昨今、話題になっている「事業再構築補助金」。
耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
事業再構築補助金とは、新型コロナウイルスの流行による影響や変化に対応するために、中小企業等への支援を目的とした制度です。
本記事では、事業再構築補助金に関する基本的な知識から、申請に必要な要件などを解説していきます。
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事業再構築補助金とは
事業再構築補助金とは、新分野展開、事業再編、事業・業種転換、業態転換またはこれらを目的にした規模の拡大など、事業再構築に取り組む中小企業を支援する制度です。
新型コロナウイルスが流行する社会や経済に対応するための取り組みを支援し、日本経済を支えることを目的としています。第1回目の公募は2021年4月15日に行われ、第2回目は2021年7月2日に完了しています。
新型コロナの感染が広まるなか、経済の不安定化や需要の低迷が起こり、企業が新分野の展開や事業再編など思い切った事業再構築ができなくなっているため、経済産業省が支援することで日本経済を後押しするものとなるでしょう。
この制度の特徴は、対象となる経費が多岐にわたり、補助の上限が6,000万円で補助率も2/3と規模が大きい点です。支給された補助金は返す必要もないため、適切に使うことができれば、事業を軌道に乗せることもできるでしょう。
また、経済産業省が制度概要をまとめたパンフレットを用意しているため、下記に掲載しておきます。
なお、認定経営革新等支援機関として、計画の策定を支援したり確認書の発行を行うのは東京商工会議所となっています。
事業再構築補助金の予算額
先程も解説しましたが、この補助金の規模はかなり大きく、2020年の第3次補正予算が19兆1,761億円なのに対して、そのうちの1兆1,485億円が事業再構築補助金の予算として計上されているほどです。
この数字は、事業再構築補助金と同じく経済産業省が実施する「ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)」の予算のおよそ10倍となっており、やはり異例と言ってよいでしょう。
また、医療機関などに支援したり医療提供体制の確保には1兆6,447億円、ワクチン接種態勢などの整備や検査体制の充実には8,204億円が計上されています。
これらと比べても、この補助金の規模がいかに大きいかがわかるのではないでしょうか。
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事業再構築補助金に申請するには、下記の3つの要件を満たしている必要があります。
- 売り上げが減っている
- 事業再構築に取り組む
- 認定経営革新等支援機関と事業計画を策定する
それでは1つずつ解説していきます。
売り上げが減っている
そもそもこの補助金は、新型コロナウイルスの流行による影響を受けている中小企業等を支援することが目的なので、売り上げが減っていなければ対象とはなりません。
したがって、事業の再構築に取り組もうとしていても、売り上げが減少していなければ申請はできないため注意しましょう。
具体的に「売上の減少」の定義は下記のようになっています。
- 2020年4月以降の連続する6ヶ月間のうち、任意の3ヶ月の合計売上高が、コロナ前の2019年もしくは2020年1~3月の同3ヶ月の合計売上高と比べて10%以上減っていること
- 2020年10月以降の連続する6ヶ月間のうち、任意の3ヶ月の合計売上高が、コロナ以前の同3ヶ月の合計売上高と比べて5%以上減っていること
なお、「任意の3ヶ月の合計売上高」に関しては、連続している必要はないので、要件をクリアするように組み合わせていきましょう。また、売上高に代えて、付加価値額を用いることもできます。
しかし、公募要領に「新型コロナウイルス感染症の影響によらない売上高の減少は対象外」とされている点には気をつけてください。詳しくは公募要領を確認しましょう。
事業再構築に取り組む
この補助金において重要なキーワードとなっている「事業再構築」ですが、これだけでは何が事業再構築に該当しているのかがわかりません。まずはここを明確にするために、経済産業省の「事業再構築指針の手引き」を参考に、事業再構築の定義について見ていきましょう。
