人材育成を成功させるためには、長期的な視点に基づいたマネジメントが必要不可欠です。
では、人材育成におけるマネジメントとは、一体どのようなものなのでしょうか。
本記事では人材育成マネジメントについて解説していきます。
また、人材育成を成功させるためのポイントも取り上げました。ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
人材育成におけるマネジメントとは?
人材は企業にとって最も重要な経営資源です。
また日本の場合、少子高齢化によって新規人材を獲得しづらくなっているため、人材育成の重要性は以前よりまして高まっています。
しかし人材育成は、すぐに成果が出るものではなく、長期的な視点を持つ必要があります。
そのため、人材育成ではマネジメントが必要不可欠なのです。
人材育成におけるマネジメントでは、従業員の能力を高めるのはもちろんのこと、モチベーションやエンゲージメントも適切に管理することが求められています。
また、企業の経営戦略との関連性を持たせることも重要です。
人材育成マネジメントの目的3選
人材育成マネジメントの目的は以下の3つです。
- 組織全体の生産性向上
- 従業員のモチベーション向上
- 従業員の定着
それぞれ詳しく解説していきます。
目的①:組織全体の生産性向上
人材育成によってそれぞれの従業員の能力が向上すると、結果的に組織全体の生産性が向上します。
生産性が向上すれば、当然のことながら企業の業績も向上するでしょう。
また、人材育成による生産性向上は、コストカットのような短期的なものでなく、長期的かつ継続的に結果が生まれるものになることがほとんどです。
企業が長期的に成長していくためにも、人材育成マネジメントを積極的に取り入れたいところです。
関連記事:生産性向上の成功事例集5選|必要性と具体的な施策を解説
目的②:従業員のモチベーション向上
人材育成マネジメントを進めることで、従業員のモチベーション向上が期待できます。
マネージャーが明確な目的を持って人材育成をマネジメントできると、従業員自身が「企業に貢献するにはどのようにすればいいか」を積極的に考えるようになります。
そして、その取り組みが高く評価されることで、従業員のやる気が高まり、良いサイクルに繋がっていくのです。
また、その様子を見た周囲の従業員にも、この好循環が伝染していきます。
結果として組織全体のモチベーションが向上するのです。
関連記事:企業に長期的に恩恵をもたらす「モチベーションマネジメント」とは?
目的③:従業員の定着
各従業員に合わせた人材育成マネジメントを実施できれば、従業員の離職率低下が見込めます。
例えば1on1ミーティングを高頻度で実施できれば、従業員としては「企業に必要とされている」という実感を持つようになるはずです。
また、仕事の成果と評価が適切に結びついていれば、従業員の満足度が高まり、結果的に離職率が低下します。
離職率に悩みを抱えているのであれば、人材育成マネジメントに注力するのがいいかもしれません。
人材育成マネジメントの課題3選
人材育成マネジメントの課題は以下の3つです。
- 担当者の負担が大きい
- マネジメント力が不足している
- 目標やビジョンが曖昧になっている
それぞれ詳しく解説していきます。
課題①:担当者の負担が大きい
人材育成マネジメントの課題として挙げられるのが、担当者の負担の大きさです。
各従業員に対して丁寧に対応すればするほど、担当者の負担が大きくなります。
これが慢性化し、担当者のキャパシティを超えるようになってくると、人材育成の質低下を引き起こす可能性も出てくるでしょう。
多くの場合、担当者は人材育成がメイン業務ではありません。
他のマネジメント業務を抱えながら、人材育成にもリソースを割いているケースがほとんどです。
もし担当者の負担が大きいと感じるのであれば、人材育成のためだけの人材を配置する必要があるかもしれません。
また、いっそのこと人材育成を外注してみるのも手です。
課題②:マネジメント力が不足している
担当者のマネジメント力が不足しているケースも見受けられます。
高い業績を上げている従業員が、必ずしも人材育成に相応しいスキルを有しているとはかぎりません。
なぜなら、現場で求められるスキルと人材育成で求められるスキルには、大きな違いがあるからです。
人材育成で求められるスキルを明確にし、そのスキルを有している人材を、担当者に配置した方がいいでしょう。
課題③:目標やビジョンが曖昧になっている
