社名:株式会社アンドゲート
株式会社アンドゲートは、テクノロジーの力で新しいプロジェクト推進の形をつくり上げるべく2017年に始動。以来、IT業界で独自の地位を築いている注目の一社だ。
同社は2022年10月から識学のトレーニングを受講し始め、現在は株式上場を視野に入れている。
同社を率いる田村謙介代表取締役CEOは、創業間もない頃、経営に関する違和感を識学式のマネジメントで払しょくした経験があるという。
今回、本格的に識学を学ぶに至った経緯や識学が社内にもたらした変化について、同社の経営陣に担当コンサルタントの橋本潤也が聞いた。
インタビューイ:
代表取締役 CEO:田村 謙介さま
管理部長:中島 稔さま
インタビュアー:
識学コンサルタント:橋本潤也
目次
フラットで自由な会社が理想だという幻想にとらわれていた
橋本 識学の存在をお知りになったのはいつ頃でしょうか。
田村 2017年に当社を設立してから、大体1年程度たった頃でしょうか。当時、社員数は10名程度でしたが、うまく組織を運営できていない感覚があったのです。どうしたものかと悩むなかで、タクシー広告やSNS広告を通じて識学を知りました。
「結果だけで社員を評価すべき」や「社員と飲み会に行ってはならない」など強烈なメッセージが印象に残っています。気になって識学社のホームページから無料コンテンツをいくつかダウンロードし、その内容を実践してみたところ、悩みがきれいに解消されていきました。これはすごいと驚きましたね。
橋本 なるほど。識学の考えに触れるまでは、どのような悩みを抱えていたのでしょうか。
田村 フラットで自由な会社が理想だという幻想にとらわれていた結果、上からの指示に従おうとしない社員がいました。また、社員一人ひとりの役割が不明確で、10人の社員の中でも浮いている役割があり、「なぜ私がこの仕事までやらないといけないのですか」という不満が頻繁に私の元へ届いていたのです。
社員のメンタルケアに追われて毎日が大変でした。仕事のパフォーマンスが上がるはずもなく、お客さまにご迷惑をおかけし、クレームにつながる、それが社員の不満を生む。まさに負のループです。
中島 私は一期目から当社に参画していましたが、一度退職して戻ってきた人間です。それこそ、私は会社の考えなど全く気にせず思ったことを経営陣にすぐに言ってしまうような問題社員でした。
田村 最初に組織がうまくいかなかったとき、反乱した側だよね。
中島 はい。会社の規模が小さかったので、平社員だったにもかかわらず田村社長と直接話す機会があり、そこで好き放題不満をぶつけていました。
経営陣が社員の細かな動きを見てられるわけがないのに、「なぜ私たちの働きぶりを見ようとしないのですか。社員に興味がないのですか」と言ってしまった記憶があります。案の上、しばらくしてから離職しました。
田村 中島だけではありませんが、当時は社員の声に配慮し過ぎたために正常な意思決定ができなかったと反省しています。
中島 「自分なら何でもできる」と勘違いし、その後独立したのですがうまくいかず……。田村社長に連絡を取り、もう一度雇っていただくことになりました。
更なる成長に向けて、組織体制を盤石なものにしたかった
橋本 そんななかで識学に出会ったのですね。
田村 今はもう難しいでしょうが、以前は識学のクラウドサービスの初期バージョンが単体で安く販売されていました。それを使って、「姿勢のルール」や「結果の完了」について経営陣で学んだわけです。今考えれば、非常にリーズナブルに識学イズムを取り込めました。
おかげさまで離職者は出たものの無事に10人の壁を越え、社員数を40人名程度にまで伸ばせました。そのときからずっと識学のファンです。
橋本 では、識学イズムはその段階で組織にかなり浸透していたのでしょうか。
田村 いえ、浸透と呼べる段階にまでは至っていません。ただ、「期限と状態を明確にして指示を出す」や「部下に期待し過ぎない」「結果だけを見る」といった意識を持てただけでも大きな収穫だったのです。
橋本 2022年5月に改めて識学の受講を決断していただきました。識学が浸透していたわけではなかったというお話でしたが、特に組織運営に課題があったわけではなかったのに、改めてトレーニングを受けようと思ったのはどんな理由からでしょうか。
田村 識学イズムによって経営は安定し、トラブルも減りました。はっきり言って順調でしたが、だからこそもっと会社を大きくしたい、「良い会社」にしたい、株式上場させたいと考えるようになったのです。そのためには、組織体制をより盤石なものにする必要性が出てきました。識学を使えばそのための最短経路を歩めるでしょう。
