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KPIツリーとは?定義や職種別の活用方法を徹底解説

KPIツリーとは

中長期的な組織目標を達成するためには、「KPIツリー」を使って戦略や構想を考える方法がおすすめです。

今回は、KPIツリーの定義や職種別の活用方法を詳しく解説します。

【この記事の要約】

  • KPIツリーは組織の目標達成を視覚化し、戦略的な管理を可能にするフレームワークのこと
  • 従来のKPI管理とは違い、KPIツリーは全体的な戦略に焦点を当てるのが特徴
  • KPIツリーの活用方法を業種別で紹介。それぞれ注意ポイントについても解説
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KPIツリーの定義と目標管理で活用するメリット

KPIツリーは、中長期的な組織の目標達成を支援するフレームワークのひとつです。

従来の「KPI管理」と混同しがちですが、目的や影響範囲を見ると、違った要素がいくつかあります。

まずは、KPIツリーの基本的な概念やメリットを詳しく解説します。

KPIツリーとは「目標達成地図」のこと

KPIツリーとは、組織の全体目標を決め、その目標に向かってどのようなプロセスで歩むべきかを明確化したフレームワークのことです。

例えば、あるエネルギー関連商品を販売する会社をイメージし、KPIツリーをどのように作成するか見ていきます。

【エネルギー関連会社のKPIツリー】

◆(ビジョンの設定)……2025年までに再生可能エネルギーの分野で日本シェアを独占する

◆(戦略的目標)……新しい製品ラインの開発と導入を実現し、販売体制を強化する

 ↓

◆(組織目標)……既存顧客基盤の活用と新規顧客開拓を実施し、新製品の販売ルートを確保する。効果的なWebプロモーションを計画する

 ↓

◆(部門やチーム目標)……営業部門「新製品の販売目標を前年比で30%増加させる」プロモーション部門「新規Webサイトを立ち上げブランディング向上と商品訴求を両立させる」

 ↓

◆(個人目標)……営業員一人あたり月間5社新規顧客を開拓する

このように、KPIツリーは、組織が目指すべき大きな目標を掲げたあと、全体戦略→部門目標→個人目標へと、具体的な目標に落とし込むときに使うフレームワークです。

KPIツリーが機能するようになれば、組織全体が一貫した方向性を持てるようになり、目標達成への道筋が明確になります。

KPIツリーと従来のKPI管理との違い

KPIツリーと従来のKPI管理は、同じ「KPI」という用語を使いますが、それぞれ目的や影響範囲が違います。

【KPIツリーと従来のKPI管理との違い】

特徴 従来のKPI管理 KPIツリー
焦点 個別の指標 全体的な戦略
目的 パフォーマンス測定 戦略的目標達成
影響範囲 短期的な成果 長期的な成功

日々の業務効率をチェックしたり、短期的なチーム目標や個人目標の達成進捗を見る場合には従来のKPI管理が適しています。

一方、KPIツリーは組織全体の大きな戦略を策定して実行に移す場面や、その戦略を進めるうえでの部門単位の目標を明確化するときに最適なフレームワークです。

KPIツリーと従来のKPI管理は違ったシーンで使われますが、それぞれ連携し合いながら使うといいでしょう。

KPIツリーによる目標管理のメリット

KPIツリーを使用することで、目標設定や進捗管理などが効率的に行えます。

もちろん、KPIツリーを作らなくても戦略策定や目標管理は可能です。

しかし、組織全体がひとつの目標に向かって戦略を描き、全員で実行していくには「見える化」が大切です。

頭で描いている戦略も、見える化しなければ組織内で浸透させるのは難しいでしょう。

KPIツリーがあれば、全社員が方向性を同じくして目標に向かって突き進むことができるようになります。

具体的なKPIツリーの作り方と注意点

KPIツリーを作っていくための具体的なプロセスも見ていきます。

KPIツリー作成時に起こりがちなミスや対策についても解説しますので、参考にしてください。

企業のビジョンや目標をKPIツリーに展開する方法

KPIツリーを作成するときは、まず企業が目指しているビジョンや目標を明確にし、そこから詳細な目標設定をしていくといいでしょう。

具体的な方法を見ていきます。

◆STEP1:「組織全体のビジョンと戦略的目標を明確化する」

KPIツリーの前提となるのは組織全体が目指すべき長期的なビジョンです。売上前年比120%などといった目標ではなく「世界的シェアを独占する」「〇〇の分野で日本No,1になる」といった壮大で長期的な目標を設定します。

