部下が明らかに、人事評価に対して不満を抱いているように感じる。
しかし、部下に理由を直接聞くのが億劫になり、改善を後回しにしてしまった。
あなたには、こんな経験がありますか?
「日々の業務に直接は関係がない」と思うかもしれませんが、人事評価の不満は放置すべきではありません。
本記事では人事評価の不満が発生する理由や解決策を紹介していきます。ぜひ参考にしてみてください。
目次
【人事評価がおかしい】不満が発生する理由とは?
人事評価で不満が発生する理由は以下の通りです。
- 公平な人事評価が実施されていない
- 人事評価基準が明確になっていない
- 人事評価項目が公開されていない
- 評価者の主観が取り除かれていない
- 建設的なフィードバックが実施されていない
それぞれ解説していきます。
関連記事:社員への人事評価制度の問題点は?導入・見直し方法を解説!
公平な人事評価が実施されていない
人事評価で不満が発生する理由として、公平な人事評価が実施されていないことが挙げられます。
人事評価は、結局のところ人間が評価を下します。そのため、評価者によって評価に対する考え方が異なり、結果として不公平な人事評価が実施されてしまうのです。
部下の立場になって考えてみてください。「あの人よりも業績を出しているのに評価されない」という状況であれば、当然、不満が出てくることでしょう。
そして、業績を出しているのに高評価をもらえないという事態になれば、部下は仕事を頑張らなくなってしまいます。
不公平な人事評価を実施してしまうと、「この評価はおかしい」ということで不満が続出するようになってしまうのです。
人事評価基準が明確になっていない
人事評価基準が明確になっていないのも、不満が発生する理由になります。
なぜなら人事評価基準が明確にならないと、評価者が何を評価すればいいのかわからなくなるからです。
そのため、ある程度目立つ部分でしか評価できなくなり、目標達成のためのプロセスに気づくことができなくなります。
また、人事評価基準が曖昧だと、被評価者も何を基準に業務を進めればいいのかがわからなくなります。
個人目標の設定にも影響を与えるでしょう。
人事評価基準が曖昧になっていると感じているのであれば、今すぐにでも見直し検討すべきです。
関連記事:人事評価の書き方のポイント!評価の基準と記入例もあわせて解説
人事評価項目が公開されていない
人事評価項目が明確であっても、それがオープンに公開されていなければ、やはり不満の理由となります。
なぜなら、人事評価項目が公開されていないと、被評価者は「これは本当に正しい評価なのか?」と勘ぐってしまうからです。
また、どのような項目が評価されるのかわからない状況になるので、被評価者はどんな業務を重点的に取り組めばいいのかがわからなくなります。
そもそも、人事評価項目をあえて公開しないというのは、従業員の不信感を煽る行動だと考えられます。
人事評価項目はしっかりオープンにして、従業員からの信頼を得るべきです。
評価者の主観が取り除かれていない
評価者の主観が取り除かれていないと、不公平な人事評価となり、被評価者が不満を持つようになります。
例えば、評価者の個人的な好き嫌いで被評価者の評価が決まるのは論外です。
また、故意でなくとも、評価者の価値観や経験が入り込んでしまい、不公平な人事評価になる可能性があります。
また、組織内で評価者が複数いる場合、それぞれの評価者で偏りが生まれてしまう可能性もあるでしょう。
そしてこれらは、評価者が意識していても起こりうる現象であり、評価者の責任ではありません。
評価者に対する指導はもちろんのこと、評価者の主観が取り除かれるような人事評価制度を構築する必要があるのです。
関連記事:人事評価と自己評価のズレとは?なぜズレが生じるのか、その理由を解説
建設的なフィードバックが実施されていない
評価者からの建設的なフィードバックが実施されていない場合も、不満を抱いてしまう理由となります。
例えば「君は〇〇がダメだった」とただ非難するだけのフィードバックからは何も生まれません。被評価者の不安と怒りを煽るだけです。
「今後何を改善すればいいのか」を部下に考えさせ、行動変化を起こさせる上司でないと、被評価者はやる気を失ってしまうでしょう。
人事評価の不満を放置するとどうなる?
