業務の平準化を進めたいけれど、どのように対応したらよいのか詳しく分からないという方もいるのではないでしょうか。
業務の属人化や業務量の偏りを抱えていては、現在あるリソースを最大限に使うことが難しくなります。
なぜなら、従業員ごとに作業量の濃淡が出てしまい、場合によっては余分な待ち時間が生じるケースがあるからです。
そのような事態を避けるため、この記事では平準化の意味や進め方、注意点を紹介します。
業務量を適切に配分して生産性を上げ、競争力の高い企業を目指しましょう。
目次
平準化の意味
平準化(へいじゅんか)とは、ある一定の期間や従業員における業務量を均一化して偏りを解消することです。
平準化という言葉は、もともとは製造業にて「さまざまな種類の製品を均等に生産する(平準化生産)」という意味で使用されていました。
近年では一般的にビジネスの場で、業務量が均等された状態として使われています。
従業員ごとに作業量の偏りがあると従業員のモチベーションが削がれて退職を検討してしまう危険性があるため、平準化をはかり、早めに解消しなければなりません。
「平準化」のビジネスにおける使い方
平準化はビジネスにおいて、以下のように使われます。
- マニュアルを作成して作業を平準化し、ある従業員が休暇中でも業務が滞らないようにする。
- 平準化をもとに年間を通じた安定的な業務の受注システムを作り、経営の安定化を図る。
- 業務遂行のために必要な資格を洗い出し、取得を促して労働時間の平準化につなげる。
企業がどのような状況においても持続的な成長を遂げるために、平準化は重要視されます。
ビジネスにおいては、時期や人員を問わずリソースとタスクのバランスをとると、利益の最大化、損失の解消につながるものです。そのため、平準化は業務改善の場面で多く使われ、重要性が増しているのでしょう。
業務の平準化とはどのような状態か
業務の平準化とは、特定の従業員や期間のみに作業が集中しておらず、全体の作業量が各従業員に均等に配分されている状態をいいます。
平準化ができている組織では、従業員の休暇や不測の事態にかかわらず、業務が滞りなく進みます。
こうした企業では、一人のみが業務の進捗を把握しているような状態が避けられているのも特徴です。
平準化が保たれていると、エラーが隠蔽されずに組織の健全性を守れたり、業務がわかる従業員が一定期間不在にしていても業務が滞らず進められるといったことが期待できます。
平準化と標準化の違い
平準化と似た言葉として『標準化』というものがあります。
標準化とは、業務の方法を均一化し、いずれの従業員が作業した際でも同じ品質になるようにすることです。
標準化を進めるためには、組織が業務マニュアルをそろえて記載された作業、工程、内容を守る流れを作りましょう。
一方で平準化とは、一定の時期や社員に集中している業務をできる限り均一化することを指します。
平準化で均一にするのは「業務量」であるのに対し、標準化は「業務の方法」である点で異なっています。
ビジネスで業務の平準化が重要視されている理由
平準化を進めることは企業にあらゆる恩恵をもたらします。
ここからは、ビジネスで平準化が重要視されている理由を紹介します。
業務の滞りを避けるため
昨今は変化が著しい時代に突入しているため、市場に合わせて企業も柔軟に変化し、他社に対して優位性を保たなければなりません。
平準化できていると業務の滞りを避けられるため、プロジェクトの進行が遅れることや、業務の目的を達成できなくなってしまう事態を防げます。
平準化によって作業量を一定にすることで時間や効率のロスを解消し、スムーズに業務を遂行できるため、重要視されているのです。
特定のメンバーに負荷をかけないため
企業のなかには仕事をこなすスピードが速かったり、引き受けやすい性格だったりして多くの仕事を抱える従業員がいます。
業務量の偏りがあると社内の特定のメンバーに負担がかかってしまい、モチベーションの低下をまねきます。
不平等感から退職を検討してしまうケースもあるでしょう。
不公平感をなくす手段として業務量を均一にすると、組織の人材流出を防ぐことにつながると考えられます。
業務の質が安定するため
業務量が均一化されておらず従業員によって仕事が多すぎたり、逆に少なすぎたりする場合には、業務の質が安定しない可能性があります。
