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会社分割って何?事業譲渡との違いから、会社分割の種類、メリット、実際の手続きの流れまでを徹底解説

経営者

実は不採算事業の切り離しを考えているんだけど、良い方法ってあるかな?
会社分割を検討するのはいかがでしょうか?

専門家

突然ですが、次のような悩みを抱えていませんか?

  • 「新たな事業を進めるために会社分割で事業を承継したい」
  • 「不採算事業を切り離したいから会社分割したい」

本記事では、会社分割の種類や、メリット、実際の手続きの流れまで徹底解説します。

本記事を参考にして、会社分割を成功させ、効率よく組織再編をしましょう。

この記事のまとめ
  • 会社分割は吸収分割と新設分割の2種類
  • 会社分割と事業譲渡の違いがわかる!
  • 手続きには1ヶ月以上かかる可能性があるので注意

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会社分割とは?種類について解説

経営者

そもそも会社分割って何なの?

会社分割とは、会社が持っている事業の権利義務の一部、もしくは全部を他の会社に承継させることです。

会社分割は、「吸収分割」と「新設分割」の2種類に分類されます。

まずは、この2つの会社分割について解説します。

吸収分割とは

吸収分割は、既存の別会社に事業を承継する手法です。

「他の会社に事業を分割する=事業を譲り渡す」ということになるので、事業を分割する会社は対価として株式や現金を受け取ります。

経営者

少しわかりづらいです。

もう少しわかりやすいように具体例を挙げて解説してみましょう。

例えば、A社にはあまり得意ではない分野のX事業部があり、B社は、A社のX事業を専門分野としていて、今後はX事業により力を入れていきたいと計画していたとします。

この際、A社はX事業部の切り離しを望み、B社は事業拡大のために新たな事業部を欲している場合、双方にメリットがあります。

このように互いのニーズが合致した際に吸収分割を行います。

専門家

新設分割とは

新設分割は、既存の法人から、新しく設立された法人に事業を承継する手法です。

先ほどの吸収分割では、既存法人に会社を分割しますが、新設分割では新たに会社を立ち上げて事業を新会社に承継します。

例えば、A社にあるX事業が大きく成長し、A社の1つの事業部として業務を続けるよりも、新たに法人を立ち上げる方が、多くのメリットが享受できるケースを考えてみましょう。

