語学力はビジネスパーソン必須のスキルとして語られるケースが増えました。語学力があれば海外赴任や外資系企業との商談にも役立つのではないかと、仕事の幅を広げるために語学学習に精を出す人も少なくありません。
しかし、単に「英語ができる」というだけでは実務では役に立たないおそれもあり、場合によってはほとんど意味がありません。英語を話すことができても、ビジネスで活用できなければ意味がないのです。
ここでは今後ビジネスパーソンに必要とされる英語のレベルと、実践レベルの英語を身に付ける方法を紹介します。
さらに「そもそも語学学習は必要なのか?」を確かめつつ、ビジネスパーソンにとって本当に重要な仕事とは何かを考えます。
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目次
「英語しゃべれます(I speak English)」がアピールにならない時代が来る
英語をはじめとした語学力は、キャリア形成においてアドバンテージになります。実際、日本でもTOEICの点数が入社試験の応募資格や社内での昇格・昇給の条件になっている企業もあります。英語がキャリアパスになっているというのは嘘ではないでしょう。
しかしこうした状況はそれほど長くは続かない可能性があります。その理由は3つあります。
一つは海外勤務担当者など、英語でビジネスを経験した人間からすれば「TOEICでハイスコアを出していても、実践するには役に立たない」のが実情であるという点。残りの2つは「若年層の英語義務教育化」と「翻訳システムの発達」です。それぞれについて詳しくみてみましょう。
10年後の新卒は「英語は話せて当然」
日本における「若年層の英語義務教育化」は2008年度、小学5、6年生を対象に「外国語活動」として始まりました。2011年度には「小学5年生から必修化」、2020年度には「小学3年生から(外国語活動として)必修化」「5年生から教科化」と範囲が広がります。
つまり、今や英語は国語や算数と同じ立ち位置にまできたということです。
近年の学習指導要領がインプット重視の詰め込み式教育からアウトプットを重視した教育に変化していることを考えれば、10年後に社会に出る人材の英語力は現在と比べて確実に向上しているはずです。
特に、現在のマネジメント層やリーダー層などと、現在の子どもたちは受けている教育がまったくちがっており、彼らが大学を卒業する頃にマネジメントをしているであろう20代30代は、語学力についての意識を改めないといけないでしょう。
現時点でも大手企業クラスになれば「英語は話すことができて当たり前。中国語ができればなお良い」というところも少なくありません。それに加えて若年層の英語力が上がれば、「英語がしゃべれます」というアピールは転職活動やキャリアパスの上で、ほとんど意味をなさなくなるかもしれません。
翻訳システムを使えば「英語は使えて当たり前」
こうした状況に拍車をかけるのは「翻訳システムの発達」だと予想されます。2016年にはGoogleの翻訳サービス「Google翻訳」に人工知能による深層学習を組み込んだ「Neural Machine Translation(ニューラル機械翻訳)」というシステムが導入され、同サービスの翻訳精度は驚異的に向上しています。
Google翻訳のようなクラウドサービス以外にも、国立研究開発法人情報通信研究機構が開発した話しかけるだけで31言語に翻訳してくれる音声アプリ「VoiceTra」や、クロスランゲージの法人向けテキスト翻訳システム「WEB-Transer@Enterprise」なども誕生しています。今後こうしたシステムが発達すれば、日常会話や簡単なビジネス会話レベルであれば誰でもできる時代がやってくるはずです。
したがって、語学力を自分の武器にするためには、「話せる」というレベルから「その言語で商談ができる」というレベルに引き上げる必要があるのです。
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実践レベルの語学力を身に付ける2つの方法
では、どうすれば商談できる程度の実践レベルの語学力が身に付くのでしょうか。方法は2つあります。それぞれの方法について下記で考えてみましょう。
「英語が下手なまま」でもいいから海外で働く
考えるよりもやってみる精神がまずは大事です。とにかく海外で働き、英語になれて上達するのがよいでしょう。海外で働くのに英語が苦手だと思っているのは日本人だけではありません。
非英語圏の出身者はフランス人やドイツ人であろうと、英語に苦手意識を持っているそうです。つまり英語を母国語としている場合を除き、英語が完璧に話せる状態から、海外でビジネスを始める人はごく少数だということです。
英語が下手なまま海外で働き始めた人は、英語を使わざるを得ない環境で仕事をしているうちに、否が応なしに英語を身に付けるのです。もちろん細かいニュアンスを伝え、理解するためには時間がかかりますが、「この場所で、この言葉で仕事をする」という覚悟ができていれば習得は可能です。
日本にいながらにして実践を積み重ねる
とはいえビジネスパーソンの全てがこうした環境に身を置ける定かではありません。まして現時点でほとんど外国語ができない人が、そうした運に恵まれる可能性は低いものです。
そこで、「実践レベルの外国語を学習・練習できる場所を見つける」必要が出てくるのです。
といっても英語の勉強をするために英語圏の人が集まる飲食店やイベントに行き、ネイティブと話すのは非効率的です。もちろん世間話をして、ジョークを交わせば日常会話の勉強にはなりますが、仕事に役立つかといえば別問題です。
なぜなら「自分がいつも仕事場で使っている言葉を外国語に置き換える」ことが海外の人と商談する際の必須事項だからです。そのため、生きた英語を身に付けるためにオンライン英会話教育サービスを活用したり、業界の専門誌やビジネス誌を購読し、業界の英語に慣れるのも一案です。
忙しいビジネスパーソンにとって、語学学習は効率が命。学ぶ言語に関係なく「自分に必要な語学力はどんなものか」をじっくり考えて、そこに狙いを定めて勉強する必要があるのです。
そもそも自分に外国語は必要なのか?
