目標管理制度において、実際にどのような目標を設定すべきか迷うシーンはありませんか?
具体的な目標を設定しやすい営業職やエンジニア職ならまだしも、事務職やバックオフィス職はどのような目標を設定すべきなのでしょうか。
本記事では、目標設定において非常に重要な「目標管理シート」について深掘りしていきます。
ぜひ参考にしてみてください。
関連記事:目標管理とは?メリットとデメリット、取り入れる際のポイントやツールも紹介
目次
目標管理シートとは?
目標管理シートとは、目標管理制度(MBO)に基づいて作成されるシートのことです。
目標項目・評価基準・成果・評価などが記載されます。
目標管理制度は米国の経営学者であるドラッカーによって確立されたマネジメント手法です。
それぞれの従業員が目標を設定し、その目標の達成度に合わせて評価を決定します。
そのため一般的には、上司が部下を管理するために用いられることがほとんどです。
日本では1990年代後半から成果主義の普及とともに、目標管理シートも普及していきました。
関連記事:MBOとは?目標管理制度のメリットや効果的な運用方法、OKRとの違いを解説
目標管理シートを導入した方がいい理由3選
目標管理シートを導入した方がいい理由は以下の3つです。
- 部下をマネジメントしやすい
- 人材育成の際の材料になる
- 会社の方向性とのベクトル合わせができる
それぞれ詳しく解説していきます。
理由①:部下をマネジメントしやすい
目標管理シートを導入した方がいい理由として、まず挙げられるのが「部下をマネジメントしやすい」ということです。
目標管理シートを導入することで、上司は部下の目標を確認することができます。
また、上司と部下が一緒になって目標を設定することがほとんどなので、部下のキャリア方針を伺えるチャンスが生まれるのもメリットです。
そして目標管理シートを導入すれば、部下の目標の進捗度も確認できます。
「進捗が遅れているときにヘルプを入れる」など、状況に合わせたマネジメントが可能です。
マネジメントをスムーズにさせたいときに目標管理シートは有効な手段となります。
関連記事:マネジメントで目標設定が重要な理由とは?おすすめの「目標設定フレームワーク」も紹介
理由②:人材育成の際の材料になる
目標管理シートの記載内容は、人材育成の際の材料になることが多いです。
目標管理シートには目標項目や成果はもちろんのこと、目標達成までの進捗も明らかになります。
その際に部下の強み・弱みがより明確になるため、適切な人材配置及び人材育成が可能になるのです。
また、その時々で部下の悩みを確認することができるため、業務プロセスの中での指導・修正もできます。
目標管理シートを導入することで、人材育成における材料不足が解消されるかもしれません。
理由③:会社の方向性とのベクトル合わせができる
目標管理シートは、上司と部下が一緒になって目標を設定することがほとんどです。
そのため、目標設定の際に、会社の方向性とのベクトル合わせができます。
多くの場合、新入社員は会社のビジョンや方向性を理解していないため、会社の方向性に合致しない目標を立ててしまう場合があります。
そこに上司が介入することができれば、部下と会社のベクトル合わせが可能となり、お互いに利益をもたらせるような目標を設定できるでしょう。
目標管理シートは、部下と企業の間に上司が介入できる機会となります。
目標設定のフレームワーク3選
目標設定における代表的なフレームワークは以下の3つです。
- ベーシック法
- ランクアップ法
- SMARTの法則
それぞれ詳しく解説していきます。
フレームワーク①:ベーシック法
目標設定における最も一般的なフレームワークがベーシック法です。
以下の手順で実施されます。
- 目標項目の設定
- 達成基準の設定
- 目標期限の設定
- 達成計画の設定
まず「目標項目の設定」では、何を達成したいのかを明確にします。
この際に部下と企業の方向性を可能な限り揃えることが大切です。
次に「達成基準の設定」では、どのような状態であれば目標達成になるのかを明確にします。
ここでは数字などの定量的な基準を設けるのが無難です。
そのあとは「目標期限の設定」で、いつまでに目標を達成させるかを明確にします。
個人の目標設定においては期限が曖昧になりがちです。上司がしっかり指導するポイントだと言えます。
そして最後に「達成計画の設定」です。
目標項目・達成基準・目標期限から逆算して、どのようにアクションを起こして達成していくのか、達成計画を決定します。
どのフレームワークを利用するか迷ったら、まずはベーシック法を実施してみるのがいいでしょう。
フレームワーク②:ランクアップ法
ランクアップ法とは、自分自身を成長させるための「ストレッチ目標」を用いるフレームワークのことです。
以下の6つの項目を参照しながら目標を設定していきます。
- 改善:弱点の改善
- 代行:スキルが高い従業員の代行
- 研究:あるテーマについての研究
- 多能化:他分野のスキル・知識の習得
- ノウハウの普及:自分のスキル・知識の普及
- プロ化:特定の分野のプロ化
ランクアップ法では、上記の6つのどれかから目標を設定していきます。
そうして決めた目標をベーシック法を用いて達成へ道筋を描くことで、効果的に運用できるでしょう。
明確な目標を設定したい時におすすめのフレームワークです。
関連記事:【導入事例】ストレッチ目標とは?部下の能力を最大限に引き出す方法とは?
