コミュニケーションは日常生活のみならず、ビジネスにおいても非常に重要な要素です。
なぜなら、コミュニケーションひとつで相手との信頼関係や、それにともなう売り上げが変わるからです。
本記事ではコミュニケーションの種類やコミュニケーション能力が高い人の特徴、コミュニケーション能力を向上させるポイントを紹介します。
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目次
そもそもコミュニケーションとは?
コミュニケーションで重要なのは、方法よりも相手
コミュニケーションとは、意志の疎通を図ることであり、その方法として、読む、書く、聞く、話すという言語を使う4つのスキルと、身だしなみや立ち振舞いなどの非言語によるものがあるというのが一般の認識でしょう。
コミュニケーションの方法は、ビジネス雑誌などでも取り上げられることも多く、ややもすれば、相手のことよりも方法論にばかり意識が向きがちです。
コミュニケーションを成立させるのは受け手である。内容を発するもの、つまりコミュニケーターではない。彼は発するだけである。聞く者がいなければ、コミュニケーションは成立しない。
(『ドラッカー名言集 仕事の哲学』より)[1]
ドラッカーのこの言葉にもあるように、受け手の存在こそがコミュニケーション成立のための絶対条件なのです。
受け手のことを無視して、ひたすらテクニックばかりを磨いたとしても、そのテクニックが相手に対して使えるものでなければ、こちらが思うような反応を得ることができません。
そして、コミュニケーションの基準となるのは、相手の反応です。
営業でも、しゃべるのが苦手でも契約を取ってくるという人がいるように、コミュニケーションを決定づけるのはテクニックではなく、相手の反応です。
同じことを伝えたとしても、相手によって、どのように見えるのか、どのように聞こえるのか、そして、どのように感じるのかといったことは違ってきます。
科学的に見ても、認知特性といって、人によって外界からの情報を頭の中で理解・記憶したり、表現したりする方法が異なることが知られており、視覚、聴覚、言語の3つのタイプがあります。[2]
例えば、視覚優位の人の場合、電話のように音だけのやり取りが苦手で、どうしても聞き漏らしや聞き間違いが多くなってしまいます。
よって、相手が視覚優位であれば、メールや写真、イラストなどの視覚情報を使ってやり取りをした方が伝わるわけです。
このように、コミュニケーションを決定づけるのは相手であり、まずは相手のことをよく知ることが大事になってきます。
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コミュニケーションの種類とは
コミュニケーションには大きく分けて以下の二種類があります。
- 言語コミュニケーション
- 非言語コミュニケーション
いずれも何か情報を伝える際の方法として重要であるため、それぞれの要素を活用してコミュニケーションをとるとよいでしょう。
順に解説します。
1.言語
言語コミュニケーションとは、書き言葉や話し言葉を使って意思疎通を図ることです。
例えば日常会話や文章、プレゼンテーション、メールなどが言語コミュニケーションにあたります。
言語コミュニケーションのメリットは、言語を通じて複雑な概念や詳細の情報を伝えられる点です。
相手が話を聞いた際に内容が理解できるよう、話し手が客観的に言語化することが大切です。
聞き手にとっても、相手が伝えようとする内容を正確に聞き取り、理解する能力が求められます。
2.非言語
非言語コミュニケーションは言葉を使わずに身振りや手振り、表情や視線、声のトーン、服装などで情報や感情を伝えるコミュニケーションです。
言葉では明確に表現しきれないニュアンスや、感情を伝えるのに適しているコミュニケーション方法です。
例えば声が大きいと説得力が増し、トーンが低いと落ち着いているように感じる傾きがあるでしょう。
非言語の部分は言葉で表す以上に信頼関係の構築や、話者に対するイメージの醸成に貢献しているといえます。
コミュニケーション能力を構成する4つの要素とは