ここまで今後必要とされる語学力とその勉強法について解説してきましたが、語学の勉強を始める前に「そもそも自分に外国語は必要なのか?」と自問することも大切です。
確かに今後少子高齢化で日本人の人口が減ると、外国人が多く流入し、外国語を使う機会も増えるでしょう。とはいえ「ビジネスパーソンに語学力は必須」という状況にすぐに発展するとは考えにくいのも事実です。
むしろ「ビジネスパーソンに語学力は必須」というイメージをうのみにして、「語学力を身に付けて仕事の幅を広げよう」と安直に考えてしまう方が危険です。
英語が必要ないのに貴重なリソースを割いてしまうと、いったい何のための語学学習か分からなくなってしまいます。とりわけリーダーやマネージャーなどの人材には語学学習よりも力を注ぐべき重要な仕事があります。転職や出世で成功したいのであれば、まずはそうした仕事にフォーカスを当てるべきでしょう。
■マネージャーが本当に力を注ぐべき仕事とは?
リーダーやマネージャーといったマネジメント層が力を注ぐべき仕事は、以下の4つに集約できます。
1.決断すること
自分の率いるチームにおける決定の権限と責任は全てマネージャーにあります。この仕事を全うすることこそが、最も重要なマネージャーの仕事です。
2. 目標を与えること
部下に応じた適切な目標を設定するのもマネージャーの仕事です。部下が迷いなく目指せるよう目標を明確化するのもマネージャーの役割です。
3 結果を評価すること
自分が与えた目標に対して部下が出した結果を評価するのもマネージャーの仕事です。これを通じて改善点と次の目標を提示し、それを遂行させることで部下を成長させます。
4. 1〜3を通じて自分が結果を出すこと
1〜3を確実にこなし、上司から与えられた目標に対する結果を出すこともマネージャーの仕事です。ここで結果を出せなければ、いくら語学力があってもキャリアパスは望めません。
大切なのは「本当に必要か?」と自問すること
逆に言えば、この4つの仕事さえ確実にこなしていれば語学力が不要になる可能性もあります。英語が上手な部下がいたとして、その部下の仕事が海外工場への対応だったとしても、極端に表現すればその上司に英語力は必要ありません。
なぜなら流暢に英語が話せる部下に対して、目標を与えることや、部下が出した結果を評価することが上司の仕事だからです。
例えば部下に「今年度中に海外工場の製造ロスを15%引き下げる」という目標を与えていたのなら、上司は年度末にその結果を確認し、評価するのが仕事です。
実際に英語を駆使して製造ロスを引き下げるのは部下の仕事ですから、上司が英語力に長けている必要はないのです。それを理解していれば、上司がやるべきことは語学の勉強ではないと分かるはずです。
とはいえ、この考え方を持っていたとしても語学の勉強が必要になる場面はやってきます。例えば自分が部下に与える目標とは別に、自分の上司から「営業として今期末までに1,000万円以上の海外企業との取引実績を作れ」という目標を与えられていたら、自分の職務を全うするために英語が必要になるからです。
大切なのは「ビジネスパーソンに語学力は必須」というイメージをうのみにせず、自分の仕事内容を考えて、本当に語学力が必要かどうかを判断することです。必要もないのに語学の勉強をして、肝心な仕事で結果が残せなくなっては本末転倒です。
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まとめ 自分のリソースは「本当に必要なもの」に注ぐ
語学を勉強するのであれば、実践的な語学力だけを磨きましょう。何も考えずに語学を勉強するくらいなら、本当に重要な仕事に力を注いだほうがいいのです。
語学を勉強するにせよ、しないにせよ、大切なのは自分にとって「本当に必要なもの」に時間や労力を割くことです。それこそが自分にとっても、会社にとっても、最も意味のあるリソースの使い方と言えるでしょう。
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