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ディフェンシブ株とは?景気敏感株との違い、代表的な銘柄を解説

はじめに

 株式銘柄のなかには、1年の間に株価が大きく変動する銘柄もあれば、株価があまり変動しない銘柄もあります。株価が大きく変動しない銘柄は、ディフェンシブ株と呼ばれ、株価が大きく変動する銘柄は景気敏感株と呼ばれます。この記事では、ディフェンシブ株と景気敏感株の違いを踏まえたうえで、代表的なディフェンシブ株の銘柄について紹介していきます。

ディフェンシブ株とは?

 ディフェンシブ株は、経済や市場が低迷しているときでも、安定したリターンが期待できます。一般的に、これらの銘柄は、景気が良くないときでも人々が買い続けるような商品やサービスを提供しています。「defensive=防衛的」という言葉が示すように、株式購入者の生活を「守る」という意味からこの呼称がつけられました。

ディフェンシブ株と景気敏感株との違い

 ディフェンシブ株の対義語として景気敏感株があります。

 ディフェンシブ株は短期的な株価の値動きは小さい傾向にあります。したがって、短期間で売買を繰り返して利益を狙うような取引を行う投資対象としては向いていません。短期的なキャピタルゲインを狙うのには向いていないのです。ディフェンシブ銘柄は、基本的に大きなキャピタルゲインの期待値が低いものの、値動きの幅が小さいことから、資産価値の大きな引き下げや崩壊に繋がりにくいという特徴があります。

 一方、景気敏感株は、景気動向で株価が変動しやすい株を言います。シクリカル銘柄・景気変動銘柄と呼ばれることもあります。景気敏感株の特徴は、景気が良くなってモノが売れるようになると、株価が上がる傾向にあるという点です。株式市場全体の株価が大きく変動する場合、それと同調した値動きになりやすいのが景気敏感株です。短期間で大きな値動きがある傾向にあることからキャピタルゲインを狙うのに向いている銘柄です。ただし、短期間で大きな値動きがあるということは、当然ですが大きく下落するリスクがあることを忘れてはなりません。

ディフェンシブ株の代表的業種

 ディフェンシブ株は、景気動向に左右されにくい業界に属する銘柄を言いますが、具体的にどのような業界が該当するのでしょうか。

鉄鋼

鉄鋼業界の銘柄は、典型的なディフェンシブ株に該当します。鉄鋼業界が提供しているサービスは、景気の変動があっても必ず必要となるものばかりです。したがって、鉄鋼業界に属している銘柄については、景気変動の影響を受けにくく、株価が大きく変動しにくいと言われています。

医薬品

医薬品業界も、同様の理由から景気変動の影響を受けにくい業界です。医薬品は安定的な需要が見込まれるため、おおよそ大きな売上高の変動はありません。ただし、昨今の状況は通常時とは異なっています。2020年に新型コロナウイルスの感染が世界で拡大しました。その結果、海外の大手製薬企業のみならず、国内企業もワクチンや治療薬の開発を進めています。医薬品業界は、毎年行われるようになった薬価改定の影響が響き、各社厳しい状況が続いていますが、医薬品業界にとって、新型コロナウイルスのワクチン開発は業績改善のチャンスでもあります。こうした事情から、今後は、ワクチン開発企業が中心となって業界の株価は上昇していく一方で、それ以外の株式銘柄は低迷する可能性があります。

食品

食品業界も株価の変動が少ない業界です。安定した需要に応えるだけのサービスを提供することで、安定した業績を出せるため、株価も安定しています。しかし、世界的な為替変動の影響は受ける業界であることに注意が必要です。2022年3月現在、小麦をはじめとした穀物相場の高騰が続いています。世界最大の小麦輸出国であるロシアをはじめ、ウクライナも小麦やトウモロコシなど幅広い農産物を世界に供給しています。戦争によって供給網の混乱が発生しており、今後も輸出停滞が長引くことが予想されています。その結果、食品などの原材料である小麦の価格高騰が続いています。

電力・ガス・廃棄物処理

 ガス、電気、水道などのライフラインは、人々の暮らしの中で欠かすことができません。経済が衰退しても消費者はそれらを必要とするため、ディフェンシブなのです。

ディフェンシブ銘柄に注目が集まる理由

 ディフェンシブ銘柄が今注目されている理由は、新型コロナウイルス感染症とロシアによるウクライナ侵攻などによる株価変動のリスクヘッジのためです。

 食品や電力・ガス業界に属するディフェンシブ銘柄は、新型コロナウイルス感染症の大流行によるような景気後退に対して、最も効果的な防御策を提供することができます。この点が、景気循環の浮き沈みにはるかに敏感な製造業や工業部門に属する業界と、消費者関連銘柄に属する業界との大きな違いとなっています。

