コロナ禍で注目されるようになったギグワーク。
ウーバーイーツの黒や緑の大きなバッグを背負い、自転車で料理を配達する―都会ではそんな姿を見かけるようになりました。
こうしたギグ・ワークの働き手は、「インディペンデント・ワーカー」と呼ばれる人々です。
雇われずに働く独立労働者、インディペンデント・ワーカーは新しい労働者のパラダイム。
世界中で増加中です。
「労働=雇用」が当たり前だった時代は終わりつつあるといってもいいでしょう。
では、ギグワークとはどのような働き方なのでしょうか。
本記事では、ギグワークの増加がもたらす労働市場やビジネスモデルの変容、そして彼らを活用する企業側に迫られる人材戦略の転換について解説します。
目次
ギグワークとは
まず、ギグワークの定義を明確にしておきましょう。
ギグワークを定義するためには、それに先立ち、ギグワークの働き手であるインディペンデント・ワーカーがどのようなものか明らかにしておく必要があります。
アメリカのコンサルタント企業マッキンゼー社(以下、「MGI」)によるインディペンデント・ワーカーの定義は、以下のようなものです [1]。
次に日本における定義もみてみましょう。
フリーランス協会は、インディペンデント・ワーカーに相当する「広義のフリーランス」を以下のように定義しています [2]。
なお、以降は、資料に従い、「インディペンデント・ワーカー」と「フリーランス」の両方の言葉を使いますが、それらは同義と考えることにします。
以下の図1で従来の従業者とインディペンデント・ワーカーを比較してみましょう。
図1 従来の従業員とインディペンデント・ワーカーの比較
出典:[3]マリオン・マクガバン著 斎藤祐一訳(2020)『ギグ・エコノミーの襲来 新しい市場・人材・ビジネスモデル』(電子版) No.3056
こうして比較してみると、給与形態、仕事場所、使用機器の所有者、(組織内での)立場、目標、労働期間など、さまざまな面で両者の違いが明らかです。
ギグ・ワークとはこのような働き方である「インディペンデント・ワーク」のうち、期間が不確かな仕事、これまで臨時の仕事と呼ばれていたものを指します [3]。
それが、どのような分野の仕事かは関係ありません。
その仕事が人脈によってもたらされるのか、人材サービス会社経由か、あるいは人材プラットフォーム経由かも関係ありません。
図2 ギグ・ワークのイメージ
出典:[3]マリオン・マクガバン著 斎藤祐一訳(2020)『ギグ・エコノミーの襲来 新しい市場・人材・ビジネスモデル』(電子版) No.2833
図2のように、「仕事」というコンセプトは、必ずしも「雇用」とは一致せず、「雇用」は仕事の一部にすぎません。
雇用以外にもさまざまな働き方があり、ギグ・ワークもそうした働き方のひとつです。
最近、よく聞かれるようになった「ギグ・エコノミーとは、このようなインディペンデント・ワークを支えるために進化した、企業とビジネスの仕組みのこと」[3]です。
ギグワーク増加の背景
もともと「ギグ」ということばは、1920年代のアメリカで生まれました。
ジャズのミュージシャンが、ハンドのメンバーとして出演する単発の仕事を「ギグ」と呼んでいたことに由来します。
そのうちに、副業でミュージシャンとして働く人も、その仕事を「サイド・ギグ」と呼ぶようになりました[3]。
1980年代になると、高度な技術が関わる仕事にも「ギグ」という言葉が使われるようになりました。
その時期、アメリカでは経理やマーケティング、人事などビジネスの主要な分野に関するコンサルタントが、次々に独立していきました。
1990年代はITの普及などにより、その流れがさらに強まりました。
「ギグ」が普及したのには、もうひとつの要因が絡んでいます。それは、女性のキャリアに関わることです [3]。
アメリカの企業で働く女性は、出産休暇や家庭生活上の義務が出世の妨げになっていました。
しかし、多くの女性は、男性と同じ働き方ではなく、職業上の専門能力と生活とを柔軟に両立させていける別の道筋を望んでいました。
そこで、高学歴で職業能力にも優れた女性たちが、自分の生活を自分自身でコントロールすべく、独立コンサルタントに転身したのです。
これは、いわば「ガラスの天井」を突き破るような画期的なことでした。
さらに、この10年で市場は劇的に変化しました[3]。
モバイル通信が普及し、誰でもアプリを使うようになったからです。
そのことによって、一般の人々が、自分の生活を便利にしてくれる人や物を、いつでもどこでもそれに見合った価格で即時的に活用できるようになりました。
その利便性がギグ・ワークの市場を拡大しつつあるのです。
ギグワーク(インディペンデント・ワーカー)の規模