効果的なコミュニケーションには、言語と非言語の両面から「伝える」と「聴く・理解する」能力が必要です。
これらの要素をバランスよく磨くと、より円滑なコミュニケーションができます。
それぞれの要素について詳しく解説します。
言語で伝える
コミュニケーションをとる際には、自分の考え方や価値観、感情を適切な言葉で伝えることが重要です。
なぜなら、何か伝えたい内容があっても、相手にわかるように話せていないと、内容や要点がまったく伝わらなくなってしまうからです。
話す際には明確で論理的な言葉遣いや、状況に応じた話し方、相手の理解度にふさわしい情報の取捨選択が求められます。
言語を聴く
誰かと会話するとき、言葉を受けてさらにそれを深掘りしたり、理解が及ばない点を質問したりすると、互いに理解を深められます。
そのため、言語を聴く力もコミュニケーションにとって欠かせない要素です。
単に言葉を聞くだけでなく、内容を分析し、要点を把握することが大切です。
相づちを打ったり、うなずいたりすると、信頼関係の構築に役立ち、関係や信頼をより深められるでしょう。
非言語で伝える
何か相手に情報を伝えたいとき、場合によっては言葉で表しきれないニュアンスを理解してもらいたいときもあるでしょう。
そのような際に、表情や姿勢、ジェスチャー、声のトーンなどの非言語を使って表現しましょう。
例えば、外部に企業の商品をアピールする際には、声の強弱をつけ、姿勢を正し、堂々とした態度でスピーチすれば「信頼できる企業だ」と思ってもらいやすくなるでしょう。
非言語から理解する
業務のなかで接する相手が、必ずしも自分の意思をはっきり伝えてくれるとは限りません。
そのため、視線や動作などから相手の感情を読み取る能力は、ビジネスパーソンにとって必要です。
例えば説明している際に相手が不安そうな相づちを打っていれば、やさしい言葉を用いて説明し直すと、理解を促進できるでしょう。
グローバル化が進む現代では、文化的な違いによる非言語表現の差異にも注意を払う必要があります。
コミュニケーション能力が高い人の特徴とは
元々持っているスキルもありますが、コミュニケーション能力は意識して高められるものです。
ここからはコミュニケーション能力が高い人の特徴を紹介します。
傾聴の姿勢がある
コミュニケーション能力の高い人は、相手から本音やさらなる情報を引き出すことが得意です。
単に話を聞くのではなく、アイコンタクトやうなずきを使い、相手の話の意図や感情を理解しようとする傾聴の姿勢があります。
相手の話をさえぎらず、質問のタイミングを適切に判断して相手の考えを深く聞くことで、信頼関係を深めるのです。
相手に関心がある
自分に興味を持ってくれていると思うと、人は相手のことを好意的に思うものです。
コミュニケーション能力が高い人は、もともと相手に興味を持ちやすい性格であったり、礼儀として相手の情報や好みなどを事前にリサーチしていたりします。
そうした誠実な姿勢が相手に伝わり、深い付き合いができるようになるのです。
感情をコントロールできる
人はそれぞれ異なる価値観を持っています。
そのため、ときには相手の発言によってストレスを感じたり、対立する気持ちが生まれたりするでしょう。
コミュニケーション能力の高い人は、そのようなときにも感情をコントロールし、冷静さを保って建設的な対話ができるのが特徴です。
余計な対立を生むようなことはせず、ビジネスの場でも落ち着いて折衷案を提示すると、関係を良好に保てるでしょう。
相手に伝わることが大切だと理解している
何か伝えたい内容があり、言葉にしたとしても、それが相手に伝わっているかは別問題です。
コミュニケーション能力の高い人は、「相手に伝わらなければ意味がない」ということをよく理解しています。
そのため、相手がわかっていなさそうであれば伝わるまで何度も説明したり、伝わる言葉で言い換えたりするなど、理解をうながそうとする姿勢があります。
コミュニケーション能力が低い原因や理由
コミュニケーションが苦手と考えている方は、コミュニケーション能力が低いのはなぜかということを知り、改善するとよいでしょう。
ここからは、コミュニケーション能力が低い原因や理由を紹介します。
否定から入る
人は誰しも、自分の言った内容を否定されると嫌な気分になるものです。