人事評価の不満を放置すると以下のようなトラブルが発生する可能性があります。
- 生産性が低下する
- チームワークが悪くなる
- 退職・転職が続出する
- 人材が育成されない
それぞれの具体例を見ていきましょう。
生産性が低下する
人事評価の不満を放置すると、生産性が低下します。
先ほども述べた通り、人事評価の不満の原因として、公平な人事評価が実施されないことが挙げられます。
それはつまり、どんなに頑張っても正当な評価をもらえないということです。
そのため、従業員としては「なるべくサボってやり過ごそう」という判断になり、業務にコミットしなくなってしまいます。
そして一従業員の生産性が低下すれば、チーム全体の生産性も低下し、企業が手がけているサービスの質全体が低下する恐れもあります。
結果として、企業のイメージが悪化してしまうでしょう。
チームワークが悪くなる
人事評価の不満を放置すると、チームワークが悪化します。
基本的に人事評価は、同じ組織にいる上司が評価者となり、部下が被評価者となります。
そのため、被評価者が評価者に対して不満を持つということは、部下が上司に対して不満を持っていることと同義なのです。
組織内のメンバー間で不満を持っている状態なのですから、チームワークが良くなるわけがありません。
そして、チームワークが悪くなることで生産性が低下し、チーム全体の雰囲気も悪くなってしまいます。
不満を抱えたままにすると、周囲に伝染していくものです。一個人の不満はチーム全体に大きな悪影響を与えます。
関連記事:チームワークを強化するマネジメントは可能?リーダーがやるべきことを解説
退職・転職が続出する
人事評価の不満を放置すると、部下が退職・転職してしまう可能性があります。
実際に部下の気持ちになって考えてみましょう。公平な人事評価をしてもらえないということは、どんなに業績を出しても出世できないということです。
それであれば、自分の能力をしっかり評価してくれる転職先を探したほうが、キャリア形成の観点で合理的でしょう。
また、人事評価の不満によって雰囲気が悪くなり、それが原因で退職してしまうことも考えられます。
そして退職者が出ると、その従業員の穴埋めや採用などで、様々なリソースを失うことになるでしょう。
それに加えて、採用関連のクチコミサイトでクレームを書かれることもあるので、採用が難しくなってしまう恐れもあります。
人事評価の不満を放置することは、大きな機会損失になってしまうのです。
人材が育成されない
先ほども述べた通り、人事評価の不満が発生している場合、部下が上司を信用していない可能性があります。
その場合、部下が上司のアドバイスを受け入れづらくなるため、結果的に人材が育成されなくなります。
これは非常に大きな機会損失になるでしょう。人材が育成されないということは、チーム内の生産性が向上せず、結果として企業の成長率が向上しないことになるからです。
企業で最も大切な経営資源はヒトです。ヒトを強化するためにも、人事評価の不満は放置すべきではありません。
人事評価の不満を解消する方法
人事評価の不満を解消する方法は以下の通りです。
- 人事評価の目的を明確にする
- 次に繋がるフィードバックを心掛ける
- 評価基準を公開する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
人事評価の目的を明確にする
まずは、人事評価の目的を明確にすべきです。
人事評価の目的が明確になれば、どのような人事評価項目を設けて、どのようなフィードバックを実施すべきかも明確になります。
それに加えて、人事評価の目的が明確になれば、被評価者が何をすればいいのかも明確になるでしょう。
なお、人事評価の目的としては以下が挙げられます。
- 人材育成
- 効率的な人材配置
- 報酬・待遇の決定
- 企業理念の浸透
そして人事評価の目的を明確にするためには、まず企業理念が明確になっている必要があります。
人事評価担当者や管理職の方々だけでなく、経営層も含めて、人事評価の目的をなんとするのか議論すべきです。
関連記事:目標設定の重要性やメリットとは?方法や注意点、フレームワークを解説
次に繋がるフィードバックを心がける