では、現在、ギグ・ワーカーを含むインディペンデント・ワーカーはどのくらいいるのでしょうか。
MGIの報告書によると、こうした働き方をする労働者は、アメリカとEU15か国で生産年齢人口の20%~30%、最大で1億6,200万人に達すると推計されています [1](図2)。
図2 欧米におけるインディペンデント・ワーカーが生産年齢人口に占める割合
出典:[3]マリオン・マクガバン著 斎藤祐一訳(2020)『ギグ・エコノミーの襲来 新しい市場・人材・ビジネスモデル』(電子版) No.2749
日本ではどうでしょうか。
図3 日本とアメリカのフリーランス人口
出典:[4]ランサーズ(2020)「【ランサーズ】フリーランス実態調査2020年版」 p.4
https://speakerdeck.com/lancerspr/huriransushi-tai-diao-cha-2020
図3は日本最大級のクラウドソーシング、ランサーズによる調査結果です。
この図をみると、2019年、日本におけるインディペンデント・ワーカーは1,000万人を超え、生産年齢人口の15%に上ると推計されています。
下の図4は、経済規模とフリーランス人口の推移を表したものです。
図4 フリーランスの経済規模と人口の推移
出典:[4]ランサーズ(2020)「【ランサーズ】フリーランス実態調査2020年版」 p.13
https://speakerdeck.com/lancerspr/huriransushi-tai-diao-cha-2020
2019年から2020年にかけてフリーランス人口はやや減少しているものの、2016年から2020年までの5年間をとおして、人口は1,000万人、経済規模も1兆円を超えています。
図5 年齢別フリーランス人口の推移 図6 1年以内にフリーランスを始めた人
出典(図4・図5):[4] ランサーズ(2020)「【ランサーズ】フリーランス実態調査2020年版」図4: p.5、図5:p.6
https://speakerdeck.com/lancerspr/huriransushi-tai-diao-cha-2020
図5で年齢をみると、2020年は2019年に比べ、50歳以上は減少している一方、50歳以下は増加しています。
また、図6のように、1年以内にフリーランスを始めた人も増加しています。
しかし、先ほどみたように、全体の人口はやや減少しているところをみると、フリーランスをやめた人が一定数いることがわかります。
この問題については、後ほど改めて考えてみたいと思います。
ギグワーク(インディペンデント・ワーカー)の類型
次に、インディペンデント・ワーカーの類型を2つみてみましょう。
ひとつ目の類型は、MGIによるものです(表1)。
表1 MGIによるインディペンデント・ワーカーの類型
出典:[1]独立行政法人 労働政策研究・研修機構(2017)「独立労働者(インディペンデント・ワーカー)が世界で増加」
https://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2017/02/usa_01.html
この分類基準は、「自発的選択/必要に迫られた選択」と「主収入/補足的収入」です。
表1の4区分をそれぞれ説明すると、以下のようになります [3]。
- フリー・エージェント(Free Agents):独立した立場での仕事でキャリアを歩んでいる人
- カジュアル・アーナー(Cusual Earner):会社勤めの収入を副業で補っている人
- リラクタント(Reluctants):本当はフルタイムの仕事に就きたいのに不本意ながらフリーランスで仕事をしている人
- フィナンシャリー・ストラップト(Financially Strapped):経済的な理由でフリーランスで働かざるを得ない人
一口にインディペンデント・ワーカーといっても、様々なタイプがあることがわかります。
次に日本における分類をみてみましょう。
ランサーズはフリーランスを以下のように分類しています(図7)。
図7 ランサーズによるフリーランスの4タイプ
出典:[4]ランサーズ(2020)「【ランサーズ】フリーランス実態調査2020年版」 p.10
https://speakerdeck.com/lancerspr/huriransushi-tai-diao-cha-2020
このうち、左の2つ、副業・複業系パラレルワーカーを合わせると全体の67%、690万人に上ると推計されています。
一方、右の2つ、専業のフリーランスは345万人で、数の上では副業・副業系パラレルワーカーが多いことがわかります。
以上のように、先ほどのMGI 同様、ランサーズによってもさまざまなタイプに分類されていますが、これらのいずれのタイプもギグ・ワークの働き手となりうる人々です。