事業再構築とは、下記の5つを指しており、このどれかに該当するものでなければなりません。
新分野展開
新分野展開とは中心となっている事業や業種を変えずに、新製品やサービスの開発や提供によって、新しい市場に進出することです。
事業転換
事業転換とは、新しい製品やサービスを開発または提供することで、中心となっている業種を変えずに、主な事業を変えることです。
業種転換
業種転換とは、新しい製品やサービスを開発または提供することで、中心となっている業種を変えることです。
業態転換
業態転換とは、製品やサービスを製造する方法または提供する方法を変えることです。
事業再編
事業再編を通じて新分野展開、事業転換、業種転換または業態転換のいずれかを行うことです。
認定経営革新等支援機関と事業計画を策定する
そして、この補助金に申請する最後の要件が、認定経営革新等支援機関と事業計画を策定することです。したがって、申請時時点で実現する可能性が高い事業再構築の計画でなければ、申請、さらにその先の認定を受けることは難しいため、取り組む「姿勢」だけでは採択されない可能性が高いです。
さらに、採択されるためには説得力があり、現実味のある事業計画を立てなければなりません。これにより、認定支援機関からの指導や助言をもらいつつ、計画を作っていくと採択率が上がるはずです。
ちなみに、補助金額が3,000万円以上になる場合は、銀行やファンド等の金融機関と一緒に作成しなければなりません。金融機関が認定支援機関を兼務していることもあるため、この場合はまず金融機関に相談するのがよいでしょう。
また、事業計画の内容は、補助事業が終わった後の3~5年で下記のいずれかの達成を見込まなければなりません。
- 付加価値額の年率平均3.0%以上の増加
- 従業員1人当たり付加価値額の年率平均3.0%以上の増加
認定経営革新等支援機関とは?
中小企業や小規模事業者が経営に関する相談などをするために、専門性の高い知識や経験が一定の水準以上である人物に対して、審査し認定する公的な支援機関が「認定経営革新等支援機関(認定支援機関)」です。
商工会議所をはじめに、中小企業診断士や公認会計士、税理士、弁護士などが主に認定支援機関として活動しています。
本補助金の要件である「認定経営革新等支援機関と事業計画を策定する」の証拠として、認定支援機関の押印のある事業計画が求められます。
認定支援機関は、下記のページから確認することが可能です。
参考:認定経営革新等支援機関一覧外部リンク│中小企業庁
参考:認定支援機関検索システム│中小企業庁
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事業再構築補助金に申請する方法・手順は下記の通りです。
- GビズIDプライムの取得
- 事業計画の策定準備
- 認定経営革新等支援機関への相談
それでは1つずつ解説していきます。
1.GビズIDプライムの取得
GビズIDとは国が提供している電子申請システムを指しており、さまざまな補助金の申請を電子申請で済ませることが可能です。
本補助金も電子申請で行うものでなので、「GビズIDプライムアカウント」を取得をする必要があります。しかし、取得できるまでにおよそ2週間(最長1ヶ月ほど)かかるので、計画的に進めていきましょう。
さらに、法人であれば申請書以外にも印鑑証明書を郵送しなければならないため、注意が必要です。
参考:GビズID申請ページ
GビズIDプライムは上記のページで申請できます。詳しい申請方法を解説した動画もあるため、ぜひご覧ください。
2.事業計画の策定準備
事業再構築補助金は巨額の予算が組まれているとは言え、申請者数も増えライバルも多いことが予想されるので、上記で解説した申請要件をクリアしているだけでは採択される可能性は低いでしょう。
したがって、説得力があり合理的な事業計画を策定しなければなりません。しかし、事業計画は一朝一夕ではつくることはできないため、計画的に進めていく必要があります。最低限、下記の4つについては行っておくべきです。
- 新しい事業の市場分析
- 現在の企業の強みと弱みの分析
- 自社の優位性の確保に向けた課題設定と解決方法の提示
- 優位性の確保するための資金計画
これらを行ったうえで、審査をする人が読みやすい文章にすることが求められます。このためにも、専門性の高い知識と経験を持っている認定経営革新等支援機関を選ぶことが不可欠です。