人材育成マネジメントの目標やビジョンが曖昧になりがちなのも、よく挙げられる課題です。
先ほども述べた通り、人材育成は長期的な視点が必要不可欠です。
「短期的に成果が出るものではない」と考えた方がいいでしょう。
そのため、長期的な視点が必要となる目標やビジョンを、より明確にする必要があります。
企業と従業員がどこを目指しているのかを共有し、双方の利益となるようなプランを策定するのがいいでしょう。
目標やビジョンが曖昧になっていては、効果的な人材育成計画を作成することができません。
1on1ミーティングなどで、すり合わせしておきましょう。
関連記事:マネジメントで目標設定が重要な理由とは?おすすめの「目標設定フレームワーク」も紹介
人材育成マネジメントの手法5選
人材育成マネジメントの手法は以下の5つです。
- OJT
- Off-JT
- SD
- MBO
- eラーニング
それぞれ詳しく解説していきます。
手法①:OJT
OJTは「On the Job Training」のことで、職場での実践を通じて育成する手法を指します。
例えば営業職であれば、先輩社員の営業についていき、実際に営業プロセスを見ることで、後輩社員が業務プロセスを身につけていきます。
メリットとしては、業務と教育の両方を同時に進められる点が挙げられるでしょう。
担当者は現場での業務と並行する形で、部下を育成できます。
一方、デメリットとしては、業務と教育をどちらも請け負うことになるため、担当者の負担が増大してしまう点が挙げられます。
場合によっては、現場での業務に支障をきたすこともあるでしょう。
関連記事:OJTの導入方法とは?工程やポイント、注意点、適さない業務を解説
手法②:Off-JT
Off-JTは「Off the Job Training」のことで、セミナーや社内研修を通じて育成する手法を指します。
例えば新入社員全体で実施されるビジネスマナー講座は、Off-JTに該当するでしょう。
メリットは、効率的に知識・ノウハウを習得できる点です。
ほとんどの場合、Off-JTは大人数を相手に実施されるので、効率よく人材を育成できます。
一方のデメリットは、セミナー開催のためのコストが発生する点と、業務を停止しなければならない点が挙げられます。
手法③:SD
SDは「Self Development」のことで、直訳すると「自己啓発」という意味になります。
書籍を読んだり自主的にセミナーに参加したりするのがSDです。
メリットとしては、担当者の負担がほぼゼロであり、従業員が主体的に取り組みやすい点が挙げられます。
成長意欲の高い従業員には打ってつけの手法でしょう。
その一方で、SDを促進させることが難しい点がデメリットとして挙げられます。
従業員のモチベーション次第なのが難しいところです。
手法④:MBO
MBOは「Management By Objectives」の略称で、目標管理制度のことを指します。
従業員それぞれで目標を設定し、その達成度に応じて評価する制度です。
仕事の業績と評価が強く連動するのが特徴で、成果主義の職場環境にマッチしているのがメリットと言えるでしょう。
一方、目先の目標に執着しがちな点がデメリットです。
たしかに目標達成はとても大切なことです。しかし、人材育成という点で見ると、より長期的な目線が重要になります。
目的と手段を混同しないようにしましょう。
関連記事:MBOとは?目標管理制度のメリットや効果的な運用方法、OKRとの違いを解説
手法⑤:eラーニング
eラーニングは、インターネットを利用した学習方法です。
4Gが普及したことで、誰もがオンライン授業を受けられる環境になりました。
eラーニングであれば、場所を問わない人材育成が実施可能です。また、授業の進捗や学習結果を一括管理できます。
ただし、従業員が実際にスキル・知識を身につけているかどうかが不明瞭になりがちです。
また、顔を合わせる機会が少なくなるため、フィジカルな職場環境を構築しづらいのもデメリットだと言えます。
人材育成マネジメントの手順
人材育成マネジメントの手順は以下の通りです。
- 課題を抽出する
- 目標を設定する
- 計画を作る
- 実際に実施する
- 定期的にフィードバックを実施する
それぞれの手順を詳しく解説していきます。
手順①:課題を抽出する
まずは企業の課題を抽出します。
そもそも人材育成の最終目的は、企業の業績向上・目標達成です。
そのため、まずは企業がどのような課題を抱えているかを明確にする必要があります。
