テクノロジーの変化や市場の複雑化により、先を読むことが難しい時代に突入しています。
そのため、組織でアイデアを創出していくことは急務であり、意識的にその機会をつくる必要があるといえるでしょう。
この記事では、チームビルディングのひとつの手法として注目されている「ワールドカフェ」を紹介します。
企業に取り入れて、チームワークを高めましょう。
目次
ワールドカフェとは対話コミュニケーションの手法のこと
ワールドカフェとは、「対話」を中心としたチームビルディングの手法で、1995年にアメリカのアニータ・ブラウン氏とデイビッド・アイザックス氏によって開発・提唱されました。
議論や会議とは異なり、発した言葉に関して「考え方・感情」を共有し合うのが特徴です。
地位や年齢にかかわらずフラットに意見を言い合い、言葉の定義を浮き彫りにしたり、価値観を伝えたりできます。
参加者は16人以上いるのが望ましいとされており、場合によっては1,000人以上の規模でおこなわれるケースもあります。
ワールドカフェでは4〜5人ずつ1テーブルに集まり、一定の時間でテーブルを移動して繰り返し対話をおこないます。
そのため、少人数で話して意見が凝り固まることがありません。
議論のように結論を出すものではなく、カフェにいるかのようなリラックスした状態で話せるため、参加者全員の知識や意見を集約できる点がメリットです。
多様性の時代で「対話」が注目されており、企業だけでなく市民活動や政治、教育などあらゆる場面で活用されています。
ワールドカフェとワークショップとの違い
ここからは、ワールドカフェとワークショップとの違いを紹介します。
進行役の有無
ワークショップの活動では司会進行役がいるケースがありますが、ワールドカフェには進行役がいません。
会場全体で進行するファシリテーターはいるものの、各グループの司会まではしないのがルールです。
テーブルごとにいるホストは進行ではなく、いままでに出た意見を紹介する役割を担います。
形式
ワークショップは与えられたテーマについて能動的にディスカッションをしたり、体験したりしておこなわれる参加型の研修です。
一方でワールドカフェは、対話に特化している点で異なっています。
意見を出し合って相互に理解し、自分と異なる視点に触れて学びを深めるのがワールドカフェの特徴です。
関連記事:【10選】チームビルディングにおすすめのワークショップを紹介!
ワールドカフェの効果
ここからは、ワールドカフェをおこなうことによる効果を紹介します。
参加者全員の意見を集められる
ワールドカフェでは、一定時間になるとテーブルにいるメンバーをシャッフルします。
少人数ずつで話をするため、発言がしやすく、参加者全員の意見を集められるでしょう。
メンバーをシャッフルすることで、同じテーマに対する別の切り口に触れられます。
そこからアイデアが生まれるといった流れも起こるでしょう。
気持ちに余裕を持って話し合いに参加できる
仮に会議の場合、矛盾点を指摘して危機管理をしたり、ときに意見をぶつけ合ったりする必要があるでしょう。
かたやワールドカフェは、相手の話をじっくり聞いて深掘りする「対話」によって成り立っています。
結論を出すことを目的としていないため、リラックスした雰囲気で互いに話せます。
相互理解につながる
ワールドカフェでは意見を否定せず、傾聴する姿勢が必要です。
そのため、参加者同士で意見の似ている部分を見つけたり、共感を得たりできます。
少人数でおこなうため表面的な会話でなく、より深い話までできる可能性があるでしょう。
そうして、安心感や信頼感を感じられるのが効果のひとつです。
ワールドカフェをおこなう際の準備
ここからは、ワールドカフェをおこなう際に準備するべきことを解説します。
目的やルールを共有する
ワールドカフェは参加者が心理的安全性を保ち、自由に発言できる場です。
開催にあたって参加者に目的を共有し、生産性のある場にしましょう。
目的は、例えば以下のようなことが挙げられます。
- アイデアを創出する
- あらゆる角度からの意見を集める
- チームのメンバーに対して理解を深める
また参加者で認識を統一できるように、以下のようなルールを共有しましょう。
- 全員が自由に発言する
- 話し手の意見を否定しない
- 意見をきちんと聞き、必要なところは深掘りする
ワールドカフェは互いの価値観を理解する場であるため、わからない点があれば質問して理解を深めましょう。
気軽に話せる場であることがワールドカフェの良さですが、それによって単なる雑談になってしまったり、話が脱線してしまったりする可能性があります。
そのような事態にならないよう、テーマを意識して臨む重要性を、最初に共有しましょう。
テーマを決める
ワールドカフェのテーマを決める際にはテーマ選びが重要です。
以下の要素を意識して、テーマを検討しましょう。
- 誰もが意見を持っているテーマであること
- オープンなテーマであること
- ポジティブなテーマであること
全員が発言できるように、シンプルでわかりやすく、当事者意識を持てるテーマであることが大切です。
社内の交流が目的なのであれば、意見を出しやすいテーマを設定するようにします。
賛成・反対などの二択で終わるようなものではなく、自由に意見を言えるように「ダイバーシティをどのようにとらえるか」「なぜテレワークが必要か」などのオープンな問いを考えましょう。
さらには、対話が活発になるようなポジティブなテーマを共有することも大切です。
「なぜ業績が下がっているか」ではなく、「どのようにすれば顧客満足度が上げられるか」といったように、理想の未来に向けた話し合いとなるようにしましょう。
会場を選ぶ
