日本の生産性低下が叫ばれる昨今では、従業員に対して高い効率性が求められます。
高い効率性とは、言ってしまえば「最短ルートで結果を出すこと」です。
そのためには、結果から逆算して本質的な要因を見つけ出すことができる論理的思考(ロジカルシンキング)が必要不可欠になります。
本記事では、論理的思考力を身につけたいビジネスマンや、部下のパフォーマンスを高めたいマネージャーの方々のために、論理的思考について徹底解説していきます。
ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
論理的思考(ロジカルシンキング)とは?【筋道を成り立たせる】
論理的思考は、因果関係を正しく理解し、問題の原因を分析することで、筋道の通った解決策を導き出す思考法のことです。
「因果関係を正しく理解する」というのは、目の前の現象がどのような原因・結果で生じているのか、そのメカニズムを把握するということです。
例えば、売上が下がってしまった際、「製品開発の失敗」「競合の新たな戦略」「市場環境の変化」のいずれか、あるいはこれら全てが原因である可能性があります。
論理的思考は、これらの要素がどのように関係して結果とつながっているのかを理解し、事象を因果の視点から見つめ直す際に用いられます。
また「問題の理由を分析すること」は、現象や問題の背後にある原因を洞察することを指します。
「筋道の通った解決策を導き出す」については、その原因を解決するための計画を立てる力を意味します。
まとめると、ロジカルシンキングは情報を整理し、関連性を見つけ出して、結論を導くための一連のプロセスです。
これらの論理的な思考は、組織内のコミュニケーションを明確にし、組織全体の生産性や効率性を高める重要な役割を果たします。
ロジカルシンキングがもたらす3つのメリット
ロジカルシンキングがもたらすメリットは以下の3つです。
- 問題解決能力が高まる
- 分析力が高まる
- プレゼンの説得力が増す
それぞれ詳しく解説していきます。
メリット①:問題解決能力が高まる
ロジカルシンキングは、問題を解決する際、より客観的で正確な視点を提供します。
人々は、目の前の問題の背景やメカニズムを正しく理解せず、しばしば的外れな対応をしてしまうものです。
しかしロジカルシンキングができれば、問題の背後にある因果を正しく理解できるので、適切な問題解決に繋がります。
ロジカルシンキングは、本質的なファクター(要因)を見つけ出すのに効果的な思考法です。
そして、原因と結果のメカニズムを正しく理解しているからこそ、効果的な解決策を導き出すことが可能となります。
メリット②:分析力が高まる
ロジカルシンキングを習慣づけることで、分析力向上が期待できます。
現代は、情報化社会が非常に複雑化しているため、本質的な情報を見つけ出す能力が必要です。
その際に重要になるのが、ロジカルシンキングに基づいた分析です。
ロジカルシンキングであれば、複雑化した情報をシンプルに整理できるので、本質的なファクターを見つけ出せるようになります。
「真実は、いつもひとつ!」という有名なフレーズがありますが、あまりにも複雑化している現代社会では、国や組織によって、自分たちが信じている「真実」が異なります。
つまり情報化社会において「残念ながら真実はふたつある」ということを押さえなければなりません。
このような社会で、本質的な情報を見つけ出すには、ロジカルシンキングに基づいた高い分析力が必要です。
メリット③:プレゼンの説得力が増す
ロジカルシンキングを身につけることで、プレゼンの説得力が増す可能性があります。
ロジカルシンキングを用いて、客観的な視点で自分の考えを述べられるようになれば、それだけ説得力が増すからです。
例えば、クライアントに対して自社商品をプレゼンするとします。
その際、どれだけ「この商品は素晴らしい!」と熱く伝えたところで、実際にクライアントに対してどのような利益をもたらすのかを説明できなければ、意味がありません。
ロジカルシンキングを用いることができれば、客観的な指標を組み立てながら、わかりやすくクライアントにプレゼンすることができるようになります。
