SMARTの法則とは、5つの要素からなる目標設定に役立つフレームワークです。
SMARTの法則を用いて目標設定をおこなうと、従業員のモチベーション向上や適切な評価につなげられます。
SMARTの法則の基本やメリット、目標の具体例、目標設定の際のポイントについて解説します。
目次
SMARTの法則とは目標設定のためのフレームワーク
SMARTの法則とは、目標達成の精度を高めるために用いるフレームワークのこと。
1981年にジョージ・T・ドランが発表した「There’s a S.M.A.R.T. way to write management’s goals and objectives」をもとに提唱されました。SMARTは次の5つの言葉の頭文字をとったものです。
Specific | 具体的な |
Measurable | 計測可能な |
Achievable | 実現可能な |
Relevant | 関連性のある |
Time-bound | 期限が明確な |
この5つは、目標達成のために必要な要素です。効果的な目標設定や目標達成のためには、SMARTの法則を理解することが役立ちます。
SMARTの法則の5つの要素
SMARTの法則によって設定する目標には、5つの要素が求められます。
適切な目標設定のために、SMARTの法則の5つの要素を確認しましょう。
1.Specific:具体的な
SMARTの法則による目標はSpecific=具体性を持ったものである必要があります。
抽象的な目標では、人によって認識が異なって意思統一が図れず、目標を達成するための行動が的外れになったり抽象的になったりしてしまうでしょう。
誰が聞いても同じ認識を持てるほど明確な目標であるかが、具体的かどうかの見極めのポイントになります。
2.Measurable:計測可能な
SMARTの法則による目標には、Measurable=計測できるものであることも求められます。
目標がどれくらい達成できたのかを、測定できる目標であることが大切です。
曖昧で計測のできない目標では、達成できたかどうかの判断ができません。
達成か未達成かを明確に判別できなければ、正しく評価できず従業員の成長につなげられないでしょう。
3.Achievable:実現可能な
設定する目標はAchievable=実現可能な目標であることも欠かせません。
実際に目標設定をおこなう際、高すぎる目標や曖昧な目標を設定してしまう人は意外と多いものです。
実現不可能な目標は、従業員の仕事のモチベーションの低下を招いてしまいます。
反対に簡単に達成できる目標では、社員の成長は促せません。
ある程度の努力があれば実現可能な目標設定をおこないましょう。
4.Relevant:関連性のある
企業と従業員双方の利益とRelevant=関連性のある目標を定めることも大切です。
企業だけでなく個人の利益を尊重できる目標にすれば、従業員の主体的な行動を促進できるようになります。
目標達成することでボーナスアップや昇給など個人の利益につながれば、授業員のモチベーションの向上と維持が図れるでしょう。
5.Time-bound:期限が明確な
SMARTの法則による目標設定の5つ目の要素は、Time-bound=期限を明確にすることです。
期限のない目標は行動を先延ばしにしてしまい、高いモチベーションを維持しながら達成に向けて取り組むことは難しいでしょう。
期限を決めることで集中力がアップして、業務のスピードを高められます。
期限は長すぎても短すぎても良くありません。
長期的で大きい目標の場合は、中間・短期間の目標と期限を設けると行動しやすくなります。
SMARTの法則を活用して目標設定するメリット
SMARTの法則を用いて目標設定をおこなうと、従業員のモチベーション向上や評価基準の明確化が期待できます。
SMARTの法則のメリットについて詳しく解説します。
従業員のモチベーションが向上する
業務における目標の設定は、達成に向けて行動するモチベーションを高めます。
SMARTの法則による目標には具体性があるので、今何をすべきかが明確になって、従業員が主体性を持てるようになりモチベーションアップにつながるでしょう。
また、達成までの期限があるため、ゴールを意識して作業に集中できるようになり、従業員の能力を引き出しやすくなるといえます。
評価基準が明確になる
多くの企業は目標達成度によって人事評価をおこなっています。
SMARTの法則を用いれば目標数値や期限などが数値化された具体的な目標を設定できるため、評価基準が明確になり公平な人事評価が可能になる点がメリットです。
従業員が、自分は正しく評価されていないという不満を抱きにくくなるでしょう。
SMARTの法則を活用して設定した目標の具体例
それではここで、SMARTの法則を活用した目標の具体例を紹介します。
経営や売上に関する目標、人材育成に関する目標、人事に関する目標の3つの目標例をピックアップしました。
どの目標も期限と目標数値を示すことが重要です。
経営・売上に関する目標
