就職活動や仕事をする上で必要なスキルとして「トリプルシンキング」という3つの思考法があります。
そのうちのひとつである「ラテラルシンキング」は、物事の幅を広げることで新しい発想を生み出す思考法です。
本記事では、ラテラルシンキングについて以下の観点から解説していきます。
- ラテラルシンキングの意味
- トリプルシンキングを構成するラテラルシンキング以外の思考法と違い
- 鍛え方や例題
- 成功事例
目次
トリプルシンキングのひとつ「ラテラルシンキング」の意味
トリプルシンキングとは主にビジネスにおいて役立つ3つの思考法の総称です。
- ロジカルシンキング(論理的思考)
- クリティカルシンキング(批判的思考)
- ラテラルシンキング(水平思考)
この3つのうち、ラテラルシンキングとは、問題解決のために既成概念や理論にとらわれずに新しい発想を生み出す思考法のことです。
物事を水平方向に広げていく考え方であることから、水平思考とも呼ばれています。
ラテラルシンキングは1967年、マルタの医師であり心理学者、作家、発明家、コンサルタントなどのさまざまな肩書を持ったエドワード・デボノ博士によって提唱されました。
ラテラルシンキングの特徴としては、物事を多角的にとらえられることで、奇抜なアイデアやこれまで誰も思いつかなかった発想など、新たなアイデアが生まれることが挙げられます。
ラテラルシンキング以外のトリプルシンキング
トリプルシンキングを構成する思考法はラテラルシンキング以外に「ロジカルシンキング」と「クリティカルシンキング」があります。
本章では「ロジカルシンキング」と「クリティカルシンキング」がどのような思考法なのかを解説します。
ロジカルシンキングとは
ロジカルシンキングとは、物事を体系的に整理しながら、論理的に考え結論を出す思考法のことです。
「ロジカル(logical)」は「論理的な」と訳され、「シンキング(thinking)」の訳は「考える」や「思考力のある」です。
つまりロジカルシンキングを直訳すると「論理的な考え方」や「論理的思考」という意味となります。
ロジカルシンキングは、さまざまな分野の情報を結びつけて考えることや、数多くあるフレームワークを試すことなどによって鍛え、身につけることが可能です。
クリティカルシンキングとは
クリティカルシンキングとは、自分の考えや現状などの主観、相手の意見などの感情に流されずに物事を判断しようとする思考法のことです。
自分の考えや価値観、物事の前提が本当に正しいか、思い込みがないかなど「So What?(だからなに?)」「Why So?(それはなぜ?)」と考えることから、”前提を疑う思考法”ともいえます。
クリティカルシンキングは批判的思考とも呼ばれますが「批判」は否定や非難という意味ではありません。
クリティカルシンキングの「クリティカル(critical)」という単語は、ギリシャ語の判断や判断力に富んだという単語に由来し「注意深い判断」や「規準に基づく思考」などの意味です。
クリティカルシンキングは、ロジカルシンキングによって論点を整理することなどで鍛えられ、また同様にロジカルシンキングを深めるのにも有効な考え方といえます。
ラテラルシンキングとその他の思考法との違い
これまでトリプルシンキングの3つの思考法について説明してきました。
では、ラテラルシンキングとロジカルシンキング、クリティカルシンキングとの違いはどこにあるのでしょうか。
本章では、以下の違いを解説します。
- ロジカルシンキングとラテラルシンキングの違い
- クリティカルシンキングとラテラルシンキングの違い
ロジカルシンキングとラテラルシンキングの違い
ロジカルシンキングとラテラルシンキングの違いは、既成の概念や理論を前提として考えるか、前提にとらわれないで考えるかにあります。
既成の概念や理論を前提として考える思考法がロジカルシンキングで「垂直思考」とも呼ばれます。
一方、前提にとらわれないで新しいアイデアを生み出す思考法であり、「水平思考」とも呼ばれるのがラテラルシンキングです。
また、ロジカルシンキングでは結論が1つとなりますが、ラテラルシンキングは多角的に物事を発想することから、結論がひとつになるとは限らない点も違いといえます。
クリティカルシンキングとラテラルシンキング違い
クリティカルシンキングとラテラルシンキングの違いは、結論をたくさん生み出すか、最高の選択肢を生み出すかです。
最高の選択肢を生み出すため、物事の前提や理論が正しいか疑う思考法がクリティカルシンキングです。
一方で、多角的に物事を考えてたくさんのアイデアや新しいアイデアを生み出す思考法がラテラルシンキングです。
クリティカルシンキングとラテラルシンキングは双方に補完しあう関係にあります。
ラテラルシンキングで広げたアイデアを、クリティカルシンキングでひとつひとつ検証していくというように、双方の思考法を目的に合わせて使い分けると、より高い効果が得られます。
ラテラルシンキングの鍛え方のポイント3つ
ラテラルシンキングを鍛えるためにはさまざまなトレーニング法がありますが、本記事では以下の3つの鍛え方を解説します。
- 前提を疑う
- 6色シンキングハット
- チェックリスト法
ラテラルシンキングを鍛えれば会議やディベートなどで活用できるようになるため、ぜひ参考にしてみてください。
1.前提を疑う
一番簡単にできるラテラルシンキングの鍛え方として「前提を疑うこと」が挙げられます。
