人事評価項目をゼロから設ける場合、「どういった項目を設定すべきか?」「どういったた文言にすべきか?」など、その方法や内容に迷うこともあるでしょう。
そういったときは、人事評価項目の例を活用すべきです。これにより、確度の高い人事評価が実施できるようになり、部下のモチベーション低下や退職・離職を防ぐことができます。
本記事では人事評価項目の例を知っておくべき理由や、評価項目設定のポイントを紹介します。
※本記事では、人事評価項目の一般的な内容を記載しています。
識学式の記事はほか記事をご覧ください。
目次
人事評価項目の例を知っておくべき3つの理由
人事評価項目の例を知っておくべき理由は以下の3つです。
- 人事評価項目を考える手間が省けるから
- 大きな失敗がないから
- 一般論を理解しているからこそ個性が生まれるから
それぞれ解説していきます。
理由①:人事評価項目を考える手間が省けるから
人事評価項目の例を知っておけば、ゼロから人事評価項目を考える必要性がなくなります。
そのため、最短で人事評価項目を設定できるようになるでしょう。
この際、既に人事評価がうまくいっている会社を参考に、定性的な内容をどれだけ定量的に示せたかを中心に例をみると、曖昧な評価軸が減るのでオススメです。
理由②:大きな失敗がないから
人事評価項目の例を知っておけば、大きな失敗をすることがなくなります。
極端な例ですが、営業職の人事評価をするのに「簿記に関する知識」を人事評価項目に加えても、良い効果は生まれません。
実際に人事評価項目の例を把握している方であれば、このようなミスは起きないません。
例として紹介されている人事評価項目は、多くの企業が参考にしているため、それなりの信頼があると考えられます。
そのため、そこから抽出した一般的な人事評価項目を自社でも設定すれば、大きな失敗はないでしょう。
理由③:一般論を理解しているからこそ個性が生まれるから
何事も、基本があるからこそ個性が生まれるものです。そしてそれは人事評価項目でも同じことだといえます。
例えば、先ほどは「営業職の人事評価をするのに簿記に関する知識を項目に加えてもしょうがない」と解説しました。
しかし、財務諸表を読み解ける営業マンは、一般的な営業マンに比べて、より成立率が高い営業先を絞れる可能性があります。
「だからこそ自社では営業職でも簿記の知識を要求する」という考え方は、あっても問題はありません。
一般的な人事評価項目を理解しているからこそ、こういった自社独自の個性や強みに繋がる人事評価を設定できます。
まずは人事評価項目の例を押さえておいて、それから自社独自の強みを生み出せる項目を設けるべきでしょう。
関連記事:パフォーマンスを向上させる人事評価項目とは?設定のコツまで紹介
人事評価項目の例を職種別に紹介
人事評価項目は、等級や職種別に設定するとよいでしょう。
ここでは事務職、営業職、技術職、管理職の4つの職種に分けて、人事評価項目の例を紹介していきます。
事務職の場合
まず、基本事項の中で特に事務職で求められる人事評価項目は以下の通りとなっています。
- 改善力
- スケジュール管理
- 正確性
事務職で求められるのは、作業効率・納期の遵守・ミスの防止の3つが挙げられるでしょう。
ここからひとつずつ掘り下げていくと、まず作業効率を向上させるには改善力が重要だとわかります。業務プロセスの改善を常に考えられる従業員は高く評価されるべきです。
また、納期を遵守するためのスケジュール管理も大切な能力です。
そして言わずもがな、正確性は事務職で最もウエイトの大きい評価項目です。
事務職はミスしないことが絶対であるため、ミスを可能な限り減らすにはどのような業務が必要なのかを意識している従業員を、高く評価するのも一つの手です。
そして上記に加えて、以下の専門的スキルを保有している従業員も高く評価するとよいでしょう。
- 簿記
- 財務諸表
- 原価計算
- 税・社会保険
事務職では経理や総務などの部署が多いため、簿記やコストに関する知識を保有していることが望ましいといえます。
また、従業員の給与管理のためにも税・社会保険の知識を有している従業員を評価すべきでしょう。
営業職の場合
営業職で特に求められる基本事項は以下の通りです。
