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KPIとは?メリットと設定の流れ、注意点をわかりやすく解説

KPIとは

組織の目標達成のためにKPIを立てたいけれど、どのようにすればよいのかわからず悩んでいませんか。

KPIの策定には流れや注意したい点があり、やみくもに進めてしまっては従業員のモチベーションを落としてしまい、逆効果になりかねません。

この記事ではKPIを導入するメリットや設定の流れ、注意点を紹介します。

最後までお読みいただき、最終目標に近づくための行動スピードを上げましょう。

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KPIとは最終目標を達成するための中間目標のこと

KPIとは「Key Performance Indicator」の略で、業務管理評価のための指標を指します。

目標達成のプロセスが適切におこなわれているか、その達成状況を数値化し、結果を計測するための指標です。

KPIの歴史はあまり古くなく、1992年に米ハーバードの教授らがグローバルマネジメント誌である『ハーバード・ビジネス・レビュー』に掲載の論文中で紹介したのが始まりといわれています。

KPIを設定し、可視化しづらいプロセスの達成状況を数値化することで、目標を達成するまでの軌跡を共有・管理しやすくなります。

例えば営業職社員の場合、アポイント数や受注件数、継続件数などが指標になるでしょう。

各KPIを数値化し、達成状況を管理することをKPIマネジメントといい、あらゆる企業で導入されています。

KPIを導入する3つのメリット

ここからはKPIを導入するメリットを3つ紹介します。

1.アクションが明確になる

KPIを導入すると、最終目標までに達成するべきタスクが明確になる点がメリットです。

日頃の業務にて数字を意識することで、行動をぶらさずに目標達成へと進めます。

仮にKPIが設定されていないケースを考えると、目標達成までのルートが個人の判断にゆだねられてしまいます。

その結果、各人の行動があらゆる方向へとばらけてしまい、最短ルートで目標達成ができなくなってしまうでしょう。

KPIという指標を置くことでプロセスをすり合わせる時間を短縮できるので、行動がスムーズに進み、最終目標に近づけます。

2.プロセスを客観的に共有できる

KPIでは進捗を数字で表すため、最終目標達成のために足りない点が浮き彫りになります。

誰が見ても同じ解釈になるようにプロセスを表せるため、以下のことを把握できるでしょう。

  • 何がどれだけ遅れているのか
  • なぜ遅れているのか
  • 遅れを取り戻すための次なるアクションは何か

その結果、PDCAを回しやすくなり、行動の方向性や行動量の改善をおこないやすくなります。

3.評価が明確になる

KPIは数字で表せるため、感情やプロセスで成果を評価する場合と異なり、達成できたのかできなかったのかが一目でわかります。

評価の基準が定量化されているため、評価に対する被評価者の納得が得やすくなるでしょう。

事前にどの程度達成できればどういった評価になるのかのすり合わせもできるため、従業員のモチベーションも上がりやすくなります。

KPIとKGI、OKR、KSFとの違い

KPIと似た言葉にKGIやOKR、KSFがあります。

ここではそれぞれの意味と、KPIとの違いを解説します。

KPIとKGIとの違い

KGI(Key Goal Indicator)とは「重要目標達成指標」のことで、いわゆる最終目標です。

例えば売上高や市場シェア、顧客数がこれに当たります。

その一方でKPIは、KGIを達成するために設定された、プロセスの評価指標のことです。

そのため、ひとつのKGIを達成するために、いくつかのKPIが立てられます。

KGIを設定する際は「業界でのシェアを増やす」という漠然としたものではなく、KPI同様に「業界でのシェアを40%にする」と数値化できる目標にすることが重要です。

KPIとOKRとの違い

OKR(Objectives and Key Results)とは、企業やすべての従業員が同じ方向を向き、目標達成に向けて動くことを管理する手法です。

「達成目標(Objectives)」とその達成度を測る「主要な成果(Key Results)」を設定して進めます。

OKRは1970年代に半導体メーカーであるIntelが採用したことから始まり、GoogleやFacebookといった有名企業、また日本でもメルカリや花王にて導入されています。

なお、ここでの「主要な成果」はKPIのように、必ずしも定量化できるものでなくても問題ありません。

KPIとOKRはどちらも目標管理のためのフレームワークですが、KPIは過去の結果と現在の状況により改善のために数字が設定されています。

それに対しOKRはより大きく野心的な目標達成を目指す場面で使われる指標です。

併用可能であるため、組み合わせて最適な目標を策定することで、理想とする業績の達成につながります。

KPIとKSFとの違い

KSF(Key Factor for Success)とは重要成功要因のことで、企業の最終目標を達成するための重要な要素です。

例えば「労働生産性を上げる」がKGIの場合、KSFやKPIはそれぞれ以下のように表されます。

KGI KSF KPI
労働生産性を20%上げる 成果を上げる 成約率を10%上げる
リピーターの数を2倍にする
人件費を下げる 残業時間を50時間減らす
テレワーク取得率を10%上げて交通費を削減する

