ここ数か月、在宅でのテレワーク導入が増えています。
しかし多くの会社員にとっては慣れない環境であり、戸惑いやストレスを感じ始めているようです。
こうした背景もあってか、「オンライン飲み会」が注目されています。オンライン飲み会には、多くの効能がありそうです。
オンライン飲み会の効果や、テレワーク生活に切り替わった社員に対する必要なマネジメントとはどのようなものでしょう。
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目次
広がる「オンライン飲み会」
外出や飲食店に対する営業自粛、テレワークの促進などの影響で、外で飲むという機会が激減しています。そこで広がっているのが「オンライン飲み会」です。
「飲みに行く代替としてストレスを発散できる」「同僚と顔を合わせられる」というメリットがあり人気を博しつつあると考えられますが、今の状況でオンライン飲み会を心地よく感じるのは、人としての意識の奥底に「共食」の心地よさがあるからでしょう。
農林水産省が食育に関して毎年行なっている意識調査では「家族と一緒に食べることの良い点」について、8割近くが「家族とのコミュニケーションを図ることができる」、6割以上が「楽しく食べることができる」という利点があると答えています(図1)。
図1 家族と一緒に食べることの良い点(出典:「食育に関する意識調査 平成30年3月」農林水産省)
https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/ishiki/h30/3-3.html
オンライン飲み会は「家族と一緒」というわけではありませんが、「仲間と食べる」「誰と食べるか」という「共食」は生活の上で非常に重要な要素と見られます。
また、食事がコミュニケーションの道具としての機能を持っているのかもしれません。
接待やデート、となると「ともに食事をすること」が重要視されるのは興味深い現象です。
「オンライン飲み会」には、若者ならではの心地よさというのも存在していそうです。この新しい形式の飲み会を、部下とのコミュニケーションを図る良い機会にしたいものです。
半数が「現職で初めてのテレワーク」
オンライン飲み会の普及を後押ししているのには、不要不急の外出ができなくなったことに加え、テレワークに移行してからの心理面での変化があると考えられます。
パーソル綜合研究所が3月に行った調査によると、現在テレワークを実施している会社員のうち、現在の会社でのテレワークは「初めて」だという人が半数近くにのぼっています(図2)。
図2 現在の会社で初めてテレワークを実施した人の割合
(出典:「新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」パーソル綜合研究所)
https://rc.persol-group.co.jp/news/202003230001.html
多くの会社員にとって「突然慣れない環境に置かれた」というのは事実でしょう。
そしてアドビシステムが、こちらも3月に行った調査によると、テレワーク実施者が感じている心身の変化はこのようなものです(図3)。
図3 テレワークによって生じた心身の課題
(出典:「テレワーク勤務のメリットや課題に関する調査結果」アドビシステムズ株式会社)
https://www.adobe.com/jp/news-room/news/202003/20200304_adobe-telework-survey.html
コミュニケーションもそうですが、「上司に仕事をしていないと思われるのではないかと心配になる」「孤独を感じる」といった回答に注目したいところです。特に、孤独感への対策として増えているのがオンライン飲み会でしょう。
オンライン飲み会に上司が参加する、あるいは主催してみる効果はここにあるのではないでしょうか。世の中の空気がピリピリしたものに変化し、いつもより孤独な状況にある部下とコミュニケーションを取る良いきっかけになりうるでしょう。
また、「上司に仕事をしていないと思われるのではないかと心配になる」という面に関しても、「今日は何時で切り上げていいから飲み会をしよう」といった呼びかけをしてみるのも良いでしょうし、同じ時間をともにすることで「今この時間は上司も仕事をしていないんだから大丈夫」と思わせることも可能でしょう。
堅い話をせず、自分の好きな食べ物やお酒、ペットがいればペットの紹介など、プライベートの一部を明かし親近感を持ってもらいやすいという面もあります。そして部下にとっては、「疲れたな」と思ったらその場を離れやすいという特徴があります。