コミュニケーション能力が上がらないひとつの理由に、否定から入ることが挙げられます。
否定された相手は防御反応が刺激された結果、会話する意欲が削がれてしまいます。
組織においてはチームワークを損ない、組織の成長を妨げる原因となってしまうでしょう。
要点をまとめずに話す
要点がわからない話を長々とされた場合、聴く側はストレスを感じるようになり、今後その人との会話を避けるようになってしまうでしょう。
コミュニケーション能力が低い原因として、話が飛んだり伝わりづらい順番で話したりしていることで、相手が要点を理解しづらくなってしまっていることが挙げられます。
相手に必要な指示や自分の考えが伝わらないことで、信頼関係を構築できなくなってしまうでしょう。
相手に興味・関心がない
自分に興味を持ってくれているとわかる相手とは、会話をするモチベーションが上がります。
一方で、相手が自分に興味がないとわかると、必要以上に自分に関して話すのは躊躇してしまうものです。
コミュニケーション能力の低い人は相手に関心がないため、深く相手を知ろうとせず、ビジネス的な会話のみをします。
そのため、会話が弾む機会を逃しているのです。
相手の立場を理解しようとしない
昨今は組織のなかで人材の多様化が進んでおり、あらゆる価値観の人が同じチームに属するようになりました。
仮に、相手の立場を理解せずに自分の利益のみを通そうとする姿勢があると、相手に煙たく思われ、チームの雰囲気を乱す原因となってしまいます。
すると、建設的な対話や問題解決が困難になり、関係を築けなくなってしまうでしょう。
コミュニケーションがうまくいく3つのポイント
1.受け手の言葉を使うこと
ソクラテスは「大工と話すときは、大工の言葉を使え」と説いた。コミュニケーションは、受け手の言葉を使わなければ成立しない。受け手の経験にもとづいた言葉を使わなければならない。(『ドラッカー名言集 仕事の哲学』より)[3]
ここでの「受け手の言葉」が示すものとは、何でしょうか。
たとえ同じ言葉であったとしても、自分と相手とで前提が異なることがあります。
例えば、「適当」という言葉について考えると、本来の意味は、ほどよく当てはまっているということです。
しかし、それがいつしか、適当にするということが、手を抜いたやり方で処理して構わないという意味に受け取られるようになってしまいました。
受け手としては、「適当」という言葉を理解する際に、それがどんな意味で使われているのかを知るために、周囲の状況を観察します。
さらに、蓄積された経験から共通点を見つけ出して、一般化させ、それを言葉の意味として理解します。
そのため、スピードが重視される現代のビジネスの現場においては、適当という言葉が、省略できるものは、とにかく省略してしまうという理解に変わってしまったと考えられます。
同じ言葉であったとしても、その背後にある経験によって意味が変わってしまうというのが、おわかりいただけるのではないでしょうか。
ドラッカーの言葉の「受け手の経験にもとづいた言葉を使わなければならない。」というのは、そういう意味であると考えられます。
2.受け手が何を期待しているのかを知ること
受け手が期待しているものを知ることなく、コミュニケーションを行うことはできない。期待を知って、初めてその期待を利用できる。(『ドラッカー名言集 仕事の哲学』より)[4]
どんなニーズを持っているのかは、人によって異なります。
例えば、歯磨き粉の場合、虫歯を予防したいというニーズを持った人もいれば、一方で歯を美しく白くしたいというニーズを持った人がいます。
前者は、問題回避型と呼ばれ、解決するべき問題や回避するべきことがあると、やる気が高まるとされています。
また、後者は目的志向型と呼ばれ、所有したり、取得したり、達成したり、到達することで、やる気が高まるとされています。[5]
もし、問題回避型の人に、ホワイトニングの効果が高い歯磨き粉を売ろうとしたり、目的志向型の人に、虫歯予防の効果が高い歯磨き粉を売ろうとしても、ニーズと合わないため、うまくいきません。
相手のタイプに応じて言葉を使い分けることで、相手からの反応を引き出すことができるようになります。