KGIやKPIが定量的な数字で示されるのに対し、KSFは「成功要因」や「条件」を定性的に示す指標です。

KSFを実現するために数値に落とし込んだ目標が、KPIであるといえます。

KPI設定の流れ

KPIは以下の流れで設定します。

  1. KGIを設定する
  2. KFSを設定する
  3. KPIを設定する

順に解説します。

1.KGIを設定する

KPIはプロセスを評価する指標であるため、まずはゴールとなる最終目標を決定し、着地点を明確にすることです。

目標は期限と数値を明確にして、誰が見ても同じ解釈になるように設定します。

例えば「2024年度売上を〇億円にする」「オウンドメディアからの売り上げを前年対比120%にする」などがKGIになります。

2.KFSを設定する

次はKFSを設定します。このとき、「SWOT分析」や「3C分析」をおこない、KGIとして設定した目標達成において欠かせない要素を考えます。

例えば売上増加を目標とした場合、接点数の増加、クロスセル獲得率の向上、紹介獲得件数の増加といったKSFが考えられるでしょう。

この際に注意したいのが、検討したKFSが本当にKGIにつながる要素であるか、という点です。

自社のビジネスの特性や業界の特異性を検討し、精度を上げるためにあらゆる視点から検討することが重要です。

KFSの効果的な抽出方法を知りたい方は、以下をお読みください。

関連記事:KFS(重要成功要因)とは?KPIやKSF、KGIとの違い、抽出方法、注意点を解説

3.KPIを設定する

次に、具体的なアクションにつなげるためのKPIを検討します。

KPIを元にスピーディに行動へと移せるよう、客観的にわかる数値に落とし込んで考える必要があります。

ついあれこれ欲張ってしまいたくなりますが、多すぎる目標は混乱を招くため優先順位を考えて目標を立てましょう。

なお優先順位は以下の要素により決定します。

  • 重要度
  • 実現性
  • KGIへの貢献度

それぞれの要素を1〜5段階で数値化し、よりKGI達成に近づくKPIから採用しましょう。

目標設定に使えるSMARTの法則

KPIを設定する際には、SMARTの法則を意識して検討しましょう。

SMARTの法則とは目標設定のフレームワークのことで、アルファベットそれぞれに以下のような意味があります。

  • Specific……具体的でわかりやすい
  • Mesurable……定量的かつ計測可能である
  • Achievable……達成できる
  • Relevant……組織の目標と関連性がある
  • Time-bound……期限が明確に決まっている

