ブレインストーミングでアイデアを出したものの、上手くまとめることができず、アクションに移すことができないまま困っていませんか?
せっかく素晴らしいアイデアを生み出せても、それが企業活動に生かされないのであれば、意味がありません。
そこでKJ法の出番です。KJ法であれば、膨大な量のアイデアを収束させ、企業活動に活用しやすい形に変換することができます。
本記事では、ビジネスマンのためのKJ法について解説していきます。ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
KJ法とは?【アイデアを効率的に整理できる手法】
KJ法は、文化人類学者の川喜田二郎氏が考案したメソッドです。
関連性のあるアイデアをグルーピングすることで、解決方法やアイデアを作り出します。
人間の生活様式全体を研究する文化人類学は、フィールドワークから得られた膨大な情報を整理する必要があります。
その際に川喜田二郎氏が発案した整理方法がKJ法であり、1967年に著書『発想法』で紹介されました。
現在はフィールドワークだけでなく、企業研修、学校教育、ビジネスシーンなどで用いられるようになっています。
ブレインストーミングに活用できる!
KJ法は、アイデアを次々と抽出するブレインストーミングとの相性が抜群だと言えます。
ブレインストーミングは、1950年ごろにアメリカで誕生した会議方式です。
複数人が自由な発想で次々にアイデアを出していくので、さまざまな観点から、たくさんのアイデアを集めることができます。
ブレインストーミングの4原則
ブレインストーミングで効果的にアイデアを出していくために、以下の4つの原則を守る必要があります。
- アイデアを批判せず、判断・結論を出さない
- 思いついたことを自由に発言する
- 質より量を重視する
- アイデアを組み合わせる
ブレインストーミングでアイデアを次々と出すには、ポジティブな雰囲気を作ることが必要です。
そのためには、批判を禁止して、かつ判断・結論などの「正解」を求めないようにします。
そうすることで、参加者は正解・不正解に囚われず、自由に発言できるようになります。
また、それに伴い、アイデアはとにかく量を重視します。様々な角度から多くのアイデアを出すのが一般的です。
実際に文化人類学でも、社会学、生物学、言語学など、実に様々な視点で物事を見る必要があります。
そして、たくさんのアイデアを出した後は、それらを組み合わせることで、また新しいアイデアや視点を作り出します。
予想外の組み合わせが思っていた以上に実用的だったりするのが、ブレインストーミングのおもしろいところです。
ただ、ブレインストーミングは情報量が非常に大きくなり、整理が大変という面があります。
そこでKJ法の出番です。KJ法であれば、ブレインストーミングで誕生した膨大な量のアイデアを簡単に整理することができるのです。
KJ法の実施手順【4STEP】
KJ法の実施手順は以下の通りです。
- アイデアを書き出す
- アイデアをグルーピングする
- 関係性を視覚化する
- アイデアを文章に落とし込む
それぞれ詳しく解説していきます。
手順①:アイデアを書き出す
まず、KJ法を実施する前にブレインストーミングを実施して、あらかじめ大量の情報・アイデアを収集しておきます。
そして、それらの情報を、まずはカードや付箋などの紙媒体に書き出していきます。
ここでのポイントは、原則1枚あたり1つのアイデアを記載することです。
こうすることで、少数意見を反映させやすくなります。
手順②:アイデアをグルーピングする
次に、大量のアイデアをグルーピングしていきます。
まずは無造作にカードを並べて、内容が似ているカードを集めて小さなグループを作っていきます。
そのあと、小グループの中で共通している内容を、小グループの見出しとして記載します。
小グループを作り終えたあとは、再び小グループを観察して、親近性のある複数の小グループを大グループとしてまとめていきます。
この作業を繰り返して、数個の大グループが出来上がったらグルーピングは終了です。
手順③:関係性を視覚化する
グルーピングのあとは、それぞれのグループの関係性を視覚化していきます。