ワールドカフェを選ぶ際には、会場選びも重要です。
テーブルごとに距離が近すぎると、発言をしづらく思ってしまう人もいるため、テーブル配置にゆとりをもたせるようにしましょう。
可能な場所であれば飲み物やお菓子を用意し、よりリラックスできる雰囲気を演出するのもひとつの方法です。
ワールドカフェの進め方
ワールドカフェは以下のような手順でおこないます。
また、それぞれにかける時間は20〜30分程度です。
- テーマについて探求する
- アイデアを交換する
- 気付きや発見を統合する
- 発見したことを共有する
順に紹介します。
1.テーマについて探求する(第一ラウンド)
4〜5人ずつテーブルに座り、問いについて話し合います。
テーブルに模造紙とペンを用意し、ひとつのテーマについて自由に書き留めながら話し合いましょう。
2.アイデアを交換する(第二ラウンド)
各テーブルにホストひとりを残し、他のメンバーは別のテーブルに移動します。
新しいメンバーとなったテーブルで自己紹介をしたあと、ホストが自分のテーブルで出た今までの意見を紹介します。
そして新しくきたメンバーは自分達のテーブルで出た意見を紹介し、アイデアを創出していく流れです。
3.気付きや発見を統合する(第三ラウンド)
他のテーブルに移動していたメンバーが元のテーブルに戻り、移動先で出たアイデアを紹介し、対話を継続します。
新しい考えを思いつくきっかけとなるときがあるため、アイデアが出た「理由」も紹介することが新たなアイデアを生みます。
4.発見したことを共有する(第四ラウンド)
各テーブルのホストが全員にまとめの報告をおこない、アイデアを共有します。
ファシリテーターが進行し、テーブルごとではなく、今度は全体で対話をします。
全体で共有することで、くつろいだ雰囲気のなか、あらゆる意見やアイデアに触れられるでしょう。
なお、ラウンド数を増やし、さらに多様なメンバーと話し合いができるようにすることも可能です。
ワールドカフェを開催した例
ここからは企業と自治体が、ワールドカフェを開催した例を紹介します。
企業での開催例|株式会社日立システムズ
日立システムズでは「日立システムズWayワールド・カフェ」と名付け、企業理念と行動指針を従業員に定着させるために、ワールドカフェを実施しています。
具体的には講義後にワールドカフェをおこない、個人ワークにて今後の行動を宣言するという流れです。
テーマは以下のような内容があります。
- 仕事をするうえで大切にしていること
- 真に豊かな社会とは
- 豊かな社会を実現するために自分ができること
コミュニケーションの大切さを知るとともに、課長・部長クラスまで参加するため、横のつながりができた好事例です。
自治体での開催例|横浜市
ワールドカフェは市民が街について語り合う場としても、活用されています。
横浜市では2009年5月に総勢約500人が参加するという、国内最大級となるワールドカフェが開催されました。
テーマになったのは以下の3つです。
- 『ヨコハマ』の何がわたしたちをひきつけるのでしょうか?
- 50年後、大空からヨコハマを見ると、どんな人がどんな表情で、何をしていますか?
- 未来のヨコハマは、わたしたちに、どんな一歩を踏み出して欲しいと思っているのでしょうか?
キックオフの回では、ワールドカフェのあとに会場の中心に議論をするテーブルを置き、参加者全員が囲む形式でのディスカッションもおこなわれました。
参考:ワールドカフェ|横浜市
ワールドカフェを進める際のポイント
ここからは、ワールドカフェを進める際のポイントを3つ紹介します。
人数はテーブルごとに4〜5人を守る
人数が多い場となると、人によっては意見を言いづらくなってしまったり、ひとりあたりの話す時間が少なくなってしまったりします。
そのため人数を増やさず、1テーブル当たり4〜5人を守るようにしましょう。
ある程度の話せるボリュームを確保できれば、自分の話を聞いてくれているという心理的安全性を確保できます。
すると自分の意見をより言いやすくなり、自分の心に閉まっていたアイデアを出しやすくなります。
結論を出そうとしない
意見をまとめなければと思うと、焦ってしまい意見を広く聞けなかったり、異なる意見が出た際に深掘りする姿勢を持てなかったりする可能性があります。
そのような事態を避けるため、ワールドカフェではテーマに対して結論を出そうとしないようにしましょう。
意見をまとめようと意識しなければ、個々の考えを否定せずに耳を傾けられます。
その結果、アイデアが広がったりお互いを深く理解したりすることにつながります。
トーキングオブジェクトを用意する
企業には話すのが得意な人、そうでない人が混在しています。
ワールドカフェを開くと話すことを得意とする人が、長い間話しをしてしまうときがあるでしょう。
相互理解する場であるため、トーキングオブジェクトを用意して話す時間が均等になるようにしましょう。
トーキングオブジェクトとは、話をする人が手に持つアイテムで、ぬいぐるみや棒、ボールなどがあります。
話し終わった人が都度テーブルの中央にオブジェクトを戻し、発言したい人がそれを持ち発言します。
たとえばホストが発言が少ない人に手渡すと、会話に入るタイミングをつかめない人にも、意識的に発言の機会を与えられるでしょう。
ワールドカフェでチームワークを上げよう
ワールドカフェをおこなうと、心理的安全性を確保しながら対話ができます。
相互理解につながりやすく、ひとりでは浮かばなかったような新たなアイデアや意見に出会えるでしょう。
競争が激しく正解が見つからないことも多い時代を生き残れるように、くつろいだ雰囲気でアイデアを出し合い、結束が固い組織を目指しましょう。