そのためロジカルシンキングは、経営者やマーケティング職だけでなく、営業職でも大いに活用できる思考法だと言えます。
ロジカルシンキングの代表的な3つの手法
ロジカルシンキングの代表的な手法は以下の3つです。
- 演繹法
- 帰納法
- 弁証法
それぞれ詳しく解説していきます。
手法①:演繹法
演繹法(えんえきほう)は、既に知られている情報や法則を組み合わせることで、結論を出す考え方のことです。
古代ギリシアのアリストテレスが体系化させた思考法であり、別名「三段論法」と呼ばれています。
- すべての人は死ぬ(大前提)
- ソクラテスは人(小前提)
- ソクラテスは死ぬ(結果)
このように「大前提→小前提→結果」というように思考していくのが演繹法です。
手法②:帰納法
帰納法(きのうほう)は、複数の事実や事例から導き出される共通点を集めることで、一般的な規則を見出す思考法のことを指します。
演繹法との違いとして、結論の導き方が逆であることが挙げられます。
- 人であるソクラテスが死んだ
- 人であるプラトンが死んだ
- 人であるアリストテレスが死んだ
- したがって全ての人は死ぬ
演繹法では「すべての人は死ぬ」という一般的な大前提から「ソクラテスは死ぬ」という結論を出しました。
一方の帰納法では、人であるソクラテスやプラトンが死んだから「全ての人は死ぬのだろう」という結論(一般論)を導き出しているのです。
そのため、帰納法によって導かれる結論は、事実ではない可能性も内包しています。
もしかしたら、不老不死の人間が実在するかもしれないからです。
一般的に帰納法は、複数の事実から何かしらの要因を「推測」するのに向いている思考法だと言えます。
手法③:弁証法
弁証法は、対立もしくは矛盾する2つの命題を組み合わせることで、より良い結論へと導く思考法のことを指します。
- 人々は手軽に美味しい食事を楽しみたい
- 人々はファストフードが身体に悪いことを理解している
- 身体にいい料理を手軽に提供できる飲食店を作るべきだ
このように弁証法は、2つの矛盾する命題を組み合わせることで、人々のニーズを満たすビジネスアイデアを創造できるのが特徴です。
ロジカルシンキングの代表的な3つのフレームワーク
ロジカルシンキングの代表的なフレームワークは以下の3つです。
- ロジックツリー
- マトリクス
- ピラミッドストラクチャー
それぞれのフレームワークを詳しく解説していきます。
①:ロジックツリー
ロジックツリーは、問題をツリー構造で分解し、原因や解決策を導き出すフレームワークです。
ロジックツリーを活用すると、問題の深掘りを徹底的に行うことで、原因を特定できます。
具体例としては以下が挙げられます。
- Whyツリー(原因究明)
- Howツリー(問題解決)
- KPIツリー(KGI達成のためのアクションの分解)
一方でロジックツリーは、そもそもの定義ができていないとツリー構造そのものが崩れてしまうため、注意が必要です。
②:マトリクス
マトリクスは、情報を整理するために使用されるフレームワークであり、横と縦の軸で簡潔に情報を整理できます。
マトリクスは、一般的に2×2の枠で作成されることが多く、物事の傾向を見極めるのに有用です。
最も有名な事例としては、タスクの優先順位づけで用いられる「緊急度と重要度のマトリクス」が挙げられます。
ほかにもビジネスにおいては、市場調査などにも頻繁に用いられるフレームワークなので、しっかり使いこなしておきたいところです。
③:ピラミッドストラクチャー
ピラミッドストラクチャーは、結論と根拠をピラミッド形式で図式するフレームワークです。
ピラミッドストラクチャーは、結論が正しいことを論理的に説明できるメリットがあります。
一見するとロジックツリーに似ていますが、ロジックツリーはあくまでも「問題解決」にフォーカスしたフレームワークです。
一方のピラミッドストラクチャーは、話の流れを論理的にすることが目的となっています。
したがってピラミッドストラクチャーは、プレゼンなどの場において有用なフレームワークです。
ロジカルシンキングの鍛え方5選
ロジカルシンキングの鍛え方は以下の5つです。