橋本 他に何か検討したコンサルティングメソッドはありましたか。
田村 ありませんでした。社内には識学のロジックがベースとしてあるので、一度識学のコンサルタントから学んでみたいと。私は「再現性」が好きなので、ロジカルなマネジメント法である識学が肌に合っていたのです。ただ、最終的な意思決定は管理部管掌役員と、管理部長の中島に任せていました。
中島 我々にとって特に手を付けたかったのが評価制度でした。最初は予算の問題もあり、自前でつくろうと思っていたのですが、橋本さんの話を聞くうちに考えが変わりました。
橋本さんは、「周りの成績によって変動する評価では駄目。役割を定め、尺度をしっかりと持てば社員の働きを点数で表せる」と説明してくれました。確かに、どうすれば給料が上がるのか分かれば皆が幸せになれると納得し、橋本さんと一緒に評価制度を含めて構築していくことを決めました
「識学的」という言葉が社内で飛び交うように
橋本 最初にお会いしたとき、田村社長は識学についての理解が深い印象でしたから、課題は制度の構築と管理職以下の皆さんの間に共通言語をつくることだと考え、浸透パックを導入していただきました。組織にどのような変化があったとお感じでしょうか。
田村 今まで感覚によって行っていた評価を明確な形にできたこと。そして、評価制度のつくり方を理解できたこと。評価制度は人事部や経営層が構築するというイメージがあったのですが、現場を巻き込んで基準を決めていくものだと学びました。
中島 私は組織図が非常に役立っていると感じます。各人の役割や指示命令系統がはっきりし、社員は組織図を意識して働くようになりました。識学導入前は組織図がなく、何を書いたらよいのかという状態からの出発でしたが、無事完成したのは橋本さんのおかげです。
橋本 ありがとうございます。
中島 それと、仕事の過程には口出しをせず、結果だけを見るようになり、指示や管理の仕方ががっちりと固まった気がしています。また一つひとつのタスクについても社員の迷いや誤解が消え、不必要なコミュニケーションがなくなりました。期限と状態を明確にしてタスクを渡すことで、完了した段階で部下から声をかけてくれるようになっています。
田村 あと、経営に関する意思決定をする際に判断の基準が増えました。直感的に「面倒で嫌だな」と思っても、「識学的に考えたら正しいだろうからやってみようか」という具合です。この「識学的」という言葉が、社内で頻繁に飛び交うようになりました。
「ルールがあった方が社員は働きやすくなると実感した」
橋本 トップである田村社長が「識学でいくぞ」と意思決定した後、管理部門のお二人が毎回私の宿題をきっちりこなして識学理論を吸収し、社内を引っ張ってくださいました。
経営層の皆さんの動きがとにかく早いので、社内への識学の浸透もすぐだったでしょう。その分、お二方の負担は大きかったのではありませんか。
中島 今となってはいい思い出、というよりいい糧になっていますが、社内のメンバーから一度に40もの質問が寄せられたときは、それらにどう答えたらよいか頭が痛かったです。
橋本 皆さんIT系のコンサルタントであり、頭が切れる方が現場に大勢いますから、鋭い質問が管理部門に集まったのでしょう。
中島 管理部門でも、しっかりと制度を理解していないときがあったので、そこをちゃんと教育し直したり、ひたすら想定質問とそれに対する答えを考えたりしました。
橋本 識学に対する反発はありませんでしたか。
中島 ないと言ったら嘘になります。私もかつてはベンチャーらしい自由な会社に憧れて当社に入社しましたから、最初は「姿勢のルール」について、「なぜこんな堅苦しい話を聞かされないといけないんだ。一体これが何の役に立つんだ」と考えていました。
田村 マネージャーやリーダー層は最初戸惑っていたようです。
中島 しかし、ルールがないと都度コミュニケーションが必要になる上、かみ合った話ができません。ルールがあった方が社員は働きやすくなる、自由過ぎると不幸になると実感しました。
田村 ルールで会社としての正解を示しますが、それによって社員が自由にしていい部分も決まります。ルールに従っている以上は責められないとなれば、社員は安心できます。
中島 姿勢のルールを決める側になった身からすると、本当に当たり前に守るべき内容だけしか明文化していませんので、これを破られるようでは会社として非常に困ります。かつて自分がそれをしてしまっていたわけですので、大きい声では言えませんが。
識学を導入するなら取り返しが付かない失敗を犯す前に