- 目標達成度
- 企画力
- スケジュール管理
- 交渉力
営業職では、とにかく結果を出すことが求められます。そのため、目標達成度の項目は特に重視すべきでしょう。
そして限られた期限内で数字を出すためにはスケジュール管理能力も必要不可欠です。
また、営業で実績を出すためには企画力と交渉力が重要だと考えられます。
例えば企画力があれば、どのような新規クライアントを集中的に狙うべきか企画できます。
そして交渉力は、営業の成功率に直結する能力です。
営業職の人事評価では、以上の項目のウエイトを大きくするようにしましょう。
技術職の場合
技術職で特に求められる基本事項は以下の通りです。
- 実行力
- クレーム対応
- 技術力
- 正確性
技術職は技術力の高さによって作業効率が大幅に変動します。
そのため、技術力が高ければ高いほど評価すべきでしょう。
また、技術職は与えられたミッションを自力で解決する実行力が必要です。ここで誰かのサポートを必要としてしまうと、チーム全体の生産性が落ちてしまいます。
また、サービス開発においては、可能な限りミスを少なくする正確性と、もしサービスで不具合が起こった場合の対応能力が必要です。
基本的に、Webサービスなどは必ず何かしらの問題やトラブルが発生します。その際に迅速に対処できる問題解決能力が必要なのです。
そして技術職の中でも、工場や製鉄所などの現場で働く職種の方々は、安全管理を徹底する能力が必要です。
確実に事業を進められる堅実性が求められるでしょう。
管理職の場合
管理職で求められる基本事項は以下の通りです。
- 業務目標達成度
- リーダーシップ
- 指導・育成
- 経営方針の理解・普及
管理職は、自身が抱える組織・チームの責任を取る立場にあります。そのため、業務目標を確実に達成させることが求められるでしょう。
そして部下を指揮するためのリーダーシップや、人材育成などの教育力が必要です。
また、管理職は経営層が打ち出した経営方針を現場に浸透させつつ、現場の意見を吸い上げて経営層に伝えなければなりません。
そのため、自社がどのような状況になっているのかは常に把握する必要があります。
さらに、ビジネスマナーや勤務態度なども部下への見本となるべきであり、そういった情意評価での項目は、既に高い水準でクリアできる人材と言えるでしょう。
そのため、情意評価の項目のウエイトは小さく設定してもいかもしれません。
人事評価項目を設定する際のコツ
人事評価項目を設定する際のコツとしては以下が挙げられます。
- 職種・等級別に設定する
- 成果・能力・情意の3つの基準を用いる
- 人事評価項目を明確かつオープンにする
先ほども紹介しましたが、人事評価項目は職種・等級別に設定するようにしましょう。なぜなら職種・等級によって求められる能力が異なるからです。
また、成果・能力・情意の3つの基準を用いるようにしましょう。特に情意評価は、成果評価や能力評価から切り離して評価すべきです。
そして人事評価項目は明確かつオープンにしましょう。曖昧でクローズドな人事評価項目は、人事評価における信用を落としてしまい、部下からの不満が続出する可能性があります。
以上の3つのコツを踏まえて人事評価項目を設定すべきです。
厚生労働省の評価シートのサンプルを参考にする
厚生労働省では『判定目安表(評価ガイドライン)』という人事評価項目のテンプレートを紹介しています。
人事・法務・経理・営業・広報といった一般的な部署に加え、旅館業・フィットネス業・ロジスティック分野など、様々な業種のテンプレートが用意されています。
まずは判定目安表のテンプレートをダウンロードして、参考にしてみてはいかがでしょうか。
部下からの不満や不服申し立てを防ぐコツ
部下からの不満や不服申し立てを防ぐコツは以下の通りです。
- 部下が納得できるように公正な人事評価を心掛ける
- 部下のモチベーション向上に繋がるようにする
- 1on1での面談の機会を設けて転職や退職を防ぐ
それぞれ解説していきます。
部下が納得できるように公正な人事評価を心がける
部下からの不満を防ぐためには、部下の納得がいくように、公正な人事評価を心がけるべきです。