ギグ・ワークのメリット
結論を先取りすると、ギグ・ワークという働き方はまさに諸刃の剣で、光と影の部分があります。
では、そのメリットの方からみていきましょう。
自由な働き方
MGIの調査によると、フリーランスになる主な理由は、以下の4点です [3]。
- 自律性
- 柔軟性
- スケジュールを自分で管理できる
- 上司がいない
この調査では、フリーランスはノンフリーランスに比べて全体的な満足感が高いこともわかっています。
日本での調査結果もそれを裏付けています(図8)。
図8 フリーランスの仕事に対する自由度、裁量権の大小、満足度
出典::[4]ランサーズ(2020)「【ランサーズ】フリーランス実態調査2020年版」 p.18
https://speakerdeck.com/lancerspr/huriransushi-tai-diao-cha-2020
この図をみると、すべての項目について、フリーランスはノン・フリーランスを上回っていますが、特にその差が大きいのが「自由である」です。
わずかな「すき間時間」を使って、手軽に働くこともできますし、仕事がオンラインで可能な内容なら、「いつでも、どこでも」働けます。
さらに、人脈があれば、「好きな人と」がそれに加わることもあるでしょう。
しかも、現在は、業務委託化できない仕事はないとまでいわれています(図9)。
図9 フリーランスとして取り組める仕事
出典:[2]厚生労働省(2020)雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会:フリーランス協会「フリーランスの実態と課題(2020年2月14日) p.20
https://www.mhlw.goz:400/000596089.pdf
正規雇用も実際には将来の保証はないのですから、思い切って、自由で裁量権のあるフリーランスとして生きていくという道を選択する人がいるのも頷けます。
筆者も現在、フリーランスとして、ライター以外にもいくつかの仕事をしています。
図7でみた「複業系パラレルワーカー」に相当し、複数の企業や組織と契約を結んで働くというスタイルで、筆者の場合は、以下の図10の「水平型」と「垂直型」を組み合わせたスタイルです。
図10 複業スタイル
出典:[2]厚生労働省(2020)雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会:フリーランス協会「フリーランスの実態と課題(2020年2月14日) p.22
https://www.mhlw.goz:400/000596089.pdf
現在は、副業が解禁になり、「週3正社員」も誕生しています。
平日でも副業に取り組める人が増えているため、こうした兼業のあり方は今後も増加していくのではないでしょうか。
このような働き方は、ライフステージや生活状況に合わせて、その時々で、自分で仕事量が決められ、スケジュール管理ができるのが魅力です。
例えば、人手が多い休日は仕事をして、人手の少ない平日に外出する。
あるいは、家族のケアが必要なときには、仕事量を絞る。
そんなふうに、自分のスタイルに合った働き方や生活ができ、筆者はそのことに満足しています。
定年後も好きな仕事が続けられるのも魅力です。
また、毎年、夏の2日間だけ受託する仕事もありますが、その依頼は更新制ではなく、毎年、単発で受けています。
つまり、その仕事はギグ・ワークなのですが、他の仕事が暇な時期、やりたい仕事に短時間だけ取り組むことができることにも満足しています。
社会問題を解決するツールとしてのポテンシャル
以上のような個人の働き方の問題を越え、ギグ・ワークは社会問題を解決するツールになりうるということも指摘されています [3]。
世界的に増加しつつある難民問題は深刻です。
多くの難民が難民キャンプでの長期滞在、生活を余儀なくされています。
その難民キャンプで、もしギグ・ワークができれば、難民の人々は収入を得ることができます。
こうした構想の下、貧困層の人々にITスキルの習得を支援しているNPOが、既に難民の人々にギグ・ワークの仲介を始めています。
インターネット環境やネット・バンキングなどのITインフラを整えれば、ギグ・ワークを介したこうした支援も可能なのです。
ギグ・ワークのデメリット
先ほど、フリーランスを新たに始めた人や50歳以上のフリーランスが増えているというお話をしました。
でも、総数では2019年から2020年までの1年間で、フリーランスはわずかに減少しています。
したがって、フリーランスという働き方をやめた人が一定数いることになります。
何か問題があるのでしょうか。
ギグ・ワーカーは「労働者」ではない!