電話がかかってきた、などの言い訳をできるのもまた気楽なところでしょう。
もちろん「眠くなったら早く寝ろよ」といった声かけも必要です。
テレワークで見逃されがちなマネジメント「VDT症候群」
さて、テレワークでは業務上のやり取りや自宅では使える機器に限界があるといった点での不便を感じている社員も少なくありません。
先のアドビシステムズのアンケートでは、このような不便さが回答として挙がっています(図4)。
図4 テレワーク実施で感じた業務上の課題
(出典:「テレワーク勤務のメリットや課題に関する調査結果」アドビシステムズ株式会社)
https://www.adobe.com/jp/news-room/news/202003/20200304_adobe-telework-survey.html
まずはこうした困りごとを、リモートで可能な限りすくい上げ、フラストレーションを溜め込ませない工夫が必要です。
また、見逃されがちなのが「VDT症候群」についてです。
VDPとは「Visual Display Terminal」のことで、パソコンのディスプレイなどを長時間使いすぎることによって、心身に悪影響が出るのがVDT症候群です。
日本眼科医会によると、VDT症候群の症状としては物がかすんで見える、目が重い、目が痛い、といったものだけでなく、頭痛、吐き気、腰や背中の痛みに発展し、また、イライラ感や不安感、憂鬱感を引き起こすこともあるというものです[1]。
テレワークになると、誰が何時間作業をしているかを把握しづらい上、オフィスのような椅子や机を使えるわけではなく、環境は大きく変化します。
テレワーク体制は長期化しそうですから、こまめに休憩を取るよう、そしてVDT症候群について周知すると良いでしょう。
なお、日本眼科医会のホームページには、目の負担を軽減するパソコンの使い方について紹介されています[2]。
心身ともに快適なテレワークのために
テレワークの不便な点として、会議がしにくい、という点も挙げられています。しかしこれは、慣れるか、方法を模索するしかありません。
ちなみに筆者は職業上、自宅での仕事がほとんどです。会議こそありませんが、毎日がテレワーク状態です。
そして心身のために気をつけている点がありますので、少しご紹介したいと思います。
まず、朝必ず窓を開け放ち、空気の入れ替えをします。通勤の機会がなくなって気づいたことですが、通勤時間に「外の空気を吸う」ことは、1日の始まりにとって大切なようです。
また、運動不足になりがちな点は、休憩がてら少しずつ掃除をすることで解消しています。トイレ掃除、ゴミ捨て、といったことでこまめに動き回ると、案外運動になるものです。また、目の前が綺麗になることで気分転換になります。
作業に行き詰まった場合には、ベランダにコーヒーを持って出てぼーっとする時間を作ります。オフィスだと「あ、もう何分も経ってしまったから戻らなければいけないかな」と考えてしまうのですが、そのようなプレッシャーを感じる必要はありませんから、自然とスイッチが入るのを待つことがほとんどです。
これらはちょっとしたライフハックではありますが、在宅ならではの利点に注目することもまた重要です。
よく、「テレビ会議だけのために上半身だけを着替えるのは滑稽」といった指摘もありますが、人によってはそのほうがメリハリがつく場合もあると考えます。
なお、現在テレワークの制度や設備が不完全だという企業に関しては、厚生労働省の助成金制度があります。
新型コロナウイルス対策としてテレワークを新規で導入する中小企業主に対し、通信機器の導入などにかかる費用の半分、最大で100万円補助するというものです[3]。
これから、働き方は大きく変化していくと考えられます。
今回の新型コロナウイルスへの対応を機に、テレワークの在り方について考えることは必須と言えるでしょう。
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[1] VDT症候群で起こる目の症状、体の症状、心の症状(日本眼科医会)
https://www.gankaikai.or.jp/health/42/04.html
[2] 目にやさしいパソコンとの付き合いかた(日本眼科医会)
https://www.gankaikai.or.jp/health/42/05.html
[3] 「働き方改革推進支援助成金 新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコースのご案内」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000622075.pdf