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現物出資って何?会社設立と増資、M&Aにも利用される現物出資をわかりやすく解説

経営者

会社設立時に聞く現物出資ってなんなの?
本記事では、ていねいに現物出資を説明します。

専門家

突然ですが、あなたはこのようにお悩みではありませんか?

「現物出資って聞いたことあるけど少しややこしそう…」、「M&Aでも利用できると聞いたことあるけどよくわからない」

現物出資についてよくわからないことが多いかもしれませんが、現物出資は実はそれほど難しくありません。

本記事では、現物出資についてわかりやすく解説しています。M&Aで利用される現物出資についても解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

この記事のまとめ
  • 現物出資できるのはBS上の資産!
  • 現物出資には節税効果がある
  • M&Aにも応用可能!

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現物出資をわかりやすく解説

経営者

そもそも現物出資って何?

現物出資はM&Aで利用される場合もありますが、会社設立時や増資時に使われるのが一般的です。

 現物出資って何?

現物出資とは、例えば会社を設立する際に、資本金として「現物」を供することです。現物とは、金銭以外の現に存在している品物のことを指します。

会社を設立する際には、1円以上の資本金が必要になるため、現預金を資本金として出資するのが一般的なパターンです。しかし現物出資では、現預金に代わる現物を出資します。また、物の価値を客観的に判断することは難しいため、現物出資には細かい制約がついています。

現物の中には現物出資と認められるものと、認められないものがあるので、注意しましょう。

専門家

現物出資できるものとは?

現物出資できるものは、譲渡が可能なもの、かつ貸借対照表上に計上されている資産です。

現物出資できるものには例えば以下のようなものがあります。

  • 自動車、パソコンなどの動産
  • 処分性のある有価証券やゴルフ会員権など
  • 土地・建物などの固定資産
  • 営業権・商標権などの無形固定資産
  • 債権

少なくとも、それなりに価値がある資産が現物出資になると考えると良いでしょう。

経営者

価値の有無は誰が決めるの?

これらの資産がどの程度の価値があるかは、会社法207条で定められているように検査役が決定します。

(参考:会社法207条 | e-Gov 

現物出資のメリットとは

現物出資をするメリットは以下5つです。

  • キャッシュが不要
  • 減価償却による節税効果がある
  • 資本金を増やせる
  • 設立後の費用を減らせる
  • 増資にも利用できる

それでは1つずつ解説していきます。

①キャッシュが不要

まずは、出資の際に現預金が不要な点が1つ目のメリットです。

実際に会社を設立する際、現預金は1円あれば十分ですが、資本金がそれなりになければ、取引先からも心配されてしまいます。

この問題を解決するためには、本来は現預金で資本金を増やす必要がありますが、現預金がなければどうしようもありません。しかし、現物出資ができる資産を持っていれば、資本金を増やすことができます。

経営者

キャッシュがいらないのは助かるね。

②減価償却による節税効果がある

2つ目のメリットは、現物出資を行うと節税効果があることです。

例えば、建物や車などの固定資産を資本金として入れることで、減価償却が生じます。減価償却とは、物の劣化に合わせて価値を少しずつ減らしていくことです。

このため、毎年損益計算書の利益から、減価償却費がかかります。

例えば、1000万の利益に対して、減価償却費が100万円あると利益は900万円になるため、本来は100万円にかかるはずだった税金を減らせます。

また、この100万円は見た目上の損失なので、実際は現預金は出ていません。したがって、キャッシュフローも税金分安定します。

税金を減らしたい方は、うまく減価償却を利用しましょう。

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③資本金を増やせる

会社設立は1円からでもできますが、実際に貸借対照表をみた際に資本金が1円しか入っていない場合、取引先や銀行などに心配される可能性があります。

例えば、外資系ファンドなどではこうした例もありますが、実態の会社として設立するのであれば、それなりに資本金があるのが望ましいです。

したがって、現物出資により貸借対照表の資本金の金額を大きくできるのはメリットといえます。

その後に借入が必要になった際も、自己資本比率が高いと借入がしやすくなります。

専門家

④設立後の費用を減らせる

4つ目のメリットは、会社設立後の費用を減らせる可能性があることです。

特に、設立したての企業は費用ばかりかかり、売上がなかなか上がらないケースが目立ちます。このため、できるだけ無駄な費用を減らして、黒字化を目指すことが第一の目標になります。

