2020/07/06

会社に対する誹謗中傷の書き込みには対処すべきか 対応の進め方と考え方について

SNSや口コミサイトなど、インターネット上で誰でも意見を発信できる媒体が無数に存在する中、特に最近は、誹謗中傷的な内容の投稿が社会問題化しています。

SNS上でも、インフルエンサーなどを中心として、誹謗中傷の投稿者に対する訴訟提起などの法的措置を取る動きが見られるようになりました。

費用対効果の観点からは、会社が個人の投稿に対してどこまで神経質になるべきかという問題はたしかに存在します。
しかし一方で、事実無根の投稿が放置された場合、その投稿が予想外に影響力を持ち、会社のイメージが損なわれてしまうリスクも否定することはできません。

会社としては、個々の投稿への対処方針は個別に検討するとしても、匿名の誹謗中傷的な投稿に対してどのような対応が考えられるかということは、選択肢として理解しておいた方が良いでしょう。

この記事では、会社に対する誹謗中傷的な投稿に対して、会社が取ることのできる対応について解説します。

 

誹謗中傷は「名誉毀損」として刑事上・民事上の責任を負う

 

まずは前提として、インターネット上で誹謗中傷の投稿を行った場合、法的にどのような責任が発生するかを押さえておきましょう。

誹謗中傷が「名誉毀損」に該当するということは、ご存じの方も多いかと思います。
この「名誉毀損」には、

①刑事上の「名誉毀損罪」
②民事上の「不法行為」である名誉毀損

という2つの意味があります。

 

刑事上の「名誉毀損罪」

名誉毀損罪は、公然と事実を摘示し、他人の名誉を毀損する行為について成立する刑法上の犯罪です(刑法230条1項)。

名誉毀損罪の責任追及は、検察官が刑事裁判の中で行うことになります。
誹謗中傷の被害者である会社が投稿者の処罰を望む場合、捜査機関に対して被害事実についての告訴を行うことができます。

 

民事上の「不法行為」である名誉毀損

誹謗中傷の投稿は、故意または過失により違法に被害者の名誉権を侵害し、被害者に損害を与えるものであるため、民法上の「不法行為」(民法709条)に該当します。

よって、誹謗中傷の被害者である会社は、投稿者に対して損害賠償を請求することができます。

 

匿名の投稿者を特定する方法について

 

インターネット上での誹謗中傷的な投稿は、その多くが匿名により行われている実態があります。

投稿について刑事捜査が行われる場合には、捜査機関が行う捜査の中で投稿者が割り出されることになります。
しかし、必ずしもすべてのケースで捜査機関が動いてくれるわけではありません。
その場合、会社が投稿者に対して損害賠償を請求するには、会社の側で投稿者を特定する必要があります。

具体的な投稿者特定の流れは以下のとおりです。

 

IPアドレスを特定する

投稿者を特定するための第一段階としては、IPアドレスの特定を行うことが一般的です。

IPアドレスとは、各端末(PC、スマートフォンなど)にそれぞれ割り当てられたインターネット上の住所のようなものです。
IPアドレスが特定できれば、誹謗中傷の投稿に用いられた端末をピンポイントで特定することができます。

IPアドレスは、実際に書き込みが行われたサイトの運営者(「コンテンツプロバイダー」といいます。)が管理していますので、コンテンツプロバイダーに対して「発信者情報開示請求」を行います。
発信者情報開示請求とは、インターネット上の投稿などに関して損害賠償を請求しようとする被害者が、プロバイダーに対して投稿者に関する情報の開示を求めることができる制度です(プロバイダー責任制限法4条1項)。

この発信者情報開示請求の制度を利用して、コンテンツプロバイダーにIPアドレスの開示を請求します。

ただし、コンテンツプロバイダーが投稿に紐づくIPアドレスを保存している期間は、それほど長くはありません(一般的には3か月程度と言われています。)。
したがって、投稿者の責任追及をするためには、会社として迅速な判断・行動が求められます。

 

端末の使用者を特定する

IPアドレスが特定できたら、次はIPアドレスに対応する端末の使用者に関する個人情報を突き止めるステップへ移行します。

PCやスマートフォンなどの各端末には、インターネット接続業者(「経由プロバイダー」といいます。)が利用者との回線契約に基づき、1対1でIPアドレスを割り当てています。

経由プロバイダーは利用者の個人情報を保有しているので、経由プロバイダーに対して発信者情報開示請求を行うことにより、端末所有者の個人情報を取得・特定することができます。

なお、端末所有者が個人である場合には、その個人により誹謗中傷の投稿が行われた可能性がきわめて高いといえます。
一方、不特定多数の人が利用する可能性のある端末、例えばネットカフェのPCなどから投稿が行われた場合には、必ずしも端末所有者により投稿が行われたとは限りません。
その場合には、入店記録などの他の情報と照らし合わせて、投稿者を特定する必要があります。

 

投稿者の責任を追及することの費用対効果は?

 

誹謗中傷の投稿者を特定することは可能だとしても、投稿者の責任を追及するためには、人的・物的なコストがかかります。
会社がコストをかけて一個人である投稿者の責任を追及することで、果たしてどれだけのリターンが得られるかということは、マネジメントサイドの懸念点として挙げられるでしょう。

 

「損害」および「投稿との因果関係」の証明が必要

投稿者に対して不法行為に基づく損害賠償を請求する場合、以下のことを会社の側で立証する必要があります。

・会社にどのような損害が生じたか
・損害と投稿との間に因果関係があること

投稿前後で目に見えて売り上げが激減したなどの事情があればわかりやすいでしょう。
しかし、そこまで顕著な落差が見られない場合には、損害と投稿との間の因果関係を立証するハードルは高いのが現実です。

会社が勝訴する見込みがどの程度あるかについては、弁護士との打ち合わせなどを通じて、事前に分析を行っておく必要があります。

 

世間に対するアナウンス効果

仮に損害が立証できる見込みが十分に立たないとしても、会社の誹謗中傷への対処方針を対外的にアピールする目的で法的措置を取るということは十分考えられます。

世間に対して「誹謗中傷を行うと法的措置を取られる会社」というイメージを抱かせることができれば、長期的に見て誹謗中傷に晒されるリスクは減少する可能性が高いといえます。

また、実際に誹謗中傷がある程度拡散してしまったような状況では、会社として事実を争う姿勢を見せておくことが、レピュテーションの観点から重要になる場合もあるでしょう。

いずれにしても、誹謗中傷の投稿に対して会社がどのように対応するかを決定するには、経営戦略的な判断が求められます。

 

まとめ

 

最近では、世間が全体的に、誹謗中傷に対して厳しい目を向けている状況にあります。

しかしながら、インターネットが不特定多数によって利用されるものである以上、会社に対する事実無根・誹謗中傷の投稿が行われることはある程度避けられません。
こうした投稿に迅速かつ適切に対処するため、会社として対応方針の大枠を作成しておくなど、万全の備えを行うに越したことはないでしょう。

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