この場合、新たにB社を立ち上げ、A社からX事業を承継します。

このように事業が成長した際に、新事業として独立させたい場合には新設分割を利用します。

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株式の対価交付先による分類

株式の対価の交付先に応じて、分割の種類は5つに分けられます。

まず、会社分割の場合は、分割会社から株式を取得するのか、それとも分割会社の株主から株式を取得するのかで、対価の交付先が2つに分かれます。

さらに、吸収分割か新設分割かで2つに分かれるうえにジョイントベンチャーに利用される共同新設分割を合わせて、合計で以下の5つに分類できます。

  • 分社型吸収分割
  • 分割型吸収分割
  • 分社型新設分割
  • 分割型新設分割
  • 共同新設分割

それぞれわかりやすく説明します。

①分社型吸収分割

分社型吸収分割とは、既にある会社に事業を承継し、株式の対価を分割会社に交付する方法のことです。会社から株式を取得するため、対価は分割会社に交付します。

承継会社は既に株主がいるので、会社型吸収分割をしても承継会社を完全子会社化することはできません。

②分割型吸収分割

分割型吸収分割では、既存の会社に事業を承継し、その対価は分割会社の株主に交付されます。

分割される事業の株主が、分割後も引き続きその事業の株主になるので、分割会社と承継会社の両方の株主となります。

グループをもつ会社の場合で、子会社間の事業を移動させたい場合に、分割型吸収分割が利用されます。

③分社型新設分割

分社型新設分割は、新設した会社に事業が承継され、その対価が分割会社に交付される会社分割です。

新設された承継会社の株式が分割会社に交付されるので、承継会社は分割会社の完全子会社になります。

このため、ある事業のみを完全に独立させたい場合に利用されることがあります。

④分割型新設分割

新設した会社に事業が承継され、その対価が分割会社の株主に交付されるのが、分割型新設分割です。

分割する事業の株主は、分割後も承継会社の株主となります。

分社型新設分割では、分割会社が承継会社の株式を取得する性質から、承継会社は分割会社の子会社になっていました。

対して、分割型新設分割では、両株主は同一人物ですので、分割会社と承継会社は兄弟会社になります。

⑤共同新設分割

共同新設分割とは、複数の会社が各自の事業を出し合って、新たに1つの会社を設立する会社分割です。ジョイントベンチャーなどを創立する際に利用されます。

割譲する事業は同様の事業であっても、営業と開発など別部門の事業でも問題ありません。

株式の分配は、大抵の場合は会社ごとに分割される事業の価値の比率で決まります。

例えば、「A社の事業価値:B社の事業価値」が6:4だった場合、株式はA社に60%、B社に40%分配されます。

共同新設分割は、分割会社に対価を交付する分社型と、分割会社の株主に対価を交付する分割型のどちらもあります。

少しややこしく見えるかもしれませんが、株主は誰なのかに注目するとわかりやすいですよ。

専門家

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会社分割はどのように活用できるの?

会社分割が活用されるのはどういったケースなのでしょうか。

こちらでは、代表的な3つのケースについて解説します。

  • 不採算事業の切り離し
  • 組織改革
  • 事業の肥大化

それぞれわかりやすく解説します。

①不採算事業の切り離し

不採算部分の切り離しを目的に、会社分割が行われる場合があります。

赤字となっている事業を手放せると同時に、売却益で資金を増やせますので、他の事業の拡大や立て直しに着手できます。また、借入が残っている場合は、売却益により得た資金を返済に回すことが可能です。

会社の事情や業界の動向を見極め、不採算事業にシナジー効果を見出す企業を探すことがM&A成功のポイントにもなります。

経営者

不採算事業を切り離せるのは助かるね。

②組織改革

組織改革のために、会社分割が行われることもあります。

経営者

どういうこと?詳しく教えて。

会社分割により、会社の組織や形態を見つめ直し、編成し直します。また、経営資源の活用法も見直すと、組織運営の改善につながるでしょう。

組織改革の中で必要な事業とそうでないものの取捨選択に迫られたときに、会社分割が選択されるケースがあります。特に、中小企業においては選択と集中が求められますので、会社の売上が伸び悩んでいる際は、各事業セグメントを見つめ直してみることがおすすめです。

③事業の肥大化

事業が肥大化した際に、会社分割をすることがあります。

1つの事業が肥大化すると起こる問題が、社内システムの複雑化です。

社内システムが複雑化すると、他の事業に対して生産性低下などの悪影響を及ぼす可能性があります。

会社分割により、肥大化した事業を切り離して独立させられますので、事業をさらに成長させられるかもしれません。

肥大化した事業がなくなることで分割会社をスリム化でき、企業の機動性や柔軟性が高まります。

組織が大きくなりすぎた時に利用されるのです。

専門家

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会社分割のメリット5選

会社分割のメリットを5つ紹介します。

  • キャッシュが少なくても実施可能
  • 従業員との個別同意は不要
  • 契約をそのまま承継可能
  • 新規事業へ参入しやすい
  • シナジー効果が見込まれる

それぞれわかりやすく解説します。

①キャッシュが少なくても実施可能

会社分割の対価は原則「株式」なので、手元のキャッシュが少なくても実施できます。

M&Aでよくあるのが、株式の対価として現金を交付する手法です。この際、手元資金が十分であればM&Aを実施できますが、足元の資金繰りで手一杯の場合はM&Aを利用できません。