この時、現物出資でパソコンなどの備品を会社に供することで、会社で必要な費用を削減することが可能です。他にも、車があれば営業車の購入費用が削減できます。

現物出資をする際は、その後に会社で必要になる高額なものを出資する視点もあると、企業経営がしやすくなるでしょう。

⑤増資にも利用できる

現物出資が利用できるのは、設立時だけではありません。増資やM&Aのタイミングでも現物出資を利用することができます。

したがって、設立時に現物出資をしなかったからといって、その後使えなくなるわけではないということを頭に入れておきましょう。

経営の方向性が変わった際や、更なる改革を押し進めるために資本金の金額がネックになった場合には、現物出資を利用することで解決できる可能性があります。

しかし、全ての場合で現物出資をすればいいわけではありません。

中には、現物出資をすることで手続きが増えてしまう場合もあるので注意が必要です。

この点については後述しているのでご参考ください。

専門家

現物出資のデメリットとは

現物出資にはさまざまなメリットがありますが、もちろんデメリットもあります。現物出資により生じるデメリットが以下の3つです。

  • 資本金と現預金にギャップが生じる
  • 手続きに時間がかかる
  • 不足額担保責任が生じる

それでは1つずつ解説していきます。

①資本金と現預金にギャップが生じる

現物出資をすると、資本金はかなり大きいのに現預金が小さいというギャップが生じます。これは貸借対照表を見れば明らかですが、資本金とバランスしているのは固定資産になることが原因です。これにより、見る人が見れば、一瞬で現物出資をしたことがバレてしまいます。

したがって、銀行からの借入を検討している際などは、銀行から質問がきた場合には正直に答えることが大切です。

他にも、現預金が小さいため、足元も資金繰りが回らなくなる可能性は容易に考えられます。資金が潤沢でない場合には、資金繰り表を作成し、現状の現預金で会社は回るのかを確認することをおすすめします。

手続きに時間がかかる

経営者

時間はかかるのかな?

個人的な資産を会社に譲渡する現物出資は、とても手間と時間がかかる手続きです。

後述で詳しく解説しますが、現物出資の手続きには、所有権移転の手続きが必要になります。この際、登録免許税なども必要になるので、あまりにも価値の低い固定資産を資本金に入れてしまうとコストの方が高くなってしまう可能性もあります。

また、減価償却による節税をするためにも、譲渡した不動産などは法務局での所有権移転手続きを必ず実施しておきましょう。

不足額担保責任が生じる

現物出資をする前の手続きとして、定款に現物出資の旨を記載する必要があります。

その際、金額まで記載するわけですが、万が一現物の評価額が定款の資本金に足りなかった場合には、不足金の支払い義務が経営者にも生じます。

もちろん全ての場合で出資者に責任が生じるわけではありませんが、上記のようなリスクがあることだけは押さえておかなければなりません。

専門家

現物出資の流れ(会社設立)

実際の現物出資の流れについて説明します。会社設立で現物出資をした際の手続きが下記の通りです。

  1. 現物の時価調査
  2. 定款に現物出資の旨を記載する
  3. 調査報告書を作成する
  4. 財産引継書を作成する

それでは1つずつ解説していきます。

STEP①現物の時価調査

まずは現物の時価調査を実施します。

基本的には、出資しようとしている現物の時価を発起人が自己申告します。

後ほど調査が入った際に、申告した現物の時価と、実際の価格との間に大きな乖離があると後々問題になるため、現物の時価評価を入念に行わなければなりません。

STEP②定款に現物出資の旨を記載する

会社設立の際には、現物出資する発起人が、定款と発起人決定書に現物出資となる旨を記載する必要があります。

この際、以下の内容を必ず記載しなければならないので、必ず発起人決定書に盛り込むようにしましょう。

  • 現物出資をした発起人の氏名及び住所
  • 何を現物出資するのか、具体的な商品名(正式名、数量など)
  • 現物の時価
  • 現物出資により、株式は何株割り当てられるのか

STEP③調査報告書を作成する

発起人が現物出資する現物の内容や価額が判明すると、それらが妥当な金額か、調査が必要になります。調査は、裁判所で選んだ調査役の他に、会社設立時の取締役も行えます。

調査役に依頼をする場合には時間とコストがかかりますが、正確性は高いです。

現に会社法では、以下のように記述されています。

株式会社は、第百九十九条第一項第三号に掲げる事項を定めたときは、募集事項の決定の後遅滞なく、同号の財産(以下この節において「現物出資財産」という。)の価額を調査させるため、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをしなければならない。