フレームワーク③:SMARTの法則
SMARTの法則は、MBOを提唱したドラッカーによって作られたフレームワークです。
ドラッカーは、効果的な目標を設定する際の要素として以下の5つを挙げました。
- Specific(具体的な)
- Measurable(測定可能な)
- Achievable(達成可能な)
- Related(関連性)
- Time-bound(期限)
以上の5つの頭文字を取って「SMARTの法則」です。
ただし他にも「Assignable(割り当て可能な)」や「Realstic(実現可能な)」などが紹介されることもあります。
5つの要素の中でも特に重要なのが「Specific(具体的な)」です。
例えば営業職の目標設定の際に「売り上げをアップさせる」ではなく「売り上げを10%アップさせる」というように、目標を可能な限り具体化させます。
こうすることで、目標達成のイメージがより明確になり、業務に対するモチベーションが向上するのです。
目標管理シートの失敗例
目標管理シートの代表的な失敗例は以下の3つです。
- 目標が大きすぎる(または小さすぎる)
- 目標が多すぎる
- 従業員の意思を考慮していない
それぞれ詳しく解説していきます。
失敗例①:目標が大きすぎる(または小さすぎる)
まず挙げられる失敗例が目標の大きさです。
あまりにも大きすぎる目標だとイメージが湧きませんし、逆に小さすぎてもモチベーションが高まりません。
適切なサイズの目標を設定する必要があります。
もし、不可能を可能にするような目標を設定したいのであれば、京セラ創業者の稲森和夫の思想「楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する」が参考になるかもしれません。
構想段階ではとにかく大きな野望を抱く一方で、計画段階ではありとあらゆる危機を想定するのです。
この方法であれば、可能な限り大きく、かつ実現可能な目標を設定できるでしょう。
失敗例②:目標が多すぎる
目標管理シートに記載する目標が多すぎると、それぞれの目標に対する取り組みが中途半端になってしまいます。
多くても3つまでに抑えるのがおすすめです。
また、どうしても目標数を多くしたいのであれば、優先順位を組み込むのがいいでしょう。
それから期限を順序づけることで、達成しなければならない目標から手をつけることができます。
ただし、初めて目標管理シートを利用する新入社員の場合は、まずは1つの目標に絞るのが無難です。
失敗例③:従業員の意思を考慮していない
新入社員だからといって、会社側の目標を押し付けてしまうのもよくある失敗例です。
新入社員が主体的になれるような目標を設定しないと、達成率が下がってしまいます。
まずは部下の意思を引き出しましょう。
もし部下にやりたいことがあるのであれば、それを可能な限り尊重し、かつ企業の方向性にも近づけられるように上司が調整しましょう。
これこそがマネージャーの役割です。
従業員の意思を尊重して、自己成長を実感できるような目標を設定することが求められます。
目標管理シートの例文
ここでは以下の職種の目標管理シートの例文を紹介していきます。
- 営業職
- 事務職
- 管理職
- バックオフィス職
例文だけでなく、職種ごとの特徴を踏まえたコツも紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
営業職の例文
営業職の例文は以下の通りです。
- 来年末までに月ごとの訪問数を20件までに引き上げることで新規顧客獲得を40件にまで増やす
- 今月末までにセミナーに2回参加して、成約率を30%までに引き上げる
- 半年後までに部下に対するビジネス敬語のレクチャーを月1回実施し、部下の顧客獲得数を20件まで増やす
営業職は数字が重視される職種であるため、他の職種に比べると目標設定がやりやすいです。
その一方でプロセスが曖昧になりがちなので、ここをしっかり明確にしましょう。
上記の例文のように、改善策を具体化するのがおすすめです。
事務職の例文
事務職の例文は以下の通りです。
- 今期末までに保管棚を整理して収納スペースを半分にする