しかし、会社分割では、承継する企業は株式を相手に渡すだけなので、資金を用意する必要がないことがメリットです。

キャッシュアウトが発生しないのはメリットですよね。

専門家

②従業員との個別同意は不要

会社分割では、従業員との個別同意は必要ありません。

個別同意の取得には時間がかかるため、個別同意が必要ないことは大きなメリットといえます。

しかし、従業員が今まで働いていた部署と異なる仕事に就く場合は、従業員から異議申し立てをされる可能性があるので注意が必要です。

③契約をそのまま承継可能

会社分割では、ほとんどの対象事業の契約を承継可能です。

例えば、事業承継では取引先などとの取引契約書・基本契約書などを再契約しなければなりません。このため、再度契約を巻き直すことが負担や手間になる場合があります。

一方、会社分割であれば、一部承継できない契約もありますが、多くの場合は届け出を提出するだけで承継できます。

大抵の契約を承継できるため、一から許認可を申請しなければいけないものは少ないです。

経営者

手続きが楽なのは良いね。

④新規事業へ参入しやすい

新規事業へ参入しやすくなることも、メリットの1つです。

会社分割で事業ごとに会社を分割すれば、分割時のやりとりを通して、他業種との提携が図りやすくなります。

新規事業の参入は、他業種との連携が必要になる場合が多く、立ち上げに際し、リスクとのバランスを考えるのが基本です。

自社だけでは対応できない業務も、他業種との連携により対応しやすくなります。

新規事業参入のために、わざわざ会社分割を行う必要はありませんが、組織再編などの理由で会社分割をお考えの方は、新規事業参入も視野に入れてみてはいかがでしょうか。

⑤シナジー効果が見込まれる

M&Aの成功には、シナジー効果があるか否かが大きいです。

専門家

共同新設分割を利用することで、他社との連携が見込まれます。

自社でのリソースのみで売上を伸ばすことに限界を感じた際には、他社とのジョイントベンチャーの作成などで、双方で協力して事業を作り上げていくという視点も必要になります。

会社分割のデメリット3選

会社分割によるデメリットを3つ紹介いたします。

  • 株価が変動する可能性がある
  • 従業員のエンゲージメントに影響がある
  • 株主総会を開く必要がある

それぞれわかりやすく説明します。

①株価が変動する可能性がある

会社を分割すれば、株価は当然変動します。

事業を分割する会社は、事業を他の会社に割譲すると、企業価値が下がりかねません

一方で、吸収分割会社は、事業を承継したことで得るシナジー効果が大きいのであれば、株価が上がることもあります。

株価が下がれば、企業の信頼性低下に繋がるだけではなく、既存の株主にも疑念を抱かせることにつながります。

こうした事態を避けるためにも、なぜ会社分割が必要なのかを株主に説明する必要性があるのです。

経営者

会社分割がネガティブに捉えられないようにするためにも、必ず説明をしましょう。

②従業員のエンゲージメントに影響がある

会社分割は、譲渡する事業に従事する従業員のエンゲージメントに、影響を与えてしまいます。

もともと働いていた会社ではなく、別の会社で働くことになるので、企業に対する愛着が薄れ、労働意欲の低下が起きかねません。

労働意欲の低下を回避するためには、従業員に対してポジティブな言葉をかけることが大切です。例えば、事業を承継する先が大企業の場合には給与アップの可能性もあるため、その可能性を伝えてみましょう。

このように、適切に従業員のエンゲージメントを上げることが大切です。

③株主総会を開く必要がある

会社分割をするためには、株主総会を開催しなければならないため、手間と時間がかかります。

基本的に、会社にとっての重要事項を決定するには、株主総会で手続きをしなければなりません。

吸収分割は、特別決議に該当するので、3分の2以上の同意を得て可決が必要です。

支持を得るためには、株主に対して「なぜ吸収分割をするのか」を明確に説明する必要があります。

事業譲渡との違いとは?