<具体例>
・今年度は昨年度より売上を10%上げ、利益率を8%にする
・前四半期比で商品販売数110%を目指す
・今年度末までに100人の新規顧客を獲得する
人材育成に関する目標
<具体例>
・半年後までに全社員の70%が自社のトレーニングプログラムを完了する
・3年後までに特定の資格取得者を30人増やす
・社員全員に1年間で80時間の研修を受けさせる
人事に関する目標
<具体例>
・来年度の有休消化率を80%にする
・人事異動後の配置に関する従業員満足度調査で満足している社員の割合70%以上を目指す
・3ヵ月までに即戦力となる中途社員を3名採用する
SMARTの法則を用いて目標設定するときのポイント
SMARTの法則によって目標設定をするときは、具体的な数値を示す以外にいくつか押さえておきたいポイントがあります。
特に重要な3つのポイントを確認してください。
成果目標と行動目標を設定する
SMARTの法則を用いて目標設定する場合には、成果目標と行動目標の2つを設定しましょう。
成果目標とは、最終的に達成したいゴール、行動目標は具体的な行動のことを指します。
例えば「1ヵ月で新規顧客を10件増やす」というのが成果目標にあたり、そのために「1日あたり3件の新規営業をかける」ことが行動目標になります。
行動目標を成果目標のための手段と位置づけることで、行動の質が上がり、成果目標の達成に近づけるでしょう。
市場のニーズや経営状況にあわせて柔軟に対応する
市場のニーズや企業の経営状況は常に変化しています。
変化していく環境に対応するには、変化にあわせて会社の方向性や目標を決めることが重要です。
変化の激しい市場ニーズや経営状況であっても、目標を変えながら行動することで、柔軟に対応できるようになります。
PDCAを回す
業務改善を効率化させるPDCAを活用すると、SMARTの法則によって設定した目標達成に適切な行動をとりやすくなります。
設定した目標に向けて行動していると、予期せぬ問題が発生したり、気づかなかった課題にぶつかったりすることもあるかもしれません。
PDCAを回せば、これらの課題を検証・改善しながら目標に向けて行動できるようになります。
PDCAサイクルを回し目標の状況を確認することで、目標を柔軟に変更しながら最終的な目標達成に近づけるでしょう。
SMARTの法則の発展型
SMARTの法則には、より目標設定の精度を高められるように改良した発展型が存在します。
これから紹介する3つの発展型は、SMARTの法則に新しい要素が追加されたものです。
SMARTER
SMARTの法則に「評価(Evaluate)」「承認(Re-evaluate)」の2つの要素を加えたものがSMARTERです。
この2つの要素を加えると、目標達成の途中で適切な評価と調整をおこなえるようになります。
評価とは主に上司からの評価で、承認は上司に認められたという意味です。
SMARTERでは、上司からの評価や承認を含めて目標設定から達成までの過程を検討します。
上司が部下の設定した目標が適切かどうかを、評価・承認する指標として取り入れれば、人事評価での目標管理に効果的に活用できます。
SMARRT
SMARRTは、SMARTに「現実的(Realistic)」の要素が追加されたものです。
SMARTの法則における「実現可能な(Achievable)」よりも、具体例かつ合理的に設定した目標の内容を検討します。
SMARTTA
SMARTに「追跡(Trackable)」と「納得(Agreed)」の要素を追加したものが、SMARTTAです。
追跡とは目標に対する取り組みの経過を把握できるかどうかという意味で、納得はチームメンバー全員が納得でき取り組める目標かどうかという意味です。
組織全体で目標への達成レベルや行動の振り返りをおこなって現在地を確認すれば、目標を共有して一体感を持つことができるようになるはずです。
SMARTの法則以外にもある目標設定に役立つフレームワーク
適切な目標設定は、企業の成長に効果的なものですが、SMARTの法則以外にも目標設定に活用できるフレームワークはいくつかあります。
例えば感情面を考慮した目標設定をおこないたいなら「HARDゴール」、最終目標であるKGI達成のための中間目標を設定したいなら「KPIツリー」など、目的に合わせて選んでみましょう。
目標設定に役立つフレームワークは、こちらの記事で詳しく紹介しています。
関連記事:目標設定におすすめのフレームワーク15選
SMARTの法則の活用は目標達成への近道
SMARTの法則は、具体的で明確な目標設定のために有効なフレームワークです。
SMARTの法則の要件である5つの要素を意識した目標設定は、達成までの道のりが明確になり、業務効率化や従業員のモチベーション向上、キャリア設計にも役立ちます。
また、人事評価にも活用が可能です。従業員が納得のいく、公平性のある評価をすることができるようになります。
SMARTの法則を活用して、明確で達成可能な目標を設定し、達成に向けた積極的な取り組みを支援しましょう。