- 3月末までにマニュアルを見直して新人教育の担当者を3分の2まで減らす
- ミスがあった際は全体に報告するようにして、来期ミスの発生率を20%減らす
数ある職種の中でも、事務職は目標を定量化しづらいです。
そこで上記の例文のように「削減」を意識することで、目標を定量化しやすくします。
管理職の例文
管理職の例文は以下の通りです。
- 半年後までに、業務改善案を週3回提示することで、業務達成率を80%まで向上させる
- 第二四半期末までにプロジェクト管理ツールを導入することでチーム目標の達成率を90%にする
- 今年度までに新たな福利厚生制度を2つ設けることで、従業員の満足度を20%向上させる
管理職は、チーム・部門のパフォーマンスを最大化させるような目標を設定するといいでしょう。
また、数字だけでなく労働環境にも注目することをおすすめします。
満足度や残業時間を用いた目標を設定することで、結果的に従業員のパフォーマンスが向上するかもしれません。
バックオフィス職の例文
バックオフィス職の例文は以下の通りです。
- 今月までに勤怠システムを導入することで、勤怠管理のエラーをゼロにする
- 今期の書類選考者数を30%削減することで、採用担当者を10人から7人に減らす
- 第四四半期までに簿記3級の資格を取得して、決算書類を作成できるようにする
定量的な目標を設定しづらいバックオフィス部門では「効率化」と「プロ化」がポイントとなります。
特にプロ化は、部下とよく話し合って、部下の自己成長に繋がるような目標を設定できるといいでしょう。
目標管理を成功させるポイント
目標管理を成功させるポイントは以下の3つです。
- タスクを細切れにする
- バッファを設ける
- 進捗をモニタリングできる仕組みを作る
それぞれ詳しく解説していきます。
ポイント①:タスクを細切れにする
目標管理を成功させるポイントとしてまず挙げられるのが「タスクの細切れ」です。
タスクを細切れにすることで、日々の業務の進捗具合が可視化しやすくなり、目標達成までのイメージが具現化できます。
この手法は、エンジニア職やクリエイティブ職などのクリエイターにおすすめの方法です。
目標達成や制作物のイメージが湧かないときに、タスクを細切れにしておくことで「少しでも前に進んでいる感覚」を掴むことができます。
また、上司目線で目標進捗度を確認しやすいのもメリットです。
目標を設定した後は、目標達成までのタスクを可能な限り細かくしてみてはいかがでしょうか。
ポイント②:バッファを設ける
目標管理を成功させるためにバッファを導入するのもおすすめです。
例えば「9ヶ月後までにサービスをローンチする」という目標の場合、最後の1ヶ月をバッファに設定します。
つまり8ヶ月後までにサービスをローンチできるようにスケジュールを設定するのです。
大抵の場合、計画通りに業務が進むことはほとんどありません。
必ず「不測の事態」が発生し、計画が後ろ倒しになります。
この「不測の事態」をあらかじめ想定してバッファを設けておくことで、目標達成率を高めるのです。
ポイント③:進捗をモニタリングできる仕組みを作る
目標管理制度を導入する際は、何かしらの形で進捗をモニタリングできる仕組みを作っておくのがおすすめです。
進捗を一目で確認できるようになれば、進捗の遅れをすぐに確認でき、先回りの対応を実施することができます。
具体的にはプロジェクト管理ツールの導入がおすすめです。
部下全員のタスクを確認できるツールを導入すれば、進捗を容易にモニタリングできます。
また、タスクだけでなくスケジュールも確認できるようにしておくと、スムーズなタスクマネジメントが可能になるでしょう。
まとめ
それでは本記事をまとめていきます。
- 目標管理シートは目標管理制度(MBO)に基づいて作成されるシート
- 目標設定の代表的なフレームワークとして「ベーシック法」「ランクアップ法」「SMARTの法則」の3つが挙げられる
- 部下の意見を尊重して、自己成長に繋がるような目標を設定した方がいい
目標管理シートは、部下の目標設定を効率的に進められるツールです。
また、組織全体の生産性向上や部下の人材育成にも繋がります。ぜひ導入を検討してみてください。