マネジメント業務の1つに、タスクマネジメントが挙げられます。
特に大規模なプロジェクトを進めているチームは、タスクマネジメントだけでも一苦労でしょう。
そこで有効なのが、4象限マトリクスを活用した「4象限マネジメント」です。
本記事では4象限マネジメントについて解説していきます。
記事後半には実践手順やおすすめツールを紹介しているので、ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
4象限マトリクスとは?
4象限マトリクスとは、横軸と縦軸をそれぞれの中心点で交差させた図表のことです。
スティーブン・R・コヴィーの名著『7つの習慣』のうちの第3の習慣「最優先事項を優先する」では、この4現象マトリクスを使ったマネジメントが登場しています。
コヴィーはこの4象限マトリクスの縦軸を重要度、横軸を緊急度とし、4つの象限を以下のように分けています。
- 第1象限:緊急かつ重要なタスク
- 第2象限:緊急ではないが重要なタスク
- 第3象限:緊急だが重要ではないタスク
- 第4象限:緊急でも重要でもないタスク
それぞれ詳しく見ていきましょう。
関連記事:マネージャーなら絶対身につけておくべき「タスクマネジメント」とは?
第1象限:緊急かつ重要なタスク
緊急度も重要度も高いタスクは第1象限に振り分けられます。
緊急度も重要度も高いタスクなので、最も優先すべきタスクだと言えるでしょう。
具体例としては締切直前のプロジェクトやクライアントからのクレーム対応が挙げられます。
これらのタスクは、早急に処理しなければ大きな損害になりかねないものです。
一刻も早く処理したほうがいいタスクだと言えます。
第2象限:緊急ではないが重要なタスク
緊急ではないが重要なタスクは第2象限に振り分けられます。
先に言っておくと、この象限は最も扱いに困るタスクかもしれません。
重要度が高いものの緊急度が低いため、放置しがちになります。
具体例としては以下が挙げられるでしょう。
- ステークホルダーとの関係性構築
- 研究開発
- 自己投資
これらのタスクは、長期的に大きな価値を生み出す可能性があります。
計画的に進めていくのがいいでしょう。
第3象限:緊急だが重要ではないタスク
緊急だが重要ではないタスクは第3象限に振り分けられます。
緊急度が高いため、早急に処理したほうが良いタスクです。
具体例としては以下が挙げられます。
- 重要ではない電話やメールの対応
- 報告書の作成
- 無駄な会議
これらのタスクは重要度が高くないため、権限委譲で部下に処理させるのがいいでしょう。
また可能であれば、後述する第4象限に移して、業務の効率化を進めるのがおすすめです。
第4象限:緊急でも重要でもないタスク
緊急でも重要でもないタスクは第4象限に振り分けられます。
当然のことながら、最も優先順位の低いタスクです。
具体例としては以下が挙げられます。
- 待ち時間
- 長時間の休憩
- 世間話
これらのタスクは、本来であれば早急に排除した方がいいタスクです。
しかし、第1象限や第3象限のように緊急度の高いタスクに追われると、ついつい楽な第4象限に逃げ出してしまいます。
第4象限のタスクをカットする際は、同時に他の象限のタスクの見直しを実施する必要があるでしょう。
4象限マネジメントの利点
4象限マトリクスを使った4象限マネジメントの利点は以下の3つです。
- タスクに優先順位をつけやすい
- タイムマネジメントに応用できる
- 無駄な業務を削減できる
それぞれ詳しく解説していきます。
利点①:タスクに優先順位をつけやすい
4象限マネジメントの最大のメリットは、タスクに優先順位をつけやすいことです。
膨大なタスクの中から「やるべきこと」を見つけることができます。
このようにタスクに優先順位をつけることができれば、その処理方法も明確になるでしょう。
これは、プロジェクトを管理するマネージャーにとって大きなメリットです。管理業務の削減に繋がるでしょう。
利点②:タイムマネジメントに応用できる
4象限マネジメントはタイムマネジメントにも応用できます。
なぜならタスクの優先順位をつけやすくなったので、限りある資源である時間を有効活用できるからです。