以下の図11は、アンケート調査の結果で、「フリーランスのような働き方を選択しやすくするために何が必要か」という質問への回答を表しています。
図11 フリーランスという働き方を選択しやすくするための方策
出典:[2]厚生労働省(2020)雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会:フリーランス協会「フリーランスの実態と課題(2020年2月14日) p.5
https://www.mhlw.goz:400/000596089.pdf
図11をまとめたものが以下の図12で、図11の項目の枠線と同じ色で示してあります。
図12 フリーランスに対する社会的セーフティーネット
出典:[2] 厚生労働省(2020)雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会:フリーランス協会「フリーランスの実態と課題(2020年2月14日) p.4
https://www.mhlw.goz:400/000596089.pdf
ここには大きな問題が2つあります。
まず、インディペンデント・ワーカーは、企業と雇用関係がないため、日本の法律では「労働者」と認められず、したがって労働基準法や労働組合法が適用されないという問題です。
もうひとつは、実際には従業員と同じ、あるいは準従業員といっていい仕事をしているのに、従業員として扱われていないインディペンデント・ワーカーがいるということです。
企業との委託受託契約でトラブルを経験したフリーランスの割合は45.6%に上り、以下のような原因が挙げられています [2]。
- 報酬の支払いが遅延される 43.7%
- 契約の一方的な変更を受ける 38%
- あらかじめ定めた報酬を減額される 32.4%
- 買いたたきを受ける 28.2%
- 書面を作成し、交付してくれない 27.7%
- 不当な金銭、労務の提供をさせられる 23.9%
- 支払期日を定めてくれない 17.8%
- 提案や企画、作品等の関する知的財産権が侵害された 10.3%
以上のような状況をふまえ、国はフリーランスのような働き方を「雇用類似の働き方」と呼び、「雇用類似の働き方に関する検討会」で検討を重ねています。
2018年に発表された検討会の報告書には、今後、以下について検討するとあります[5]。
- 契約条件の明示
- 契約内容の決定・変更・終了のルールの明確化、契約の履行確保
- 報酬額の適正化
- スキルアップやキャリアアップ
- 出産、育児、介護等との両立
- 発注者からのセクシュアルハラスメント等の防止
- 仕事が原因で負傷し又は疾病にかかった場合、仕事が打ち切られた場合等の支援
- 紛争が生じた際の相談窓口等
- 企業とのマッチングの支援
逆にいうと、これだけの問題があり、なにか問題が生じた場合には、フリーランスは基本的に自己責任で解決しなければならない状況におかれているということです。
また、組織に属していないことから、住宅ローンなどの借入がスムーズにいかない可能性もあります。
こうした問題は、つきつめていけば、フリーランスを活用している企業の問題でもあります。
法的な解決を待つばかりでなく、企業による変革にも期待したいところです。
成功するのは簡単ではない
一方、フリーランス側にも問題がないとはいえません。
なぜなら、以下のような実態があるからです [2]。
未払いなどのトラブルに遭った割合が69.7%であるのに対して、泣き寝入りをした人が42.2%に上ること。
また、発注企業の資本金が1,000万円超の場合は、フリーランスも下請法の対象になるということを知らないフリーランスが57.8%に上ること
このことから、フリーランス側にも、トラブルに対するストラテジーが不足しているという側面があるのは否めません。
以下の図13は、成功するギグ・ワーカーの特徴です。
図13 成功するギグ・ワーカーの特徴
出典:[3]マリオン・マクガバン著 斎藤祐一訳(2020)『ギグ・エコノミーの襲来 新しい市場・人材・ビジネスモデル』 CCCメディアハウス(電子版) No.3270