◆STEP2:「戦略的目標からKPIを設定する」

全体のビジョンが決まったら、次にその目標を達成するためのKPIを設定します。例えば世界的シェアを独占したいなら、5~10年の中期計画を策定し、毎年の売上成長率などのKPIを設定しなければいけません。ここでは部門やチーム単位の目標を設定するのではなく、あくまでも全社的な観点で目標を決めていきます。

◆STEP3:「部門やチームレベルのKPIを設定する」

全社目標が決まったら、次は部門やチーム単位での目標に細分化していきます。このタイミングでは、売上に直結する営業部門の目標だけではなく、人材補強に必要な人事部門の目標も決めていく必要があります。企業が安定成長するためのリスク管理など、管理部門の目標も設定しましょう。部門単位の目標が定まったら、次にその目標をチームや個人目標に細分化していきます。

◆STEP4:「整合性のチェック」

ここまで具体的なKPIが定まったら、もう一度全社のビジョンから個人目標までをチェックし「一貫性があるか」「実現可能な目標になっているか」などを確認しましょう。実行の過程で「各プロセスでのKPIを検証できる仕組みがあるか」を確認しておくことも大切です。

おおまかなKPIツリーの作成方法は上記の通りです。

実際の組織においては、それぞれ違った部門や責任者が目標設定することも多いため、一貫した目標が立てられないケースもあります。

経営企画部門などが統括して管理し、一貫したKPIツリーを完成させていくといいでしょう。

KPIツリーによる目標設定方法

KPIツリーを用いて、実現可能な目標を設定するには「SMART基準」を用いた目標設定の方法がおすすめです。

SMART基準とは、時間軸や内容が現実的、かつ具体的な目標設定基準のことです。

下記に、SMART基準の考え方をまとめていますので参考にしてください。

【SMRT基準とは】

具体的であること(Specific) 何を達成したいのか、どのように達成するのかを具体的に決める
測定可能であること(Measurable) 定性的ではなく「%」や「金額」など、測定可能な定量的な目標にする
達成可能であること(Achievable) 現実的な目標を設定する
関連性があること(Relevant) 全社目標と関連性が深い目標を設定する
時間的に達成できること (Time-bound) 期限内で達成可能な目標を設定する

なお、目標設定時にはSMART基準のほかにも、いくつかのフレームワークが使えます。

下記関連記事「目標設定におすすめのフレームワーク15選」も、ぜひお読みください。

関連記事:識学総研「目標設定におすすめのフレームワーク15選

KPIツリーにおけるKGIとKPIの関係性

戦略策定や目標設定をする際には、KPIのほかに「KGI」といった指標を示す用語を使うことがあります。

それぞれ意味は違いますが関係性が深いため、覚えておくといいでしょう。

【KGIとKPIの違い】

KGI(Key Goal Indicators) 組織の最終的な成果を示す指標
KPI(Key Performance Indicators): KGIに到達するための過程を測定する指標

KPIツリーを作る際は、まず組織全体のKGIを設定したうえで、KGIを部門やチーム個人別のKPIに細分化していくといいでしょう。

KPIツリー作成時に起こりがちなミスと対策

KPIツリー作成時には、複雑な目標や実現不可能な目標を設定してしまうなど、いくつかのミスが起こりがちです。

以下で、起こりがちなミスとともに気を付けるべきポイントを挙げていきます。

【KPIツリー作成時に起こりがちなミス】

◆複雑な目標設定……考えすぎたりステークホルダーや幹部への報告を気にするがあまり、設定目標が複雑になってしまう→全体戦略や部門目標は、全員が直感的に理解しやすいようシンプルな目標にすることが大切

◆定性的な目標……「〇〇を強化する」「〇〇に特化する」など、数値で評価できない定性的な目標を設定してしまう→SMART基準を参考に、測定可能な定量的な目標を定めるのが良い

