近年、ニュースや書籍などで「内部留保」という言葉をよく見聞きするようになりました。
内部留保は企業にとって重要な意味や役割があるため、それがどのようなものか正しく把握しておく必要があります。
本記事では、内部留保の概要から、内部留保の重要性や役割、増やす方法について解説していきます。
目次
内部留保とは
内部留保とは、企業が持つ資産のうち、借入金や株主の出資や社外に流出する分を差し引いた残りの資産を指しており「社内留保」と呼ぶ場合もあります。
社外に流出する資産には、下記のようなものが挙げられます。
- 税金
- 配当金
- 役員賞与
内部留保を簡潔に述べるなら「企業の純利益の蓄え」となるでしょう。
内部留保には明確な定義が存在せず、社外に流出する資産は配当金のみとするケースもあります。
いずれにせよ、内部留保が多いからといって「使いようのないお金を溜め込んでいる」というわけではありません。
同様の言葉:利益剰余金
「内部留保」という言葉には明確な定義がないため、内部留保を正確に記載するのであれば「利益剰余金」と言い換えることができます。
利益剰余金とは、企業が生んだ利益を積み立てたお金のことであり、企業内部に蓄えられているもののことで、貸借対照表の「純資産」の部に表示されます。
したがって、企業の内部留保を確認する場合は、貸借対照表の「利益剰余金」をみればわかるということです。
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日本企業における内部留保の現状とは
日本における内部留保は、年々増え続けています。
財務省が発表した法人企業統計調査によると、内部留保(利益剰余金)は2020年度末で484兆3,648億円で、前年度よりも2.0%増加し、9年連続で過去最高を更新したことがわかりました。
1960年度では1兆7,374億円でしたが、69年度には10兆円を超え、88年度には100兆円を超えています。
この後も増え続け、2004年にはおよそ204兆円、12年度にはおよそ304兆円と爆発的に増えているのです。
(参考:4~6月の経常利益93.9%増 内部留保は最高更新―法人企業統計丨時事ドットコムニュース)
企業が内部留保を増やす理由とは
なぜ、日本企業は多くの内部留保を蓄えているのでしょうか?
ここでは、その理由を解説していきます。
「もしも」の時の備えとして
内部留保を増やす1つ目の理由は、「もしも」の時の備えとして重要だからです。
現代は「VUCAの時代」と呼ばれるように、環境が変化するスピードが速く誰も先行きを見通せない時代となりました。
また、新型コロナウイルスの流行や紛争によって経済が低迷し、いつ深刻な経済不振に陥るかわかりません。
そのようなときのために、企業は内部留保を蓄えているのです。
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信頼性を高めるため
内部留保を増やす2つ目の理由は、自社の信頼性を高めるためです。
内部留保が多ければ、それだけ自己資本である純資産が多いということであり、それは安定的な財政を示し、信頼性が高まります。
また、日本では企業同士の取引の場合、「支払いは数カ月先」というような長期取引が多く、支払い能力があるのかなどに関しても、日本の商慣行では「信頼」がベースとなっている部分があります。
したがって、自社の信頼性を高めることはビジネスにおいて重要なのです。
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内部留保にかかる税金とは
一定の法人の場合、内部留保に税金がかかるケースがあります。
「一定の法人」とは、特定同族会社のことです。
ここでは同族会社の概要や課税の計算方法などを解説していきます。
同族会社とは
同族会社とは「会社の株主等の3人以下、並びにこれらと特殊な関係にある個人や法人の所有する株式が、その会社の発行済株式の総数又は出資金額の50%以上を超える会社」のことです。
「特殊な関係にある個人や法人」とは下記のような者が該当します。
- 株主等の親族(配偶者、六親等以内の血族、三親等以内の姻族)
- 株主等と事実上の婚姻関係にある者
- 株主等の使用人
- 株主等から受ける金銭やその他の資産により生計を立てている者
- 株主等や株主等と特殊関係のある個人及び法人で、他の会社を支配している場合の他の会社(「支配している」とは、発行済株式又は出資の50%超を所有していることを指す)
簡潔にいうと株式の半分以上を、上位3つの株主グループが持っていれば「同族会社」、1つの株主グループで持っていると「特定同族会社」となります。
(参考:同族会社丨国税庁)
留保金課税の計算方法
内部留保への課税は「留保金課税」といい、特定同族会社が多額の内部留保を蓄えている場合に課税されます。
ここでは留保金課税の計算方法を見ていきましょう。
留保金課税は内部留保から控除額を差し引いたあとの金額に、税率をかけて算出されます。
計算式は下記のようになります。
留保金課税=(内部留保金-留保控除額)×税率
税率は課税される内部留保金額によって異なり、下記のようになっています。
- 年3,000万円以下:10%
- 年3,000万円以上1億円以下:15%
- 年1億円以上:20%
ここまでが留保金課税の計算方法ですが、あくまでも概要であり、実際に計算する際はさまざまな加算や減算を行って求められます。
※上記は2022年4月時点の計算式、数値です。
実際に計算される際は、必ず顧問税理士への確認をしてください。
まとめ:内部留保とは
内部留保が多いから、少ないからといって企業の優劣はつけられません。
企業のスタンス、あるいはステークホルダーによって内部留保は変化します。
また、オーナー企業か、そうでないかによっても変わることでしょう。
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