これをみると、ギグ・ワーカーとして成功するためには、さまざまな能力と強靭な精神力が必要だということがわかります。
誰がやってもうまくいくと考えるのは、危険かもしれません。
インディペンデント・ワーカーのヒエラルキー
もうひとつ、厳しい現実があります。
以下の図14は、インディペンデント・ワーカーの専門性に関するヒエラルキーです。
図14 インディペンデント・ワーカーの専門性ヒエラルキー
出典:[3] マリオン・マクガバン著 斎藤祐一訳(2020)『ギグ・エコノミーの襲来 新しい市場・人材・ビジネスモデル』 CCCメディアハウス(電子版) No.745
この図をみると、誰にでもできそうなことは報酬が低く、専門性が高くなるにつれて報酬が上がっていくことがみてとれます。
当然といえば当然なのですが、この図は、何のためにギグ・ワークをするのかを見定める必要があることを示唆しているのではないでしょうか。
極端にいうと、すき間時間を活用して、少しでも収入を増やすという方向性なのか、高度な専門性を生かすためにギグ・ワークという働き方を生かすのかという問題です。
現在は下の階層にあっても、上の階層を目指して専門性を高めていくのか、それとも現状でできることを淡々とこなしていくのか、という問題でもあります。
ギグ・ワークを始めようと思ったら、まずは自分の立ち位置を決め、キャリア設計をして、実際的な戦略を立てることが必要でしょう。
ギグワーク(インディペンデント・ワーカー)の活用と人材戦略の転換
最後に、インディペンデント・ワーカーを活用するにあたって、企業がすべきことを考えたいと思います。
ギグワーク(インディペンデント・ワーカー)を活用するメリット
まず、企業がこうした人材を活用することによって得られるメリットは、以下のとおりです [3]。
インディペンデント・ワーカーを活用できれば、例えば、より多くの仕事をプロジェクト化することも可能になります。
また、従来のプロジェクトのあり方を変えることも可能です。
例えば、これまでプロジェクトに順次、取り組んでいたものを、同時並行的に行うことができれば、その方がずっと効率的です。
その場合、同時並行するプロジェクトは別々のチームがあたることになるため、外部から適材を招き入れる必要性が生じます。
そのようなとき、これまでならそのプロジェクトを遂行するのに相応しい人材の雇用を考えたでしょう。
でも、インディペンデント・ワーカーを視野に入れると、雇用ではなく、必要な人材をそのときだけ外部から迎え入れ、その分の報酬を払うという方向性が見えてきます。
あるいは、新しいビジネスチャンスが訪れたとき、社内のスタッフにはそのチャンスを活かすだけの能力をもった人材がいない場合も、社内スタッフに足りない能力をもつインディペンデント・ワーカーを社内に迎え入れるという選択肢があります。
このようにプロジェクト単位で人材を招き入れることによって、人材を的確に評価することができ、それが正規社員の候補者を見極めることにもつながります。
つまり、優秀な人材の獲得ツールとしても有益なのです。
ビジネスのスピード化に合わせて、即時的に適格な人材を招き入れることも可能です。
さらに、必要なメンバーが退職したり、出産・育児休暇に入ったりしたときにも、インディペンデント・ワーカーを活用すれば、その穴埋めができます。
インディペンデント・ワーカーを上手に生かすことで、ビジネスモデルを変革させることも可能なのです。
ギグワーク(インディペンデント・ワーカー)の活用方法
では、実際にインディペンデント・ワーカーを活用するには、どうしたらいいのでしょうか。
図15 フリーランスが仕事をみつける経路
出典:[4]ランサーズ(2020)「【ランサーズ】フリーランス実態調査2020年版」 p.21
https://speakerdeck.com/lancerspr/huriransushi-tai-diao-cha-2020
図15は、フリーランスが仕事をみつける経路を表しています。