(引用:会社法207条 | e-Gov

STEP④財産引継書を作成する

現物出資をした発起人は、設立時に取得できる発行株式を受け取った後、現物を会社に引き渡します。

その後、現物出資により引き渡された資産の証明でもある、財産引継書を作成し、財産の引継ぎが終了しているかを取締役が確認します。ここで作成された財産引継書は設立登記申請書に添付することになります。

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現物出資の留意点

疑問

現物出資はその価格の妥当性の判定が難しいため、さまざまな規制があります。

特に重要な要件と規制、税金についてそれぞれわかりやすく解説します。

用件と規制に注意

会社設立の際に現物出資が認められるのは、発起人のみに限られており、他の取締役が現物出資をすることはできないので注意が必要です。

他にも、定款への現物出資をする旨の記載も忘れてはいけません。

専門家

現物出資財産の実際の価値と、定款に記載している財産価値に乖離が見られる場合には関連する各々が責任を負い、支払い義務を負う可能性があります。

調査が必要

現物出資をする際には、裁判官が選任した検査役による現物の評価が必要です。

検査役は、実際に資本金として計上されている現物出資の金額と、現物との評価に差異がないかを調査し、評価します。

この際、調査が完了するまでには長くて1ヶ月以上の期間を要することが多いのが実情です。

あわせて、多額の費用も必要になってしまうため、価値が低い商品を現物出資するのはあまり得策とはいえません。

専門家

調査を省略できるケースもある

基本的に現物出資には調査が必要になる一方で、調査を省略できるケースもあります。調査を省略できるのは、以下の条件を満たす場合です。

  • 現物出資の総額が500万円を超えない場合
  • 市場価値のある有価証券で、法務省での計算方法の金額を超えない評価をしている場合
  • 調査役以外の、弁護士、弁護士法人、公認会計士、監査法人、税理士などからの評価を受けている場合

上記に当てはまる場合には調査を省略できますので、現物出資がしやすくなることでしょう。

税金に注意しよう

現物出資をすると、資産が発起人から会社に移ることになります。

「無償で引き渡しているのだから税金は発生しない」と考えるのは間違いです。実は現物出資は、税法では売却と認識されてしまいます。このため、現物を取得価格よりも高い値段で出資した場合には、売却益がでたと考えられるため、差益に対して消費税を払わなければなりません。

特に、固定資産を現物出資した場合には、取得時の土地の価格よりも、現在の土地の価格の方が値上がりしているケースがありますので、納税資金を手元に確保しておく必要があります。

現物出資の仕訳の仕方

現物出資の仕訳について以下2点紹介します。

設立時の仕訳は以下のようになります。

現物出資品 1,000,000千円 資本金 1,000,000千円

決算時の仕訳は以下のとおりです。

減価償却費 20,000千円 現物出資品 20,000千円

※会計方法によっては変わることもあるのであくまでも参考にしてください。

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M&Aと現物出資の関係性

吸収合併

M&Aの中には現物出資を利用したDESと、現物出資に非常に似ているが厳密には異なる会社型分割があります。

それでは、それぞれ簡単に解説します。

DES(デッドエクイティスワップ)と現物出資

DESは現物出資を利用しています。

会社の設立時には、現物出資物として固定資産を対価として供与していますが、DESでは債権や負債を供与します。

したがって、DESでも現物出資同様に、その交付する株式の金額によっては検査役の調査が必要です。

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会社型分割と現物出資

M&Aの買収方法のうち、分社型分割と現物出資はとてもよく似ています。

分社型分割とは、吸収分割の一つで、事業を承継する承継会社が事業譲受の対価として株式を交付する手法です。

これらはスキームが非常によく似ているため、同じだと考えられるケースがありますが、厳密には少しだけ異なります。

現物出資の場合には、権利義務の移転が個別財産の出資になりますが、会社分割では権利義務の包括承継になります。

他にも、現物出資の場合は消費税がかかるが、会社分割の場合はかからないなどの特徴があります。

まとめ

まとめ

本記事では、現物出資についてわかりやすく解説しました。

現物出資は会社設立の際に、現預金がそれほどなくても資本金を増やすことができる有効な手段です。

また、現物出資の応用例として、M&Aでも利用できるDES(デッドエクイティスワップ)を紹介しました。

会社が成長戦略を描いていく上で、経営者のM&Aへの理解は必要不可欠です。

今後会社を経営していく際には、M&Aの知識もしっかりとつけておくことが必要になるでしょう。

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