例えば、業務量が多い従業員は行うべきタスクが多すぎて業務に粗が出てしまったり、少なすぎると知識やスキルを使う場面が限定されて業務の質が上がらなかったりするでしょう。
平準化により業務量が均一化されると、特定の従業員のみが抱えていた業務のブラックボックス化が避けられ、業務の質が安定すると期待できます。
業務が平準化がされていない状態の例
平準化の必要性はわかっていても、自社が平準化できているのか、そうでない状態なのかがわからないという経営者もいるでしょう。
ここからは、業務が平準化されていない状態の例を紹介します。
従業員ごとに作業量が異なる
複数人で行う業務がある場合、従業員ごとに作業量に差が出てしまうケースがあります。そのような状況である場合、業務が平準化できているとはいえません。
平準化ができていない状況として、例えば以下のようなケースが挙げられます。
- 仕事を処理するスピードが速い従業員に、より多くの仕事が与えられる
- チームの欠員により、一人に業務の引き継ぎが偏っている
作業の割り当ての仕組みやノウハウが整っておらず、わかる人・できる人にのみ業務を依頼するという流れが作られている場合、平準化されているとはいえません。
時期によって作業量が異なる
飲食店やサービス業では「ニッパチの法則」と呼ばれる、2月と8月に商売が低迷して売上げが下がるという流れがあります。
それ以外の業種でも、例えばキャンペーン期間中や商品の入れ替え時に繁忙になるように、時期によって作業量が異なることも平準化できていない例のひとつです。
仮に業務量が増える時期がわかっているのであれば、その時期に外注で労働力を補う計画を立てられるでしょう。
業務が属人化している
業務の属人化とは、特定の従業員しかわからない業務のフローやノウハウがある状態をいいます。
例えばある業務におけるすべての作業を一人の従業員が行っていると、その従業員が休んだ場合、作業を進めることができません。
また、他の人には所要時間や進捗状況、業務の品質がわからない状態であることも問題です。
特定の従業員しか進められないだけでなく、進捗が共有されていない業務があることも、平準化ができていない状態と判断できます。
業務の平準化を図る効果
自社が平準化に対してどの程度時間をかけるかを検討する際には、平準化によって受けられる恩恵を知っておくとよいでしょう。
ここからは、業務の平準化を図る効果を紹介します。
業務の生産性が向上する
平準化によりリソースの無駄やムラをなくすと、組織全体としての生産性が上がると期待できます。
なぜなら、リソースと業務量のバランスが適正化されていると、費用対効果を高められるからです。
新たな設備投資やシステムの導入、人員の補充をせずに効果を最大化できるでしょう。
不平等感が解消される
業務の平準化がされていると、従業員ごとに偏りがあった仕事量が均一化に向かいます。
すると、仕事を多くこなしている従業員が抱いていた不平等感の解消が期待できるでしょう。
例えば、自分ばかり仕事をしていると感じるような、モチベーションが下がる事態を避けることができ、目標達成のために前向きな気持ちで業務にあたれます。
変化に柔軟に対応できる
平準化が行われると、業務の属人化や従業員ごとの業務量に対する偏りを防げます。
すると一部の従業員がメインで業務を回していた時よりも、メンバーで負荷を均等に分散できます。
急な依頼や一時的な業務量の増加に対して柔軟に対応できるようになるため、業務が著しく滞ったりアウトプットの質が低下してしまったりする事態を避けられるでしょう。
業務の平準化を図る際の注意点
平準化を進める際には重要なポイントがあり、それをおさえておかなければ労力と効果が見合わなくなる可能性があります。
ここからは、業務の平準化を進める際の注意点を紹介します。
現状を正しく把握する
平準化を進めるためには、業務がいつ、どこで、どのように滞っているのかを正確に把握することで、アプローチの効果が現れやすくなります。
業務フロー表のような、可視化するための表を作成し、一連の業務の流れを記録しましょう。
そのうえで細部を確認するという方法で、現状を正しく把握してから対処方法を検討することが重要です。