- ディベートを実施する
- フェルミ推定を解く
- 具体的な表現を用いる
- 結論から話す
- 言語化の癖をつける
それぞれ詳しく解説していきます。
鍛え方①:ディベートを実施する
ロジカルシンキングを鍛える方法として、ディベートが挙げられます。
ディベートは、ある公的な主題について異なる立場に分かれて議論することを指します。
主題の具体例としては「死刑制度を廃止すべきか」や「ライドシェアを推進すべきか」などがあります。
ディベートで重要なのは、相手を討論で打ち負かすことではありません。
論理的な説得を用いる点が最も重要です。
ディベートを実施することで、プレゼン能力向上に特化した論理的思考を身につけられるようになるでしょう。
鍛え方②:フェルミ推定を解く
フェルミ推定とは、計算が難しい問題を論理的な推理を用いて、短時間で解くことを目的にしています。
フェルミ推定は具体例を見るとわかりやすいので、以下の例を考えてみましょう。
<例題>
2,000個のくじ引きの中に入っている当たりの数を考える。
<回答>
2,000個あるくじ引きの中にあるあたりの個数を全て調べるのは大変ですが、まずは500個引いてみて、その中のあたりの数を調べます。
仮にそのうち100個の当たりが出た場合は「全体ではその4倍の、おおよそ400個が当たりである」と考えます。
インターネット上にもさまざまなフェルミ推定の問題があるため、興味がある人は一度調べてみることをおすすめします。
鍛え方③:具体的な表現を用いる
ロジカルシンキングを鍛える方法として、具体的な表現を用いることが挙げられます。
例えば、パチンコ市場の大きさについて説明するとします。
『レジャー白書2023』によると、日本のパチンコ市場は14兆円6,000億円とのことです。
しかし説明がこれだけだと、あまりにも数字が大きすぎて、具体的なイメージがつきません。
そこで、世界のカジノ市場の大きさを付け加えて説明します。
世界的な市場規模調査会社・QYResearchの調査によると、2022年のグローバルカジノ市場は約1,304億ドル(約15.5兆円)です。
このデータを引用すれば、いかに日本のパチンコ市場が大きいかを、かなり具体的に説明できると思われます。
このようにして、可能な限り具体的な表現を用いるには、論理的な思考が必要になってきます。
パッとしない事柄や数字を説明したいのであれば「比較」を用いるのがいいと思います。
鍛え方④:結論から話す
ロジカルシンキングを鍛える方法として、結論から話すことが挙げられます。
結論を話してから理由を解説することで、物事を順序よく説明できるためです。
例えば、本記事の執筆では「PREP法」という文章構成術を用いています。
- Point(結論)
- Reason(理由)
- Example(具体例)
- Point(結論)
PREP法を用いて書く・話すことで、自分が伝えたいことを、相手にわかりやすく簡潔に伝えることができるようになります。
鍛え方⑤:言語化の癖をつける
思考を言語化する癖をつけることも、ロジカルシンキングを鍛える方法として有効だと考えられます。
複雑な物事を相手にわかりやすく伝えるには、物事を深く理解する必要があるためです。
また、文章でも会話でも、相手にわかりやすく伝えるには、常に順序を意識する必要があります。
思考を言語化する癖をつければ、頭の中でごちゃごちゃに理解していた物事を、絡まった紐をほぐすような感覚で、整理できるようになるでしょう。
まとめ
それでは本記事をまとめていきます。
- 論理的思考は、因果関係を正しく理解し、問題の原因を分析することで、筋道の通った解決策を導き出す思考法のこと
- ロジカルシンキングを身につけることで、問題解決能力向上やプレゼンの説得力向上に繋がる可能性がある
- ロジカルシンキングを鍛える方法としてディベートや、言語化の癖を身につけることなどが挙げられる
ロジカルシンキングは、すべてのビジネスマンに必須のツールだと言えます。
また、情報が複雑になっている現代社会で、正しい情報や本質的な要因を見つけ出すためにも、ロジカルシンキングは必要です。
普段から論理的に考える癖を身につけましょう。