まずは、親近性のあるグループ同士を近づけるように配置します。
それから、カード同士を線で繋げたり囲んだりして、関係性(近似、相関、対立、原因など)を視覚化していきます。
手順④:アイデアを文章に落とし込む
最後に、KJ法で図解化した関係性を文章に落とし込みます。
二次元的に展開されたアイデアを、一次元的な文章に変換することで、図解の間違いに気付けたり、新しい発想が得られたりする可能性があります。
また、図解化した関係性を文章に落とし込んだ後は、その中で優先順位をつけていきます。
最も優先順位の高いアイデアを、企業活動に活用してもいいでしょう。
KJ法の3つのメリット
KJ法のメリットは以下の3つです。
- アイデアを言語化できる
- 論理的にアイデアを整理できる
- 少数意見を反映させやすい
それぞれ詳しく解説していきます。
メリット①:アイデアを言語化できる
KJ法のメリットとしてまず挙げられるのが、アイデアを言語化できることです。
KJ法では、頭の中にある考えやアイデアを紙に書き出す必要があるので、その過程で必然的に言語化されます。
頭の中にあった抽象的なアイデアも、文章という形で言語化してしまえば、それだけでかなり具体的なものになります。
目に見えないもの(アイデア)が、目に見えるもの(文章)になったのです。
そうすると、参加メンバーがそのアイデアを見て、また新しいアイデアを思いつくことがあるかもしれません。
このようにKJ法は、連鎖的にアイデアを生み出せるのも魅力です。
メリット②:論理的にアイデアを整理できる
論理的にアイデアを整理できるのも、KJ法のメリットです。
KJ法のフレームワーク自体が極めて論理的なので、KJ法を実施するにつれて、アイデアを論理的に整理できるようになります。
ブレインストーミングは、自由にアイデアを列挙できるのが魅力である一方で、発想が飛躍しすぎて本題からズレる可能性があったのがデメリットでした。
しかし、そこでKJ法を組み合わせれば、本題からズレすぎない範囲で、アイデアを出すことが可能になります。
KJ法は、論理的にアイデアを整理できるので、一定の「答え」を出す必要のあるビジネスシーンで活用しやすいと言えます。
メリット③:少数意見を反映させやすい
KJ法は、少数意見を反映させやすいのがメリットです。
一般的に、会議やグループワークにおいては、少数意見が多数意見に押さえ込まれてしまうケースがほとんどでした。
多数決は、間違ったことを正解にできる数少ない方法です。多数意見だからといって、それが本当に正解だとは限りません。
少数意見の方に、本質的なアイデアが眠っていることも珍しくないでしょう。
そのため、何事も多数意見で決定するのは問題だと言えます。
KJ法は、共感の少ない少数意見に対しても、ほかの意見と同じく「1枚のカード」として取り扱われます。
そのため、会議が進んでいっても、その少数意見がヒントをもたらしてくれる可能性が十分に出てくるのです。
KJ法の3つのデメリット
KJ法のデメリットは以下の3つです。
- 多くの工数が発生する
- アイデアが参加者に依存する
- カテゴリー分けで創造性が失われる可能性がある
それぞれ詳しく解説していきます。
デメリット①:多くの工数が発生する
KJ法は、多くの工数が発生してしまうのがデメリットです。
作業自体はとてもシンプルであるものの、その作業をこなすために、多くの参加者を集めたり、カードや付箋などの備品の準備にも手間が発生します。
また、実際にKJ法を実施するにしても、アイデアをどんどん出していったり、グルーピングしたりする時間もかなりのもので、半日以上に及ぶ可能性があります。
KJ法を実施する際は、はたして本当に投資対効果が得られるのかを、しっかり算出する必要があるでしょう。
デメリット②:アイデアが参加者に依存する
KJ法で抽出されるアイデアは、参加者の特性に大きく依存します。
結局のところ、参加者によってアイデアの質が変動するので、これもKJ法のデメリットだと言えます。
また、ブレインストーミングの4原則で「思いついたことを自由に発言する」「アイデアを批判しない」と言っても、場の雰囲気を読んでなかなか発言しないメンバーも必ず出てきます。
