少子高齢化が進む日本において、子供の数の減少に反して市場規模を拡大させているのが教育業界、いわゆる塾ビジネスです。
今回は、非常に魅力が大きい塾ビジネスの生産性向上策に関して解説をしていきます。
目次
独自解釈が発生しないルールを定める
まず塾における生産性の定義から考えてみましょう。大きく二つに分けられます。
①生産性が高い授業(サービス)の提供 ⇒ 塾生の成績・進学率UP
②生産性が高い営業活動の実践 ⇒ 新しい塾生の獲得
まずは①に関して解説します。
これは塾ビジネスに限った話ではないのですが、いわゆるサービス提供側が「先生」と呼称される業界(資格など、専門性が求められる業種)は共通して注意が必要です。
それは何かと言うと、「組織のルールよりも個人のルールの方が優先される可能性がある」ということです。
先生、〇〇師、〇〇士といった言葉が使われるビジネスはBtoCの業態が多く、さまざまな顧客ニーズに直面している人います。
この状況下、「会社の規定では禁止されているけれどもお客さまが喜ぶからつい……」といった具合に、内緒で規定外のサービスを実施してしまい、その場では顧客に喜ばれ、そのサービスを止められなくなってしまうという状態が発生してしまうことがあります。
このタイミングで違反に対し指導が実施できていれば問題は小さいままで終わるのですが、実際には顧客に喜ばれた経験だけが残り、「自分は優れたサービスを提供できている」と誤解をしてしまうことが多いようです。
私も専門業を営むクライアントを多くサポートしてきていますが、「お客さまが喜ぶからいいじゃないか」とか「前の職場では許容されていた」という声を驚くほど多く聞いてきました。
生産性を高めるには、まずは再現性を高めることです。
再現性が高いとは、誰がサービス提供をしてもある程度は同じクオリティになる状態を指します。
タブレットを導入するなど、かなり仕組化を進めている塾業界の事業者も出てきていますが、まずは再現性が高いサービス提供の仕組みの構築が重要となります。
次に必要なポイントは、仕組み通りに実践できる社員の育成です。
個人の見解でサービスを提供しないように、ルール・マニュアルに基づいた組織運営を実施しなくてはなりません。
ルール・マニュアルとは書いて通達するだけのものではなく、各種報告書のフォーマットやチェック体制の構築まで整えていくことを意味します。
例えば、下記のようなものです。
- 生徒の目標点数と獲得点数の差異を捉え、対策案を教室長に報告する
- 月に1回は授業状況を録画撮影し教室長は内容をチェックする
ただこういった取り組みには反発する人もいるでしょう。
それゆえ、採用時に「自社の仕組み通りにサービス提供ができるか」という点もチェックしておかなくてはならないのです。
完全に見抜くことは難しいかもしれませんが、「資格を持っている」や「同業での経験を持っている」だけで採用を進めると、後々大きなトラブルにつながってしまいます。
塾ビジネスと就職活動
次に、②の解説を進めていきましょう。安定性が高い塾ビジネスにおいても、年に1回の一大イベントが発生します。
それは、入学・卒業シーズンです。
どんなに生産性が高く、ユーザーの満足度が高かろうとも必ず卒業はやってきます。
ここは満面の笑顔で卒業生の前途洋洋たる未来を応援してあげましょう。
それを実行するにも、事業者としては塾生が卒業した以降も問題なく教室の定員が埋まっている状況をつくらなければなりません。
ポイントは仕込みです。もちろん、他社が実践するようにシーズンが到来したら大量のチラシを配布したり、校門でのビラ配りを行ったりすることも重要です。
ただ、他社も同じことをしているのでそれだけでは競争に勝つことは運任せになってしまいます。
どのような塾なのかを知るための情報が不足しているのです。
大学の就職活動をイメージしてください。今どきの就職活動は大学3年生のスタートと同時か、早ければ大学2年生から情報収集を開始します。
企業も学生に自社を選んでもらえるようインターンシップやOB座談会などを通じ、良質な情報を提供しています。
そして、いよいよ選考が開始したときには学生は既に入社したい企業をリストアップしているのです。これ、塾ビジネスも同じです。
潜在的に、「子供を塾に通わせたい」という親のニーズは多くあります。
ただ、なかなか決めきれなくて、入塾をしていない家庭も少なくありません。
然るべきタイミングが来ると慌てて入塾を決めるのですが、情報が足りないまま、近さや料金、何となくの雰囲気によって塾を選んでしまうのです。
そこで、重要なことはいかに意思決定の際に親が塾の情報を持っている状態をつくるかということになってきます。
進捗管理と評価
前項でのポイントは、意思決定できる情報を事前に与えておくということでした。
例えば、次のような取り組みが考えられるでしょう。
- オンライン授業を公開する
- 体験会を定期開催する
- 紹介制度を設ける
- SNS(facebook、instagram)を活用する
- メルマガを配信する
重要なことは、これらに具体的な数値目標と期限を設定し、管理・評価を行うことです。
前項同様に就職活動、とりわけ今度は企業側の採用活動に例えると分かりやすいかと思います。
採用成功を導くためには、
- 6月までにインターンシップ生を30名受け入れる
- 9月までに説明会への参加を500名受け入れる
- 12月までにプレエントリー数を300名獲得する
- 2月までに書類選考を100名実施する
- 3月までに2次選考を30名実施する
- 内定者を10名出す
このように採用活動を分解し、担当者を管理・評価していきます。
年が明けて、慌ててチラシの準備をするのではなく、しっかりと母集団をつくり上げていくのです。
事業者によって集客の仕組みはさまざまかと思いますが、その仕組みを分解し、役割として講師陣にも設定していきます。
後は進捗管理と評価を適切に行っていけば、講師陣も自然と集客活動を担ってくれるでしょう。
評価の具体的な方法に関しては、また別稿を参照してもらえますと幸いです。