この図には記してありませんが、クラウドソーシングを利用する人の80%以上が50歳以下であることがわかっています [4]。
したがって、若いフリーランサーを確保しようと思ったら、クラウドソーシングを利用するのが有効です。
次に、上の図15をみると、仕事をみつける経路は、半分程度が人脈であることがわかります。
ここで大切な留意点があります [3]。
現在のように、転職が珍しくない時代にあっては、有能な社員が離職しても、その社員を何年後かに別の形で呼び戻せる可能性があるということです。
離職した社員がフリーランサーになり、さらにスキルを磨いた後に会社にもどり、別のポジションに就くことも考えらえます。
その場合、彼らがまた戻ってくるような仕掛けを準備しておく必要があります。
また、優秀なフリーランサーを再度、活用できるような人材コミュニティーを構築することも必要です。
さらに、これからは社員が正社員として働きながら、ギグ・ワーカーとしても働くことが増えていくと予想されます。
そのための人材戦略、人材管理のあり方を探ることも必要です。
ギグワーカーはどうやって仕事を探せばいいのか?
さて、ここまでギグワーカーを活用する方法を説明してきましたが、ギグワーカーはどのように仕事を獲得すればいいのでしょうか?
具体的には以下のようなプラットフォームを活用するのがよいとされています。
- Timee
- GIGWORKS BASIC
- シェアフル
- LINEスキマ二
- Crowdworks
- Lancers
まずはプラットフォームから仕事を獲得し、その後実績を積み、企業との直接契約を目指すのが一般的な方法です。
現在ではWEBフリーランスとしての生き方以外にも、uberの配達員として生計を立てる人も一般化しています。
おわりに
このように、ギグ・エコノミーは、労働市場の変容をもたらし、企業にも人材戦略の転換を迫っています。
現在はこのような変革期にあるのだということをまず認識することが重要です。
その上で、インディペンデント・ワーカーをどのように活用するか、彼らのためにどのような労働環境を用意するのか、社員が副業として取り組むギグ・ワークにどのように向き合うか。
さらに、優秀なインディペンデント・ワーカーや離職社員を再度、社内に取り込むためにはどのような人材コミュニティーを構築すればいいのか。
インディペンデント・ワーカーの増加にともない、人材戦略の転換をどうはかっていくかは、現在、企業にとって大きな課題だといっていいでしょう。
[adrotate group=”15″]
参照
[1]独立行政法人 労働政策研究・研修機構(2017)「独立労働者(インディペンデント・ワーカー)が世界で増加」https://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2017/02/usa_01.html
[2]厚生労働省(2020)雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会:フリーランス協会「フリーランスの実態と課題(2020年2月14日)
https://www.mhlw.goz:400/000596089.pdf
[3]マリオン・マクガバン著 斎藤祐一訳(2020)『ギグ・エコノミーの襲来 新しい市場・人材・ビジネスモデル』 CCCメディアハウス(電子版)
[4]ランサーズ(2020)「【ランサーズ】フリーランス実態調査2020年版」
https://speakerdeck.com/lancerspr/huriransushi-tai-diao-cha-2020
[5]厚生労働省(2018)雇用類似の働き方に関する検討会「『雇用類似の働き方に関する検討会』報告書」(2018年3月30日)p36~
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11911500-Koyoukankyoukintoukyoku-Zaitakuroudouka/0000201101.pdf