人事評価を実施する際は、次に繋がるフィードバックを心がけましょう。
特に人材育成を目的に人事評価を実施する場合は、被評価者の成長を促すようなフィードバックを実施すべきです。
基本的な人事評価は、期首と期末に面談が実施されます。
まず期末面談では、評価に至った理由を説明し、改善点を提案します。
そしてその改善点を基に、期首面談で個人目標や具体的な取り組みを設定していくのです。
このサイクルが回り始めれば、被評価者はどんどん成長していくでしょう。
ただ非難したり、評価に至った理由を説明したりするだけでなく、改善点や将来のキャリアについても話し合うことで、建設的なフィードバックが可能になります。
評価基準を公開する
人事評価を実施する際は、評価基準を公開することで、被評価者の不満を解消できます。
なぜなら評価基準がしっかり公開されていれば、「なぜこの評価に至ったか」に納得しやすくなるためです。
また、期首の段階で評価基準が公開されていれば、被評価者は評価基準を基に業務を遂行するようになります。
その上で業績がアップすれば組織全体に良い影響を及ぼしますし、仮に業績が悪かったとしても、被評価者は人事評価を素直に受け止めるようになるはずです。
評価者・被評価者に指導する
人事評価に対する不満の要因として、評価者の主観が介入してしまうことが挙げられます。
そこで、評価者に対して客観的な評価ができるように指導するのです。
また、中・大規模のチームで評価者が複数いる場合、全員に同じ教育プログラムを施すことで、人事評価の均一化が見込めます。
そして評価者だけでなく、正しい自己評価ができるように、被評価者に指導することも大切です。
よくある質問
ここでは、人事評価に対する不満に関するよくある質問に解答していきます。
従業員の不満にはどのように対処すべき?
従業員の不満に対しては、可能な限りスピーディーに対応すべきです。不満を放置してもいいことはありません。
実際に従業員が人事評価に対して不服申し立てを実行した場合は、まず人事評価に正当性があったのかどうかを確認するようにします。
評価者と被評価者から事情聴取しましょう。
そして客観的な視点で、人事評価制度に問題があることが判明したら、被評価者に謝罪して、迅速に改善を進めます。
逆に、人事評価制度に正当性が見られるのであれば、「なぜそのような評価に至ったのか」を被評価者にしっかり説明するようにしましょう。
どちらにせよ、不満を放置せずに、迅速に対応するのが望ましいです。
人事評価にモヤモヤを抱く最大の要因は?
人事評価にモヤモヤを抱く最大の要因は、不明確な基準です。
実際に識学では、全国の従業員数10人以上300人未満の企業に勤める20歳〜59歳の男女の人事評価の被評価者である方を対象に、人事評価の不満に関するアンケートを実施しました。
そして、人事評価制度に不満の理由の第1位が「評価の基準が不明確(48.3%)」だったのです。
ちなみに第2位が「評価結果が報酬に反映されない(30.9%)」で、第3位が「評価する人によって厳しさに差がある(28.1%)」でした。
また、自社の評価制度に不満を抱いている人が全体の45%で、評価結果の給与や待遇への反映方法を知らない人は44.5%とのことです。
以上の結果を見て分かる通り、不明確な基準は、従業員の不満を募らせる大きな要因となっています。
まずは人事評価の基準を明確にすることから始めるべきでしょう。
ちなみに、以下のプレスリリースで「人事評価の不満要因」に関するレポートを公開しています。
上記の問い以外にも、人事評価に関する様々なデータが掲載されているので、人事評価担当者や管理者の方々はぜひチェックしてみてください。
まとめ
それでは本記事をまとめていきます。
- 人事評価の不満は放置すべきではない
- 人事評価の不満が発生する理由として、不公平な人事評価、不明瞭でクローズドな評価基準が挙げられる
- 人事評価の不満を解消するには、人事評価の目的を明確にしたり、建設的なフィードバックを心がけたりするべき
- 人事評価にモヤモヤを抱く最大の要因は「評価の基準が不明確」
人事評価に対する不満が発生した場合は、迅速に対応すべきです。放置しても何もいいことはありません。
人事評価制度を改善させて、組織内のパフォーマンス向上に努めましょう。