ラテラルシンキングは、すでにある概念や理論、考え方にとらわれない思考法です。
既成概念や理論などの前提を「なぜそうなる?」と疑う力を養うことでラテラルシンキングが鍛えられます。
前提を疑う力は、ラテラルシンキングの問題を解くことによって養えます。
次章では、例題を紹介しているのでぜひ参考にしてみてください。
また、ラテラルシンキングの問題や例題は、書籍やサイトなどが参考になります。
おすすめの書籍は以下の通りです。
- 山下 貴史「3分でわかるラテラル・シンキングの基本」 日本実業出版社
- 木村 尚義「ずるい考え方」あさ出版
2.シックスハット法
シックスハット法とは、アイデアを検討する異なる視点を6つ準備して、6つのそれぞれの視点に従ってアイデアの発想を行う思考法です。
6つの異なる視点を色分けし、その色の帽子を被って討論が行われたので「シックスハット法」といわれています。
6つの帽子の色と視点は以下の通りです。
- 白色:客観的・中立的な思考
- 赤色:直感的・主観的な思考
- 黒色:否定的・悲観的な思考
- 黄色:肯定的・楽観的な思考
- 緑色:創造的・革新的な思考
- 青色:分析的・俯瞰的な思考
アイデアや課題、問題などを検討する視点や考えを切り替えながら討論を行えるので、意見の食い違いや方向性が定まらない時にも有効です。
3.チェックリスト法
新しい発想を見つけるために用いられる方法として、ブレーンストーミングの考案者であるオズボーンのチェックリスト法があります。
あらかじめ準備したチェックリストに答えることでアイデアを発想する方法で、オズボーンは9つの項目を考案しました。
- Other Uses (転用)
- Adapt (応用)
- Modify (変更)
- Magnify (拡大)
- Minfy (縮小)
- Substitute (代用)
- Rearrange (再編成)
- Reverse (逆転)
- Combine (結合)
オズボーンのチェックリスト法は、前提となる条件から検討する視点や着眼点を変えていくので、ラテラルシンキングを鍛えるのに向いていると言えます。
また、チェックリストを全て使うのではなく、前提条件や課題、問題に対してチェックリストを選定して使うのもおすすめです。
ラテラルシンキングの例
本章では、ラテラルシンキングを鍛えるための例題を1つ紹介します。
例題(問題文):13個のオレンジを3人で分けるには?
解答
- 方法1 4個ずつ分けて余った1個を3等分する
- 方法2 計りを使って同じ重量ずつ分配する
- 方法3 ジュースにして分ける
- 方法4 オレンジの種を植え、実がなってから分ける
- 方法5 オレンジを食べない など
このように例題の解答は複数あり、前提や既成事実にとらわれない自由な発想が必要になります。
この例題は木村 尚義著「ずるい考え方」という書籍に掲載されています。
興味を持った方やもっと例題を解いてみたいという方はぜひ参考にしてみてください。
ラテラルシンキングの成功事例
ラテラルシンキングの特徴は、枠にとらわれない発想や誰も考えつかなかった新しいアイデアが生まれることです。
今では人気だったり、当たり前だったりするイベントやコンテンツには、ラテラルシンキングによって生まれたものもあります。
ラテラルシンキングによって新しい価値を生み出した事例として、以下の2つを紹介します。
- USJ(ユニバーサルスタジオジャパン)のジェットコースター
- さっぽろ雪まつり
1.USJのジェットコースター
USJ(ユニバーサルスタジオジャパン)の人気ジェットコースター「ハリウッド・ドリームザライド」を利用した「ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド~バックドロップ~」は、コースターを逆向きに走らせるという発想から生まれたジェットコースターです。
バックドロップという「後ろ向きに走るジェットコースター」を生んだのは、USJをV字回復させたことで有名なマーケターの森岡毅さん。
バックドロップの誕生秘話は著書「USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?」で語られています。
「後ろ向きに走るジェットコースター」は、これまでのジェットコースターにある既成概念を打ち破っており、まさにラテラルシンキングであったといえます。
2.さっぽろ雪まつり
さっぽろ雪まつりは、1950年に地元の中高校生が6つの雪像を北海道札幌市の大通公園に設置したことをきっかけに始まったイベントです。
当時の大通公園は、市民の雪捨て場として利用されていました。
市内の3高校、2中学の生徒らは捨てられた雪を使って雪像を制作。大通7丁目広場に展示されました。
雪が捨てられるだけの場所でイベントを開催することや捨てられる雪から雪像を作ることは、1950年当時においてまさにラテラルシンキングであったといえます。
ラテラルシンキングは鍛えて身につく
本記事では、ラテラルシンキングの意味や鍛え方、例題などを解説しました。
ラテラルシンキングは、物事を多角的にとらえることで柔軟に多くの発想を生み出せます。
就職活動や仕事をする上で必要なスキルでもあり、今後も重要になるでしょう。
これまでの概念や事実に囚われない思考法であるラテラルシンキングを身に着けるためにも、ご自身で鍛え、活用してみてください。