そうすることで、効果の現れやすい箇所からアプローチできるでしょう。
従業員の意見を聞く
日頃の業務を詳しく知らない経営層が作成する対処方法は、実態に見合わなくなっているケースがあります。
組織にきちんと作用する対策を立てるために、業務フロー表を作成したあとに従業員の意見も聞くようにしましょう。
現場の従業員にヒアリングすると、平準化を進める過程で起こりうる課題も含めて検討できます。
業務の質を低下させないようにする
業務は知識や経験、モチベーションが高い従業員に集まってしまうケースがあります。
平準化のため従業員に対して均等に業務を与えるなかで、経験の少ない従業員に仕事が割り振られることで質が低下する事態を避けなければなりません。
OJTを機能させる、マニュアルを作成して業務を標準化させるなどの方法で、対応する従業員が変わっても品質を維持できるような仕組みを作りましょう。
業務の平準化を図るための流れ
業務の平準化は以下のような流れで行います。
- 現状の業務を調べて可視化する
- 業務が偏っている箇所を分析する
- 業務のマニュアル化を進める
- 業務の役割分担を適正にする
- システムの活用を検討する
順に紹介します。
1.現状の業務を調べて可視化する
平準化を進めるなかで、まずは現状の業務量やフローを可視化しましょう。
以下のような内容を洗い出してまとめます。
- 業務内容
- 業務量
- 担当者
- 発生時点・頻度
経営層やチームリーダーのみでまとめていると、業務のヌケ・モレが発生する可能性があります。
複数人を交えて作成すると、実態に合った内容にできるでしょう。
作成する目的を「平準化のため」と理解すると、どの程度詳細な記載が必要なのかを意識できます。
2.業務が偏っている箇所を分析する
可視化できるようになった業務量のデータをもとに、業務が偏っている箇所を発見します。
業務の担当者ごとに以下のような点に目を向け、比較しましょう。
- 業務量
- 必要な工程
- かかっている時間
一部の工程で業務量が過大・過少である点や、偏りがある点などの発見があるはずです。
従業員間のみでなく、時期によって特定の担当が抱える業務量が増えるケースがあるため、時期ごとの業務量の差も把握しましょう。
3.業務のマニュアル化を進める
仕事を適正に割り振る前に、どの従業員が業務を行っても質を担保するために、定型化できる業務はマニュアル化を進めましょう。
担当者が時期や頻度、工程などを記載したマニュアルを作成し、誰でもアクセスできるようなシステムや共有フォルダに保管しておくことが大切です。
マニュアルを作成したあとも、次に同じ業務をする従業員とマニュアルを共有しながら実際に作業し、不明点があれば加筆・修正してアップデートしましょう。
4.業務の役割分担を適正にする
次に、業務を行っているチームにリーダーや責任者を立て、業務の配分を再検討します。
リーダーもしくは責任者が業務の分担表を作成・共有しましょう。
業務量は以下のような方法で解消できます。
- 業務の担当者を変更する
- 業務の種類や内容を変更する
- 業務を自動化する
業務の担当者を変更する場合には、知識や知見などのナレッジを共有することで業務に対する質の低下を防げます。
役割分担は作成して終わりではなく、定期的に見直して最適化していきましょう。
5.システムの活用を検討する
もし既存のリソースだけでは効果が現れづらい場合、費用対効果を考えてシステムの導入も検討しましょう。
例えば日程調整・マニュアル作成をサポートするITソリューションや、RPAというコンピューター上で行われる作業を自動で実施してくれるソフトウェアなどがあります。
効果がコストを上回ることを前提として、業務が滞っているような箇所でシステムを活用すると、時間の短縮やエラーの回避につながります。
まとめ
業務の平準化を図ると、生産性の向上や従業員のモチベーションの低下を防げます。
属人化を解消して業務量を均等にできれば、企業として急な業務に対応する基盤ができるでしょう。
長年属人化していた企業である場合、はじめはひと筋縄にいかない時もあるかもしれません。
まずは現状を可視化して問題点を探り、現在のリソースで対応できるところから改善していきましょう。