言うまでもなく、1日は24時間しかなく、1年は365日しかありません。
実際は1日8時間労働の週2日休日なので、時間という資源は想像以上に限りあるものです。
その時間を有効活用するために、4象限マネジメントは必要不可欠だと言えるでしょう。
関連記事:タイムマネジメントを仕事で活かすポイントとは?優先順位のつけ方など
利点③:無駄な業務を削減できる
4象限マネジメントでタスクの優先順位をつけることができれば、無駄な業務を削減できる可能性が出てきます。
第4象限に振り分けられたことによって分かった重要度の低いタスクを思い切ってカットすれば、それだけ無駄な業務が削減されるのです。
これは、労働時間短縮や生産性向上に大きく繋がるものであり、従業員のストレス低減にも繋がります。
チーム内の残業が多くなっている場合は、4象限マネジメントを活用して、無駄な業務を削減していきましょう。
4象限マネジメントの実践手順
4象限マネジメントの実践手順は以下の通りです。
- タスクを洗い出して分類する
- 緊急かつ重要なタスクを早急に管理する
- 緊急ではないが重要なタスクをプランニングする
- 緊急だが重要ではないタスクは移管する
- 緊急でも重要でもないタスクを削減する
- 定期的にタスクを見直す
それぞれの手順を詳しく解説していきます。
手順①:タスクを洗い出して分類する
まずはタスクを全て洗い出します。
この際、ありとあらゆるタスクを洗い出すことが大切です。
仕事のタスクはもちろんのこと、トイレ掃除や玄関の施錠といった日常的な業務も洗い出すことをおすすめします。
こうして洗い出したタスクを、先ほど紹介した4つの象限に分類していくのです。
この際、2つのポイントがあります。
1つめは、あらかじめ分類のルールを設けておくことです。
どれくらいで緊急度・重要度が高いと言えるのか、その基準を設けておくことで、迷うことなくタスクを分類できます。
そして2つめは、タスクの分類はマネージャー1人で実施するということです。
会議形式で多くの人がタスク整理に関わってしまうと、意見が割れた際に収拾がつかなくなります。
タスクはあくまでも処理するものであって、分類するものではありません。
タスクの分類に時間を割いてしまっては本末転倒です。
マネージャーが責任を持ってタスクを分類しましょう。
手順②:緊急かつ重要なタスクを早急に管理する
タスクを分類したあと、まず取り組みたいのが第1象限の緊急かつ重要なタスクを早急に割り当てることです。
このタスクは早急に処理したほうがいいタスクなので、多くのリソースを投下したほうがいいでしょう。
場合によっては、マネージャー自らが処理してもいいタスクかもしれません。
どちらにせよ、最善の結果が出るようなリソースの割り当てを早急に実施する必要があります。
手順③:緊急ではないが重要なタスクをプランニングする
4象限の中で最も扱いが難しいのが、第2象限の緊急ではないが重要なタスクです。
このタスクは早急に解決する必要はありませんが、計画的に取り組む必要があります。
そのため、確実にリソースを投下できるようにプランニングするのが一般的です。
具体的には、タスクの締め切りや目標を設定するのがいいでしょう。
実際に多くの研究で、締め切りを設定したほうが生産性向上に繋がることが明らかになっています。
擬似的でも良いので、締め切りを設定して緊急度を高めるのがいいでしょう。
手順④:緊急だが重要ではないタスクは移管する
第3象限の緊急だが重要ではないタスクは、第2象限のタスクと同じくらい扱いが難しいです。
重要ではないものの緊急度が高いので、ついつい処理し続けてしまいます。
そこで、まずは時間の空いている従業員に移管させるのがいいでしょう。
そして財務的に余裕があるのであれば、外注してしまうのも手です。
特にトイレ掃除や玄関の施錠などの日常的な業務は、誰でも処理できるタスクです。
アルバイトを雇って移管するのがいいでしょう。
手順⑤:緊急でも重要でもないタスクを削減する
第4象限の緊急でも重要でもないタスクは生産性が非常に低いので、可能な限り削減するのがいいでしょう。
ただし、これまで実施してきた習慣を一度に切り捨てるのは難しいものです。