目標を設定する際には数字で表し、個人ごとに解釈が分かれないように明確化します。

理想が高すぎる目標は達成を見込めずにモチベーションを損ねてしまう可能性があるため、現実的な目標を設定することも重要です。

また、いつまでに達成するのか、期限をしっかりと決め、企業の最終目標と個人の目標が乖離しないようにしましょう。

例えば企業の目標が「前年比売上120%アップ」であった場合、個人の目標も連動させることです。

「アポイント取得率10%アップ」「テレアポを1日30件おこなう」などと、同じく数字で表しましょう。

関連記事:マネジメントで目標設定が重要な理由とは?おすすめの「目標設定フレームワーク」も紹介

KPI分析における3つのポイント

ここではKPI分析におけるポイントを3つ紹介します。

1.優先順位を明確にする

KPIが複数定められていると、力を入れる指標が従業員ごとに異なってしまう可能性があります。

そうなってしまうと、最終目標に直結する重要な指標に効率よく手をつけられません。

このような事態を避けるため、優先順位を明確にし、従業員それぞれのアクションがより重要な指標へと向かうようにします。

すると労働力を効率よく必要な箇所へ使える結果、目標の達成へと大きく近づくために力を結集できます。

2.繰り返してアクションの精度を高める

企業は前年度より企業を成長させるために、より高い目標をKGIとして置くケースがほとんどです。

実際にKPIを回していると理想に追いついていないケースは往々にしてあり、都度PDCAサイクル(業務改善のフレームワーク)を回して改善していく必要があります。

何が原因で達成できていないのか、次なるアクションはどのようにしたらよいのかを期間中に繰り返しチェックしましょう。

改善を繰り返すことで、目標達成に向かうための軌道修正をするスキルが向上します。

関連記事:効果的なPDCAとは?失敗要因やデメリット、対策方法を解説

3.最新のデータを集める

KPIの振り返りでは理想と現状との差異を洗い出し、原因とアクションを検討していく必要があります。

このとき古いデータでは行動の精度を上げることが難しいため、都度最新のデータを集めて分析するようにしましょう。

すると、KGIを達成するための行動に遅れているところがあればすぐに改善でき、その結果余分な動きを続けずにすみます。

識学式:KPIを運用する際の3つの注意点

KPIを設定しても、運用方法を間違うとデメリットになってしまいかねません。

ここでは識学が提唱する、KPIを運用する際の3つの注意点を紹介します。

1.指標を多くしすぎない

指標を多くしすぎると、何に力を入れたらよいのかがわからなくなってしまったり、手が届かない目標に感じたりと、従業員の士気が下がってしまう可能性があります。

そのためKPIは多くしすぎず、重要な項目を5〜10個程度で設定するのが有効です。

指標をいくつかの項目に絞ると、力を注ぐ対象が明確になります。

目標を達成するための行動を個人レベルで検討しやすくなり、行動の精度が上がります。

2.プロセスで評価しない

KGIを達成するために立てた具体的な行動指標がKPIであり、必ず従業員が出した成果で評価することが大切です。

仮に数値目標の達成ができていない状況で、従業員の頑張りを評価してしまうと、数字の達成を放棄しても問題ないと思われてしまうかもしれません。

「目標達成に貢献した場合に評価される」と認識を統一させることで、従業員がより成果を生む行動を選択できるようになるでしょう。

3.目標達成に期限を設ける

日々の業務で数字を意識して追うには、ある程度の危機感が重要です。

締め切りまでに必要な進捗と達成度を段階的に検討できるようにするため、KPIには必ず期限を設けるようにしましょう。

締め切りがあることで、はじめて行動を逆算して考えられるものです。

月ごとやクオーター、半期ごとに達成していなければならない行動量がわかり、自ら進捗を管理できるようになるでしょう。

KPI設定の具体例

ここからはKPI設定の具体例を、3社を例に挙げて紹介します。

トヨタ自動車株式会社

4年連続世界首位の販売台数を誇る自動車メーカーであり、豊富な商品ラインナップと強固なグローバルネットワークを持つトヨタ自動車。

トヨタ生産方式(トヨタが掲げる生産を合理化した生産方式)では可動率(べきどうりつ)を指標とすることで、「造りすぎのムダ」を定量的に洗い出しています。

可動率とは、設備を使用しようとしていた時間のうち、実際に使用した時間のことです。

もし8時間可動させるつもりでいた場合、そのうち1時間は故障で使えなかったとすると

7÷8で約88%の可動率になります。この数字が100%に近づくほど、設備は問題なく動き続けているといえるでしょう。

このようにトヨタは可動率を導入することで、生産ロスの原因となる要素を把握し、ムダを削減して生産能力を向上させています。

日本航空株式会社

2010年に経営破綻してから地道な努力と創意工夫を繰り返し、復活を遂げた日本航空(JAL)。

事業を再生するにあたり、顧客満足度が重要であるとしたJALは、KPIに「定時到着率(到着予定時刻の15分未満に到着できた便数を示す割合)」を定めました。

出発を遅らせないために、搭乗時の表示やアナウンスをわかりやすくし、機内の清掃はキャビンアテンダントも手伝って時間短縮を図るといった方法で、数字向上を目指しました。

このような取り組みにより、2012年の定時到着率は世界一を達成しています。

顧客満足度を高めるプロセスで業績も向上し、組織の一体感を生んだ事例です。

ソフトバンク株式会社

ソフトバンク株式会社は、2023年度の売上高業界2位を達成した、大手通信会社です。

「スマホ契約数の増加が企業価値向上の原動力」であるととらえ、「2023年度にスマホ契約数3,000万件達成を目指す」とKPIを掲げ、それを達成しています。

具体的には以下の取り組みが、目標達成に貢献しています。

  • 多彩な機種ラインナップ
  • ニーズの多様化への対応
  • 通信ネットワーク品質の安定と向上
  • グループシナジーを活かした取り組み
  • すべての人がデジタル化の恩恵を享受できる仕組み作り

例えばGoogle Pixel シリーズのスマホを販売したり、初心者でも扱いやすい「シンプルスマホ」などのラインナップを拡充したりと、スマホ利用者を拡大しました。

また5Gの基地局数の増加やビッグデータやAIを活用したネットワーク品質の解析を取り入れるなど、サービス品質の向上に取り組んでいます。

KPIの設定と具体的なアクションが適切に検討・運用された結果、企業の競争力を向上させた例であるといえます。

KPIを設定して企業の成長を加速させよう

最終目標を達成するための重要な指標である、KPI。

KPIの数値や項目の決定を最適化することで行動がスムーズになり、従業員の足並みがそろうといっても過言ではありません。

その一方で、設定の方法や目標の程度を誤ると行動が加速せず、スタート時点から目標到達が危ぶまれてしまうケースもあるでしょう。

客観的にわかるKPIを策定して意識統一をうながし、最終目標達成のために従業員の力を最大限に発揮させましょう。

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