確証バイアスとは、自分の既存の信念や仮説を支持する情報を優先的に探して受け入れ、反対の情報を軽視または無視するような心理で、組織内での意思決定や問題解決の過程において客観的な判断を妨げ、その後企業内に様々な問題を引き起こします。主な問題は以下の4つです。
目次
1.「確証バイアス」が組織におこす問題
- 意思決定の質の低下
意思決定が特定の情報やデータに偏ることで、全体的な視野が狭まり、重要な意思決定が誤った方向に進んでいく。
- イノベーションの阻害
新しいアイデアやアプローチに対して閉鎖的になり革新が妨げられる。これにより組織の外部への競争力が低下する。
- 顧客ニーズの誤解
自身の仮説に反する市場の変化や、意に沿わない顧客からのフィードバックを無視することで、顧客のニーズに正しく応えられない。
- 従業員の士気低下
異なる立場や視点が無視されることで、データや意見が尊重されない環境に置かれた従業員のエンゲージメントが低下し、離職率が上昇する。
これらは全て「企業の成長を阻害する主要因」であり、成長を目指す組織においては、如何にして組織内に確証バイアスの発生を最小限に抑えるか、如何にこれらの問題を回避していくのか、が重要です。
2.「確証バイアス」の発生タイミングと識学による解消法
以下のタイミングで正しいい理論を実践することで、確証バイアスの影響を減らし、より公平にバランスの取れた判断を行うことができるようになります。
1)情報の選択時、行動時
人は過去の経験に基づいて世界を解釈することが多いため、その経験に一致する情報を特に重視することがあります。それを確認するために、さらに似たようなケースに関する成功例を集中的に探し、失敗例には目を向けません。また現代は情報が日々膨大に流れておりその中で自分の意
見や価値観に合致したものだけに注目し他の情報を無視することができます。これが続くと行動も確証バイアス通り過去の行動パターンを続けます。これを防ぐ方法を識学理論「意図的変化」で解説します。
意図的変化:人は過去の経験によって凝り固まってしまうと、そこから新しい考えや行動を受け入れることができなくなるのが確証バイアスです。これは経験値の蓄積と言える一方で、新しい経験をしていない、成長できていない、思考停止している状態とも言えます。識学では、これは誰にでも起こることと考えて、常に上司が部下に対して「意図的に経験させる」という仕組みを作ります。また「確証バイアス」がある場合はいくら部下に正しい情報収集を求めても意に沿うものばかりを集めることになるので、場合によってはそれらの情報の収集を一旦止めてでも行動を促します。時には部下の情報に反する行動を上司が強制します。これは過去の習慣と本人の自動的な思考で習慣的な考え方やパターンが形成されているので、敢えて外側の新しい情報とパターンにない新しい行動を求めます。目的は本人の成長のためです。
『 自分に都合の悪いことでも、受け入れられるかどうか。
ここでの差が仕事の成果になって表れてきます。
もちろん、「受け入れられる人」は成長します。
「受け入れられない人」の成長は止まります。 』
引用「パーフェクトな意思決定「決める瞬間」の思考法」P111より
この経験を上司が意図的にさせることで、部下に新しい経験を増やし、思考変化を起こし、確証バイアスを弱めます。
2)フィードバックの受け入れ時
確証バイアスが強いと、自分のアイデアや方向性に対して肯定的なフィードバックだけを重視し、否定的なフィードバックや反証意見を無視する傾向があります。これを防ぐ方法を識学理論「結果の完了」で解説します。
結果の完了:確証バイアスを減らしていく方法は、行動結果の検証とフィードバックを定期的に受けることです。過去の判断が、都合の良い側面からだけでなく、本当に目と目られている結果に繋がっているかを明らかにしていくことが重要です。もし事実として結果が良く無いようであれば確証バイアスを捨てさせ変化を求めなければいけません。識学ではこの検証、フィードバック、変化を求めるアクションを「結果の完了」と呼びます。れまで述べた「結果」「成果」「結果視点」「成果視点」「必要な恐怖」「不必要な恐怖」「意図的変化」を正しく意識するとは、つまりは「正しく結果の完了を行う」ということにです。