◆関連性がない目標……組織のビジョンに直接貢献しない目標を設定してしまう→KPIツリーを作る際は、必ず整合性をチェックするよう心がける

KPIツリーは、途中で何度も変更するような軽率な目標であってはいけません。

中長期的に同じ目標に向けて取り組むため、上記のようなミスが起こらないように慎重に作成しましょう。

職種別KPIツリーの活用方法と目標管理の具体例

ここからは、職種別でどのようなKPIツリーを作ればいいのか、より具体的な例をご紹介します。

営業部門でのKPIツリー活用法

営業部門では「売上アップ」「市場拡大」などのビジョンを掲げ、次のようなKPIツリーを作るといいでしょう。

◆STEP1:売上目標の設定……中期や年間の売上目標を設定

◆STEP2:新規顧客獲得目標の設定……売上目標達成に必要な新規顧客の獲得目標を設定

◆STEP3:営業戦略の策定……新規顧客開拓の戦略やWebサイトからのリード獲得目標を設定

◆STEP4:営業KPIの設定……売上につながる行動目標の細分化

◆STEP5:顧客満足度の測定とフィードバック……継続的な売上を得るための顧客満足度調査と目指すべき目標の設定。フィードバックする仕組みの構築

営業やマーケティング部門のKPI管理の方法については、下記関連記事も是非参考にしてください。

関連記事:識学総研「KPI管理のポイントは?営業やマーケティング部門の活用例と管理方法、おすすめツールも紹介

マーケティング部門でのKPIツリー活用法

マーケティング部門では、キャンペーンの成果、ブランド認知度、顧客エンゲージメントなどの指標をKPIツリーで管理できるかもしれません。

◆STEP1:マーケティング目標の設定……マーケティング活動を通じて達成したい目標を設定する(ブランディング向上など)

◆STEP2:戦略と戦術の設定……マーケティング目標を達成するための具体的な手法を決める(SNSマーケティングなど)

◆STEP3:KPIの設定……CV率、SNSのフォロワー数など具体的数値の設定

◆STEP4:成果測定とフィードバック……設定したKPI進捗を測定しフィードバックする仕組みを構築し実行に移す

マーケティング部門は、変化の激しい市場でスピーディーな対応が求められます。

一度決めた目標を柔軟にアレンジするなど、臨機応変な対応ができる仕組みも大切です。

人事部門でのKPIツリー活用法

人事部門では、従業員のパフォーマンスや採用効率、社員満足度などをKPIツリーで管理できます。

◆STEP1:人事部門の目標設定……必要な人員、従業員のスキル向上、エンゲージメント指標の達成、離職率低下などの目標を設定する

◆STEP2:人事戦略の策定……人事部門の目標を設定するための具体的な戦略を決める(採用広告の予算策定や研修プログラムの策定など)

◆STEP3:人事KPIの策定……人事戦略を遂行するために必要な具体的なKPIを決める(採用広告の出稿数、研修実施回数の目標、参加人数目標など)

◆STEP4:成果測定とフィードバック……設定したKPI進捗を測定しフィードバックする仕組みを構築し実行に移す

製造部門でのKPIツリー活用法

製造部門では、生産効率や品質管理、コスト削減などの指標をKPIツリーで管理します。

◆STEP1:製造部門の目標設定……生産目標数や利益効率に関する目標を設定する

◆STEP2:生産性やコストの目標設定……生産目標を達成するためのラインごとの目標や必要なコスト目標を決める

◆STEP3:品質管理やリスク管理目標の設定……生産性ダウンの原因となる品質低下や事故を発生させないための目標を設定する

◆STEP4:成果測定とフィードバック……設定したKPI進捗を測定しフィードバックする仕組みを構築し実行に移す

まとめ

KPIツリーは、組織の目標達成を支援する強力なツールです。

KPIツリーを効果的に活用することで、組織全体の目標達成までの道筋も明確になり、より現実的な取組みが可能になります。

ただし、KPIツリーを作成するときには、複雑な目標や測定不可能な目標を決めないよう注意しましょう。

中長期的に管理・運用できるシンプルな目標が理想です。

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