例えば、せっかく頑張って業績を出しているのに、何らかの不公正な理由で高く評価されなかったとしたら、当然、被評価者は不満を抱くようになります。
業績と評価をしっかり連動させることができれば、従業員は高評価を得るために業績を出すようになるでしょう。
公正な人事評価を実施するには、明確かつオープンな人事評価項目の設定が必要です。
また、可能な限り企業理念に関連する項目を設けることで、企業と従業員のミスマッチを防ぐことができます。
公正な人事評価が実施できれば、仮に悪い評価を下したとしても、従業員はその評価を素直に受け止めて、改善に繋げるはずです。
正確な人事評価項目をちゃんと共有して、公正な人事評価が実施できるようにしましょう。
部下のモチベーション向上に繋がるようにする
人事評価は建設的なものであるべきです。そのためには、可能な限り部下を前向きな気持ちにさせることが大切だといえます。
人事評価は従業員をただ評価して優劣をつけるためのものではありません。企業の利益となるように、何かしらの目的を設けるべきです。
人材育成や適切な人材配置でも構いません。とにかく、企業が成長していくような目的を設定した上で、人事評価を実施すべきなのです。
企業が成長していくためには、ヒトが成長する必要があるので、従業員を前向きな気持ちにさせる必要があります。
ただ低評価を下すだけで改善させる気がないような人事評価を実施しては、当然、部下の不満も溜まっていきます。
建設的な人事評価を心がけましょう。
1on1での面談の機会を設けて転職や退職を防ぐ
1on1での面談の機会を設けて転職や退職を防ぐことも大切です。
一般的な人事評価の流れでは、期首と期末に1on1での面談が設けられます。
期初の面談では、前期の改善点を踏まえた目標を設定したり、被評価者に個人目標を宣言してもらったりするのも良いでしょう。
そして期末面談では人事評価を発表し、それを踏まえたフィードバックを実施します。
この中でもやはりフィードバックが重要で、人事評価が良くても悪くても、被評価者の成長に繋げられるような指導が必要です。
そうすれば被評価者も「自分はまだこの会社でやれることがある」と考えられるようになり、転職や退職の選択肢が自然と消えていきます。
また、この1on1での面談で「なぜこのような評価に至ったのか」をしっかり説明することも大切です。
ここに論理的な理由があれば、被評価者も評価内容に納得するようになるでしょう。
関連記事:人事評価と自己評価のズレとは?なぜズレが生じるのか、その理由を解説
識学の人事評価項目はシンプル
ここまで、一般的な人事評価項目例を記載しました。
弊社識学では、数値化できない=定性的な人事評価はしません。
それは、定性的な項目は「属人的」になってしまうから、というのが理由です。
誰から見ても同様な評価がくだせる項目しか設定しないのです。
例えば、業務処理能力が高い、と聞いたときに皆さんはどのような人を思い浮かべるでしょうか?
- 1時間で請求書を30枚作成できる人(5%程度ミスがある)
- 1時間で請求書を20枚作成できる人(ミスはなし)
どちらが優秀かは人によって異なります。
しかし「業務時間内に〇枚の処理をすると〇点(ミスはー〇点減点)」などという評価軸に変えれば、誰から見ても平等な評価が下せます。
同様に「頑張っている」「モチベーション高く仕事をしている」などの評価項目も用意しません。
部下の仕事を100%見守っていなければ、上記のような仕事に対する姿勢は図れないからです。
弊社識学の評価項目は大変シンプルです。
ご興味のある方は、識学式の評価項目の設定に関する記事をご覧になってみてください。きっと新しい気づきがあるはずです。
関連記事:人事評価シートの事例とは?導入までの流れも合わせて解説
まとめ
それでは本記事をまとめていきます。
- 人事評価項目の例を知っておくことで、人事評価の質を上げることができる
- 人事評価項目の例は職種・等級によって異なるので注意が必要
- 公正で建設的な人事評価を実施することで、不満を防げる
人事評価担当者や管理職の方々は、人事評価項目の例を知っておくべきです。
様々な人事評価項目の例を把握しておいて、自社独自の人事評価制度を構築できるようにしましょう。
それが自社の強みを生み出すきっかけになるはずです。