そうすることで「自社が求める人物像」も見えてくるはずです。
より具体的に「いつまでにどれくらいの人材が必要か」を算出できるとなお良いでしょう。
手順②:目標を設定する
課題解決のための「自社が求める人物像」を抽出できたら、目標を設定します。
全従業員が同じ方向を向くことで、初めて組織としてのパフォーマンスが発揮されます。
だからこそ、まずは明確で具体性のある目標を設定しましょう。
従業員が目標を明確にイメージしやすくなります。
手順③:計画を作る
目標を設定できたら、そこから逆算して人材育成計画を作成します。
まずは自社が求める人材の要件を設計し、それが現状の人材とどれくらい相違があるかを確認しましょう。
そうすることで、何が不足しているかが可視化されます。
そのあと、不足要件をカバーするための人材育成計画を策定しましょう。
この場合、研修や資格取得のサポートはもちろんのこと、キャリア採用を実施するのも一つの方法です。
手順④:実際に実施する
計画を作った後は、実際に人材育成を実施します。
この際に、あらかじめ目標や人材育成方針を全体に共有するのがおすすめです。
得体の知れない人材育成方針は、従業員に不安を与えます。
しっかり共有し、納得の上ですすめていけるようにしましょう。
手順⑤:定期的にフィードバックを実施する
人材育成を実施している最中では、定期的なフィードバックも実施するようにします。
可能な限り高頻度で1on1ミーティングを実施できれば、それぞれの従業員が抱えている課題にいち早く気づけます。
その際には、従業員が不満を抱えているかどうかも確認するのが良さそうです。
従業員が人材育成方針に不満を抱えているようであれば、早急に改善策を打ち出すことで、人材育成方針をブラッシュアップできます。
人材育成マネジメントを成功させるには?
人材育成マネジメントを成功させる方法は以下の3つです。
- 評価制度を明確にする
- 中長期的な目線を持つ
- PDCAサイクルをしっかり回す
それぞれ詳しく解説していきます。
成功法①:評価制度を明確にする
人材育成マネジメントを成功させたいのであれば、まずは評価制度を明確にするのがいいでしょう。
従業員が不満を抱く要因として「不明瞭な評価制度」が挙げられます。
明らかに結果を出しているのに、なぜか評価されないという状況で、従業員のモチベーションが向上するわけがありません。
当然、人材育成もうまくいかないでしょう。
成果主義なのか情意主義なのか、何にしてもまずは評価制度を明確にし、オープンにすることをおすすめします。
そうすることで、従業員は高評価を得るために、企業が求める人材を目指してくれるようになります。
成功法②:中長期的な目線を持つ
人材育成マネジメントで大切なことは、中長期的な目線を持つことです。
特に上場企業の場合は、毎期の決算で結果を示すために短期的な戦略に走る傾向があります。
たしかに、お金の動きは短期的に改善できるかもしれません。
しかし人材の能力や経験値は、短期的に養えるものではないでしょう。
人材育成は長期的に取り組み続けて初めて大きな成果が生まれます。
結果を出すには中長期的な目線を持ち続けることを意識した方がいいでしょう。
成功法③:PDCAサイクルをしっかり回す
人材育成マネジメントに限った話ではありませんが、PDCAサイクルをしっかり回すようにしましょう。
特に人材育成の場合、はじめに育成方針や評価制度を構築した後、ついそのまま放置しがちになります。
そうではなく、PDCAサイクルの「A:Action(改善)」を実施することで、少しずつ改善を行うべきです。
なぜなら、現代は変化が非常に激しくなっており、高頻度で社会常識が変化しているからです。
高頻度での修正を繰り返していくことで、人材育成方針がより強固なものになっていきます。
めんどくさがらずに、随時修正していきましょう。
まとめ
それでは本記事をまとめていきます。
- 人材育成は短期的に成果が出づらいため、長期的な目線でのマネジメントが必要となる
- 人材育成マネジメントの目的としては①生産性向上、②モチベーション向上、③離職率の低下が挙げられる
- 人材育成の方針や内容は常に改善した方がいい
人材は企業にとって最も重要な経営資源であり、長期的な目線で育成を続ける必要があります。
そのため、マネジメントによるサポートが必要不可欠です。
人材育成で成果を出したいのであれば、長期的な視点に立ったマネジメントに注力してみてはいかがでしょうか。