3.認定経営革新等支援機関への相談
ステップ2で事業計画をつくらなければなりませんが、認定経営革新等支援機関に認定されたものでなければなりません。
したがって、事業計画をつくる際は認定経営革新等支援機関に相談する必要があります。
しかし、すべてを任せるといったことはできないため、ある程度できたら相談しに行くという形で進めましょう。
事業再構築補助金の補助率や補助上限額について
事業再構築補助金には下記の4つの枠があり、それぞれ補助率や補助上限額が異なるため、気をつける必要があります。
- 通常枠
- 卒業枠
- グローバルV字回復枠
- 緊急事態宣言特別枠
それでは1つずつ解説していきます。
通常枠
要件をクリアした中小企業と中堅企業の補助金額や補助率は下記の通りです。
補助金額 | 補助率 | |
中小企業 | 100万円~6,000万円 | 2/3 |
中堅企業 | 100万円~4,000万円 | 1/2 |
4,000万円~8,000万円 | 1/3 |
卒業枠
卒業枠とは、グローバル展開、組織再編、新規設備投資のいずれかによって、従業員数もしくは資本金を増やし、中小企業から中堅企業へ、もしくは大企業に成長する企業を支援する枠です。
要件をクリアした400社限定とされていますが、補助金額と補助率が大きくなる手厚い支援となっています。
補助金額 | 補助率 | |
中小企業 | 6,000万円~1億円 | 2/3 |
グローバルV字回復枠
グローバルV字回復枠とは、下記の要件をすべてクリアしている100社限定の中堅企業の特別枠で、補助金額と補助率が大きくなります。
- 2020年10月以降の連続する6ヶ月の間で、任意の3ヶ月の合計売上高がコロナ以前の同3ヶ月の合計売上高と比べて、15%以上減っている中堅企業
- 補助事業が終わった後の3年から5年で付加価値額もしくは従業員1人あたり付加価値額の年率5.0%以上増加できる事業計画であること
- グローバル展開をする事業であること
また、グローバルV字回復枠で採択されなかった場合は、通常枠での再審査となります。
補助金額 | 補助率 | |
中堅企業 | 8,000万円~1億円 | 1/2 |
緊急事態宣言特別枠
第2回の公募で終了とされており、すでに締め切られているものではありますが、2021年の緊急事態宣言が原因で、緊急の事業再構築が求められる中小企業等は、下記の要件をクリアしていれば、補助率が高い緊急事態宣言特別枠に申請可能です。
- 通常枠の申請要件を満たしていること
- 緊急事態宣言による飲食店の時短営業、不要不急の外出の自粛などが原因であり、2021年1~6月のいずれかの月の売上高が対前年もしくは前々年の同月比で30%以上減っていること
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本補助金への申請を考える際に、「どのような経費が補助対象となるのか?」という点が非常に重要です。上記で申請に必要な要件を解説しましたが、そもそもどのような経費が使えるのかわからなければ、検討しようがありません。
本補助金は基本的に、設備投資を支援するものですが、建物の建築や改装、撤去費、システム構築費も対象となっています。公募要領を見てみると下記のような記載があります。
「補助対象となる経費は、事業拡大につながる事業資産(有形・無形)への相応の規模の投資を含むものであり、本事業の対象として明確に区分できるものである必要があります」
つまり、一過性の外注費は対象にはなりません。
補助の対象となる経費の事例
建物費 | 建物の建築や改修、撤去、賃貸物件の原状回復など |
機械装置・システム構築費 | 設備の購入やリースなど |
技術導入費 | 知的財産権の導入に必要な経費など |
外注費 | 製品開発に必要な加工や設計など |
広告宣伝費・販売促進費 | 広告の作成やメディアへの掲載、展示会への出展など |
研修費 | 教育訓練費や講座受講費など |
まとめ
新型コロナウイルスの流行が始まってから、幅広い業種や業態に悪影響が広がっています。
ビジネス環境が大きく変化しているなか、環境に適応するために思い切った事業再構築を検討する場合、事業再構築補助金は積極的に利用していきたい補助金といえます。
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