがポイントになります。
「〇〇をやったらティール組織ができる」という明確な公式は存在しません。しかし理想のカタチに向かって、日々試行錯誤できるかがポイントになります。
ますます不確実性が増す未来を予見することは困難です。メンバー全員がそれぞれの立場から考え、行動していくという「ティール組織」は今後ますます重要になってくると考えられます。その時の準備として、今回の記事で参考になる部分がありましたら幸いです。
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