ディフェンシブ銘柄のメリット

値動きが限られている

 市場のボラティリティが高いと、投資に対して恐怖心を抱く投資家もいますが、ディフェンシブ株の安定性は、その解決策となります。値動きが安定的で比較的予測可能な銘柄をポートフォリオに組み入れることで、株式市場の急激な変動に対する防衛策とすることができます。そのため、ディフェンシブ株は、損失から資産を守ることを優先する投資家にとって魅力的です。これらの低リスク銘柄は、長期にわたってその価値、そして投資家の資本価値を維持してくれます。景気後退期に強いのもディフェンシブ銘柄です。景気後退期には、ディフェンシブ銘柄は景気敏感株の同業他社をアウトパフォームする傾向があります。理論的には、不況時に成長株が経験する損失に対して、ある程度のバランスを取ることができるのです。

配当の利回りが高い

 ディフェンシブ銘柄の多くはすでに成熟した大企業といった安定企業です。業界的にも成熟した企業が多くなります。安定企業というのは、利益が急に減少することもなければ、急に増大することもない企業という意味です。大きく売上を伸ばす機会はほとんどなく、成熟した業界に属していると利益の伸びは少なくなるのです。したがって、資金の提供者である株主が離れないために配当金を増やす傾向にあります。その結果、ディフェンシブ銘柄は、配当利回りが高い銘柄が多くなるのです。

ディフェンシブ銘柄のデメリット

 ディフェンシブ銘柄には多くのメリットがあるものの、当然デメリットもあります。以下では、ディフェンシブ銘柄のデメリットについて紹介していきましょう。

キャピタルゲインは狙いにくい

 ディフェンシブ株は、キャピタルゲインが狙いにくいというデメリットがあります。​​​​ディフェンシブ銘柄は低成長の企業であることがほとんどです。安定性の裏返しとして、急成長を遂げることがほとんどありません。長期的に価値を維持することはできても、一攫千金を狙うことはできないのです。

 また、経済成長期にはパフォーマンスが低下する可能性があります。経済が好調で、他の銘柄が急騰しているとき、ディフェンシブ銘柄は、成長という点では、これまでと同じ位置にとどまる可能性が高くなります。実際、市場が上昇しているときには、通常、アンダーパフォームになります。つまり、ディフェンシブ銘柄を多く保有すると、市場が好調なときにポートフォリオの足を引っ張り、こうした景気上昇の恩恵を受けられなくなる可能性があるのです。

景気後退期には値下がりする可能性もある

 ディフェンシブ銘柄は、景気後退期にはしばしば過大評価されます。もしあなたが、景気が心配で、その銘柄を安全な賭けだと考えているなら、他の多くの人も同じことをしている可能性が高いです。そのため、景気後退期には、その銘柄が高く評価される可能性があります。しかし、こうした銘柄の企業において大きな問題が起きると、株価が急落する可能性があります。たとえば、東京電力は東日本大震災前はディフェンシブ株として大変な人気があり、景気後退期であった当時でも多くの人が保有していましたが、地震により原子力発電が問題となったために、一気に株価が値下がりました。

日本のディフェンシブ銘柄例

 日本のディフェンシブ銘柄を具体的に紹介していきましょう。

武田薬品工業(4502)

 武田薬品工業は、日本最大手の医薬品会社で、医薬品などの研究開発・製造・販売・輸出入を主な業務とする会社です。

 ただし、近年の武田薬品工業の株価を見ればわかるとおり、医薬品メーカーはグローバルな競争に晒されており、業界再編のために大規模なM&Aが行われています。そのため、会社の売上高そのものは安定しているものの、果敢に新規投資を行い、配当も積極的に行っているため、他のディフェンシブ株と比べると相対的に値動きが激しい点には注意が必要です。

JR東日本(9020)

 JR東日本は、国内最大の鉄道会社です。鉄道事業をはじめとして、鉄道事業に関連する駅構内の商業施設や不動産などを扱う生活サービス事業、交通系電子マネーカード「Suica」といった事業を中心に、多岐にわたる事業を展開しています。