3.受け手の気持ちに合わせること
コミュニケーションは、受け手に何かを要求する。受け手が何かになること、何かをすること、何かを信じることを要求する。何かをしたいという受け手の気持ちに訴える。コミュニケーションは、受け手の価値観、欲求、目的に合致するとき強力となる。合致しないとき、まったく受けつけられないか、抵抗される。(『ドラッカー名言集 仕事の哲学』より)[6]
具体的なデータを示し、メリットを強調すれば、相手は動いてくれるかというと、必ずしもそうとは限りません。
ドラッカーも言うように、受け手の価値観、欲求、目的に合致することが必要になってきます。
「人間は論理的思考ではなく、感情で動いている」とは、2017年にノーベル経済学賞を受賞した、米シカゴ大学のリチャード・セイラー教授の言葉です。[7]
相手の欲望や感情を無視して、理屈ばかりを押し通すということはできません。
理屈や一般論で相手を説得しようとするのではなく、相手の気持ちをうまくくみ取ったコミュニケーションの方法が求められます。
仕事におけるコミュニケーション能力を向上させるポイント
コミュニケーションに苦手意識がある場合は、意識して行動を変えることで少しずつコミュニケーション能力の向上が期待できます。
ここからは、コミュニケーション能力を向上させるためのポイントを紹介します。
効果的な伝え方を意識する
同じ内容を伝えるにも、伝わりやすい方法、伝わりづらい方法はあるものです。
そのため、相手が理解しやすい伝え方で伝えることが、コミュニケーション能力を上げるポイントとなります。
例えば5W1Hを意識して伝えたり、結論と理由をセットで先に伝えたりするという方法があります。
すると自分が何を言いたいのかを相手にスムーズに伝えられるため、コミュニケーションが促進されるでしょう。
比喩表現や例えを使う
人はときに、自分が頭で想像していることを当然相手も想像できているだろうという考えで話すため、言葉足らずになってしまうときがあります。
そのような事態を避けるため、相手が話をスムーズに想像できるように比喩表現や例えを使うとよいでしょう。
例えば「〇〇のような〜」と話の対象を別の物事に置き換えたり、主張のあとに具体例を挙げたりするとわかりやすいでしょう。
こうすることで話に挙がっている事柄や具体的なイメージを相手に想像してもらいやすくなるため、理解を促進して話を進められます。
相手の話をしっかりと聴く
会話する相手が、必ずしも自分の気持ちや状況を言語化する能力に長けているとは限りません。
そのため、まずは否定せずに相手の話をしっかりと聴き、気持ちをくみ取ったり共感したりするとよいでしょう。
相づちや、うなずきがあると「きちんと聞いています」ということが伝わります。
そのような姿勢でいると相手から本音で話をしてもらいやすくなり、問題解決や意向の把握がスムーズに進むでしょう。
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まとめ
従業員のコミュニケーション能力が向上すると、社内のチームワークが上がったり取引先との交渉がうまくいったりして売り上げが上がると期待できます。
コミュニケーションに対して苦手意識のある従業員もいるかもしれませんが、能力を向上させるポイントを押さえて、企業活動の活性化をうながしましょう。
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参照
[1]出所「ドラッカー名言集 仕事の哲学」P.F.ドラッカー ダイヤモンド社 P127
[2]出所「最新科学で解き明かす最強の記憶術」洋泉社MOOK P60
[3]出所「ドラッカー名言集 仕事の哲学」P.F.ドラッカー ダイヤモンド社 P128
[4]出所「ドラッカー名言集 仕事の哲学」P.F.ドラッカー ダイヤモンド社 P129
[5]出所「「影響言語」で人を動かす」シェリー・ローズ・シャーベイ 実務教育出版 P80~81
[6]出所「ドラッカー名言集 仕事の哲学」P.F.ドラッカー ダイヤモンド社 P130
[7]出所「マーケティングの本質 「心理」に関する「真理」」ADEX SYNRI ラボ 日本経済新聞出版社 P15