ましてや、組織全体という範囲であれば尚更でしょう。
「第4象限のタスクを削減する可能性がある」ということを事前にチームに共有しておいて、タイミングが訪れたときに思い切って削減するのがいいでしょう。
手順⑥:定期的にタスクを見直す
タスクの優先順位をつけたあとも、定期的にタスクを見直します。
時間が経つにつれて新たなタスクが発生したり、優先順位が変動したりするからです。
頻度としては2週間から1ヶ月に1度ぐらいのペースがいいでしょう。
4象限マネジメントのおすすめツール
4象限マネジメントで利用できるおすすめツールは以下の4つです。
- カンバンボード
- タスク管理ツール
- メモ系のアプリ
- スケジュール管理ツール
それぞれ詳しく解説していきます。
ツール①:カンバンボード
まずおすすめなのがカンバンボードです。
カンバンボードはタスクやプロジェクトを可視化することに特化したタスク管理ツールの形式で、4象限マネジメントに最適なツールだと言えます。
カンバンボードのおすすめツールとしては以下が挙げられます。
- Trello
- Asana
- KanbanFlow
- Monday.com
ちなみにカンバンボードは、トヨタ自動車が活用したことで広く知られるようになりました。
実際に1950年代から活用しており、当時は大きな看板に書き込み、次第にホワイトボードを利用するようになったそうです。
ITツールはもちろんですが、あえてアナログのホワイトボードを活用してみるのも良いかもしれません。
関連記事:【タスク管理・プロジェクト管理】Asanaとは?無料でできることや使い方、活用事例を解説
ツール②:タスク管理ツール
タスク管理ツールも、4象限マネジメントに最適なツールだと言えます。
あらかじめ4象限をジャンルに設定しておけば、簡単に整理できます。
おすすめのタスク管理ツールは以下が挙げられるでしょう。
- Todoist
- Microsoft To Do
- Google ToDoリスト
タスク管理ツールを選ぶ際は、他のツールと連携できるかどうかを確認するのがおすすめです。
チャットツールやスケジュール管理ツールと連携できれば、タスク漏れを低減させることができます。
関連記事:タスク管理ツールの導入時に大切な9つのポイント | 無料で試せるタスク管理ツールも紹介
ツール③:メモ系のアプリ
シンプルなメモ系のアプリも、4象限マネジメントに最適なツールです。
テキスト形式はもちろんのこと、グラフィック形式でもタスクを整理できます。
おすすめのメモ系アプリは以下が挙げられます。
- Evernote
- Notion
- Google Keep
- OneNote
- Apple純正メモアプリ
一口にメモ系アプリと言っても、上記に紹介したツールはそれぞれで特徴があります。
実際にいくつかのツールを触りながら検討するのがおすすめです。
ツール④:スケジュール管理ツール
スケジュール管理ツールはタスク管理にも応用可能です。
もちろん4象限マネジメントにも対応できます。
おすすめのスケジュール管理ツールは以下の通りです。
- Googleカレンダー
- Microsoft Outlookカレンダー
- Notion
- Asana
これらのスケジュール管理ツールは、それぞれタスク管理機能も搭載されているので「スケジュールの中にタスクを設ける」ことができます。
第1象限や第2象限に確実に時間をかけたいのであれば、スケジュール管理ツールを活用するのがいいでしょう。
まとめ
それでは本記事をまとめていきます。
- 4象限マトリクスは緊急度と重要度の2つの軸で構成されたマトリクスのこと
- 4象限マネジメントを実施することで、タスクの整理や削減が可能になる
- 第2象限と第3象限のタスク処理が肝になる
- タスクの優先順位をつける際はマネージャー1人で取り組むのがおすすめ
4象限マトリクスを活用したマネジメントは、タスクの優先順位を付けられる点で非常に有効な手法です。
また、うまくツールを取り入れることで、より明確に判断し、運用できるはずです。
もしプロジェクト内のタスクを整理できていないのであれば、ぜひ4象限マネジメントを試してみるのがいいでしょう。