これを識学では週次で行うことを推奨しています。結果の完了の要素は次の4つです。①求める結果を明確に設定②結果を事実で明確化(不足がある場合は不足の明確化)③不足を埋めるための行動変化④次のゴール設定(期限と結果の状態の約束)です。このアクションは先に述べた「結果(事実)」に対する検証を行うもので、ポイントは③の「行動変化」を求める部分です。確証バイアスが強いということは過去の思考や行動パターンから変化することができていないということなので、上司は結果のフィードバック時にこの変化を求めなければいけません。この定期的なレビューとフィードバックによって行動変化を促がし確証バイアスを弱めていきます。
3.上記を補完するための識学理論
確証バイアスは、自分の信念や選択に感情的な要素を加えている場合に特に強くなる傾向がありますので、感情を排除するための識学理論を補足します。
- 識学理論:結果と成果
感情に左右されない客観的判断のためにまず「結果と成果」を正しく整理します。「結果」は物事を行なった際の「期限時の事実」、例えば〇月の売上額や〇月の来客数など客観的、確定的なもので、捉え方によって解釈が変化しないもの。「成果」はその事実の結果を「どう見るか」の見方や「評価や比較」の視点が加わったものと分類しています。つまり、意思決定を行う際には、常に結果(客観的なデータや証拠となる事実)に基づくアプローチを採用し感情や先入観の入る余地を排除することが重要です。
- 結果視点と成果視点
結果と成果を正しく扱うためには意識や思考も重要です。前述の通り結果は「事実」、成果は「出た結果(事実)によってその後に他者から評価を受けるもの」ですが、結果が出る前に勝手な自己評価をし、悲観的な想像から失うものを守るための誤った回避思考が起きると確証バイアスにも繋がります。「成果視点」は、今自分がすべきことに集中できておらず、まだ出ていない結果のさらにその先に受ける評価や他人からの見られ方に意識が向いて今すべき行動に集中を欠いた意識状態です。上司は集中して行動できている「結果視点」を明確に指導管理してください。
この「成果視点」は恐れや不安や無力感を感じやすく、自分を守る時に心理的な防御機制として確証警戒が働くことがあります。つまり自分の評価や将来に不安や恐怖を感じ、その状況で自分の信念をしっかり守ろうとする防衛的態度としても確証バイアスが現れることがあるということです。そこで識学では組織内に発生する恐怖感情の中身も正しく判明させ分類しています。
3)識学理論:必要な恐怖、不必要な恐怖
組織内に発生して良い正しい恐怖感情は3つのみです。「自分は上司が求める成果を正しく理解できているか、実行できているか」「自分は成長出来ているか」「自分は価値ある時間を無駄に消費していないか」の3つだけです。上司部下間でその3つにフォーカスし、それ以外は不必要な恐怖に分類して排除するよう努めてください。代表的なものが前に述べた「成果視点」による自己評価や悲観的結果を想像による消失の恐怖です。常に結果視点に正してください。
4.まとめ
認証バイアスの影響を軽減しより健全な意思決定を行うためには、原因の理解と正しいい環境づくりが必要です。加えて以下のような各個人の意識上の誤解や錯覚を取り除くことも不可欠です。
『 反対されることは「攻撃ではない」ということです。 』
『 「それは反対意見であって、あなたを否定しているわけではない」
ということを周知する必要があります。
それが当たり前である環境を整えましょう。 』
『 環境によって徐々に慣れていくものです。
中途入社の人であろうと、その文化に順応させる必要があります。
もっと言うと、会議などの場では
「反対意見が出ないほうがおかしい」
ということでもあります。
部下やメンバーには「権限」があるのだから、それを行使してもらい意見が出る
ほうが自然なのです。 』
引用「パーフェクトな意思決定「決める瞬間」の思考法」P185~186より
以上のような正しい理解と対策、さらには意識上の誤解や錯覚による誤った行動を取り除くことで確証バイアスを最小限に抑えることが可能です。