橋本 もし識学を導入していなかったとしたら、どうなっていたでしょうか。
中島 誰がやるべきか不明なままのタスクが続出し、仕事が一向に進まない状況に陥っていたかもしれません。「期日を何としても守らなければならない」という意識が育たず、それに対する適切な指導もできなかったはずです。何をどうすれば評価が上がっていくか示せないのに、部下に「もっと頑張れよ、お前ならできるぞ」と根拠もないのに高い期待をかけてしまい、メンバーを悩ませていたでしょう。
橋本 将来株式上場を視野に入れ、識学を導入いただいたというお話がありました。社員数が増えてくるなかで、上場に対する自信は付きましたか。
田村 もちろん。その点で言うと、優秀な人材が集まりやすくなったというか、求めていない人材を採用してしまうことがなくなりました。これは、ソシキサーベイ(※)によるところが大きい。非常に信頼できる判断軸ですし、おかげで楽をさせてもらっています。
※ソシキサーベイとは、社員の思考のクセや意識の状態を点数化し、組織運営の状態を分析するツールのこと
中島 当社では選考過程で求職者にソシキサーベイを受けてもらいますし、社員も全員受けています。社員がトラブルを起こしてしまった際は、ソシキサーベイの結果を確認した上で、どのように解決へ向けたアプローチを取ればよいか、戦略を練る材料としても使っています。
「識学の導入で、業績向上と働きやすい職場環境の両立を」
橋本 どのような企業に識学はお勧めでしょうか。
田村 社員数30~50人程度の段階で、しっかりと組織の体制を整備しようとしている会社には非常に有効です。何となく組織を回している状態のまま、社員数がどんどん増えていったとき、どこかで取り返しが付かない失敗を犯してしまうかもしれません。ならば、早めに対策をしておくべきです。
中島 苦労して会社を大きくしてきた経営層と後から入ってきた社員の熱量を比べたとき、そこにはどうしても隔たりがあります。経営層の理念を共有していない社員が増えていくと、組織崩壊への道を進むことになりますが、識学を学んでおけばそんな心配とは無縁でいられます。
田村 それと、属人性が高い会社。共通のルールに基づいて動くべきか、属人性を出すべきかの線引きが分かりにくくなりがちなため、識学のマネジメントで働きやすくなるはずです。
橋本 最後に、これから会社をどのように舵取りしていくお考えか、お聞かせください。
田村 我々は、テクノロジーの力で新しいプロジェクト推進の形をつくり上げるべく始動しました。ITプロジェクトにおけるプロジェクトマネージャーの役割を再定義し、サービスとして提供することでPMがいなくともプロジェクトを進行できるようにしたいと考えています。
周囲から、「そんなのは不可能だ」と否定的な意見がさんざん寄せられましたが、私はそうは思いません。それを実現しつつ、社会的な認知も得たいという思いから上場を目指しています。
ただ、仮に上場を目指していなかったとしても識学を導入していたでしょう。上場を目指す前から、当社を「良い会社にしたい」という思いがありました。抽象的ではありますが、識学はそれを叶えてくれるものです。
橋本 本日は貴重なお話をお聞かせくださり、ありがとうございました。
インタビュイープロフィール
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代表取締役 田村 謙介
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科を修了後、株式会社アンドゲートを設立。エンジニア人生で培った泥臭さとテクノロジー、学術に基づいた理論を武器に、プロジェクトのディレクションやマネジメントを行う。「段取り」をプラットフォーム化することで新規事業の創出を促し、仕事が自動的に回る社会を目指す。
管理部長:中島 稔
大学時代に中小企業金融を専攻し、新卒で地元金融機関に入り融資課からキャリアをスタート。その後営業を経験したのちに、退職後個人事業主として様々な中小・ベンチャー企業のコーポレート部門に参画。現在は株式会社アンドゲートにて管理部長に従事。
会社紹介文
株式会社アンドゲート。
東京都中央区に拠点を置き、プロジェクトの立ち上げと推進を行う「プロジェクト企画推進」
サービスやプロダクトの開発を行う「プラットフォーム開発」
AWS・GCPをはじめとするク ラ ウ ド に よ る イ ン フ ラ の 設 計 構 築 と、予め障害を予測し、先回りしてトラブルを予防する「次世代MSP」の3つを主力事業としている。