 JR東日本は、民営化されてから日は浅いものの、私たちの生活に欠かせない生活インフラサービスとなっています。したがって、売上高が大きく減少する可能性は低いと考えられます。そのため、JR東日本は、典型的なディフェンシブ銘柄と言えるのです。

 最近では、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で利用者が減っているため、確かに業績の不信が続いており、それに伴い株価も低下していますが、今後、コロナ禍が収まれば、業績は回復すると考えられます。

マルハニチロ(1333)

 明治13年(1880)創業のマルハニチロは、水産物の輸入・加工・販売で日本最大手の企業です。冷凍食品・飲料などの製造・販売も行っています。食品を取り扱う企業であるため、私たちの生活にとって欠かせないサービスを提供しています。そのため、安定した業績とともに株価も安定して変動しています。

アメリカのディフェンシブ銘柄例

 アメリカのディフェンシブ銘柄を具体的に紹介していきましょう。

ノースロップ・グラマン(NOC)

 Northrop Grumman Corp(ノースロップグラマン)は、本社を米国バージニア州フォールズチャーチに置く世界的な航空宇宙機器及び防衛技術製品メーカーです。いわゆる軍需産業に属する企業です。

 ノースロップ・グラマンは同業界においてトップクラスの技術を保有しており、他の企業の追随を許しません。古くから軍需産業を支える企業としても有名です。政府関係機関を取引先としているので年間で安定した取引ができます。そのため、安定的な売上高を誇っているのが特徴です。米国における代表的なディフェンシブ銘柄と言えるでしょう。

アムジェン(AMGN)

  Amgen Inc.(アムジェン)は1980年に創業されたバイオテクノロジー企業です。治療薬分野で事業を展開しています。がん・血液疾患、循環器疾患、神経科学の分野における重篤な疾患の治療のためのヒト治療薬に焦点を当てて事業を展開しています。

 アムジェンは、すでに安定した売上高を誇る企業で配当も高いことから多くの人から注目されている銘柄です。大きな成長は見込めないものの、積極的に新薬への投資も行っているので、新薬の開発に成功すれば大幅な売上増を見込める可能性があります。

ブリストルマイヤーズスクイブ(BMY)

 Bristol-Myers Squibb Company (ブリストル・マイヤーズ スクイブ)は、バイオ医薬品の創製、開発、ライセンス供与、製造、販売を世界中で行っている企業です。1887年に設立され、本社はニューヨーク州ニューヨークにあります。以前はブリストル・マイヤーズ社として知られていました。

 主に、血液疾患、腫瘍、循環器疾患、免疫疾患、線維症、神経科学、および新型コロナウイルス感染症疾患向けの製品を提供しています。

緊急時にはディフェンシブ型の投資信託を検討するのもあり

 米国の金融政策の変更をきっかけに、高値となっている株価水準に対する警戒感が台頭してきています。いくらディフェンシブ銘柄といっても、個別の銘柄を購入する個別株取引は、緊急時に急落するリスクがあるので注意が必要です。最近では、資金の一時避難先としてディフェンシブな要素が強い米国高配当株式への注目度は増してきており、個別株よりもよりディフェンシブな投資信託への投資も増えてきています。

 たとえば、ディフェンシブな銘柄に投資する「SBI・V・米国高配当株式」という投資信託があります。「SBI・V・米国高配当株式」が投資先とする高い配当を実現している企業は、業績も安定したディフェンシブな銘柄群です。たとえば、組み入れ銘柄として、金融、一般消費財・サービスヘルスケアなど、ディフェンシブ銘柄が中心となっています。

まとめ

 ロシアによるウクライナ侵攻や米国の金融政策の変更を受けて、これまで順調に推移してきたS&PやNASDAQといった投資信託から、よりディフェンシブな銘柄への投資にポートフォリオを移し替える人が増えてきています。景気低迷や金利上昇局面において、多くの企業の成長速度は鈍化すると考えられます。そのため、株価の伸びもこれまでのようにはいかなくなる可能性が高いです。そうした状況のなかで、キャピタルゲインからインカムゲインを中心にするポートフォリオへと切り替えることができれば、安定して収益をあげることができるかも知れません。今後も不透明な状況が続くなかで、市場のボラティリティも高まっています。そのため、ディフェンシブ株の重要性が増してくるのかもしれません。

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