特に日本人は、空気を読む国民性で有名です。
上下関係によっては、上司の顔を立てるために、部下がなかなか意見を出さないケースも見受けられます。
このような状況を防ぐためには、参加者の力関係をあらかじめ調整しておくことが必要です。
Web会議を活用するのであれば、顔出しなし・匿名・ボイスチェンジャーなどを用いてみるのもおもしろいかもしれません。
デメリット③:カテゴリー分けで創造性が失われる可能性がある
KJ法のデメリットとして「カテゴリー分けで創造性が失われる可能性があること」が挙げられます。
KJ法は、アイデアを大量に抽出した後に、それぞれのカテゴリーでグルーピングします。
しかし、そこで安易にグルーピングしてしまうことで、アイデアの可能性が限定される可能性があります。
おもしろいマンガや映画は、ジャンルがよくわからなかったりするものです。
ラブコメだったりするし、SFだったりします。
同じようにビジネスも、小売業に見せかけて実態はメディア業だったり、飲食業に見えて実態は不動産業だったりします。
KJ法で強引にカテゴリー分けすると、創造性が失われる可能性があります。
「その他」にカテゴライズされるアイデアに、ポテンシャルが眠っているのです。
KJ法を成功に導く3つのコツ
KJ法のデメリットを小さくし、メリットをできるだけ大きくし、成功に導くコツは以下の3つです。
- 全員で合意形成しながら進める
- アイデアを無理にグルーピングしない
- 組み合わせを強く意識する
それぞれ詳しく解説していきます。
コツ①:全員で合意形成しながら進める
KJ法を成功に導くコツとして、まず挙げられるのが「合意形成」です。
KJ法は、自由に意見を出すことができる会議手法である一方で、特定の参加者の意見だけで議論が進められて、偏りが生じるリスクもあります。
このような事態を防ぐために「グルーピング」や「関係性の視覚化」などのフェイズでは、全員で合意形成しながら進めていくのがいいでしょう。
また、中立的な立場のファシリテーターを設置するのも良いでしょう。
ファシリテーターを設置すれば、参加者の意見のバランスを調整することも可能になります。
コツ②:アイデアを無理にグルーピングしない
アイデアを無理にグルーピングしないことも、KJ法を成功に導くコツの1つです。
実際にユニークなアイデアを出し続けていると、どのグループにも当てはまらないアイデアが残ることがあります。
いわゆる「その他」です。
この「その他」に該当するアイデアを、無理矢理にグルーピングしてしまうと、斬新さが失われる可能性があります。
「その他」に属するようなよくわからないアイデアにこそ、大きなヒントが眠っているとも言えます。
グルーピングが難しいアイデアについては、独立させて残しておくのがいいでしょう。
コツ③:組み合わせを強く意識する
KJ法を成功に導くコツとして、組み合わせを強く意識することが挙げられます。
人類が誕生してから約20万年経過している現代社会では、既にありとあらゆるアイデアが出尽くされました。
本当の意味で「ゼロからアイデアを作る」というのは、事実上不可能に近いです。
一方で、無限大にある情報を組み合わせてアイデアを作る点では、まだまだポテンシャルがあるように思えます。
KJ法は、アイデアを組み合わせるのに長けた発想法です。
ポイントは、一見すると距離の遠そうなアイデアを組み合わせること。
全く関係のなさそうな組み合わせから、斬新で奇妙なアイデアは生まれるものです。
アイデアを作り出すときは、「組み合わせ」を強く意識しましょう。
まとめ
それでは本記事をまとめていきます。
- KJ法は関連性のあるアイデアをグルーピングすることで、解決方法やアイデアを作り出すメソッドのこと
- KJ法はブレインストーミングと相性がいい
- KJ法は少数意見を反映させやすいのがメリット
KJ法とブレインストーミングの組み合わせは、画期的なアイデアを生み出すのに向いています。
新規事業立案や製品開発などで集中的に実施するのがいいでしょう。
また、KJ法を実施する際は、ファシリテーターを設置しておくのが良さそうです。
抜かりなく準備してから実施するのがいいでしょう。