会社分割と事業譲渡は、どちらも特定の事業の買収・売却のためのスキームとして用いられるという共通点があります。

そして、さまざまなM&Aの手法の中でも、この2つは特に混同されやすいです。

しかし、実はこの2つには、会社法や債権、債務などの多くの点で、異なる部分があります。

  • 会社法上の違い
  • 債権や債務の違い

会社法上の違い

事業譲渡は、株式の変動を伴わない取引法上の契約です。

一方で、会社分割は、会社法における組織再編行為に該当します。

債権や債務の違い

事前譲渡では、債権者に対して組織再編行為を行うことを事前に通知する、債務者保護手続きは必要ありません。

ただし、債務を承継させるためには、債務者の個別同意が必要です。

会社分割では、会社の権利義務は承継企業に引き継がれるため、債権者の承諾は必要ありませんが、原則として債権者保護手続きが必要になります。

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吸収分割の手続きと期間について

吸収分割には、踏まなければいけない手続きと、完了するまでに要する期間が存在します。それぞれ詳しく確認しましょう。

吸収分割の手続きについて

吸収分割の流れは、ざっくりと言えば以下の通りです。

  1. 吸収分割に関する契約書を作成
  2. 分割側と承継側で契約を締結
  3. 債権者に通知
  4. 登記上の所在地に契約に関する書類を配置
  5. 株主総会招集を通知
  6. 反対株主への通知
  7. 株主総会で特別決議
  8. 債権者保護手続き期間が終了
  9. 吸収分割の登記申請(効力発生日から2週間以内)
  10. 登記上の所在地に決定事項などの事後書類を配置

手続きのポイント

手続きのポイントは以下2つです。

  • 書面の配置
  • 債権者などへの通知、公告

以上について、定められた期間があります。

契約に関する書面などを登記上の所在地に置く日は、「株主総会開催の2週間前、もしくは債権者保護手続きの公告日から」といった規定があります。

吸収分割の効力発生日から6ヶ月が経過するまでは、契約書などを所在地に置いておかなければなりません。

反対株主への通知や、株主総会招集の通知についても、株主総会の1週間前に行うことが規定として定められています。

吸収分割にかかる期間

吸収分割にかかる期間は、計画段階からの手続きも含めて、およそ数ヶ月はかかります。

株主総会までに行う書類の配置や通知、債権者への公告・催告などを、分割側と承継側の会社双方ですり合わせ、定められた期間内に行わなければなりません。

株主総会開催までに、2ヶ月以上を要することも多いです。

計画段階から、完了までの期間を逆算し、余裕を持った計画を立てましょう。

新設分割の手続きと期間について

新設分割にも手続きと期間が必要です。

手続き自体は吸収分割と基本的に同様の流れです。

しかし、多少異なる点があるので、その点を詳しく解説します。

  • 新設分割の手続き
  • 新設分割にかかる期間

新設分割の手続き

  1. 新設分割に関する契約書を作成
  2. 登記上の所在地に契約に関する書類を配置
  3. 債権者に通知
  4. 株主総会招集を通知
  5. 反対株主への通知
  6. 株主総会で特別決議
  7. 債権者保護手続き期間が終了
  8. 新設分割の登記申請(効力発生日から2週間以内)
  9. 登記上の所在地に決定事項などの事後書類を配置

吸収分割と比べて、新設分割では承継側の会社が新たに設立される会社となるため、契約にかかる期間や手続きは、比較的簡易的に進みます。

ただ、分割に関する手続きが簡易な分、新しい会社を設立するための手続きは必要です。

新設分割にかかる期間

新設分割にかかる期間は、一般的には数ヶ月程度ですが、状況によってはさらに時間がかかる場合もあります。

しかし、債務の移動がないなどの特定の条件を満たす場合には、短期間で手続きを終えることも可能です。

新設分割を実施する際、分割する資産が、分割をする会社の総資産の5分の1以下である場合に、簡易新設分割が適用されます。簡易新設分割の要件に当てはまれば、株主総会の特別決議が不要となったり、株式の買取請求権行使に要する期間を省略できます。

他にも、条件を満たせば、吸収分割よりも短期間で終わる点が、新設分割の特徴の一つです。

まとめ

本記事では、会社分割の種類やメリット、大まかな流れについて解説しました。

会社分割は、分割する側と承継する側のニーズがマッチすれば、双方にメリットの大きい手法です。

会社分割をする企業側は、事業を切り離すことで組織がスリム化するので、組織再編がしやすいのが特徴です。

事業を吸収する企業側は、資金を使わずに事業の受け入れが可能なので、成長過程で資金を捻出しづらい企業でも承継ができます。

会社分割を考えている経営者の方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。

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